日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版補訂版

第Ⅱ章 リンパ腫

Ⅱ リンパ腫

10 ホジキンリンパ腫
(Hodgkin lymphoma:HL)

総論

 ホジキンリンパ腫(Hodgkin lymphoma:HL)は,欧米では悪性リンパ腫の約30%を占める。わが国での頻度は,全悪性リンパ腫の5~10%程度である。
 年齢分布は,若年者層(20歳代)と中年層(50~60歳)にピークを有する二峰性を呈する。
 初発症状は多くは無症候性,無痛性表在リンパ節腫脹で,約75%が頸部・鎖骨上窩リンパ節腫脹で発見される。結節硬化型HLは約60%に縦隔病変を認める。
 血液検査所見は,白血球増多,リンパ球減少,好酸球増多,貧血,アルカリフォスファターゼ上昇,血液沈降速度亢進,CRP高値,細胞性免疫能低下などを認める。
 病理組織学的には,Hodgkin/Reed-Sternberg(HRS)細胞,lymphocyte predominant(LP)細胞(popcorn細胞)などの腫瘍細胞の増生を特徴とするリンパ腫である。WHO分類(2017)においてHLは結節性リンパ球優位型Hodgkinリンパ腫(nodular lymphocyte-predominant Hodgkin lymphoma:NLPHL)と古典的HL(classical Hodgkin lymphoma:CHL)の2つに大別されている1, 2)。HRS細胞はCHL,LP細胞はNLPHLに特徴的とされる。CHLは結節硬化型HL(nodular sclerosis Hodgkin lymphoma),リンパ球豊富型HL(lymphocyte-rich classical Hodgkin),混合細胞型HL(mixed cellularity Hodgkin lymphoma),リンパ球減少型HL(lymphocyte depleted Hodgkin lymphoma)の4つの準疾患単位に分類される。
 HLはAnn Arbor病期分類によりⅠ〜Ⅳ期に分類される。

1.限局期CHLの予後因子
 限局期(Ⅰ,Ⅱ期)CHLの予後因子を表1に示す。研究グループにより重視する予後因子が異なることに注意が必要である3-5)

2.進行期CHLの予後因子
 進行期CHL(Ⅲ,Ⅳ期)に用いられる予後予測モデルとしてはInternational Prognostic Score(IPS)がある6)。これは15〜65歳までの進行期CHLでMOPP療法[mechlorethamine(国内未承認),VCR,PCZ,PSL]やABVD療法(DXR,BLM,VBL,DTIC)などによる治療を受けた4,695例を対象とし解析を行い,無増悪期間(TTP)をエンドポイントとして7つの予後因子を抽出した。これらの因子の数によって無増悪期間の予測が可能とされている。このシステムでは5年での予測無増悪期間は,予後不良因子数0の場合は84%であるのに対し,5以上の場合は42%と不良である。

表1 各研究グループによる限局期CHLの予後因子

研究グループ GHSG EORTC NCIC/ECOG NCCN2019
予後良好群 病期Ⅰ,Ⅱ期
リスク因子なし
病期Ⅰ,Ⅱ期
(横隔膜上部病変)
リスク因子なし
病期Ⅰ,ⅡA期
リスク因子なし
病期Ⅰ,Ⅱ期
リスク因子なし
予後不良群 病期Ⅰ,Ⅱ期
リスク因子あり
病期ⅡB期ではbulky縦隔病変,節外病変があれば進行期
病期Ⅰ,Ⅱ期
(横隔膜上部病変)
リスク因子あり
病期Ⅰ,ⅡA期
リスク因子あり
ただし,bulky病変, 腹腔内病変があると進行期
病期Ⅰ,Ⅱ期
リスク因子あり
リスク因子 1.縦隔病変(胸郭横径比≧1/3)
2.節外病変
3.血沈亢進
(A≧50,B≧30)
4.3カ所以上リンパ節領域
1.縦隔病変(胸郭横径比≧0.35)
2.50歳以上
3.血沈亢進
(A≧50,B≧30)
4.4カ所以上リンパ節領域
1.40歳以上
2.血沈亢進(≧50)
3.4カ所以上リンパ節領域
4.混合細胞型あるいはリンパ球減少型古典的Hodgkinリンパ腫
1.縦隔病変(胸郭横径比>0.33)
2.血沈亢進(≧50)
3.B症状
4.4カ所以上リンパ節領域
5.10cmを超える病変

GHSG : German Hodgkin Study Group, EORTC : European Organization for the Research and Treatment of Cancer, NCIC : National Cancer Institute of Canada, ECOG : Eastern Cooperative Oncology Group, NCCN : National Comprehensive Cancer Network

参考文献

1)Stein H, et al. Hodgkin lymphomas. Swerdlow SH, et al. eds. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. Lyon, IARC ; 2017 : pp424-42.
2)Nogová L, et al. Lymphocyte-predominant and classical Hodgkin’s lymphoma : a comprehensive analysis from the German Hodgkin Study Group. J Clin Oncol. 2008 ; 26 (3) : 434-9. (3iiiDiii)
3)Noordijk EM, et al. Combined-modality therapy for clinical stage I or II Hodgkin’s lymphoma : long-term results of the European Organisation for Research and Treatment of Cancer H7 randomized controlled trials. J Clin Oncol. 2006 ; 24 (19) : 3128-35. (1iiDiii)
4)Engert A, et al. German Hodgkin’s Lymphoma Study Group. Involved-field radiotherapy is equally effective and less toxic compared with extended-field radiotherapy after four cycles of chemotherapy in patients with early-stage unfavorable Hodgkin’s lymphoma : results of the HD8 trial of the German Hodgkin’s Lymphoma Study Group. J Clin Oncol. 2003 ; 21 (19) : 3601-8. (1iiDiii)
5)Meyer RM, et al. Eastern Cooperative Oncology Group. Randomized comparison of ABVD chemotherapy with a strategy that includes radiation therapy in patients with limited-stage Hodgkin’s lymphoma : National Cancer Institute of Canada Clinical Trials Group and the Eastern Cooperative Oncology Group. J Clin Oncol. 2005 ; 23 (21) : 4634-42. (1iiDiii)
6)Hasenclever D, et al. A prognostic score for advanced Hodgkin’s disease. International Prognostic Factors Project on Advanced Hodgkin’s Disease. N Engl J Med. 1998 ; 339 (21) : 1506-14. (3iiiDiii)

 

