2022年9月現在、保険診療下で実施可能な造血器腫瘍を対象としたパネル検査は存在しませんが、今後1-2年以内に造血器腫瘍を対象としたパネル検査の臨床実装が見込まれており、検査導入に向けた環境整備が急務となっています。
固形がんにおいては、この検査の対象は「標準治療がない固形がん患者又は局所進行もしくは転移が認められ標準治療が終了となった固形がん患者(終了が見込まれる者を含む)」であり、その使用は「関連学会の化学療法に関するガイドライン等に基づき、全身状態及び臓器機能等から、当該検査施行後に化学療法の適応となる可能性が高いと主治医が判断した者」に限られています。
一方、日本血液学会「造血器腫瘍ゲノム検査ガイドライン」では、造血器腫瘍に対するパネル検査の「診断」、「予後予測」、「治療法選択」の各観点における有用性が示されており、臨床経過の各段階におけるゲノム検査仕様の推奨度、疾患・遺伝子ごとの臨床的有用性が提示されています。
パネル検査を保険診療下で実施するにあたっては、学会が提唱する科学的エビデンスに基づいた推奨度に加え、
1)造血器腫瘍のゲノム医療に対応可能な検査体制・施設体系
2)造血器腫瘍パネル検査に対応可能なエキスパートパネル開催の実現可能性・想定される各施設における実務的負荷
3)医療経済に及ぼす影響、等を考慮する必要があります。
そこで、厚生労働科学研究費補助金「造血器腫瘍における遺伝子パネル検査の提供体制構築およびガイドライン作成」班では、造血器腫瘍臨床の特殊性や本邦における現行の造血器腫瘍臨床体系に鑑み、このたび「造血器腫瘍における遺伝子パネル検査体制のあり方とその使用指針」を発出いたしました。本邦における造血器分野のゲノム医療発展にむけて、本指針がその礎になればと考えております。
「造血器腫瘍における遺伝子パネル検査体制のあり方とその使用指針」(改訂版)
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
「造血器腫瘍における遺伝子パネル検査の提供体制構築およびガイドライン作成」班
研究代表者 赤司浩一