日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版

第Ⅱ章 リンパ腫

Ⅱ リンパ腫

悪性リンパ腫 総論

 わが国における悪性リンパ腫の新規罹患者数は,2011年で24,778人とされている。罹患率は,1985年,1995年,2005年,2011年で人口10万人あたりそれぞれ5.5人,8.9人,13.3人,19.4人と,年々増加傾向にある。男女比は約3:2と男性に多く,70歳代が発症のピークである1)
 組織学的にホジキンリンパ腫(Hodgkin lymphoma:HL)と非ホジキンリンパ腫(non Hodgkin lymphoma:NHL)に大別されるが大半がNHLであり,わが国におけるHLの頻度は全悪性リンパ腫のうち5〜10%程度とされている。

1.診断・治療方針決定に必要な事項
1)病歴
 問診により,既往症,治療中の疾患,合併症,初発症状,症状の出現時期,全身症状(発熱,体重減少,盗汗など)の有無,必要があれば出生地を記録する。

2)身体所見
 診察により以下の所見を記録する。
・身長,体重,体温,血圧,脈拍
・Performance Status
・貧血,黄疸の有無,皮疹の有無,胸部・腹部の聴診・打診,腫大リンパ節の有無〔有りの場合,部位(リンパ節領域名,左右),個数,サイズ,性状(硬さ,可動性の有無など)〕,触知可能な肝腫大・脾腫大の有無,浮腫の有無
・運動神経麻痺・異常知覚・髄膜刺激症状の有無

3)一般検査
 以下の検査を行う。
・末梢血血球算定,血液像(白血球数,好中球数,リンパ球数,腫瘍細胞数,赤血球数,ヘモグロビン値,血小板数)
・生化学検査(TP,Alb,ALT,AST,LDH,ALP,γ-GTP,Na,K,Cl,Ca,P,BUN,Cr,FBS,UA)
・血清学的検査(CRP,IgG,IgA,IgM,蛋白分画,可溶性IL-2R,β2ミクログロブリン)
・ウイルス検査(HBs抗原,HBs抗体,HBc抗体,HCV抗体,HIV抗体,HTLV-1抗体)
・尿検査(糖,蛋白,潜血,沈渣)
・画像・その他の検査〔胸部X線検査,十二誘導心電図,頸部・胸部・腹部・骨盤Computed Tomography(CT),(必要に応じ)上部・下部消化管内視鏡,骨髄穿刺・生検,心エコー,必要時にはPositron Emission Tomography(PET),頭部CT・Magnetic Resonance Imaging(MRI),髄液検査,動脈血ガス分析〕

4)病理組織診断
 悪性リンパ腫の診断のためには生検による病理組織検査は必須であり,治療前に適切な病変より生検を行う。鼠径リンパ節や腋窩リンパ節は反応性腫大をきたすことがあるため,全身にリンパ節腫脹が認められる場合には頸部リンパ節の生検を行うことが望ましい。開放生検が困難な場合を除いて,針生検のみの病理組織検査は診断には不十分であることが多い。
 生検により得られた検体はホルマリン固定パラフィンブロックから薄切標本を作製し,ヘマトキシリン・エオジン染色を行う。その他にも以下のような免疫組織化学検査や,EBER in situ hybridizationを行う。
・CD45
・細胞質内CD3ε,CD5
・CD20,CD79a,CD10,免疫グロブリン(細胞質内免疫グロブリン)
・CD56
・CD15,CD30,cyclin D1,BCL2,BCL6,MIB1(Ki-67),IRF4/MUM1,MYCなど

5)その他の検査
 可能な限り検体より細胞を分離し,以下の検査を行う。
・フローサイトメトリー
・染色体分析
・遺伝子解析
・fluorescent in situ hybridization(BCL2, BCL6, MYC, CCND1, MALT1など)

2.病型分類
 悪性リンパ腫の分類としては,WHO分類(2017)が広く用いられている。悪性リンパ腫が含まれるリンパ系腫瘍は以下の通りに分類されている2, 3)