アルゴリズム

 HLの治療法はCHLとNLPHLとで異なる。CHLにおいては限局期および進行期とも放射線療法単独で治療することは推奨されない。化学療法単独または化学療法と放射線療法の併用が推奨される。NLPHLのうち,限局期例ではinvolved-field radiotherapy(IFRT)が標準治療である(CQ5)。
 化学療法はABVD療法(DXR,BLM,VBL,DTIC)が標準である。
 また,拡大放射線療法(extended field radiation therapy:EFRT)であるマントル照射,亜全リンパ領域照射,全リンパ領域照射などに代表される系統的なリンパ節照射療法は,単独療法および化学療法との併用療法ともに推奨されない。化学療法と併用される場合はIFRTが推奨される。

1.限局期症例
 限局期CHLでは初回治療として化学療法と放射線療法との併用療法(combined modality therapy:CMT)が行われる(CQ1)。現在,用いられている代表的なレジメンはABVD療法である(CQ1)。限局期CHLに対するABVD療法4コース後のIFRTの治療成績は10年無増悪生存割合が90%以上である。放射線療法による晩期毒性,特に肺,乳房,消化管の二次がんや心血管系疾患による遅発性の死亡が問題となり,化学療法単独の治療方法も検討されている(CQ2)。近年,予後不良因子を持たない限局期CHLに対しては,有害事象の軽減のために化学療法の施行回数や照射量を減じる臨床試験が行われている。予後不良群に対してはABVD療法4コース後IFRT 30 Gy(CQ4)が推奨されるが,予後良好群に対してはABVD療法2コース後IFRT 20 Gy(CQ3)も推奨される治療法の一つである。CMTにおいてはABVD療法終了時に明らかな進行(PD)と判定されない限り,IFRTを予定通り行い治療終了する。再発症例は進行期再発症例と同様の治療法がとられることが多い。

2.進行期症例
 進行期CHLの初回治療としてはABVD療法(6もしくは8コース)あるいはCD30を標的とする抗体薬剤複合体であるブレンツキシマブ ベドチン(BV)併用AVD療法(6コース)が推奨される(CQ6, CQ7)。IPSによるリスク分類を用いて層別化して治療法を選択することは推奨されない(CQ8)。また,進行期症例においては初回治療中のinterim PETは予後予測に有用であるが,その結果により治療変更することの是非は臨床試験での検討段階であり,一般診療としては推奨されない(CQ9)。化学療法終了時にCTおよびPETにて完全奏効(CR)であれば治療は終了することが推奨される(CQ10)。部分奏効(PR)の場合にはIFRTの追加が考慮される(CQ10)。初回化学療法で安定(SD)以下あるいは化学療法後の再発症例では救援化学療法が施行されるが,65歳以下で救援化学療法に感受性がある場合は臓器機能が保たれていれば自家造血幹細胞移植併用大量化学療法が推奨される(CQ11)。また,再発・難治症例に対して,BV,抗PD-1抗体であるニボルマブ,ペムブロリズマブの高い有効性が報告されている(CQ12, CQ13)。

 

CQ1 限局期CHLに対する標準治療は化学療法と放射線療法の併用(CMT)か

推奨グレード
カテゴリー1

限局期CHLに対する標準治療は,予後良好群,予後不良群ともにCMTである。

解説

 限局期CHL予後良好群を対象にしたランダム化比較試験(H8-F)では,3コースのMOPP/ABV療法(HN2,VCR,PCZ,PSL/DXR,BLM,VBL)+involved-field radiotherapy(IFRT)のcombined modality therapy(CMT)群と拡大放射線療法単独群(extended field radiation therapy:EFRT,当研究ではsubtotal lymphoid irradiation:STLIが用いられた)とが比較された。5年無イベント生存割合(EFS)および10年全生存割合(OS)に関してCMT群が優れていた1)。限局期CHL予後不良群では,MOPP/ABV療法6コース,MOPP/ABV療法4コース+IFRT(30Gy),MOPP/ABV療法4コース+STLIの3群を比較したH8-U試験において,MOPP/ABV療法4コース+IFRTの有効性は他の2群と同等であり,有害事象は短期間の化学療法とIFRTのCMTが少なかった1)。これらの結果から,限局期CHLにおいてIFRTを用いたCMTは,EFRT単独およびEFRTを用いたCMTに比べて有用性が高く,標準治療となった。
 また,限局期CHLに対してCMTを施行する際の至適な化学療法レジメンについても検討されている。限局期CHLに対するABVD療法(DXR,BLM,VBL,DTIC)4コース後IFRTを行うCMTの12年無増悪生存割合(PFS)は94%と良好な治療成績が示され,ABVD療法4コース後IFRT療法が有効であることが報告されている2)。また,Japan Clinical Oncology Group(JCOG)は,病期Ⅱ~Ⅳ期のCHLに対してABVd療法(国内でのpilot studyで観察された悪心を主とする消化器毒性の軽減のため,ダカルバジンを250mg/m2に減量)6~8コース施行し,bulky病変が治療前に存在した場合には30~40GyのIFRTを追加する第Ⅱ相試験を行った。この臨床試験における病期Ⅱ期の5年PFSは86.8%,OS 97.4%と良好な治療成績であった(JCOG 9305試験)3)
 限局期CHL予後不良群に対してABVD療法4コースもしくはBEACOPP療法(BLM,ETP,DXR,CPA,VCR,PCZ,PSL)4コース,その後にIFRT 20Gyあるいは30Gyを行う2×2ランダム化比較第Ⅲ相試験が行われ,ABVD療法4コース後の20Gy IFRT群は,他の群に比べてFFTF,PFSが劣ることが示された。また,急性毒性がBEACOPP療法で有意に多いことが示された。この結果から,限局期CHL予後不良群に対してABVD療法4コース後の30Gy IFRTが推奨された(HD11試験)4)
 限局期CHLのCMTに用いる化学療法としてはABVD療法が推奨される。

参考文献

1)Fermé C, et al. EORTC-GELA H8 Trial. Chemotherapy plus involved-field radiation in early-stage Hodgkin’s disease. N Engl J Med. 2007 ; 357 (19) : 1916-27. (1iiDi)
2)Bonadonna G, et al. ABVD plus subtotal nodal versus involved-field radiotherapy in early-stage Hodgkin’s disease : long-term results. J Clin Oncol. 2004 ; 22 (14) : 2835-41. (1iiDiii)
3)Ogura M, et al. Phase II study of ABVd therapy for newly diagnosed clinical stage II-IV Hodgkin lymphoma : Japan Clinical Oncology Group study (JCOG 9305). Int J Hematol. 2010 ; 92 (5) : 713-24. (3iiiDiv)
4)Eich HT, et al. Intensified chemotherapy and dose-reduced involved-field radiotherapy in patients with early unfavorable Hodgkin’s lymphoma : final analysis of the German Hodgkin Study Group HD11 trial. J Clin Oncol. 2010 ; 28 (27) : 4199-206. (1iiDiii)

