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2021 HOA 参加レポート 若松学

更新日時:2021年5月11日
この度、2021年3月にハノイで開催される予定であったHighlights of ASH (HOA) in Asia-Pacificに参加させていただきました。はじめに、このような素晴らしい機会をくださった日本血液学会及びAmerican Society of  Hematology (ASH)のスタッフの方々に、深謝申し上げます。残念ながら、昨年度のHOAは、コロナウイルス感染の流行と重なり中止となりましたが、本年は、オンラインで参加する機会を頂きました。学会の雰囲気や海外の先生方の講演を直接、聞くことはできませんでしたが、自宅にいながら国際学会に参加できる手軽さ、容易さには感激しました。
 
私自身は、アメリカ本土で開催されるASHに2019年に初めて、ポスターセッションで参加することができました。実際のASH会場では、膨大な数の演題・ポスター発表が複数の広大な会場で行われるために、興味のある内容を網羅することは難しかったことを記憶しています。今回のオンラインでは自宅にいながら興味のある講座を繰り返して聞くことができ、一時停止をしてインターネットで調べながら視聴ができたためとても勉強になりました。以前に参加された先生から、HOAでは、アジア地域の血液内科の先生と一緒にレクチャーを受け、小数グループでdiscussionをするという「Trainee Day」があることは聞いておりましたが、本会で開催されなかったのが残念でありました。
 
従来、ASHで発表されたものの中から厳選した演題が紹介されるのがHOAの特徴であり、効率的に興味ある重要な情報を吸収することができ、非常に有意義な時間を過ごすことができました。自分でプログラムを読みながら演題を探して歩くスタイルは、興味のある領域ばかりになりがちですが、幅広い領域の知識をブラッシュアップできる得がたい機会となりました。特にAML、MDS、ALLをはじめとする血液悪性腫瘍はもちろん、血栓・凝固、造血細胞移植、サラセミアなどの赤血球疾患、さらに血液腫瘍とCOVID-19というテーマが構成されていました。
 
最近のAMLやMDSに対する治療法として、成人患者においてアザシチジン+ベネトクラクスによる治療成績が示されていました。この治療法は、高齢のAMLや高リスクMDS患者に対して耐容できる安全性プロファイルであり、かつ効果も期待できることが示されていました。また、免疫細胞上に発現する免疫チェックポイント蛋白であるTIM3の抗体をアザシチジンやデシタビンの脱メチル化薬と併用した、フェーズ1b試験の成績が示されていました。このような、AMLやMDSに対する最新治療の総論を、著名な海外演者の先生方から聞くことができたのは貴重な経験となりましたし、本邦で臨床に使用できる抗癌剤が限定的であることを実感し、特に小児患者に対して使用できるようになるまでまだ時間がかかるであろうことを実感しました。
 
本会では、このような最新の知見に加えて、アジア諸国で特有のサラセミアやSickle cell anemiaの講演では骨髄移植の成績、ウイルスベクターを用いた遺伝子治療などの国内の学会ではなかなか聞けないような話を聞くことができました。私が所属する名古屋大学大学院 医学系研究科 小児科学では、タイのマヒドン大学の小児血液腫瘍内科の先生方と協力し、先天性造血不全症疑いの症例の遺伝子解析を行っていますが、サラセミア患者の多さには目を見張るものがあります。
 
日本に居ながら長時間に渡り、英語の講演を聞き続けるのは、慣れないことでしたが、自分に興味のある最新の治療や研究内容から順に範囲を広げて、講演を聞くことができたのは良かったと思います。今回は、学会場にて直接、雰囲気を味わうことは叶いませんでしたが、有意義な時間を過ごせることは確かですのでぜひ若手の先生には参加していただければと思います
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