成熟B細胞腫瘍
慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(Chronic lymphocytic leukemia/small lymphocytic lymphoma)
単クローン性B細胞リンパ球増加症(Monoclonal B-cell lymphocytosis)
B細胞前リンパ球性白血病(B-cell prolymphocytic leukemia)
脾辺縁帯リンパ腫(Splenic marginal zone lymphoma)
有毛細胞白血病(Hairy cell leukemia)
脾B細胞リンパ腫/白血病・分類不能型(Splenic B-cell lymphoma/leukemia, unclassifiable)
脾びまん性赤脾髄小型B細胞リンパ腫(Splenic diffuse red pulp small B-cell lymphoma)
有毛細胞白血病・バリアント型(Hairly cell leukemia-variant)
リンパ形質細胞性リンパ腫(Lymphoplasmacytic lymphoma)
意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)・IgM型(Monoclonal gammopathy of undetermined significance, IgM)
μ重鎖病(μheavy chain disease)
λ重鎖病(λheavy chain disease)
α重鎖病(αheavy chain disease)
形質細胞骨髄腫(Plasma cell myeloma)
骨孤在性形質細胞腫(Solitary plasmacytoma of bone)
骨外性形質細胞腫(Extraosseous plasmacytoma)
単クローン性免疫グロブリン沈着病(Monoclonal immunoglobulin deposition disease)
粘膜関連リンパ組織型節外性辺縁帯リンパ腫(MALTリンパ腫)(Extranodal marginal zone lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue)
節性辺縁帯リンパ腫(Nodal marginal zone lymphoma)
濾胞性リンパ腫(Follicular lymphoma)
小児型濾胞性リンパ腫(Pediatric type follicular lymphoma)
IRF4再構成を伴う大細胞型B細胞リンパ腫(Large B-cell lymphoma with IRF4 rearrangement)
原発性皮膚濾胞中心リンパ腫(Primary cutaneous follicle center lymphoma)
マントル細胞リンパ腫(Mantle cell lymphoma)
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫・非特定型(Diffuse large B-cell lymphoma, NOS)
T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫(T-cell/histiocyte-rich large B-cell lymphoma)
原発性中枢神経系びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(Primary DLBCL of the central nervous system)
原発性皮膚びまん性大細胞型B細胞リンパ腫・下肢型(Primary cutaneous DLBCL, leg type)
EBV陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫・非特定型(EBV positive DLBCL, NOS)
EBV陽性粘膜皮膚潰瘍(EBV positive mucocutaneous ulcer)
慢性炎症関連びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL associated with chronic inflammation)
リンパ腫様肉芽腫症(Lymphomatoid granulomatosis)
原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫(Primary mediastinal[thymic]large-B cell lymphoma)
血管内大細胞型B細胞リンパ腫(Intravascular large B-cell lymphoma),
ALK陽性大細胞型B細胞リンパ腫(ALK positive LBCL)
形質芽球性リンパ腫(Plasmablastic lymphoma)
原発性体腔液リンパ腫(Primary effusion lymphoma)
HHV8陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫・非特異型(HHV8 positive DLBCL, NOS)
バーキットリンパ腫(Burkitt lymphoma)
11q異常を伴うバーキット様リンパ腫(Burkitt-like lymphoma with 11q aberration)
MYCおよびBCL2BCL6の両方か一方の再構成伴う高悪性度B細胞リンパ腫(High-grade B-cell lymphoma, with MYC and BCL2 and/or BCL6 rearrangement)
高悪性度B細胞リンパ腫・非特異型(High-grade B-cell lymphoma, NOS)
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と古典的ホジキンリンパ腫の中間的特徴を伴うB細胞リンパ腫・分類不能型(B-cell lymphoma, unclassifiable, with features intermediate between DLBCL and classical Hodgkin lymphoma)

