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2021 HOA 参加レポート(公募) 松原理絵

更新日時:2021年5月11日
この度はHighlights of ASHオンライン参加の機会を頂き、ありがとうございました。私は小倉記念病院にて勤務しておりましたが、コロナウイルスパンデミックの直前より主人の米国留学に帯同しています。米国におりながら、物価の高さから我が家の経済事情ではASHの参加費を捻出することができず忸怩たる思いでしたが、この度日本血液学会より、Highlights of ASHに参加し勉強できる機会をいただきました。深く御礼申し上げます。
私はリンパ系腫瘍(悪性リンパ腫、多発性骨髄腫)のセッションを中心に視聴いたしました。悪性リンパ腫のセッションでは、症例提示の後、どのような治療選択肢があるか、という進め方で演題の紹介がなされました。濾胞性リンパ腫のR-CHOP、R維持、BR後再発以降の選択肢として米国ではPI 3 kinase inhibitor、R+Len、Tazemetostatが既に承認されており、今回Axicabtagene Ciloleucel、Mosunetuzumab、Odronextamabの有用性が報告されました。治療抵抗性再発びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫についても同様に治験のデータが複数出されましたが、悪性リンパ腫領域においては、米国で承認されている薬剤が本邦では未承認であることが多く、日本の実臨床との乖離を感じざるを得ず、なかなか治療戦略を立てるイメージまで沸きづらいのも事実でした。
一方で、多発性骨髄腫では本邦で使用可能な新規治療薬が欧米と比較し悪性リンパ腫ほどは違わないため、非常に参考となりました。移植適応患者の4剤併用/非適応患者の3剤併用の有用性の可能性やCAR-Tを始めとする免疫抑制療法の有用性について報告がありました。人種による副作用の違いなども含め今後データが蓄積すれば、より長期間の病勢コントロール、ひいては治癒への光も見えた気がしました。
総じて、基礎研究から臨床(治療薬)への応用が著しく進んでおり、どの疾患においてもより腫瘍特異的、免疫学的な治療法の開発が進んでいるように思いました。より個別化された医療への期待を感じるとともに、適切な患者選択や時期の見極め、医療経済の問題も今後より切実になっていくと感じました。
また、コロナウイルスパンデミック下で造血器疾患患者の診療をどのように進めていくかというセッションについても非常に興味深く拝聴しました。世界各地から報告がありましたが、急性白血病、活動性の病態、合併症有、高齢者、PSが低い群での重症化が多いことはある程度想定の範囲内でした。パンデミックに伴い、治療戦略上の変更、治療の遅延も議論されているかと思いますが、報告された限りでは治療自体の変更は死亡率に影響しなさそうだというデータは興味深く、続報が待たれるところです。明らかなことですが、バーチャル診療を行った群では感染頻度が低く、今回に限らず様々な有事に備えたオンラインシステム構築は必須であると感じました。
最後に、直接的にASHの内容とは関係がありませんが、演者及び取り上げられている演題の発表者である先生方に女性医師が多く、個人的には非常に勇気づけられました。異国で家に引きこもり、感染者数・死亡者数に一喜一憂しながら、子供のオンライン授業に追われ、家事雑用に忙殺される日々で自らが血液内科医である(あった)ことも忘れるような生活を送っていた私には何よりの刺激になりました。世界中の医療がひっ迫する中で、医師でありながら何もできず非常に申し訳ない思いを抱えての応募でしたが、自宅にて世界のトレンドにキャッチアップできたことは私にとって非常に貴重な機会となり、帰国後また血液内科医として必ず復帰したいと思いを新たにいたしました。繰り返しになりますが、このような貴重な機会を与えてくださった日本血液学会に心から感謝申し上げるとともに、コロナウイルス感染症の一日も早い終息を祈念しレポートに代えさせていただきます。
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