日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版

第Ⅲ章 骨髄腫

(1)未治療で移植適応のある多発性骨髄腫

CQ1 移植適応の未治療多発性骨髄腫に対する寛解導入療法としてどのような治療が勧められるか

推奨グレード
カテゴリー1

移植を前提とした寛解導入療法としてボルテゾミブを含むレジメン,レナリドミドを含むレジメンが推奨される。

解説

自家造血幹細胞移植(ASCT)適応症例における初期治療として,ボルテゾミブ(BOR)やレナリドミド(LEN)などの新規薬剤を用いた寛解導入療法が推奨される。65歳以下を対象として,BLd(BOR,LEN,低用量DEX)による寛解導入後にASCTを行う群とBLd継続群を比較したIFM2009試験では,ASCT群のPFSは50カ月,CR以上の奏効割合は59%,4年OSは81%であった1)。本試験の結果はBLdがASCT適応症例における標準的な寛解導入療法として認識される根拠となった。SWOG S0777試験では初発時にupfront settingでASCTを希望しない患者群を対象とした研究ではあるが,BLdとLd(LEN,低用量DEX)との比較では,CR率はBLdで高くPFS,OSともにBLdが優れていたが初期治療中の有害事象による中止率はBLd群で高かった2)。Bd(BOR,低用量DEX)はVAD(VCR,DXR,DEX)との比較で寛解導入およびASCT後のVGPR以上の奏効割合が有意に優れていた3)。BCd(BOR,CPA,低用量DEX)とBAD(BOR,DXR,DEX)の比較では,寛解導入療法後のVGPR以上の奏効割合で有意差を認めず,重篤な有害事象はBCd群で少なかった4)。BCdとBTd(BOR,THAL,低用量DEX)の比較では,PRあるいはVGPR以上の奏効割合は有意にBTdが優れていた5)。未治療例に対して保険適用ではないカルフィルゾミブ(CFZ)についても複数の報告がなされている。KLd(CFZ,LEN,低用量DEX)とKCd(CFZ,CPA,低用量DEX)を比較したFORTE試験では,寛解導入療法後のVGPR以上の奏効割合はKLd群で有意に高かった6)。やはり保険適用ではないが,ダラツムマブ(DARA)をBLdに上乗せしたDARA-BLdとBLdを比較したGRIFFIN試験では,地固め療法後のsCRはDARA-BLd群で有意に良好であり,幹細胞採取効率にも影響はみられなかった7)。DARA-BLd群ではBLd群に比して最終観察時のMRD陰性(10-5未満)率も有意に高く,そのPFSも長い傾向があった。このように今後は奏効率の指標としてのMRD陰性も求められるかもしれない。
 以上より,2022年時点での保険適用を鑑みて,自家移植前の寛解導入療法としてはBLdが推奨されるが,状況に応じてBd,BCd,BTd,BAD,Ldも推奨される。

参考文献

1) Attal M, et al. Lenalidomide, bortezomib, and dexamethasone with transplantation for myeloma. N Engl J Med. 2017; 376(14): 1311-20.(1iiDiii)

2) Durie BG, et al. Bortezomib with lenalidomide and dexamethasone versus lenalidomide and dexamethasone alone in patients with newly diagnosed myeloma without intent for immediate autologous stem-cell transplant(SWOG S0777): a randomized, open-label, phase 3 trial. Lancet. 2017; 389(10068): 519-27.(1iiDiii)

3) Harousseau JL, et al. Bortezomib plus dexamethasone is superior to vincristine plus doxorubicin plus dexamethasone as induction treatment prior to autologous stem-cell transplantation in newly diagnosed multiple myeloma: Results of the IFM2005-01 trial. J Clin Oncol. 2010; 28(30): 4621-9.(1iiDiv)

4) Mai EK, et al. Phase III trial of bortezomib, cyclophosphamide and dexamethasone (VCD)versus bortezomib, doxorubicin, dexamethasone(Pad)in newly diagnosed myeloma. Leukemia. 2015; 29(8): 1721-9.(1iiDiv)

5) Moreau P, et al. VTD is superior to VCD prior to intensive therapy in multiple myeloma: results of the prospective IFM2013-04 trial. Blood. 2016; 127(21): 2569-74.(1iiDiv)

6) Gay F, et al. Carfilzomib with cyclophosphamide and dexamethasone or lenalidomide and dexamethasone plus autologous transplantation or carfilzomib plus lenalidomide and dexamethasone, followed by maintenance with carfilzomib plus lenalidomide or lenalidomide alone for patients with newly diagnosed multiple myeloma(FORTE): a randomized, open-label phase 2 trial. Lancet Oncol. 2021; 22(12): 1705-20. (3iiiDiv)