 

CQ2 Bulky病変を認めない限局期CHLに対する化学療法単独療法は推奨されるか

推奨グレード
カテゴリー2B

Bulky病変を認めない限局期CHLに対して,放射線療法を省略したABVD療法6コースの化学療法単独療法は推奨される治療法の一つである。

解説

 限局期CHL予後良好群に対するcombined modality therapy(CMT)の10年無増悪生存割合(PFS)は約80~90%,10年生存割合は約85〜95%である。また,bulky病変を認めない限局期CHLに対するABVD療法(DXR,BLM,VBL,DTIC)6コースのみの報告では,5年PFSは約85~90%とCMTと遜色ない結果であることも報告されている1, 2)
 Bulky病変を認めない限局期CHLに対する化学療法と放射線療法との併用(CMT)と化学療法単独とを比較したいくつかの比較試験の結果,CMTは化学療法単独に比べて,PFSが有意に良好であるものの,全生存割合(OS)では有意差がないことが示されている3-7)
 カナダ国立がん研究所によるHD6試験では,bulky病変を持たない限局期CHL予後良好群および予後不良群に対してABVD療法4~6コースのみを施行する群と,限局期CHL予後良好群に対してsubtotal lymphoid irradiation(STLI)のみを施行する群,もしくは限局期CHL予後不良群に対してABVD療法2コース+STLIを施行する群におけるランダム化比較試験が行われた7)。12年PFSはSTLI±ABVD群で有意に良好な成績であったが,OSはABVD4~6コース群で有意に良好であった。この背景には,STLI群では二次がんなどCHL以外による死亡が高率であることが関与すると考察された。
 放射線療法の毒性に関する報告では,重大な晩期毒性である二次がん,心血管イベント,脳血管障害の発生率は経時的に増加し,約2~7倍に達するとされる8, 9)。また,照射総線量を低減あるいは照射野を縮小しても,化学療法との併用で乳がんの発生リスクを高めることが報告されている9)。1965年から2000年の間にオランダで治療を受けたCHL患者3,905例(RTは87.8%の症例に施行)の観察研究では10),40年における二次がん累積発症割合は48.5%であった。以上の結果から,bulky病変を持たない限局期CHLに対して,二次がんなどの晩期毒性を最少化するために放射線療法を省略したABVD療法6コースの治療法は,推奨される治療法の一つと考えられる。

参考文献

1) Rueda Dominguez A, et al. Treatment of stage I and II Hodgkin’s lymphoma with ABVD chemotherapy : results after 7 years of a prospective study. Ann Oncol. 2004 ; 15 (12) : 1798-804. (3iiiDiii)
2) Canellos GP, et al. Treatment of favorable, limited-stage Hodgkin’s lymphoma with chemotherapy without consolidation by radiation therapy. J Clin Oncol. 2010 ; 28 (9) : 1611-5. (3iiiDiii)
3) Nachman JB, et al. Randomized comparison of low-dose involved-field radiotherapy and no radiotherapy for children with Hodgkin’s disease who achieve a complete response to chemotherapy. J Clin Oncol. 2002 ; 20 (18) : 3765-71. (1iiDi)
4) Meyer RM, et al. Randomized comparison of ABVD chemotherapy with a strategy that includes radiation therapy in patients with limited-stage Hodgkin’s lymphoma : National Cancer Institute of Canada Clinical Trials Group and the Eastern Cooperative Oncology Group. J Clin Oncol. 2005 ; 23 (21) : 4634-42. (1iiDiii)
5) Straus DJ, et al. Results of a prospective randomized clinical trial of doxorubicin, bleomycin, vinblastine, and dacarbazine (ABVD) followed by radiation therapy (RT) versus ABVD alone for stages I, II, and IIIA nonbulky Hodgkin disease. Blood. 2004 ; 104 (12) : 3483-9. (1iiDi)
6) Thomas J, et al. Comparison of 36 Gy, 20 Gy, or No Radiation Therapy After 6 Cycles of EBVP Chemotherapy and Complete Remission in Early-Stage Hodgkin Lymphoma Without Risk Factors : Results of the EORT-GELA H9-F Intergroup Randomized Trial. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2017 Oct 27. [Epub ahead of print] (1iiDiii)
7) Meyer RM, et al. ABVD alone versus radiation-based therapy in limited-stage Hodgkin’s lymphoma. N Engl J Med. 2012 ; 366 (5) : 399-408. (1iiA)
8) Brusamolino E, et al. Long-term events in adult patients with clinical stage IA-IIA nonbulky Hodgkin’s lymphoma treated with four cycles of doxorubicin, bleomycin, vinblastine, and dacarbazine and adjuvant radiotherapy : a single-institution 15-year follow-up. Clin Cancer Res. 2006 ; 12 (21) : 6487-93. (3iiiDi)
9) De Bruin ML, et al. Breast cancer risk in female survivors of Hodgkin’s lymphoma : lower risk after smaller radiation volumes. J Clin Oncol. 2009 ; 27 (26) : 4239-46. (3iiC)
10)Schaapveld M, et al. Second Cancer Risk Up to 40 Years after Treatment for Hodgkin’s Lymphoma. N Engl J Med. 2015 ; 373 (26) : 2499-511. (3iiC)

 

