日本血液学会 造血器腫瘍ゲノム検査ガイドライン2018年版

序文

2001年にヒトの全ゲノムが初めて解読されて以来、ゲノム解読技術の飛躍的発展とともに、ゲノム情報に基づいた医療が提唱、実践されてきた。米国では、2015年 に当時のオバマ大統領が、一般教書演説において、Precision medicine initiativeを提唱し、ゲノム情報に基づいたがん医療の実現に向けて多額の国家予算を投じることを宣言した。 実際、米国の臨床の現場では、数百に及ぶがん関連遺伝子の異常を網羅的に解析し、各患者の癌細胞がもつ変異に応じて治療方針を決定することが日常診療の一部となっている。2017年11月に、324遺伝子の遺伝子異常を網羅的に解析するがん遺伝子パネル検査 (F1CDx: FoundationOne CDx) が米国のFood and Drug Administration(FDA)で承認され、Center for Medicare and Medicaid Services(CMS)から保険償還についても承認されたことは記憶に新しい。血液腫瘍学の分野においても、World Health Organization (WHO)、米国のNational Comprehensive Cancer Network (NCCN)、欧州のEuropean Leukemia Net (ELN)が提唱する診断・治療指針には、多くのがんゲノム情報が掲載され、ゲノム情報なしに適切な診断・治療を行うことが困難になりつつある。我が国では、臨床上有用な遺伝子異常を検出するための検査の一部が、保険診療として実施できないのが現状であり、がんゲノム医療実現に向けての体制構築が喫緊の課題である。日本血液学会では2017年8月にゲノム医療部会を発足し、この度「造血器腫瘍ゲノム検査ガイドライン」を作成した。本ガイドラインは、造血器腫瘍の臨床において有用性の高い遺伝子異常を現時点でのエビデンスに基づいて選別し、遺伝子パネル検査の基盤となる情報を提供するととともに、遺伝子パネル検査を含めたゲノム検査を活用すべき病態やその臨床的有用性について記載したものである。このガイドラインが、造血器腫瘍に対する遺伝子パネル検査を含めたゲノム検査の基本的な考え方を提供し、血液学臨床におけるprecision medicineの発展に寄与することを期待する。

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