成熟T細胞およびNK細胞腫瘍
T細胞前リンパ球性白血病(T-cell prolymphocytic leukemia)
T細胞大型顆粒リンパ球性白血病(T-cell large granular lymphocytic leukemia)
慢性NK細胞リンパ増殖異常症(Chronic lymphoproliferative disorder of NK-cells)
急速進行性NK細胞白血病(Aggressive NK-cell leukemia)
小児全身性EBV陽性T細胞リンパ腫(Systemic EBV positive T-cell lymphoma of childhood)
種痘様水疱症様リンパ増殖異常症(Hydroa vacciniforme-like lymphoproliferative disorder)
成人T細胞白血病/リンパ腫(Adult T-cell leukemia/lymphoma)
節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型(Extranodal NK/T-cell lymphoma, nasal type)
腸症関連T細胞リンパ腫(Enteropathy-associated T-cell lymphoma)
単形性上皮向性腸管T細胞リンパ腫(Monomorphic epitheliotropic intestinal T-cell lymphoma)
胃腸管緩徐進行性T細胞リンパ増殖異常症(Indolent T-cell lymphoproliferative disorder of the GI tract)
肝脾T細胞リンパ腫(Hepatosplenic T-cell lymphoma)
皮下脂肪組織炎様T細胞リンパ腫(Subcutaneous panniculitis-like T-cell lymphoma)
菌状息肉症(Mycosis fungoides)
セザリー症候群(Sézary syndrome)
原発性皮膚CD30陽性T細胞リンパ増殖異常症(Primary cutaneous CD30 positive T-cell lymphoproliferative disorders)
リンパ腫様丘疹症(Lymphomatoid papulosis)
原発性皮膚未分化大細胞型リンパ腫(Primary cutaneous anaplastic large cell lymphoma)
原発性皮膚γδT細胞リンパ腫(Primary cutaneous gamma-delta T-cell lymphoma)
原発性皮膚CD8陽性急速進行性表皮向性細胞傷害性T細胞リンパ腫(Primary cutaneous CD8 positive aggressive epidermotropic cytotoxic T-cell lymphoma)
原発性皮膚先端型CD8陽性T細胞リンパ腫(Primary cutaneous acral CD8 positive T-cell lymphoma)
原発性皮膚CD4陽性小型/中型T細胞リンパ増殖性症(Primary cutaneous CD4 positive small/medium T-cell lymphoproliferative disorder)
末梢性T細胞リンパ腫・非特定型(Peripheral T-cell lymphoma, NOS)
血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(Angioimmunoblastic T-cell lymphoma)
濾胞T細胞リンパ腫(Follicular T-cell lymphoma)
濾胞ヘルパーT細胞形質を伴う節性末梢性T細胞リンパ腫(Nodal peripheral T-cell lymphoma with TFH phenotype)
未分化大細胞リンパ腫・ALK陽性型(Anaplastic large cell lymphoma, ALK positive)
未分化大細胞リンパ腫・ALK陰性型(Anaplastic large cell lymphoma, ALK negative)
乳房インプラント関連未分化大細胞リンパ腫(Breast implant-associated anaplastic large-cell lymphoma)

ホジキンリンパ腫
結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫(Nodular lymphocyte predominant Hodgkin lymphoma)
古典的ホジキンリンパ腫(Classical Hodgkin lymphoma)
結節性硬化型(Nodular sclerosis)
混合細胞型(Mixed cellularity)
リンパ球豊富型(Lymphocyte-rich)
リンパ球減少型(Lymphocyte depletion)

3.臨床分類
 1982年に提唱されたWorking Formulation分類では,病型分類の他にNHLの自然史に基づき,無治療での予後が年単位で進行する低悪性度,月単位で進行する中悪性度,週単位で進行する高悪性度というように悪性度による分類がなされた。1989年にはアメリカのNational Cancer Instituteより,悪性度による分類に加えて疾患の悪性度,活動性や侵攻性といったaggressivenessの程度を考慮し,低悪性度をインドレント リンパ腫(indolent lymphoma),中悪性度をアグレッシブ リンパ腫(aggressive lymphoma),高悪性度を高度アグレッシブ リンパ腫(highly aggressive lymphoma)に分類した臨床分類が提唱され,この分類が臨床試験で広く用いられてきた。WHO分類における病型を臨床分類に対応させると,概ね以下の通りとなる4)