CQ3 限局期CHL予後良好群ではABVD療法2コースとIFRTのCMTが推奨されるか

推奨グレード
カテゴリー2A

限局期CHL予後良好群では,ABVD療法2コース後のIFRTは推奨される治療の一つである。

解説

 German Hodgkin Study Group(GHSG)では,巨大縦隔腫瘤(胸郭横径比≧1/3),節外病変,血沈亢進(B症状あり;≧30mm/h,B症状なし;≧50mm/h),3カ所以上の病変領域を限局期CHLの予後不良因子としている。限局期CHL予後良好群では長期生存が得られるため,有害事象の軽減のために化学療法の施行回数や放射線照射量を減じる臨床試験が行われている。
 GHSGは限局期CHL予後良好群に対して,ABVD療法(DXR,BLM,VBL,DTIC)2コース対4コースの比較と,その後のinvolved field radiotherapy(IFRT)20Gy対30Gyとの比較を行う2×2ランダム化第Ⅲ相試験(HD10試験)を行った1)。5年全生存割合(OS)および治療成功割合(FFTF)は4群間でほぼ同等であったが,毒性はABVD療法4コースで急性毒性および急性毒性死亡の発現頻度が高く,30Gy IFRTは20Gyに比べ急性毒性が多かった。そのため,毒性を考慮すると,ABVD療法2コース+IFRT 20Gyが限局期予後良好CHLの新たな標準治療となるとした。
 一方,European Organization for Research and Treatment of Cancer-Groupe d’Etude des Lymphomes de l’Adulte(EORTC-GELA)のH8試験では,限局期CHL予後良好群に対してMOPP/ABV療法(HN2,VCR,PCZ,PSL/DXR,BLM,VBL)3コースとIFRT(36Gy)のCMTと放射線単独療法(subtotal lymphoid irradiation:STLI)のランダム化比較試験が行われた。10年の無イベント生存割合(EFS),OSにおいてCMT群がSTLI群に優り,化学療法3コースとIFRT(36Gy)が限局期CHL予後良好群に対する推奨療法であるとした2)
 また限局期CHL予後良好群に対するABVD療法2コースとIFRT 30Gyの併用療法においての有害事象を軽減する目的で,ブレオマイシン(BLM),ダカルバジン(DTIC)を除いた化学療法[ABV(DXR,BLM,VBL),AVD(DXR,VBL,DTIC),AV(DXR,VBL)]のABVD療法に対する非劣性を確認するランダム比較試験(HD13)が行われた3)。5年のFFTFの比較では,DTICの省略はABVD療法に対し劣性であることが示され,BLMの省略は非劣性が確認されなかった。限局期CHL予後良好群に対する標準治療はABVD療法とIFRTのCMTであると結論づけられた。
 上記およびCQ1にあるように,限局期CHL予後良好群では短縮コースの化学療法とIFRTのCMTが標準治療である。化学療法のコース数,IFRTの照射量に関しては完全なコンセンサスが得られていないものの,有害事象の軽減と良好な治療成績を両立できるABVD療法2コース+IFRT 20Gyは推奨される治療である。

参考文献

1) Engert A, et al. Reduced treatment intensity in patients with early-stage Hodgkin’s lymphoma. N Engl J Med. 2010 ; 363 (7) : 640-52. (1iiDiii)
2) Fermé C, et al. EORTC-GELA H8 Trial. Chemotherapy plus involved-field radiation in early-stage Hodgkin’s disease. N Engl J Med. 2007 ; 357 (19) : 1916-27. (1iiDi)
3) Behringer K, et al. Omission of dacarbazine or bleomycin, or both, from the ABVD regimen in treatment of early-stage favourable Hodgkin’s lymphoma (GHSG HD13) : an open-label, randomised, non-inferiority trial. Lancet. 2015 ; 385 (9976) : 1418-27. (1iiDiv)

 

CQ4 限局期CHL予後不良群に対し推奨される治療法は何か

推奨グレード
カテゴリー2A

限局期CHL予後不良群では,ABVD療法4コース+IFRTのCMTが推奨される。

解説

 限局期CHL予後不良群に対する標準治療は,短期間の化学療法とinvolved field radiotherapy(IFRT)のcombined modality therapy(CMT)である(CQ11)。German Hodgkin Study Group(GHSG)は,限局期CHL予後不良群に対してABVD療法(DXR,BLM,VBL,DTIC)4コース対BEACOPP療法(BLM,ETP,DXR,CPA,VCR,PCZ,PSL)4コース,その後にIFRT 20Gy対30Gyを行う2×2の比較試験(HD11)を施行した。治療成功期間(FFTF)がABVD 4コース+20Gy IFRTで短い傾向(有意差はない)があったが,急性毒性はBEACOPP群で有意に多いことが報告された。この結果から,限局期CHL予後不良群においてはABVD療法4コース後の30Gy IFRTが推奨された2)。また,限局期CHL予後不良群に対するABVD療法4コース+IFRT(30Gy)と増量BEACOPP療法2コース+ABVD療法2コース+IFRT(30Gy)とを比較するランダム化比較試験(HD14)では3),5年FFTF,無増悪生存割合(PFS)ともに増量BEACOPP療法群で有意に良好であったが,全生存割合(OS)に有意差は認められず,急性毒性は増量BEACOPP療法群でより多いことが確認された。
 ABVD療法6~8コース+IFRT(36Gy)とStanford V療法(DXR,VBL,HN2,ETP,VCR,BLM,PSL)12週+IFRT(36Gy)を比較するランダム化試験サブグループ解析では4),縦隔bulky病変をもつ限局期CHLの5年治療成功生存割合(FFS)およびOSはいずれもABVD群でやや良好の傾向を示したが,有意差は確認されなかった。
 以上の結果から,限局期CHL予後不良群に対しては,有害事象をできる限り軽減するという点も踏まえ,ABVD療法4コース後の30Gy IFRTが推奨される治療法と考えられる。

参考文献

1)Fermé C, et al. EORTC-GELA H8 Trial. Chemotherapy plus involved-field radiation in early-stage Hodgkin’s disease. N Engl J Med. 2007 ; 357 (19) : 1916-27. (1iiDi)
2)Eich HT, et al. Intensified chemotherapy and dose-reduced involved-field radiotherapy in patients with early unfavorable Hodgkin’s lymphoma : final analysis of the German Hodgkin Study Group HD11 trial. J Clin Oncol. 2010 ; 28 (27) : 4199-206. (1iiDiii)
3)von Tresckow B, et al. Dose-intensification in early unfavorable Hodgkin’s lymphoma : final analysis of the German Hodgkin Study Group HD14 trial. J Clin Oncol. 2012 ; 30 (9) : 907-13. (1iiDiii)
4)Advani RH, et al. Randomized Phase III Trial Comparing ABVD Plus Radiotherapy With the Stanford V Regimen in Patients With Stages I or II Locally Extensive, Bulky Mediastinal Hodgkin Lymphoma : A Subset Analysis of the North American Intergroup E2496 Trial. J Clin Oncol. 2015 ; 33 (17) : 1936-42. (1iiDiv)

 

