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第80回日本血液学会学術集会

2017 HOA 派遣レポート 栗田尚樹

更新日時:2017年4月5日

 亜熱帯の日差しと、むせ返るような人いきれ。。。と私が香港に抱いていた先入観とは裏腹に、どんより曇った空と幾分の肌寒さの中でHighlight of ASH (HOA)は開催されました。会議場がある香港島、湾仔地区は整然とした官庁街ですが、表通りを一歩外れると高層アパートに挟まれた路地に露店や屋台がひしめく、香港を象徴するような場所です。すっきりとしない天気とは対照的に、アジア各国から参加した同世代の血液内科医の熱気に、大きな刺激を受けた3日間であったと思います。

 香港では、日程の合間を縫って本場の中華料理の数々を愉しむことができました。もし学会を中華料理に例えるとすれば、前年末にサンディエゴで開催されたASHは、贅を尽くした「満漢全席」。それに対して香港でのHOAは「飲茶」に例えられるかも知れません。豪華絢爛たる満漢全席には目を奪われますが、それを食べ尽くすとなると至難の業です。しかし飲茶では多彩な点心が少しずつ供され、飽くことなく我々のお腹を満たしてくれます。HOAでは、凝固異常から白血病、造血幹細胞移植に至るまで、各分野の一流シェフ(研究者)が選りすぐった点心(臨床研究)の数々を、贅沢にも堪能することができました。
           


  HOAの初日には、アジア各国から招待された我々「若き料理人」のために、ネタの仕入れ方(clinical questionの立て方)、調理法(研究デザイン、統計学の基礎)や盛り付け方(口頭発表、論文執筆法)、更には調理実習(small group discussion)まで、一流シェフから懇切丁寧な指導を受けることができます。これまで自己流の料理に終始していた私にとっては新鮮な体験であり、特に「盛り付け」に対するシェフの思い入れと方法論には目から鱗でした。また欧米の臨床研究において、そのネタの量(sample size)には圧倒されがちなのですが、今後precision medicine(精密医療、個別化医療)時代を迎えるにあたって、従来のような大規模臨床研究は難しくなるかもしれない、といった質疑応答での遣り取りは印象に残りました。逆に捉えると、規模の比較的小さい施設の多いアジアの研究者にとってはチャンスなのかもしれません。ネタの鮮度と料理法次第でキラリと光る小皿を仕上げれば、我々屋台の店主でも大手チェーンに負けない存在感を示せるかもしれない、そんな希望を抱くことができました。

 私自身が興味を持って取り組んでいる造血幹細胞移植に関しては、全日程を通して注目していました。移植医療は高度かつ高価であり、やはりアジア各国で平等に受けられる治療ではないようです。しかしそういった状況にあっても、GVHD予防としてcyclophosphamideを用いたHLA半合致移植(PT/CY)は、アジア各国で既に用いられつつありました。HLA半合致移植という一見難しい移植形態ですが、PT/CYの有する簡便性、安全性はアジアの国々にあっても大きな利点なのだと再認識しました。

    

 HOAでは、「ネットワーキング」という単語がキーワードとして強調されていたように感じます。Meet-the-expert lunchで重要な示唆を与えて下さったReshef先生、グループワークで意見交換したオーストラリアや韓国の先生方、レセプションで酒を酌み交わしたインドやシンガポールの先生方、会場で隣り合ったフィリピンの先生、そして地元客でごった返す中華料理屋で円卓を囲んだ日本の先生方。HOAで築いたネットワークは、今後必ず活かされるものと確信しています。

 このような貴重な機会を与えてくださった日本血液学会の皆様、病棟を留守にするにも関わらず快く送り出してくださった筑波大学血液内科の皆様に、この場を借りて心より感謝申し上げます。


 

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