インドレント リンパ腫
B細胞
慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫
リンパ形質細胞性リンパ腫
脾辺縁帯リンパ腫
粘膜関連リンパ組織型節外性辺縁帯リンパ腫(MALTリンパ腫)
節性辺縁帯リンパ腫
濾胞性リンパ腫
マントル細胞リンパ腫
T細胞
T細胞大型顆粒リンパ球性白血病
成人T細胞白血病/リンパ腫(くすぶり型)
菌状息肉症/セザリー症候群
原発性皮膚未分化大細胞型リンパ腫

アグレッシブ リンパ腫
B細胞
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
T細胞 末梢性T細胞リンパ腫・非特定型
腸症関連T細胞リンパ腫
未分化大細胞リンパ腫
肝脾T細胞リンパ腫
成人T細胞白血病/リンパ腫
節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型
血管免疫芽球性T細胞リンパ腫

高度アグレッシブ リンパ腫
B細胞
バーキットリンパ腫/白血病
T細胞
急速進行性NK細胞白血病

4.病期分類
 悪性リンパ腫の病変の広がりは治療選択,予後予測に大きく影響するため,病期を正確に把握することは極めて重要である。悪性リンパ腫の基本的な病期決定には,病歴と理学所見,血球算定・血液像,生化学検査,胸部X線検査,頸部・胸部・腹部・骨盤CT,(必要に応じ)上部・下部消化管内視鏡,骨髄穿刺または生検にて行う。
 かつては悪性リンパ腫の病期診断にガリウムシンチが用いられていたが,近年,PET-CTが感度,特異度とも優っていることより,ガリウムシンチに代わる検査となった。FDG uptakeの程度は悪性リンパ腫の組織型により異なるため,FDG-PETを治療の効果判定に用いる場合には,より正確に判定するために治療前の病期診断時にもFDG-PETを,可能であれば病変の意義をより正確に評価するためにPET-CTを行うことが望ましい。
 悪性リンパ腫に対する病期分類は,HLに対して開発されたAnn Arbor分類5)がNHLに対しても用いられているが,2014年に普遍的かつ曖昧さのない病期分類の作成を目的に,Ann Arbor分類の修正版であるLugano分類(2014)が国際悪性リンパ腫会議で作成された6)。Lugano分類(2014)では,FDG高集積の悪性リンパ腫で治療の効果判定にPET-CTを用いる場合には治療前にPET-CTを行って病期を決定する,NHLではA,Bの全身症状を記載しなくてもよい,HLとびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫ではPET-CTを行った場合は骨髄生検を行わなくてもよいとされている。
 消化管原発の悪性リンパ腫は節外病変が主病変であるため,Ann Arbor分類では病期の進展と乖離することが多い。よって,消化管原発の悪性リンパ腫では,Ann Arbor分類に加えて国際悪性リンパ腫会議で作成された,消化管原発悪性リンパ腫のLugano病期分類(1994)7)が用いられている。

Ann Arbor分類

Ⅰ期 単独リンパ節領域の病変(Ⅰ)。
またはリンパ節病変を欠く単独リンパ外臓器または部位の限局性病変(ⅠE)。
Ⅱ期 横隔膜の同側にある2つ以上のリンパ節領域の病変(Ⅱ)。
または所属リンパ節病変と関連している単独リンパ外臓器または部位の限局性病変で,横隔膜の同側にあるその他のリンパ節領域の病変はあってもなくてもよい(ⅡE)。
病変のある領域の数は下付きで,例えばⅡ3のように表してもよい。
Ⅲ期 横隔膜の両側にあるリンパ節領域の病変(Ⅲ)。それはさらに隣接するリンパ節病変と関連しているリンパ外進展を伴ったり(ⅢE),または脾臓病変を伴ったり(ⅢS),あるいはその両者(ⅢES)を伴ってもよい。
Ⅳ期 1つ以上のリンパ外臓器のびまん性または播種性病変で,関連するリンパ節病変の有無を問わない。または隣接する所属リンパ節病変を欠く孤立したリンパ外臓器病変であるが,離れた部位の病変を併せ持つ場合。
AおよびB分類(症状)
各病期は以下のように定義される全身症状の有無に従って,AまたはBのいずれかに分類される。
1)発熱:38℃より高い理由不明の発熱。
2)寝汗:寝具(マットレス以外の掛け布団,シーツなどを含む,寝間着は含まない)を変えなければならない程のずぶ濡れになる汗。
3)体重減少:診断前の6カ月以内に通常体重の10%を超す原因不明の体重減少。