CQ5 限局期結節性リンパ球優位型HL(NLPHL)に対し推奨される治療法は何か

推奨グレード
カテゴリー2A

限局期NLPHLでは,IFRTが推奨される。

解説

 Joint Center for Radiation Therapyで治療された限局期NLPHLの後方視的解析が報告され,放射線療法のみの症例では10年無増悪生存割合(PFS)および10年全生存割合(OS)は良好であった1)。また,照射野に関してはinvolved field radiotherapy(IFRT),マントル照射または逆Y照射,拡大放射線療法(extended field radiotherapy:EFRT)の比較ではPFSとOSのいずれにおいても有意差はなかった。Combined modality therapy(CMT)は放射線療法単独に比べPFS,OSの改善はもたらさなかった。
 German Hodgkin Study Group(GHSG)で施行されたHD4,HD7,HD10,HD13,LP,LPHD,RIPLのいずれかの臨床試験に登録されたⅠA期のNLPHL 256症例についての後方視的解析では2),8年におけるOSは,CMT群,EFRT群,IFRT群ともに95%以上と良好であった。特にIFRT群ではPFSも90%以上であった。死亡例12例のうち1例のみがNLPHLによる死亡であった。急性毒性および二次がんなどの晩期毒性の可能性を考慮すると,IFRT(30Gy)が最も推奨される治療法であると考察された。
 以上の結果から,限局期NLPHLではIFRTが推奨される治療法であり,IFRTは30Gyで施行されることが多い。また,臨床病期Ⅰ期NLPHLで完全に病変が切除された症例においては注意深い経過観察が可能とされている3)

参考文献

1)Chen RC, et al. Early-stage, lymphocyte-predominant Hodgkin’s lymphoma : patient outcomes from a large, single-institution series with long follow-up. J Clin Oncol. 2010 ; 28 (1) : 136-41. (3iiiDiii)
2)Eichenauer DA, et al. Long-Term Course of Patients With Stage IA Nodular Lymphocyte-Predominant Hodgkin Lymphoma : A Report From the German Hodgkin Study Group. J Clin Oncol. 2015 ; 33 (26) : 2857-62. (3iiiA)
3)Diehl V, et al. Clinical presentation, course, and prognostic factors in lymphocyte-predominant Hodgkin’s disease and lymphocyte-rich classical Hodgkin’s disease : report from the European Task Force on Lymphoma Project on Lymphocyte-Predominant Hodgkin’s Disease. J Clin Oncol. 1999 ; 17 (3) : 776-83. (3iiiA)

 

CQ6 進行期CHLの標準治療はABVD療法か

推奨グレード
カテゴリー1

ABVD療法は進行期CHLの標準治療である。また,ブレンツキシマブ ベドチン併用AVD療法は進行期CHLの標準治療の一つである。

解説

 進行期CHLは化学療法が標準である。1960年代にMOPP療法(HN2,VCR,PCZ,PSL)が開発され,80%程度の奏効割合と約50%の長期生存が報告された1)。MOPP療法と非交差耐性の薬剤で構成されたABVD療法(DXR,BLM,VBL,DTIC)が開発され,Cancer and Leukemia Group B(CALGB)において,進行期CHLを対象としたMOPP療法,ABVD療法,MOPP/ABVD交替療法の3群間の第Ⅲ相比較試験が実施された。ABVD療法およびMOPP/ABVD療法はMOPP療法に比べ治療成功生存割合(FFS)が優ることが報告され2),長期経過観察(観察期間中央値14.1年)においてもABVD療法の優位性が示された3)。全生存割合(OS)に有意差は認められなかったが,ABVD療法はMOPP療法およびMOPP/ABVD療法に比べ血液毒性・感染症などの有害事象の発症頻度が有意に低く,進行期CHLの標準治療として確立された2)
 その後MOPP/ABV hybrid療法(HN2,VCR,PCZ,PSL/DXR,BLM,VBL)4),Stanford V療法(DXR,VBL,HN2,ETP,VCR,BLM,PSL)5, 6),MOPPEBVCAD療法(HN2,CCNU,VDS,MEL,PSL,EPI,VCR,PCZ,VBL,BLM),Multidrug regimen(ChIVPP/PABIOE交替療法(CLB,VBL,PCZ,PSL,DXR,BLM,VCR,ETP),ChIVPP/EVA hybrid療法(CLB,VBL,PCZ,PSL,ETP,VCR,DXR)7),CEC療法(CPA,CCNU,VDS,MEL,PSL,EPI,VCR,PCZ,VBL,BLM)8),BEACOPP療法(BLM,ETP,DXR,CPA,VCR,PCZ,PSL)8, 9)などの治療法はABVD療法とのランダム化比較試験において,いずれもOSの改善は示されなかった。無増悪生存割合(PFS)ではABVD療法より優れている治療法も報告されているが,治療強度を上げることにより有害事象は増強することが示されている。ダカルバジン(DTIC)の消化器毒性の軽減目的で考案されたABVd療法(DTICを2/3に減量)の良好な治療成績がわが国から報告された10)。単アームの臨床第Ⅱ相試験であり,ABVD療法との比較はなされていない。また,DTICの消化器毒性は近年の制吐剤の進歩により軽減されてきている。
 以上より,進行期CHLにおける標準治療は6もしくは8コースのABVD療法と考えられる。
 また,未治療進行期CHLに対するBV併用AVD療法とABVD療法とのランダム化比較試験の結果,主要評価項目の2年修正PFS(病勢進行,死亡,治療後PETスコア3~5,追加治療実施)割合はBV併用AVD療法が優れた(BV併用AVD療法82.1% vs. ABVD療法77.2%)11)。ABVD療法ではブレオマイシン関連肺毒性死亡を1.6%に認めたが,BV併用AVD療法では好中球減少関連合併症死亡を1.1%に認めた。BV併用AVD療法ではG-CSFの一次予防的投与が推奨される。