7) Voorhees PM, et al. Daratumumab, lenalidomide, bortezomib, and dexamethasone for transplant-eligible newly diagnosed multiple myeloma: the GRIFFIN trial. Blood. 2020; 136(8): 936-45.(3iiiDiv)

 

CQ2 移植適応の多発性骨髄腫に対する自家造血幹細胞移植は再発時よりも寛解導入後早期の実施が勧められるか

推奨グレード
カテゴリー1

65歳未満で重要臓器機能の保持されている初発多発性骨髄腫に対する寛解導入後早期の自家造血幹細胞移植はPFSを延長し,一部の患者群ではOSも延長させることから推奨される。

解説

Ld(LEN,低用量DEX)による寛解導入療法後の地固め療法としてタンデムASCT群とMPL(MEL,PSL,LEN)6コース群にランダム化した第Ⅲ相試験では,地固め療法開始時からのPFS(43カ月 vs. 22.4カ月)およびOSは有意にASCT群で良好であった1)。IFM2009試験はBLd(BOR,LEN,低用量DEX)による寛解導入療法後のupfrontのASCTとBLd継続をランダム化した代表的な第Ⅲ相試験である2)。ASCT群では3コースのBLd後にASCTを行い,BLd 2コースを追加した後にLEN維持療法が行われ,BLd群では計8コ—スのBLd後にLEN維持療法が行われた。PFS中央値(50カ月 vs. 36カ月)は有意にASCT群で優れていたが,4年OSでは有意差はみられなかった(81% vs. 82%)。BLd群の再発例のうち79%がサルベージのASCTを受けており,OSに有意差がみられなかった理由のひとつと考えられた。一方でCR率,MRD陰性率(10−4未満)はASCT群で有意に高かった。EMN02/HO95試験では,4コースのBCd(BOR,CPA,低用量DEX)後に1回目の割り付けとしてASCT群とBMP(BOR,MEL,PSL)群にランダム化され,その後2回目の割り付けとしてBLdによる地固め療法群と無治療群にランダム化され,最終的に全例でLEN維持療法が病状進行まで継続された3)。PFS中央値はASCT群がBMP群に比して有意に良好(56.7カ月 vs. 41.9カ月)であり,5年OSは両群で有意差を認めなかったが,高リスク染色体を有する群ではASCT群でOSが良好(HR 0.66,p=0.042)で,特にdel(17p)を有する場合にはその差が顕著であった(HR 0.48,p=0.014)。カルフィルゾミブ(CFZ)は本邦では未治療例に対して保険適用となっていないが,CFZを寛解導入療法に用いた試験も報告されている。FORTE試験では,KLd(CFZ,LEN,低用量DEX)4コース後にASCTを行いKLdを4コース追加する群,KLdを12コース継続する群,KCd(CFZ,CPA,低用量DEX)4コース後にASCTを行いKCdを4コース追加する群にランダム化が行われ,さらにCFZ+LENまたはLEN単剤の維持療法に2回目のランダム化が行われた4)。PFSはKLd+ASCT群とKLd 12コース群の比較ではKLd+ASCT群で有意に良好であった(HR 0.61,p=0.0084)。またMRD陰性(10−5未満)率および1年以上のMRD陰性持続率はKLd+ASCT群が最も高かった。
 以上より,現時点では移植適応の多発性骨髄腫に対し,寛解導入療法後早期にASCTを行うことはTTPの延長,また一部の患者群ではOSの延長も期待できることから推奨される。現在保険適用となっていないモノクローナル抗体を含む4剤併用療法が未治療例に対して実施可能となった場合には,推奨される患者群が限定される可能性もある。移植適応と判断する年齢については,実臨床においては65〜70歳でも心,肺,肝,腎などの重要臓器機能が保たれている場合にはASCTを考慮する場面に遭遇すると思われるが,多くのランダム化比較試験の適格基準は65歳までとなっており,ガイドライン上は65歳までとすることが妥当である。

参考文献

1) Palumbo A, et al. Autologous transplantation and maintenance therapy in multiple myeloma. N Engl J Med. 2014; 371(10): 895-905.(1iiDiii)

2) Attal M, et al. Lenalidomide, bortezomib, and dexamethasone with transplantation for myeloma. N Engl J Med. 2017; 16(16): 1617-29.(1iiDiii)