Lugano分類(2014)(リンパ節を原発とする悪性リンパ腫のための改訂病期分類)

病期 病変部位 節外病変(E)の状態
限局期 Ⅰ期 1つのリンパ節病変
または隣接するリンパ節病変の集合
リンパ節病変を伴わない単独のリンパ外臓器の病変
Ⅱ期 横隔膜の同側にある2つ以上のリンパ節病変の集合 リンパ節病変の進展による,限局性かつリンパ節病変と連続性のある節外臓器の病変を伴うⅠ期またはⅡ期
Ⅱ期
bulky
bulky病変を伴うⅡ期 該当なし
進行期 Ⅲ期 横隔膜の両側にある複数のリンパ節病変または脾臓病変を伴う横隔膜の上側の複数のリンパ節病変 該当なし
Ⅳ期 リンパ節病変に加えてそれとは非連続性のリンパ外臓器の病変 該当なし
病変の進展は,集積を示す悪性リンパ腫ではPET,集積を示さないリンパ腫ではCTで決定する。扁桃,ワルダイエル輪,脾臓は節性病変とみなす。
bulky病変を伴うⅡ期を限局期または進行期のどちらで扱うかは,組織型や予後因子の数によって決定してもよい。Bulky病変の定義は組織型によって異なるため,“X” 表記はせず最長径を記録する。
Ann Arbor分類のAおよびB分類(症状)は,Lugano分類(2014)からは削除されている。ホジキンリンパ腫のみで付加する。

消化管原発悪性リンパ腫のLugano病期分類(1994)

Ⅰ期 消化管に限局した腫瘍
 単発または多発(非連続性)
Ⅱ期 消化管の原発部位から腫瘍が腹腔へ進展
 リンパ節浸潤
1:限局性(胃のリンパ腫の場合は胃周囲,腸管の場合は腸管周囲)
2:遠隔性(腸管原発の場合は腸間膜,その他では傍大静脈,骨盤,鼠径)
ⅡE期 近接の臓器または組織へ進展する漿膜の浸潤(実際の浸潤部位。例:ⅡE[膵臓]
ⅡE[大腸],ⅡE[後腹膜]
リンパ節浸潤と近接臓器へ浸潤する進展の両方がある場合は,病期は下付きの1または2とEの両方が記載されるべきである。例:Ⅱ1E[膵臓]
Ⅳ期 リンパ外への播種性浸潤または消化管病変に横隔膜を越えたリンパ節病変を伴う。

5.予後因子
 悪性リンパ腫は,その組織型により低悪性度,中〜高悪性度と大きく2つの予後グループに分けられる。組織学的な予後の分類の他にも,分子遺伝学的な区別や,病期や全身状態などの患者個々の状態によるさまざまな因子が知られている。アグレッシブ リンパ腫における予後予測モデルとしては国際予後指標(International Prognostic Index:IPI)8)が用いられている。近年,リツキシマブ時代のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する予後指標としてNational Comprehensive Cancer Network:NCCN-IPIが提唱されている9)。濾胞性リンパ腫では濾胞性リンパ腫国際予後指標(Follicular Lymphoma International Prognostic Index:FLIPI)10),進行期のホジキンリンパ腫に対しては国際予後スコア(International Prognostic Score:IPS)11)が用いられている。

アグレッシブ リンパ腫
IPI

IPIでの予後因子 予後不良因子
年齢
血清LDH
Performance Status
病期
節外病変数
61歳以上
正常上限を越える
2~4
ⅢまたはⅣ期
2つ以上