参考文献

1)DeVita VT, et al. Curability of advanced Hodgkin’s disease with chemotherapy. Long-term follow-up of MOPP-treated patients at the National Cancer Institute. Ann Intern Med. 1980 ; 92 (5) : 587-95. (3iiiDiii)
2)Canellos GP, et al. Chemotherapy of advanced Hodgkin’s disease with MOPP, ABVD, or MOPP alternating with ABVD. N Engl J Med. 1992 ; 327 (21) : 1478-84. (1iiDiii)
3)Canellos GP, et al. Long-term follow-up of Hodgkin’s disease trial. N Engl J Med. 2002 ; 346 (18) : 1417-8. (1iiDiii)
4)Duggan DB, et al. Randomized comparison of ABVD and MOPP/ABV hybrid for the treatment of ad-vanced Hodgkin’s disease : report of an intergroup trial. J Clin Oncol. 2003 ; 21 (4) : 607-14. (1iiA)
5)Gobbi PG, et al. ABVD versus modified stanford V versus MOPPEBVCAD with optional and limited radiotherapy in intermediate- and advanced-stage Hodgkin’s lymphoma : final results of a multicenter randomized trial by the Intergruppo Italiano Linfomi. J Clin Oncol. 2005 ; 23 (36) : 9198-207. (1iiDiii)
6)Gordon LI, et al. Randomized phase III trial of ABVD versus Stanford V with or without radiation therapy in locally extensive and advanced-stage Hodgkin lymphoma : an intergroup study coordinated by the Eastern Cooperative Oncology Group (E2496). J Clin Oncol. 2013 ; 31 (6) : 684-91. (1iiDiii)
7)Johnson PW, et al. Comparison of ABVD and alternating or hybrid multidrug regimens for the treatment of advanced Hodgkin’s lymphoma : results of the United Kingdom Lymphoma Group LY09 Trial (IS-RCTN97144519). J Clin Oncol. 2005 ; 23 (36) : 9208-18. (1iiDi)
8)Federico M, et al. ABVD compared with BEACOPP compared with CEC for the initial treatment of patients with advanced Hodgkin’s lymphoma : results from the HD2000 Gruppo Italiano per lo Studio dei Linfomi Trial. J Clin Oncol. 2009 ; 27 (5) : 805-11. (1iiDiii)
9)Viviani S, et al. ABVD versus BEACOPP for Hodgkin’s lymphoma when high-dose salvage is planned. N Engl J Med. 2011 ; 365 (3) : 203-12. (1iiDiii)
10)Ogura M, et al. Phase II study of ABVd therapy for newly diagnosed clinical stage II-IV Hodgkin lymphoma : Japan Clinical Oncology Group study (JCOG 9305). Int J Hematol. 2010 ; 92 (5) : 713-24. (3iiiDiv)
11)Connors JM, et al. Brentuximab Vedotin with Chemotherapy for Stage III or IV Hodgkin’s Lymphoma. N Engl J Med. 2018 ; 378 (4) : 331-44. (1iiDiii)

 

CQ7 進行期CHLにおいて増量BEACOPP療法はABVD療法より臨床的に優れているか

推奨グレード
カテゴリー2B

進行期CHLにおいて増量BEACOPP療法のABVD療法に対する優位性は証明されていない。

解説

 BEACOPP療法(BLM,ETP,DXR,CPA,VCR,PCZ,PSL)はGerman Hodgkin Study Group(GHSG)が開発した治療強度を高めたレジメンである。GHSGは標準BEACOPP療法(8コース),増量BEACOPP療法(8コース),COPP/ABVD療法(CPA,VCR,PCZ,PSL/DXR,BLM,VBL,DTIC)(8コース)の比較試験を報告した(HD9試験)1)。対象は臨床病期ⅡB以上で15歳から65歳の進行期症例である。この臨床試験はABVD療法類似のCOPP/ABVD療法に比べBEACOPP療法群(標準BEACOPP療法,増量BEACOPP療法)が5年治療成功割合(FFTF)において有意に優っていることを示した。また5年全生存割合(OS)においても増量BEACOPP療法がCOPP/ABVD療法より優れていた。長期の観察においても同様の結果が得られている2)。しかし進行期CHLの標準治療であるABVD療法と当試験で採用されたCOPP/ABVD療法が同等の有効性を示すかは不明である。急性期の有害事象は増量BEACOPP療法に高頻度に発生した。二次性MDS,AMLの発症は標準BEACOPP療法群と増量BEACOPP療法群はCOPP/ABVD療法群と比較して有意に頻度が高かった2)。その後,他のグループで行われたBEACOPP療法の変法(4コース増量レジメン+2コース標準量レジメン,4コース増量レジメン+4コース標準量レジメン)とABVD療法との4つの第Ⅲ相比較試験では,BEACOPP療法(変法)はABVD療法に対してOSで優位性が示されなかった3-6)
 以上の臨床試験から,増量BEACOPP療法がABVD療法に優っていると結論することはできない。
 高齢者(65歳以上)を対象とした標準BEACOPP療法とCOPP/ABVD療法の比較試験では両群でFFTF,OSに有意差はなく,標準BEACOPP療法群において血液毒性などの有害事象が高頻度で治療関連死亡も多い傾向にあった。高齢者でのBEACOPP療法の有用性は示されていない7)
 わが国で標準BEACOPP療法の臨床第Ⅱ相試験が施行された。69歳までの症例が対象であり,Grade 4の好中球減少を約60%に認めたものの,90%近い3年無増悪生存割合(PFS)が報告されている8)

参考文献

1) Diehl V, et al. Standard and increased-dose BEACOPP chemotherapy compared with COPP-ABVD for advanced Hodgkin’s disease. N Engl J Med. 2003 ; 348 (24) : 2386-95. (1iiDiii)
2) Engert A, et al. Escalated-dose BEACOPP in the treatment of patients with advanced-stage Hodgkin’s lymphoma : 10 years of follow-up of the GHSG HD9 study. J Clin Oncol. 2009 ; 27 (27) : 4548-54. (1iiDiii)
3) Federico M, et al. ABVD compared with BEACOPP compared with CEC for the initial treatment of patients with advanced Hodgkin’s lymphoma : results from the HD2000 Gruppo Italiano per lo Studio dei Linfomi Trial. J Clin Oncol. 2009 ; 27 (5) : 805-11. (1iiDiii)
4) Viviani S, et al. ABVD versus BEACOPP for Hodgkin’s lymphoma when high-dose salvage is planned. N Engl J Med. 2011 ; 365 (3) : 203-12. (1iiDiii)
5) Mounier N, et al. ABVD (8 cycles) versus BEACOPP (4 escalated cycles ≥ 4 baseline) : final results in stage III-IV low-risk Hodgkin lymphoma (IPS 0-2) of the LYSA H34 randomized trial. Ann Oncol. 2014 ; 25 (8) : 1622-8. (1iiDi)
6) Carde P, et al. Eight Cycles of ABVD Versus Four Cycles of BEACOPPescalated Plus Four Cycles of BEACOPPbaseline in Stage III to IV, International Prognostic Score ≥ 3, High-Risk Hodgkin Lymphoma : First Results of the Phase III EORTC 20012 Intergroup Trial. J Clin Oncol. 2016 ; 34 (17) : 2028-36. (1iiDi)
7) Ballova V, et al. A prospectively randomized trial carried out by the German Hodgkin Study Group (GHSG) for elderly patients with advanced Hodgkin’s disease comparing BEACOPP baseline and COPP-ABVD (study HD9elderly). Ann Oncol. 2005 ; 16 (1) : 124-31. (3iiiDiii)
8) Niitsu N, et al. Multicentre phase II study of the baseline BEACOPP regimen for patients with advanced-stage Hodgkin’s lymphoma. Leuk Lymphoma. 2006 ; 47 (9) : 1908-14. (3iiiDiii)

 

