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2016 Highlights of ASH in Asia-Pacific in Brisbane 派遣レポート 金谷 穣(菊郷会愛育病院血液内科)

更新日時:2017年1月5日

金谷 穣

今回、日本血液学会からの派遣医師(trainee)として、2016年3月4日から3月6日にかけてオーストラリアのブリスベンで開催された、Highlight of ASH (HOA) in Asia and Pacificに参加させて頂きました、北海道大学血液内科の金谷穣と申します。まず、このような機会を与えて頂き、関係各所の皆様に御礼申し上げます。
HOAは、前年のASHで発表された膨大な演題から、各疾患のエキスパートがインパクトが大きいと判断した演題をかいつまんで講演するものです。毎年アジアで行われておりましたが、今年は初のオセアニア地域での開催でした。学会そのものは、3月5日と6日でAML、MDS、MPN、その他の骨髄系腫瘍、CLL、HL、NHL、MM、赤血球系疾患、血栓、止血、ITP/TTP/aHUS、造血幹細胞移植ならびにBest of ASH Summaryの14領域で各30分の講演が行われました。また、東アジア、東南アジア、南アジア、オセアニア地域から集まったtraineeに対しては、学会前日の3月4日に’trainee day’が催され、研究アイデアの立案法、統計解析、論文の書き方に関するセミナーが行われ、また各国のtraineeとの交流、各領域のexpertとのtable discussion (meet the expert)などが行われました。
HOAは非常に国際色豊かであり、医療事情は国によって全く異なることを実感することができました。私は、meet the expertで造血幹細胞移植のテーブルに参加しました。参加メンバーは、Fred Hutchinson Cancer Research CenterのH. Joachim Deeg先生、インド、中国、バングラディシュからのtrainee、私の5名でした。もちろん、学術的な話題もありましたが、バングラディシュは自家造血幹細胞移植のみで、まだ同種造血幹細胞移植が施行できないこと、インドは富裕層以外の医療アクセスが極めて悪く、急性白血病になっても人口の70%の人が化学療法を受けることができない状況にあることを聞き、衝撃を受けました。一方で中国は、都市部に住む多くの人が裕福になっており、多くの人が標準治療を受けることが可能であり、医師もあまりコストを意識せずに治療している、など国による医療アクセスの違いを実感しました。次から次への登場する新薬、細胞療法の出現など、医療コストはうなぎ登りであり、Deeg先生曰く、少し前までは自分も、目の前の移植患者さんに対してベストを尽くすという考えで診療していたが、これからはそうすることで、将来の何千人、何万人という患者さんに対して治療が行えなくなることを意識するようになったと話しており、その通りだなと感じました。

個人的に、気になった演題を幾つか紹介させていただきます。リンパ系腫瘍に対いて移植後大量エンドキサンを用いたHLA半合致ドナーからの移植と、HLA一致非血縁者をドナーとした移植でPFSに差が見られなかったとするCIBMTRからの後方視的な報告(#194)、第1寛解期のPh陰性ALLに対して、HLA一致同胞とHLA半合致ドナーのbiologically randomized行ったところ、DFSに差が見られなかったとする中国からの報告(#62)、新規発症のFLT3遺伝子変異を有するAMLに対して標準化学療法にFLT3阻害剤Midostaurinを併用し、Placebo群に対してOSが改善したとするCALGBからの報告(#6)、Stage I, IIの非bulkyのHLに対してABVD2コース後のPETが陽性であった症例に対してEscalated BEACOPPとIFRTを追加しても、満足のいく成績の改善が見られなかったとするCALGBからの報告(#578)に関心を持ちました。

最後に、このような素晴らしい機会を与えて頂きました、日本血液学会ならびにASHの先生方、また日本血液学会事務局の天野真美さま、traineeに関するあらゆる手続きを一手に引き受けて頂きました、ASH Executive Office International ProgramsのMichelle Lara様に感謝を申し上げます。また会期中、親切にして頂きました、荻窪病院血液科の長尾梓先生ならびに東京大学医科学研究所付属病院血液内科の小林真之先生に感謝致します。そして、日本造血幹細胞移植学会中の多忙な時期に病棟を守って頂きました、北海道大学病院血液内科の皆様に深謝申し上げます。

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