自分が最も得意なことを軸にキャリアを築く

自分が最も得意なことを軸にキャリアを築く

坂田 麻実子
筑波大学医学医療系 血液内科学 教授

私は2021年11月に筑波大学医学医療系血液内科教授として研究室のリーダーとなり、2024年4月からは筑波大学附属病院血液内科長も務めています。チャートラウンド、病棟回診、外来診療に加え、研究室ではチームごとに週4回ミーティングを行い、臨床と研究の両輪で活動しています。若い専攻医・大学院生には女性も多く、出身大学も多様です。アジア各国からの留学生も多数受け入れており、昨年からはカナダBC Cancerからクロスアポイント教授を招聘し、月2回カンファレンスを開くなど、国際的にも開かれた教室を目指しています。
大学在学中から免疫学に関心を持ち、研修医時代には免疫学と深く関わる血液内科に自然と惹かれました。大学院を卒業して間もなく筑波大学に異動したことを契機に、「将来を見据えた新しい研究分野に挑戦したい」と考えるようになりました。ちょうど次世代シーケンス解析の黎明期であり、これをいち早く導入しておられた小川誠司先生の教室で、毎週勉強させていただきました。その後、悪性リンパ腫における疾患特異的遺伝子変異の発見を契機として、臨床・研究のいずれにおいても悪性リンパ腫を専門とするようになりました。現在は、がんゲノムや一細胞解析等を取り入れたデータサイエンス研究、臨床研究・治験という形での「トランスレーショナルリサーチ」、さらにWHO分類執筆などの国際的な活動を通じて、研究成果を患者さんに還元することを目指しています。
筑波大学に異動した当初は、0歳と1歳の子どもを育てながら、新しい職場で教育・診療を学ぶ日々であり、研究成果が全く出ない苦しい時期が長く続きました。そのなかで、私にとって研究とは「自分の好きな絵を描く世界」である、という境地に至りました。ひたむきに努力しても成果が出ないときには、思い切って外の風にあたり、患者さんや信頼できる仲間と会話することを大切にするようにしました。そうしたなかでふと訪れる小さなひらめきを大切に育てていくことで、現在の成果につながってきたように思います。
私から後輩の皆さんへのメッセージは、「あなた自身が一番得意なことを見つけてほしい」ということです。たとえ小さなことであっても、「ここだけは誰にも負けない」と思える得意分野があれば、そこから世界とつながることもできます。私の場合は、それがたまたま「研究」だったのだと思います。そして、「自分が最も得意なことを軸にキャリアを築く」ことは、女性だけでなく男性にも共通する普遍的なテーマだと感じています。それぞれの「好きなこと」と「得意なこと」を大切にしながら、皆さんと一緒に新たな血液学の道を切り拓いていければと思います。