CQ8 進行期CHLにおいて治療法を決定する際に国際予後スコアを考慮すべきか

推奨グレード
カテゴリー3

国際予後スコアによる治療層別化の有用性を示唆する根拠はない。

解説

 国際予後スコア(International Prognostic Score:IPS)により,進行期CHLを低リスク,高リスク2グループに分類できることが報告されている。スコア0~2と3~7で分けた場合,両群にほぼ同数の症例が分布し,無増悪期間には有意な差が認められることが報告されている1)。IPSのリスク分類に基づいて治療効果のサブグループ解析を行っている第Ⅲ相比較試験の結果がいくつか報告されている。
 German Hodgkin Study Group(GHSG)のHD9はIPSスコア0~1,2~3,4~7の3グループに分類し,増量BEACOPP療法(BLM,ETP,DXR,CPA,VCR,PCZ,PSL)群,標準BEACOPP療法群,COPP/ABVD療法(CPA,VCR,PCZ,PSL/DXR,BLM,VBL,DTIC)群の5年治療成功割合(FFTF)と全生存割合(OS)を評価している2)。この3つの予後グループのすべてでFFTF,OSともCOPP/ABVD療法と比較し増量BEACOPP療法が優っていることが示され,増量BEACOPP療法はIPSのリスクグループに関わらず有効であるとされた。ABVD療法とBEACOPP療法(変法),CEC療法(CPA,CCNU,VDS,MEL,PSL,EPI,VCR,PCZ,VBL,BLM)を比較したHD2000試験3)およびmultidrug regimenとABVD療法との比較試験4)では,IPSが高い群で治療強度を高めた治療がABVD療法に比べ治療成功生存割合(FFS)が良好な傾向が認められたが,OSの改善は示されなかった。進行期CHLのIPS 0~2 5)または3以上6)の症例をそれぞれ対象とした,ABVD療法とBEACOPP療法(変法)の比較試験が報告されたが,両試験とも治療法間の無イベント生存(EFS)およびOSに有意差は示されなかった。また,化学療法薬の総投与量を減量し有害事象の低減が期待されるStanford V療法(DXR,VBL,HN2,ETP,VCR,BLM,PSL)(大多数でinvolved field radiotherapy:IFRT併用)とABVD療法の比較試験が報告された7)。Stanford VはIPS 0~2の低リスクグループでABVD療法と比較し,同等のFFS,OSを示したが,急性期の有害事象は高頻度であった。このようにIPSで低リスクと考えられる症例に対して,ABVD療法と比較し,治療効果を保ち有害事象が低減できる治療法は確立していない。
 IPSに基づく治療層別化の有用性については今後なお検証が必要であるが,現時点では推奨されない。

参考文献

1)Hasenclever D, et al. A prognostic score for advanced Hodgkin’s disease. International Prognostic Factors Project on Advanced Hodgkin’s Disease. N Engl J Med. 1998 ; 339 (21) : 1506-14. (3iiiDiii)
2)Diehl V, et al. Standard and increased-dose BEACOPP chemotherapy compared with COPP-ABVD for advanced Hodgkin’s disease. N Engl J Med. 2003 ; 348 (24) : 2386-95. (1iiDiii/2Diii
3)Federico M, et al. ABVD compared with BEACOPP compared with CEC for the initial treatment of patients with advanced Hodgkin’s lymphoma : results from the HD2000 Gruppo Italiano per lo Studio dei Linfomi Trial. J Clin Oncol. 2009 ; 27 (5) : 805-11. (1iiDiii/2Diii
4)Johnson PW, et al. Comparison of ABVD and alternating or hybrid multidrug regimens for the treatment of advanced Hodgkin’s lymphoma : results of the United Kingdom Lymphoma Group LY09 Trial (ISRCTN97144519). J Clin Oncol. 2005 ; 23 (36) : 9208-18. (1iiDi/2Di
5)Mounier N, et al. ABVD (8 cycles) versus BEACOPP (4 escalated cycles ≥ 4 baseline) : final results in stage III-IV low-risk Hodgkin lymphoma (IPS 0-2) of the LYSA H34 randomized trial. Ann Oncol. 2014 ; 25 (8) : 1622-8 (1iiDi)
6)Carde P, et al. Eight Cycles of ABVD Versus Four Cycles of BEACOPPescalated Plus Four Cycles of BEACOPPbaseline in Stage III to IV, International Prognostic Score ≥ 3, High-Risk Hodgkin Lymphoma : First Results of the Phase III EORTC 20012 Intergroup Trial. J Clin Oncol. 2016 ; 34 (17) : 2028-36. (1iiDi)
7)Gordon LI, et al. Randomized phase III trial of ABVD versus Stanford V with or without radiation therapy in locally extensive and advanced-stage Hodgkin lymphoma : an intergroup study coordinated by the Eastern Cooperative Oncology Group (E2496). J Clin Oncol. 2013 ; 31 (6) : 684-91. (1iiDiii)

 

CQ9 進行期CHLにおいて初回治療中間でのPET検査(in-terim PET)は予後予測に有用か

推奨グレード
カテゴリー2A

Interim PETは進行期CHLの予後予測に有用である。

解説

 CHLにおいては治療中間でのPET所見(interim PET)が予後予測に有効であると報告されている。これらの研究の多くは初発進行期CHLで6~8コースの化学療法を施行した症例を対象としてinterim PETを評価している。ほとんどの試験ではinterim PET評価は2コース後に施行されている。Gallaminiらによる報告(260例:病期ⅡB~IVおよび予後不良因子を有するⅡA)では,ABVD療法(DXR,BLM,VBL,DTIC)で治療された場合,interim PETの陰性例と陽性例の2年の無増悪生存割合(PFS)はそれぞれ95%と12.8%と有意な差が検出された1)。CHLにおけるinterim PETの予後予測(進行および再発を評価)におけるメタ解析では,ランダム効果モデルで推定した特異度(negative predictive value:NPV)は極めて良好であった2)。Gallaminiらの研究ではinterim PETの判定はInternational Harmonization Project in Lymphomaの基準を使用した1, 3)が,近年は5 points scaleでの判定が推奨されている4, 5)。また,interim PETの結果を治療介入に用いる手法は臨床試験中である。Southwest Oncology Group(SWOG)のS0816試験はABVD療法2コース後interim PET陽性の予後不良症例に対し増量BEACOPP療法(BLM,ETP,DXR,CPA,VCR,PCZ,PSL)に治療変更することにより,予後を改善できる可能性があることを示した6)。同様の結果は,英国で行われたRAHTL試験のinterim PET陽性コホートでも示された7)。しかし,interim PETは臨床研究段階であり,現時点では日常診療においてはその結果を治療介入・変更の根拠とすることは推奨されない。

