2026 HOA 派遣レポート 大砂光正

2026年4月にマレーシア・クアラルンプールで開催された「Highlights of ASH in Asia-Pacific 2026」に、日本血液学会のご支援のもと参加いたしましたので、ご報告申し上げます。私は小児血液を専門としており、特に血栓止血領域の診療に従事しております。本学会は、日本血液学会からの案内メールをきっかけに知りました。血液学の知識を深めるだけでなく、これまで苦手意識のあった英語力の向上にもつながると考え、本派遣事業に応募いたしました。
今年のプログラムは例年と異なり、1~2日目が学術集会、3日目がClinical Research Trainee Dayという構成でした。1~2日目は、前年のASHで発表された演題の中から選定された内容を聴講する形式であり、大ホール1会場で全講演を聴くことができました。各セッションは約1時間から1時間半で複数の発表が行われ、その後に30分程度の質疑応答の時間が設けられていました。講演中にはスライド上に質問が提示され、聴衆が携帯電話でQRコードを読み取り回答することで、リアルタイムに意見の分布が可視化される仕組みとなっており、双方向性の高い講演が印象的でした。内容としては、日本では比較的症例数の少ない鎌状赤血球症やサラセミアに関する講演を拝聴することができました。特に、鎌状赤血球症の妊婦に対するハイドロキシウレア治療の有効性・安全性および管理に関する発表は印象的であり、日本においても外国の方が移住される機会があり、今後必要となる知識であると感じました。出血性疾患のセッションでは、一般的な凝固スクリーニング検査では診断が困難な遺伝性毛細血管拡張症に関する米国のレジストリ報告、原因不明の出血傾向に対する追加の血小板機能検査の有用性などが紹介されました。中でも、von Willebrand病(VWD)に対する抗プロテインS抗体を用いた皮下注射による出血予防治療の治験は非常に興味深く、VWF製剤の効果持続が短い症例に対する新たな治療選択肢となる可能性を感じました。
また、1~2日目には「Lunch with Experts」というプログラムがあり、各分野の専門家2名と参加者8名が同席して昼食をとりながら交流する機会が設けられていました。私は出血性疾患の講演を担当されたオーストラリアのRoss Baker先生と同席する機会を得て、発表内容について直接質問することができました。各国の参加者との交流も大変刺激的でした。
3日目のClinical Research Trainee Dayでは、各国のTraineeとともに、臨床研究、統計、研究倫理、論文投稿、利益相反(COI)などに関する講義を受けました。さらに、関心領域ごとに少人数グループに分かれ、エキスパートの先生方とともに課題に対するディスカッションや、日常診療・研究における疑問点の共有と助言を受ける機会がありました。講義はスライドを参照しながら理解することができましたが、英語でのディスカッションにはより高度な語学力が求められ、自身の課題を強く認識する機会となりました。
また、日本血液学会理事長の髙折晃史先生、ならびに日本赤十字社医療センター 骨髄腫アミロイドーシスセンター長の鈴木憲史先生と2日目の夜ご一緒に食事をさせていただき、これまでのご経験や研究について貴重なお話を伺うことができました。さらに、今回同行した血液内科の先生方とも交流を深め、診療や今後の進路について意見交換を行う中で、大きな刺激を受け、診療と研究に対するモチベーションを高めることができました。このご縁を今後も大切にしていきたいと考えております。本学会を通じて、日本国内外の多くの先生方と交流する貴重な機会を得ることができました。
最後に、このような貴重な機会を賜りました日本血液学会ならびにASH関係者の皆様、ならびに快く送り出してくださった奈良県立医科大学附属病院小児科の血栓止血グループの先生方に、心より御礼申し上げます。

