2026 HOA 派遣レポート 川村俊人

 この度、日本血液学会から推薦をいただき、2026年4月10日から12日にかけてHighlights of ASH in Asia-Pacificに参加させていただきました。海外での集中的な最新の知見のアップデート、国際交流ができる大変貴重な機会であったと感じております。

 最初の2日間は、Highlights of ASHとして昨年のASHにおける中心的な報告を各領域にわたって、海外のエキスパートの先生方からレビューしていただきました。

 これまで国際学会に参加させていただいた際には、自身の興味がある領域のセッションを重点的に聴講していましたが、今回は1会場での開催であったため血液領域のほぼ全ての分野について網羅されており、様々な領域の知見をアップデートすることができました。特に驚いたのは、セッションの後に質疑応答の時間が30分用意されており、アジアから来られた先生方が大変熱心にご自身の国の現状やそれを踏まえた質問をされていたことです。私もこれに刺激を受け、勇気を出して質問させていただき大変貴重な経験となりました。討議の中では米国・欧州の学会よりも費用対効果のお話や、新規治療が適応となっていない状況下での治療選択に関する話題が多く、最先端の技術と世界の医療の現状とのギャップを強く感じました。医療資源の持続可能性という点を考慮すると、日本でもこのような議論を活発に行う必要があると実感しました。

 セッションの構成として、日本で多くの血液内科医が診療に当たっている血液疾患領域だけでなく、組織球系腫瘍や異常ヘモグロビン症についてのセッションなども含まれていて充実した内容でした。免疫チェックポイント阻害薬投与後のITPや腫瘍関連血栓症のマネージメントなど、近年悩むことが多いトピックにも触れていただいており、非常に参考になりました。

 血液腫瘍領域は発展が目覚ましく、多発性骨髄腫に関する二重特異性抗体やCAR-Tによる治療成績には大変感銘を受けましたが、同時に高齢者にも多く発症する本疾患における、治療効果と安全性、費用面のバランスを考慮する難しさを感じました。そのような点でも、今回のセッションにおいてIMWGのfrailty scoreによる治療量調整の効果について検討された研究もあり、大変勉強になりました。また、初発急性骨髄性白血病症例に対するVen/AZAと従来化学療法の比較試験は印象的で、今後若年者に対してもVen/AZA→同種移植というシナリオが増えてくるのではないかと思いました。興味のある領域である、造血幹細胞移植・免疫療法に関するセッションは2日間の最後の比較的短い時間でしたので、少し寂しく感じましたが、本年のASHの理事長であるDr. Negrin先生から、PTCyによるGVHD予防下におけるハプロ移植とHLA適合非血縁移植のRCTの成績や、Stanford大学で行われるOrca-T細胞とCD19/CD22 CAR-T細胞併用療法の臨床試験の成績など、大変重要なエビデンスを紹介いただきました。Negrin先生には学会期間中個人的にも質問させていただき、まだ移植の領域には未解決課題が多くそれを明らかにするのは”It’s your job!”と大変有難いメッセージを頂きました。

 また、この2日間の昼食時はLunch with the expertsとして、登壇された先生との昼食に応募することができました。ここでも移植・免疫細胞療法のテーブルを選択し、各国の移植診療の現状を共有させていただきました。同種移植のドナー選択については米国で、非血縁ドナーが採取途中でドロップアウトしてしまうことが問題になっているというお話には驚きました。また、バングラデシュから来られた先生がどのように技術を他国から学び、コメディカルのスタッフの教育を行うかということを皆で話し合ったのが印象的であり、シンガポールではCD45RA T細胞除去などEx-vivoでのT細胞処理後の移植を行っているとのことで、国・地域毎の異なる治療戦略を興味深く感じました。

 3日目はClinical research trainee dayとして、各国からの参加者でグループごとに分かれ、1日かけて、臨床試験を立案し成果として発表するプロセスについて学びました。グループワークとして実際にテーマに沿って臨床試験におけるPICOT(Population/Intervention/Comparison/Outcome/Timing)を設定する時間があり、私が所属したグループは「新規治療が次々に登場している多発性骨髄腫において自家移植を行うことは適切か?」というクエスチョンに対する研究計画を行いました。各国の先生から複数の意見が集まり、まとまるまで時間がかかりましたが、これも地域や施設毎のプラクティスや考え方の違い故に起こることだと思い、国際舞台で研究を行うことの難しさと同時にその充実感も感じました。ファシリテーターの先生からも、実際には研究計画を立てることが最も難しくて、半年程度協議することもあるため、1日ですべてを決めるのは難しいと最後にまとめていただきました。

 会期中を通して、多くの方に出会うことができました。本プログラムやASH CRTI-APACプログラムで参加された日本の先生方5名とは会期中とても楽しく交流させていただきました。施設毎で取り組まれている診療研究が異なることも実感し、別領域で研究をされている先生からも普段の診療・研究で困っていることを相談させていただき有意義な時間を過ごすことができました。また、日本血液学会理事長の高折晃史先生と日本赤十字社医療センターの鈴木拳史先生からは学会期間中を通して目をかけてくださり、夕食もご一緒させていただきました。ご高名な先生方から面白いお話や熱いメッセージをたくさん伺うことができ、とても楽しく、刺激をいただいた一時でした。また、ワークショップやレセプションで海外から来られた先生方ともたくさん交流を図ることができました。とても陽気で気さくな方が多く、非常に充実した時間を過ごすことができたと思います。横のつながりという点では、これまでは日本の先生方とのつながりを意識しておりましたが、今後はさらに広いアジアの同世代の先生方ともつながりを持っていきたいと考えるようになりました。

 今回の派遣を通じて、最新の血液内科診療を網羅的に学んだだけでなく、様々な場所・条件で診療が展開されており、それぞれの医師がベストプラクティスを模索しながら診療に励んでいるということを実感できました。これは実際に顔を合わせてコミュニケーションを取ることで初めて感じることができたと思います。また、血液内科医として幅広い視野を与えてくれる大変良い機会ですので、今後後輩にも本プログラムの参加を是非勧めたいと思います。最後に、このように貴重な機会をサポートいただきました、日本血液学会東京事務局の天野様を始め関係者の皆様、学会期間中大変お世話になりました、高折先生、鈴木先生、3日間一緒に過ごしていただきました派遣医師の先生方、本派遣プログラムに推薦いただきました神田先生に心より御礼申し上げます。

 

 

        

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