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2016 Highlights of ASH in Asia-Pacific in Brisbane 派遣レポート 北舘 明宏(秋田大学大学院医学系研究科 血液腎臓膠原病内科学分野)

更新日時:2017年1月5日

北舘 明宏

この度は2016年3月5日から6日までオーストラリアで開催されました2016 Highlights of ASH in Asiaに参加する機会を与えて下さり誠にありがとうございました。
学会はオーストラリア第三の都市であるブリスベンで開催されました。3月初旬のオーストラリアはちょうど夏の終わりであり、冬の寒さの残る日本と比べると大変過ごしやすい気候でありました。ブリスベンの街並みは近代的な建物と歴史的建造物がバランスよく混在しており、近くにはブリスベン川や植物園などもあり、水と緑も豊かで大変美しい都市でした。また、街には様々な人種の人が歩いており、国際色豊かな都市であることを実感致しました。学会会場はホテルから徒歩で10分程度のブリスベン中心部にあるBrisbane Convention & Exhibition Centreで開催されました。

これまでASHに参加したことはありましたが、演題数も膨大で会場も広いASHに比べて、このHighlights of ASHは1つの講演会場で基本的には行われ、昨年のASHでのインパクトのある演題が凝縮されておりました。セッションも白血病、MDS、悪性リンパ腫、骨髄腫といった造血器腫瘍から血栓・凝固、血友病、サラセミア、ITP・TTP/aHUSなど各分野に渡ってバランスよく構成されておりました。セッションでは各分野のエキスパートがまず症例を提示して、日常診療で遭遇するclinical questionに答えるような形式でASHの発表演題を紹介していました。従って臨床試験の解説が主ではありましたが、インパクトのある重要な基礎的報告にも焦点をあてていました。またエキスパートからの発表も、単に臨床試験の結果を示すだけでなく、その結果をどう解釈するのか、試験デザインに問題はないかについても解説があり非常に教育的な内容でありました。2つのセッションが終わるとパネルディスカッションとなり、多くの質問が演者に寄せられていました。印象に残った演題としては、MDSにおけるluspatercept(TGF-β経路阻害)、CLLにおけるBCL2阻害剤、AMLにおけるmidostaurin(FLT3阻害剤)などの新規薬剤の報告が目を引きましたが、本邦からの報告としてATLにおけるlenalidomideの成績も紹介されていました。骨髄腫に関してはixazomb、elotuzumab、daratumumabなど有望な新規薬剤が紹介される一方で、iMiDs・プロテアソーム阻害剤登場後の時代においても自家移植がいまだstandard careであることを示したIFM-DFCI 2009試験の中間解析報告は多くのエキスパートが紹介していました。また、aHUSとTTP鑑別のためのmodified HAM testや、血友病におけるアンチトロンビンに対するsiRNA医薬の臨床試験なども新たなアプローチとして大変興味深いものでした。全体を通して、エキスパートからの講演は非常に教育的であり、若い世代にとってはとても価値のある学会であったと思います。また、普段ASHなどでは回りきれない多くの分野の最先端に触れることは貴重な経験であり、今後の自分の臨床・研究に大いに刺激となりました。

最後になりましたが、このような貴重な機会を与えてくださった日本血液学会国際委員会及び事務局の皆様、秋田大学第三内科医局の皆様にこの場をお借りして心より感謝申し上げます。

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