年齢調整IPI

年齢調整IPIでの予後因子 予後不良因子
血清LDH
Performance Status
病期
正常上限を越える
2~4
ⅢまたはⅣ期

IPI,年齢調整IPIとも予後因子の数によって以下の4つのリスクグループに分類する。
 ・IPI
予後因子0または1:低リスク(Low risk)
予後因子2:低中間リスク(Low-Intermediate risk)
予後因子3:高中間リスク(High-Intermediate risk)
予後因子4または5:高リスク(High risk)

 ・年齢調整IPI
予後因子0:低リスク(Low risk)
予後因子1:低中間リスク(Low-Intermediate risk)
予後因子2:高中間リスク(High-Intermediate risk)
予後因子3:高リスク(High risk)
※年齢調整IPIは,自家造血幹細胞移植のように,若年者のみで高齢者は対象とならない治療や,高齢者のみを対象とした治療の臨床研究への適応に用いられている。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
NCCN-IPI

NCCN-IPIでの予後不良因子 スコア
年齢
 41歳〜60歳
 61歳〜75歳
 76歳以上

1
2
3
血清LDH
 正常上限を超えるかつ正常上限の3倍以下
 正常上限の3倍を超える

1
2
病期がⅢまたはⅣ期 1
節外病変(骨髄,中枢神経系,肝臓/消化管,肺) 1
Performance statusが2以上 1

スコアよって以下の4つのリスクグループに分類する。
スコア0または1:低リスク(Low risk)
スコア2または3:低中間リスク(Low-Intermediate risk)
スコア4または5:高中間リスク(High-Intermediate risk)
スコア6以上:高リスク(High risk)

濾胞性リンパ腫
FLIPI

FLIPIでの予後因子 予後不良因子
年齢
血清LDH
ヘモグロビン値
節性病変領域数
病期
61歳以上
正常上限を越える
12g/dL未満
5領域以上
ⅢまたはⅣ期

予後因子の数により,以下の3つのリスクグループに分類する。
予後因子数0または1:低リスク(Low risk)
予後因子2:中間リスク(Intermediate risk)
予後因子3以上:高リスク(High risk)

 FLIPIは,リツキシマブ(R)が導入される以前の時代の,後方視的な検討に基づいて作成された全生存期間の予後予測モデルであった。その後,R時代に行われた前方視的試験の対象を基に無増悪生存期間の予測モデルとしてFLIPI2が作成された12)

FLIPI2

FLIPI2での予後因子 予後不良因子
年齢
β2ミクログロブリン値
ヘモグロビン値
最大のリンパ節病変の長径
骨髄浸潤
61歳以上
正常上限を越える
12g/dL未満
6cmを超える
あり

予後因子の数により,以下の3つのリスクグループに分類する。
予後因子数0:低リスク(Low risk)
予後因子1または2:中間リスク(Intermediate risk)
予後因子3以上:高リスク(High risk)

進行期ホジキンリンパ腫
IPS

IPSでの予後因子 予後不良因子
血清アルブミン値
ヘモグロビン値
性別
年齢
病期
白血球数
リンパ球
4g/dL未満
10.5g/dL未満
男性
45歳以上
Ⅳ期
15000/mm3以上
600/mm3未満,または白血球分画で8%未満

 予後因子の数がIPSと定義されている。

6.効果判定規準
 悪性リンパ腫に対する治療の効果判定には,1999年に公表された「NHLの効果判定規準の標準化国際ワークショップレポート」13)が広く用いられている。効果判定には通常はCTが用いられるが,近年のFDG-PETの普及度と有用性を示唆する検討結果を受けて,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫とHLの効果判定にFDG-PETを導入した「改訂版NHLの効果判定規準の標準化国際ワークショップレポート」が2007年に公表された14)。これらの効果判定規準は臨床試験の評価を国際的に統一する目的で作成されたものであるが,FDG-PETを用いた効果判定はCTのみで行う効果判定よりもその後の予後との相関がよい15)ため,日常診療における治療の効果判定にも有用である。PET-CT用いた効果判定では5ポイントスケールによる評価が推奨されている16)