3) Cavo M, et al. Autologous haematopoietic stem-cell transplantation versus bortezomib-melphalan-prednisone, with or without bortezomib-lenalidomide-dexamethasone consolidation therapy, and lenalidomide maintenance for newly diagnosed multiple myeloma(EMN02/HO95): a multicentre, randomized open-label, phase 3 study. Lancet Haematol. 2020; 7(6): e456-68.(1iiDiii)

4) Gay F, et al. Carfilzomib with cyclophosphamide and dexamethasone or lenalidomide and dexamethasone plus autologous transplantation or carfilzomib plus lenalidomide and dexamethasone, followed by maintenance with carfilzomib plus lenalidomide or lenalidomide alone for patients with newly diagnosed multiple myeloma(FORTE): a randomized, open-label phase 2 trial. Lancet Oncol. 2021; 22(12): 1705-20.(1iiDiv)

 

CQ3 移植適応の多発性骨髄腫に対するタンデム自家移植はシングル自家移植よりも生存期間の延長に有用か

推奨グレード
カテゴリー3(染色体高リスク症例ではカテゴリー2B)

移植適応の多発性骨髄腫に対するタンデム自家移植は,特に染色体高リスクの症例に対しては治療選択肢となる。一方で,染色体標準リスクの症例に対する有用性は明らかでない。

解説

導入療法に新規薬剤を使用しない時代のシングルASCTとタンデムASCTを比較した試験は複数報告されているが,OSでタンデムASCTが優れていたのはIFM94試験1)のみであった。IFM94試験では,特に初回ASCTでVGPRに到達しなかった症例においてタンデムASCTの有用性が明らかにされた。新規薬剤の時代においてシングルASCTとタンデムASCTを比較した試験としてEMN02/HO95試験の結果が報告されている2)。本試験では施設方針としてタンデムASCTを行っている施設においてシングルASCT 209例とタンデムASCT 210例にランダム化が行われ,寛解導入療法としてはBCd(BOR,CPA,低用量DEX)が4コース行われた。タンデムASCTはシングルASCTと比べてPFS(HR 0.74,p=0.036),OS(HR 0.62,p=0.022)ともに優れており,症例数が少なく有意差はないものの高リスク染色体異常を有する群,特にdel(17p)を有する群でタンデムASCTが優れている傾向がみられた。BMT CTN 0702試験は,登録時にタンデムASCT群247例,シングルASCT+BLd群254例,シングルASCT群257例にランダム化され,結論としては3群でPFS,OSともに有意差を認めなかった3)。しかし,寛解導入療法の種類および期間が統一されていないことと,タンデムASCT群にランダム化されながらも実際に2回目のASCTに進んだ症例は68%に過ぎないことから,タンデムASCTの有用性を検証する試験としては根拠に乏しい。本試験の長期フォローアップについては学会報告のみで論文化されていないが,高リスク染色体異常を有する群において6年PFSがタンデムASCT群で有意に良好であったことが報告されており,今後の論文化が待たれる。
 以上より,タンデムASCTは,特に染色体高リスクの症例に対しては治療選択肢となり得る。一方で,染色体標準リスクの症例に対してはタンデムASCTは過剰な治療となる可能性がある。

参考文献

1) Attal M, et al. Single versus double autologous stem-cell transplantation for multiple myeloma. N Engl J Med. 2003; 349(26): 2495-502.(1iiA)

2) Cavo M, et al. Autologous haematopoietic stem-cell transplantation versus bortezomib-melphalan-prednisone, with or without bortezomib-lenalidomide-dexamethasone consolidation therapy, and lenalidomide maintenance for newly diagnosed multiple myeloma(EMN02/HO95): a multicentre, randomized open-label, phase 3 study. Lancet Haematol. 2020; 7(6): e456-68.(1iiDiii)

3) Stadtmauer EA, et al. Autologous transplantation, consolidation, and maintenance therapy in multiple myeloma: results of the BMT CTN 0702 trial. J Clin Oncol. 2019; 27(7): 589-97.(AiiDiii)

 

CQ4 移植適応の多発性骨髄腫に対する自家造血幹細胞移植後の維持療法は勧められるか。また,いつまで継続するか

推奨グレード
カテゴリー1

自家移植後レナリドミド維持療法はPFS,OSを延長するため推奨される。投与期間については少なくとも2年間の継続が推奨されるが,有害事象や二次発癌に留意しつつ疾患進行まで継続することも考慮される。イキサゾミブ維持療法はISS stageⅢの症例やレナリドミド維持療法が困難な症例においては選択肢となる。

