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2023 HOA 派遣レポート 鈴木智貴

更新日時:2023年4月28日

 

 ベトナムのハノイで開催されたHighlight of ASH in Asia-Pacific (HOA)に参加させていただきましたので報告します。SARS-CoV-2との共存に世界が慣れ始め、国をまたぐ移動がスムーズになってきたとてもよいタイミングで参加ができました。コロナ禍後、当分海外には行けないと思っていたので感慨深かったです。
 3月9日から11日までの3日のプログラムで、初日はTrainee day、2,3日目がメインイベントであるHOAでした。Trainee dayは、アジアの各国から若手医師が集まり、欧米の指導陣から臨床研究の立案やキャリア形成に関する様々なテーマでレクチャーを受け、ディスカッションを行う企画です。私はtraineeと言ってしまっては詐称と言われる年次になりつつありますが、改めて臨床研究を計画するための様々なコツを教わって非常に勉強になりました。特にデータ収集においては入力者の負担を減らし、かつ誤入力をなくすために、収集するデータはminimumにすべきであることや、入力の仕組みを工夫することの重要性を学びました。セッションの1つにmentorshipについてのレクチャーがあり、上司と部下のようなイメージしやすいものに加え、同僚との相互のmentorshipなど、色々な形のmentorshipがあることを知りました。私には幸いにしてmentorと言える先生が何名かいますが、私自身のキャリア形成にmentorの先生方が与えてくれた影響は多大なものがあるので、mentorshipの重要性はよく理解しているつもりです。 しかし、mentorshipをテーマとしたレクチャーをこれまで日本では聞いたことがなかったので、新鮮であったとともに、mentorshipが日本では欧米ほど重要視されていないことを実感しました。理想的なキャリア形成のために、mentor/menteeの正しい概念が日本でもより広まる必要性を感じました。
 午後からは自身の臨床研究のアイデアやキャリア形成について議論するsmall groupのセッションが行われました。ファシリテーターのQuach先生の並々ならぬ熱量のもと、とても盛り上がりました (個人的にはQuach先生からのキャリアにおけるアドバイスで、“自分のことをよく知り、自分らしくいられることが大事”とのご自身の経験を踏まえた、”深イイ”アドバイスが身に沁みました)。どの先生たちも熱心で、興味深いアイデアを持っている一方で、国ごとの事情や医療の状況も異なるため、どうやってノイエスのある研究ができるのか、苦労している様子もうかがえました。日本においては、質の高い臨床が各現場で実践されているはずで、それをいかに斬新な切り口で、そして多数例のデータとしてまとめるかが、前向き/後ろ向き試験を問わず、今後さらに重要となると思われます。また、いずれはアジア地域の医師と臨床研究でコラボできることを夢見るところです。残念ながら今回のHOAでは具体化のイメージはつかめませんでしたし、実際のハードルは高いと思いますが、今回知り合った海外の先生とは定期的にコミュニケーションをとっていければと思います。
 翌日から2日間で開催されたHOAでは、ASH2022で報告された重要な研究成果について、その領域のエキスパートが簡潔にまとめて話をしてくれました。実際のASHでは膨大な量の演題数にのまれてしまい、会場も広大なのでいくつものセッションに参加することは大変ですが、HOAは最新の研究成果の概要を効率よく把握するのには非常によい企画だと感じました。個人的には、普段updateする機会が少ない良性疾患の知識を広く収集することができたことは有用でした。最も印象に残った演題は、原因のはっきりしない軽度のPlt減少(10-14.9万/mcl)を有する集団を長期フォローしてその後の血液疾患の発症の頻度を調べた、Massachusetts general hospitalからの報告でした。中央値20年という長期フォローを行い、30%にITPや造血器腫瘍を発症したという結果でした。検診で軽度の血小板減少を指摘されて紹介を受けることがありますが、これまでその長期的な転帰について気にしたことはありませんでした。おそらく演者の先生は素朴な(?)臨床疑問から、研究を立案し根気よくデータを収集したのだと思います。最新の解析技術や新規薬剤を用いた派手な研究もいいですが、こうした渋い(私見)研究もぜひ自分もやってみたいと思いました。
 夕方からは一緒になった日本の先生方と、ベトナム料理やベトナムの雰囲気を堪能することができました。ほとんどが”初めまして”の先生方でしたが、非常に仲良くして下さり、ありがとうございました。控えめに言って、最高に楽しかったです。これから日本でもまたコラボレーションできればと思います!
 末筆になりますが、HOA参加に際して手厚くサポートして下さった天野様をはじめとした日本血液学会の皆様、快く私を送り出してくださった名古屋市立大学病院 血液・腫瘍内科の皆様に心より感謝申し上げます。今回得た経験を還元していきたいと思います。

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