補体阻害薬使用時の注意・対応事項について
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補体阻害薬使用時の注意・対応事項について
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日本血液学会 会員各位
近年、複数の補体阻害薬が各種疾患に対して承認され、日常診療において使用される機会が増加している。補体阻害薬は、それぞれの対象疾患において重要な治療選択肢となる一方、補体経路の阻害に伴い、髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌等による感染症の発症リスクが上昇する。補体阻害薬開始前に、それぞれの製剤に応じてこれらの細菌に対するワクチンの接種を必須としている。髄膜炎菌ワクチンは全ての補体阻害薬で接種が必要であるが、髄膜炎菌感染はワクチンを接種していても発症する場合がある。そのため、高熱が出た場合は髄膜炎菌感染を疑って早急に検査を行い、抗菌薬の投与を検討することが重要である。特に侵襲性髄膜炎菌感染症は、髄膜炎や髄膜脳炎以外にも、髄膜炎症状を伴わない菌血症として突発的に発症することがあり、発症直後は白血球増多やCRPの上昇もなく、インフルエンザや感冒との鑑別が難しい。24時間以内の早い経過で敗血症により死亡しうる急性劇症型があるため注意が必要である。
そこで、以下のような対応が推奨される。
【対象薬剤】
補体阻害薬(ソリリス・ユルトミリス・エジャイモ・エムパベリ・ボイデヤ・ピアスカイ・ファビハルタなど)
【確実な診療体制の確保】
・受診時に保険証とともに患者カードを提示(患者カードは常に保険証、診察券などとともに携帯する)していただくように注意喚起する。
・補体阻害薬を投与している医療機関においては診療端末で警告が表示されるようにするなど、補体阻害薬投与中であることを周知する手段を講ずる。
・補体阻害薬を投与している医療機関に速やかにアクセスできない場合は、発熱時に受診する連携医療機関を予め定めておく。
【予防・治療】
・免疫抑制剤やステロイドを内服している場合は、保険適応に留意しつつワクチンの2回接種や抗菌薬の予防的投与を検討する。
・キノロン系抗菌薬を手持ちとして、早期の受診が困難な場合は、軽度の発熱でもまず内服してもらい、その後に必ず受診していただく。
・受診時に血液培養を採取するとともに、その結果を待たずに速やかにセフトリアキソン等の静注抗菌薬を開始する。
【実際の対応】
・以上の推奨に基づき、実際には個々の施設の環境や患者さんの状況に応じて対策を検討していただく。
電子カルテ等での注意喚起の文書の例
『補体阻害薬使用中の患者です。髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌など、莢膜を有する細菌への易感染性を示します。発熱、頭痛、嘔気/嘔吐など体調不良を訴えて来院された場合には髄膜炎菌等による感染症(髄膜炎様の症状が全くなく、発熱のみのことも多い)を考えて、以下の対応をお願いします。
1. 血液培養2セット
2. CTRX(セフトリアキソン)の速やかな開始
3. 髄膜炎を疑う場合は、髄液検査で定性・一般細菌培養提出
4. サージカルマスクなどによる飛沫感染対策
◎対応が遅れると致死的となる合併症です。このため1と2はできるかぎり迅速にお願い致します。
(学会サイトにも掲載しております)
日本血液学会 診療委員会
委員長 神田善伸