解説

免疫調節薬による維持療法としてサリドマイド(THAL)維持療法とレナリドミド(LEN)維持療法があるが,THAL維持療法については多くが前治療としてボルテゾミブ(BOR)やLENを含まない時代の試験であり,現在これを適用することは困難である。LEN維持療法については,IFM2005-02試験1),CALGB100104試験2,3),RV-MM-PI-209試験4)でランダム化比較が行われ,すべての試験でPFS延長が認められたが,OSの延長を認めたのはCALGB100104試験のみであった。これら3つの試験のメタアナリシスでは,PFS,OSともLEN維持療法群で有意に優れていたが,ISS stageⅢの症例においてはOSの延長は認められなかった5)。一方で,LEN維持療法群で二次発癌の累積発症率が高かったとする報告があり注意を要する1-3)。LEN維持療法の期間について,これらの3つの試験では疾患進行もしくは有害事象による中止まで継続とされており,期間についてのランダム化は行われていなかった。GMMG-MM5試験では寛解導入療法としてBAD(BOR,DXR,DEX)とBCd(BOR,CPA,低用量DEX)にランダム化され,さらにASCT後の維持療法としてLEN維持療法を2年間行う群(LEN-2Y)とLEN維持療法をCR到達まで継続する群(LEN-CR)にランダム化が行われた。この結果,PFSは両群で有意差を認めなかったもののLEN-CR群は有意にOSが短縮しており,奏効にかかわらず一定期間以上のLEN維持療法継続が望ましいことが示唆された6)。なお,上述のLEN維持療法の臨床試験では10〜15mgの連日投与が行われている試験もあるが,本邦におけるLENの用法は21日間投与後,7日間休薬である。
 プロテアソーム阻害薬による維持療法としてはBORによる維持療法の報告もあるが7),異なる寛解導入療法による比較であり推奨レベルは高くない。TOURMALINE-MM3試験にはASCT後にPR以上の症例が登録され,イキサゾミブ(IXA)群およびプラセボ群にランダム化が行われ,最長で2年間の維持療法が実施された8)。IXA群で有意にPFSを延長したもののOSの延長は認められなかったが,ISS stageⅢの症例でIXA群において有意にPFS延長が認められており,PFSの観点からは高リスク染色体異常を有する症例を含めIXA維持療法が有用である。カルフィルゾミブ(CFZ)による維持療法については,単剤での維持療法は報告されていないが,第Ⅱ相試験であるFORTE試験においてLENとの併用による維持療法の有用性が報告されている9)。CFZは単剤でもLENとの併用においても維持療法としての使用は保険適用外であることに注意が必要である。
 以上より,LEN維持療法はPFSおよびOSの延長に寄与するため少なくとも2年間の投与が推奨されるが,有害事象やSPMの発症に留意しつつ疾患進行までの投与も考慮される。なお,将来的にはMRDを指標とした前方視的研究の結果により推奨期間も変化し得る。2年間のIXA維持療法はISS stageⅢの症例や有害事象によりLEN投与が困難な症例においては選択肢となる。

参考文献

1) Attal M, et al. Lenalidomide maintenance after stem-cell transplantation for multiple myeloma. N Engl J Med. 2012; 366(19): 1782-91.(1iDiii)

2) McCarthy PL, et al. Lenalidomide after stem-cell transplantation for multiple myeloma. N Engl J Med. 2012; 10(19): 1770-81.(1iDiii)

3) Holstein SA, et al. Updated analysis of CALGB(Alliance)100104 assessing lenalidomide versus placebo maintenance after single autologous stem-cell transplantation for multiple myeloma: a randomised, double-blind, phase 3 trial. Lancet Haematol. 2017; 4(9): e431-42.(1iDiii)

4) Palumbo A, et al. Autologous transplantation and maintenance therapy in multiple myeloma. N Engl J Med. 2014; 371(10): 895-905.(1iiDiii)

5) McCarthy PL, et al. Lenalidomide maintenance after autologous stem-cell transplantation in newly diagnosed multiple myeloma. J Clin Oncol. 2017; 35(29): 3279-89.(3iA)

6) Goldschmidt H, et al. Response-adapted lenalidomide maintenance in newly diagnosed myeloma: results from the phase III GMMG-MM5 trial. Leukemia. 2020; 34(7): 1853-65.(1iiDiv)

7) Sonneveld P, et al. Bortezomib induction and maintenance treatment in patients with newly diagnosed multiple myeloma: results of the randomized phase III HOVON-65/GMMG-HD4 trial. J Clin Oncol. 2021; 30(24): 2946-55.(1iiDiii)

