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2017 HOA 派遣レポート 塚本康寛

更新日時:2017年4月5日

 今回、日本血液学会から推薦していただき、2017310日~12日に香港で開催された「2017 Highlights of ASH (HOA) in Asia-Pacific」に参加してきました。その報告をさせていただこうと思います。まず最初にこのような素晴らしい機会をくださった日本血液学会及びAmerican Society of  Hematology (ASH)のスタッフの方々、また病棟業務を引き受けてくださった病態制御内科の先生方、看護師さん達に深謝申し上げます。 

 今回の学会の若手医師派遣に応募する動機となったのは、私の短い血液内科人生の中で、鎌状赤血球症やサラセミアの症例に立て続けに遭遇し、その診断、方針に苦慮しながら診療した経験があり、今後のためにも、さらに深く学びたいと考えたからです。また、福岡という距離的な面からも、これらの疾患に出会う場面は、近い将来、増加すると思われますので、アジアに多いこれらの疾患について、現地の先生方の発表を是非聞いてみたく、どのようなことに重点をおいて診療を行っているのか質問したい、と思ったからです。 

 これまで国際学会というものに参加したことがなかったため、スーツケースを買うところから僕の国際学会は始まりました(今まではバックパックしか持っていなかった…)。香港の気候は、日本より緯度が低いため暖かいであろうと予想していましたが、香港の3月は薄着では肌寒く、広い会場では上着がないと、寒さで講演に集中できませんでした。

 

 さて、この「Highlights of ASH」ですが、ASHで、その年の内容の要約を、第一人者が発表してくださるというものです。これだけでも消化しきれないほどの情報を得られるのに、さらにアジア地域の血液内科の先生達と一緒に、レクチャーを受け、小数グループに分かれてdiscussionをするという「Trainee Day」も用意されていました。このトレーニングは、1日かけて行われ、前半はClinical questionに対して如何に答えていくか、そして、それを発表する際のスピーチスキルや、論文化への手順について講義がありました。また、休憩時間はExpertとのランチがあり、私はThalassemiaの専門家であるCoates先生の席につかせていただきました。インドネシアの血液内科の先生と同席し、アメリカとの医療の違い(アメリカは日本と同じで小児科が主に診療しているのに対し、インドネシアでは成人と一緒に診ているなど)について教えて頂きました。また、ThalassemiaSickle cell anemiaに対してハイドロキシウレアが投与されていることは文献や教科書では知っていたものの、当然のように日常診療でつかっていることを改めて聞き、その有効性を実感させていただきました。

 その後、少人数グループでのDiscussionへと続いていきます。僕らのグループでは、「今、疑問に思っていることは何か」から始まり、「いかに臨床研究へ繫げていくか」について話し合っていきました。医療経済的な面(交通アクセスや薬剤費、検査費など)が足枷になる国が多く、日本における自分の診療では保険診療は意識しているものの、他国のようにシビアには考えてこなかったために、考えさせられました。 

 翌日よりHOAが始まります。30分ごとの2テーマの講演、それに続くパネルdiscussionが夕方まで延々と続きます。講演は、最初にアジア各国における、その疾患のCharacteristicsが紹介され、その国における治療選択肢(やはり経済的な事情で制限がある薬剤があるなど)や現在行っている研究について紹介された後に、本テーマに入っていきます。この国紹介が、地域の特性が出て、なかなかおもしろかったです。

どの講演後も質疑応答が活発に行われていましたが、Thalassemiaの講演後には、アジアという地域上、質問者が非常に多く、途中で打ち切られていました。Thalassemiaに対する骨髄移植の成績や、MetforminによるHbFの誘導、レンチウイルスベクターによる遺伝子治療など日本ではなかなか聞けないような話題に加え、輸血による鉄過剰が、成長障害や心筋障害、さらには癌の増加をもたらしており、鉄キレートにより、それらのリスクを改善していることなど、興味深く聞かせて頂けました。また、今まで文献上でしか見たことのなかった著名人が発表しているところや、Coffee break中に、すぐ隣で彼らがクッキーを食べているところも目撃し、帰国後に彼等の名を目にすると親近感をもって、その論文を読むことが出来ています。 

 慣れない英語だらけの4日間で緊張しっぱなしでしたが、HOAに参加できて本当に良かったです。日本の血液内科の先生達と交流もできたことも(これまで、九州以外の同世代の血液内科の先生とはあまり話したことはありませんでした)、今後の人生に大きな影響を与えてくれると思います。若手血液内科の先生は是非参加してみてください。

    

 繰り返しにはなりますが、3月という慌ただしい時期に海外出張を認めてくださった先生方、本当にありがとうございました。

 

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