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2019 HOA 派遣レポート 垣内誠司

更新日時:2023年4月25日

この度、2019年2月22日から24日にかけてタイのバンコクにて開催されましたHighlights of ASH in Asia-Pacificに日本血液学会の推薦をいただき、参加いたしましたので報告致します。
 初日はClinical Research Trainee Dayが開催されました。東南アジアの様々な国からの若手医師とともにtraineeとして参加いたしました。午前中の講義はクリニカルクエスチョンの立て方、統計解析の基礎、規模の大きい多施設での臨床試験においてのデータの集め方や登録の仕方、論文の書き方に至るまで充実したものでした。臨床試験を立案し遂行するには「まずは実践してみる」というステップが大切ではありますが、どうしても自己流になってしまいがちです。その意味で手法を言語化された講義を受講することで自分の考え方を客観視して見つめなおすことができ意義深い機会を得ることができました。
また、小グループに分かれてのディスカッションでは、Dr.Allisonをファシリテーターとしてインド、ミャンマー、フィリピン、タイ、スリランカといった多種多様な国々のメンバーとともに行いました。どの参加者もとても熱心で、各々の国の限られた医療資源で行える試験デザインの立案があったことが印象的でした。日本では日常臨床で当然のように用いている比較的新規の薬剤が「あまりに高価だから、とてもではないが自国では使えない」と述べる参加者もおり、日本が医療先進国としてオピニオンリーダーとしての役割を担うことが期待されていることを実感しました。それとともに、年々増加する医療コストを考えるとどこかで規制がかかるであろうことも考えると、制約のある中でどのように医療を進歩させるかというアイデアベースの臨床試験が求められる世の潮流になるのではないかとの思いも湧き起こりました。
 2日間のHighlights of ASHは名の通りASHの内容を簡潔にまとめたもので有意義なものでした。どのセッションも最初に症例提示があり参加者が適切な治療法と考える選択肢Wi-fiを用いて携帯電話やパソコンで専用webページにアクセスして投票し、スライドをスクリーンのみならず自身のデバイスで映し出すことができるなどと先進的な取り組みがなされており、インタラクティブな進行で学習することができました。
内容に関しては免疫チェックポイント阻害薬との既存の薬剤の組み合わせや新規分子標的薬の臨床試験など最新データも多くの発表がありましたが、個人的には限局期の初発DLBCLに対しR-CHOP 6コース群 vs 4コース + rituximab単剤2コース群で3年生存率が同等であったとするFLYER studyが印象的でした。また、初発進行期HLでABVD 2コース後の中間PETで陽性である場合には20 GyのIFRTを行わないとPFSが低下するため、ABVD 2コース+IFRTを標準療法とすべきとする報告ではstudy groupによる違いはありますが、2コースというコース数設定の少なさにも驚きました。私が特に市中病院勤務でfrailの患者さんを診療することが多いことから過不足無くかつ毒性の少ない治療が求められるため、これらの試験のみでの判断は尚早かもしれませんが参考になる結果でした。再発難治FLやMZLに対してRituximab + lenalidomide群 vs Rituximab群 ( R2 vs R ) でR2群がmedian PFSが長く、FLではOSでも延長したとする報告、さらにLancetで既報ですがCD30陽性PTCLに対しA + CHPが初期治療として有効であるとする報告も近い将来の臨床を変えそうな内容で興味深く拝聴しました。
Highlights of ASHの企画はもちろんですが、日本からともに参加した河村先生、立花先生、中村先生、原田先生と知り合うことができたのは大きな収穫であり、どの先生方もとても向上心が強く刺激になりました。また、横浜市立大学の中島教授ともご一緒にお食事をする機会をいただき、とても気さくにお話しいただけて楽しい時間を過ごすことができました。
最後になりましたがこのような素晴らしい機会をいただき、日本血液学会の関係者の皆様、推薦いただいた国立がんセンター東病院の南陽介先生、そして病棟で不在になるにも拘らず快く送り出してくれた職場のスタッフの皆様に深謝いたします。
 
 

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