8) Dimopoulos MA, et al. Oral ixazomib maintenance following autologous stem-cell transplantation(tourmaline-MM3): a double-blind randomised, placebo-controlled phase 3 trial. Lancet. 2019; 393(10168): 253-64.(1iDiii)

9) Gay F, et al. Carfilzomib with cyclophosphamide and dexamethasone or lenalidomide and dexamethasone plus autologous transplantation or carfilzomib plus lenalidomide and dexamethasone, followed by maintenance with carfilzomib plus lenalidomide or lenalidomide alone for patients with newly diagnosed multiple myeloma(FORTE): a randomized, open-label phase 2 trial. Lancet Oncol. 2021; 22(12): 1705-20.(1iiDiv)

 

CQ5 移植適応の高リスクの多発性骨髄腫や原発性形質細胞白血病に対してどのような治療が勧められるか

推奨グレード
カテゴリー3

染色体リスクによる治療の層別化は現時点では推奨されない。しかしdouble-hitやtriple-hitの高リスク染色体異常を有する症例,髄外病変を有する症例および原発性形質細胞白血病に対してはタンデム自家移植を含めた治療強度の増強が推奨される。

解説

高リスクと判断すべき因子として,ISS stageⅢ,R-ISS stageⅢ,高リスク染色体異常[t(4;14),t(14;16),del(17p),+1q],血清LDH高値,髄外病変の存在,原発性形質細胞白血病(primary plasma cell leukemia:pPCL)などが挙げられる。染色体リスクによって層別化治療を行う根拠は乏しく,現時点では高リスク染色体の存在だけでは治療強度を高めることは推奨されない。しかし,2つ以上(double-hit)もしくは3つ以上(triple-hit)の高リスク染色体異常を有する場合にはタンデムASCTを考慮するなど治療強度を高めることが推奨される。髄外病変(extra-medullary disease:EMD)を有した488例について,EBMTより後方視的解析が報告されている。何らかの高リスク染色体異常を有する症例は41%含まれており,これらの群ではPFS,OSともに不良であり,またタンデムASCTが行われた84例ではシングルASCTを行われた373例に比してPFS,OSともに良好であった1)。EMDの定義も明確ではなく症例集積研究であることからエビデンスレベルは高くないが,EMDを有する症例に対するタンデムASCTは選択肢となる。pPCLに対してBAD(BOR,DXR,DEX)とBCD(BOR,CPA,DEX)を交互に4コース実施し,タンデムASCT,タンデムASCT/同種移植(allo-SCT)を行う前方視的研究が報告されている。39例中7例がタンデムASCT,16例がタンデムASCT/allo-SCTを行われたが,OS中央値は36.3カ月であった2)。比較的多数例のpPCLの症例集積研究では117例中98例が新規薬剤による治療を受けており,upfrontのASCTを行われた55例のOS中央値は35カ月でASCTを行われなかった群の13カ月と比べて有意に良好であった3)。新規薬剤の使用とupfrontのASCTのみでは治療成績は十分とはいえず,タンデムASCTやallo-SCTも考慮されるが臨床試験として行うことが望ましい。EMDを有する症例やpPCLに対してはBDT-PACE(BOR,DEX,THAL,CDDP,DXR,CPA,ETP)などの化学療法も有効であると考えられるが,未治療例に対するエビデンスは乏しいため奏効が不十分な場合にのみ考慮すべきである。
 以上より,染色体リスクによる治療の層別化は推奨できるエビデンスに乏しいが,double-hitやtriple-hitの高リスク染色体異常を有する症例,EMDを有する症例,pPCLに対しては,タンデムASCTを含めた治療強度の増強が推奨される。

参考文献

1) Gagelmann N, et al. Tandem autologous stem cell transplantation improves outcomes in newly diagnosed multiple myeloma with extramedullary disease and high-risk cytogenetics: a study from the chronic malignancies working party of the European Society for Blood and Marrow Transplantation. Biol Blood Marrow Transplant. 2019; 25(11): 2134-42.(3iiiA)

2) Royer B, et al. Bortezomib, doxorubicin, cyclophosphamide, dexamethasone induction followed by stem cell transplantation for primary plasma cell leukemia: a prospective phase II study of the Intergroupe Francophone du Myélome. J Clin Oncol. 2016; 34(18): 2125-32.(3iiiDiii)

3) Jurczyszyn A, et al. Prognostic indicators in primary plasma cell leukemia: a multicentre retrospective study of 117 patients. Br J Haematol. 2018; 180(6): 831-39.(3iiA)

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