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第80回日本血液学会学術集会

2017 HOA 派遣レポート 笠原秀範

更新日時:2017年4月5日

この度は2017年3月10日から12日まで香港で開催されました2017 Highlights of ASH (HOA) in Asia-Pacificに参加する機会を与えて下さり誠にありがとうございました。
私たち日本からの派遣者はみな、香港島中心部にほど近い交通至便の地にあるHarbourview Hotelに部屋をいただき、学会はホテルから徒歩で5分余のConvention and Exhibition Centerで開催されました。

ASHでは膨大な数の演題・ポスター発表が複数の広大な会場で行われますが、このHOAは1つの講演会場で行われ、さらに2016年末のASHで発表されたものの中から厳選した演題が紹介されるため、たいへん効率的に最新の重要情報を吸収することができます。土・日の1日半にわたり、AML、ALL、MDS、CLL、HL、NHL、MM、MPDといった造血器腫瘍はもちろん、Best of ASH、造血幹細胞移植、血栓・凝固、血友病、サラセミアなどの赤血球疾患、ITPなど血液の各分野にまんべんなく構成されていました。自分で演題を探して歩くスタイルですとつい自分の関心のある領域の発表ばかりに目がいきがちになりますが、幅広い領域の知識をブラッシュアップできる得がたいチャンスとなりました。

講演は米国で各分野を代表する研究者が演者に立ち、まずアジアにおけるその分野の診療の現状を紹介した後、症例を提示してclinical questionとともにASHの発表演題を紹介するか、症例なしで最新のTrialの結果をどんどん紹介していくか、という形式です。いずれもかなりのスピードで進みますが、すべてのセッションのスライドが1冊のテキストとして配布されておりますので、助かりました。多くはclinical trialの結果紹介とその解釈ですが、インパクトのあるbasic researchの報告も少なからず含まれていました。またアジアの血液診療の現状は、途上国で使えるツールや経済的な問題などもクローズアップされるため、我が国でも医療費の高騰が続く問題について議論される昨今、医療の社会的側面という臨床医にとっては重要な問題も改めて考える機会になりました。2つのセッション各30分ずつが終わると30分のパネルディスカッションとなり、多くの質疑応答が活発に行われました。アジアの諸外国の若手は非常に積極的に質疑応答に参加しており、私も刺激されて自分の担当している臨床研究について演者の先生に質問に立つチャンスがあり、最新の考え方や現状をエキスパートから直接聞き出す大変貴重な経験となりました。

個人的に印象に残った演題は、CMLにおけるTKI中止研究であるEURO-SKI trialの結果と未解決の課題、MDSにおいてInflammasomeが疾患の診断及び治療効果判定に有用である可能性、MDSにおけるDNAメチル化阻害剤と免疫チェックポイント分子阻害剤やHDAC阻害剤の併用、悪性リンパ腫やMMにおけるCAR-Tを中心とした細胞療法の現状、MMのMRDと予後の関連性、DLBCLにおけるR-CHOPがDA-EPOCH-Rと予後に差がなかったというCALGBの報告、HLにおけるBrentuximab vedotinと化学療法やnivolumabの併用報告などです。全体を通して免疫チェックポイント分子に関する抗体治療や細胞療法など、病態解明から治療に至るまで、血液領域においても免疫に関する分野が急激な展開を遂げつつあることが感じられました。また、新たなclinical trialが頻繁に行われている米国にあっても、安全かつ効果で既存治療を上回る報告は簡単ではなく、古典的治療をきちんと行うことの重要性についても考える機会となりました。

また私は学会の土日の前日、金曜日から参加したのですが、このTrainee Dayという1日が設けられていたことも印象深い経験です。これは、アジア各国から招待された70名ほどの若手医師が、ASHから派遣された著名な講師陣により臨床研究の意義から、テーマの設定、研究の進め方、論文の書き方、プレゼンテーション法などについてのレクチャーを受けるという1日がかりの内容でした。土曜日の全体会でも各講師の先生とテーブルを囲んでランチの時間があるのですが、金曜日はよりざっくばらんに、少人数で囲んでランチをする機会があり貴重な体験でした。私はDana-Faber InstituteのDr. K Andersonのテーブルにお邪魔し、穏やかな語り口での丁寧な質疑応答を中心に、MMの診療における歴史から最先端、今後の方向性と課題についてこの道の権威からこれほど気軽にいろいろなお話を聞ける機会があろうとはまったく想像もしていませんでしたのでとても有益でした。

このような金曜日の若手向け講習、土日の充実した講演はもちろん非常に充実していたのですが、もう一つとても大切な財産となったのが、今回日本血液学会から派遣されたほかの5人の先生方(島津先生、栗田先生、佐々木先生、小倉先生、塚本先生)との交流です。皆さんそれぞれの大学で研究や診療に励んでいる熱意ある先生方で、皆すぐ仲良くなり、毎日プログラム終了後はVictoria Peakにケーブルカーで登りに行ったり、夜は現地の方ばかりの日本では見たこともない食材の出てくる中華料理店で食事をしたり、それからまた別の繁華街(香港は小さな半径内にいくつも個性的なエリアがあります)に出て買い物をしてフェリーで帰ってくるなど、香港と大陸の活気を満喫しつつお互いいろいろな情報交換をしました。全国各地に若手の血液研究者・血液内科医の友人ができたことは、本当にまたとない素晴らしい機会だったと思います。

香港到着から出発まで、とても楽しく有益な経験に満ち溢れた3日間で、今後の自分の臨床・研究にも大いに刺激となりました。

このような貴重な機会を与えてくださった日本血液学会スタッフの先生方、とくに国際委員会の先生方、また事務局の皆様、そして送り出してくださった当教室 岡本真一郎教授に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。


 

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