改訂版NHLの効果判定規準(2007)
[CTのみ,PETは加味しないもの]

総合効果 標的病変の正常化
ならびにSPD
非標的病変 肝腫大
脾腫
腎腫大
腫瘍関連
症状と
腫瘍関連
検査値異常
骨髄浸潤 新病変
節性 節外性 節性 節外性
CR 正常 消失 正常 消失 消失 正常 陰性 なし
CRu 正常 消失 正常 消失 消失 正常 不確定 なし
75%以上縮小 正常 消失 消失 正常 陰性or不確定 なし
PR 75%以上縮小 正常 消失 消失 正常 陽性 なし
50%以上縮小 正常or
非増大
消失or
非増大
消失or
非増悪
正常 問わない
(未検可)
なし
SD 50%未満の縮小
かつ
50%未満の増大
正常or
非増大
消失or
非増大
消失or
非増悪
正常or
非増悪
問わない
(未検可)
なし
PD 50%
以上増大
50%以上増大 増大 増大 増悪 増悪 陰性化後の陽性 あり
RD 再腫大 再腫大 再出現 再出現 再出現

CT:Computed Tomography, PET:Positron Emission Tomography, SPD:Sum of the Products of the Greatest Diameters, CR:Complete Response, CRu:Complete Response/unconfirmed, PR:Partial Response, SD:Stable Disease, PD:Progressive Disease, RD:Relapsed Disease

[PETを加味したもの]

総合効果 標的病変のSPD 非標的病変 骨髄浸潤 PET 新病変
節性 節外性 節性 節外性
CR SPDの変化は問わない(未検は不可) 陰性 陰性 なし
PR SPDの変化は問わない(未検は不可) 陽性 陰性 なし
50%以上縮小 正常or非増大 消失or非増大 問わない
(未検可)
陽性 なし
SD 50%未満の縮小
かつ
50%未満の増大
正常or非増大 消失or非増大 問わない
(未検可)
陽性 なし
PD 50%以上増大 増大 増大 陽性化 陽性 あり
RD 再腫大 再出現 再腫大 再出現

CT:Computed Tomography, PET:Positron Emission Tomography, SPD:Sum of the Products of the Greatest Diameters, CR:Complete Response, CRu:Complete Response/unconfirmed, PR:Partial Response, SD:Stable Disease, PD:Progressive Disease, RD:Relapsed Disease

5ポイントスケール

1 取り込みがない
2 取り込みは縦隔以下である
3 取り込みは縦隔より高いが肝臓以下である
4 取り込みは肝臓より若干高い
5 取り込みは肝臓より著しく高い かつ/または 新たな病変がある
X リンパ腫と関係している可能性が低い新たな取り込み部位がある

7.治療後のフォローアップ
 治療後の追跡・評価の方法は,病型や,臨床試験のもとの診療か日常診療かなどにより異なる。血球算定,生化学検査や画像検査を適切に行い,注意深い病歴の聴取や診察を行うことが,適切な臨床的な判断に重要である。
 フォローアップの頻度,期間に関する明確な指標を示すエビデンスは存在しないが,ホジキンリンパ腫や治癒の可能性があるアグレッシブ リンパ腫では,完全奏効が得られた場合は治療後の2年間は2〜3カ月毎,その後は最低でも3〜6カ月毎の追跡を3年間は行うことが推奨される。治癒が困難と考えられるインドレント リンパ腫では,治療後の1年間は2〜3カ月,その後は3〜6カ月毎の追跡が推奨される。
 悪性リンパ腫の再発は,8割以上が臨床症状の出現により発見されるとされている17, 18)。定期的にCTを行うことで臨床症状が出現する前に再発が発見される場合もあるが,早期発見が予後改善につながるかは明確ではない19)。よって定期的なCTによるフォローアップは,コストを含めた患者利益を十分に検討した上で行うことが望ましい。定期的なPETによるフォローアップは有用性を示す根拠はなく,推奨されない20-23)

参考文献

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