参考文献

1) Gallamini A, et al. Early interim 2-[18F] fluoro-2-deoxy-D-glucose positron emission tomography is prognostically superior to international prognostic score in advanced-stage Hodgkin’s lymphoma : a report from a joint Italian-Danish study. J Clin Oncol. 2007 ; 25 (24) : 3746-52. (3iiiDiii)
2) Terasawa T, et al. Fluorine-18-fluorodeoxyglucose positron emission tomography for interim response assessment of advanced-stage Hodgkin’s lymphoma and diffuse large B-cell lymphoma : a systematic review. J Clin Oncol. 2009 ; 27 (11) : 1906-14.
3) Juweid ME, et al. Use of positron emission tomography for response assessment of lymphoma : consensus of the Imaging Subcommittee of International Harmonization Project in Lymphoma. J Clin Oncol. 2007 ; 25 (5) : 571-8.
4) Meignan M, et al. Report on the Second International Workshop on interim positron emission tomography in lymphoma held in Menton, France, 8-9 April 2010. Leuk Lymphoma. 2010 ; 51 (12) : 2171-80.
5) Barrington SF, et al. Role of imaging in the staging and response assessment of lymphoma : consensus of the International Conference on Malignant Lymphomas Imaging Working Group. J Clin Oncol. 2014 ; 32 (27) : 3048-58.
6) Press OW, et al. US Intergroup Trial of Response-Adapted Therapy for Stage III to IV Hodgkin Lymphoma Using Early Interim Fluorodeoxyglucose-Positron Emission Tomography Imaging : Southwest Oncology Group S0816. J Clin Oncol. 2016 ; 34 (17) : 2020-7. (3iiiDiii)
7) Johnson P, et al. Adapted Treatment Guided by Interim PET-CT Scan in Advanced Hodgkin’s Lymphoma. N Engl J Med. 2016 ; 374 (25) : 2419-29. (3iiiDiii)

 

CQ10 進行期CHLで化学療法によりCRに至った症例において地固め療法としてのIFRTは推奨されるか

推奨グレード
カテゴリー4

進行期CHLで化学療法によりCR(CTまたはPET効果判定)が得られた症例に対するIFRTは推奨されない。

解説

 これまでのCHLに対する多くの臨床試験での治療効果判定はCTで行われている。化学療法後に効果判定をCTで行い完全奏効(CR),部分奏効(PR)が得られた症例における地固め療法としての照射の意義についての検討結果が報告されている。化学療法でCRを得た症例に全初発部位へのinvolved field radiotherapy(IFRT)追加の有用性に関してはEuropean Organization for Research and Treatment of Cancer(EORTC)から第Ⅲ相比較試験が報告されている。MOPP/ABV療法(HN2,VCR,PCZ,PSL/DXR,BLM,VBL)で治療された進行期CHL 739症例でCRとなった症例が地固め目的のIFRT(24Gy)施行群と観察群に割りつけられた。両群において5年無イベント生存割合(EFS)に有意差は認められなかった1)。この臨床試験の長期観察においても同様の結果が得られている2)。Southwest Oncology Group(SWOG)からも化学療法後のCR例をIFRT追加群(全初発部位)と観察群に割りつけた臨床試験結果が報告されている。この試験においてもIFRTの追加による無再発生存割合(RFS),全生存割合(OS)の改善は示されなかった3)。また,治療終了後の効果判定目的のPETのnegative predictive value(NPV)は良好であり4),効果判定CTで残存病変が認められる症例でPET陰性であれば,残存病変に対しIFRTを追加することは不要であると報告されている5)。進行期CHLにおいてCR(CTまたはPETでの診断)を示した症例に対する地固め療法目的のIFRTは推奨されない。
 German Hodgkin Study Group(GHSG)では第Ⅲ相試験にてBEACOPP療法(BLM,ETP,DXR,CPA,VCR,PCZ,PSL)(増量8コースまたは増量4コース+標準量4コース)後のCT評価の残存病変へのIFRTの省略により治療成功割合(FFTF)が悪化すると報告した(HD12)6)。このことから初回化学療法後のPR例に対するIFRT追加の有用性が示唆される。

参考文献

1) Aleman BM, et al. Involved-field radiotherapy for advanced Hodgkin’s lymphoma. N Engl J Med. 2003 ; 348 (24) : 2396-406. (1iiDii)
2) Aleman BM, et al. Involved-field radiotherapy for patients in partial remission after chemotherapy for advanced Hodgkin’s lymphoma. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2007 ; 67 (1) : 19-30. (2Di)
3) Fabian CJ, et al. Low-dose involved field radiation after chemotherapy in advanced Hodgkin disease. A Southwest Oncology Group randomized study. Ann Intern Med. 1994 ; 120 (11) : 903-12. (1iiDiii)
4) Kobe C, et al. Positron emission tomography has a high negative predictive value for progression or early relapse for patients with residual disease after first line chemotherapy in advanced-stage Hodgkin lymphoma. J Clin Oncol. 2008 ; 112 (10) : 3989-94. (2Diii)
5) Engert A, et al. Reduced-intensity chemotherapy and PET-guided radiotherapy in patients with advanced stage Hodgkin’s lymphoma (HD15 trial) : a randomised, open-label, phase 3 non-inferiority trial. Lancet 2012 ; 379 (9828) : 1791-9. (1iiDiii/2Diii)
6) Borchmann P, et al. Eight cycles of escalated-dose BEACOPP compared with four cycles of escalated-dose BEACOPP followed by four cycles of baseline-dose BEACOPP with or without radiotherapy in patients with advanced-stage Hodgkin’s lymphoma : final analysis of the HD12 trial of the German Hodgkin Study Group. J Clin Oncol. 2011 ; 29 (32) : 4234-42. (1iiDiii)

 

CQ11 若年者再発CHLに対して自家造血幹細胞移植併用大量化学療法は推奨されるか

推奨グレード
カテゴリー2A

若年者初回再発CHLでは,救援化学療法が奏効した場合,自家造血幹細胞移植併用大量化学療法は推奨される。

解説

 再発CHLに対する通常量の救援化学療法と自家造血幹細胞移植併用大量化学療法(high-dose chemotherapy with autologous hematopoietic stem cell transplantation:HDC/AHSCT)との比較に関する臨床試験結果が報告されている。German Hodgkin Study Group(GHSG)とEuropean Group for Blood and Marrow Transplantation(EBMT)の共同研究として,救援化学療法(Dexa-BEAM)を4コース施行する群とDexa-BEAM 2コース後にHDC/AHSCT(大量化学療法:BEAM[BCNU(国内未承認),ETP,AraC,MEL])を施行する群との比較試験が行われた1)。救援化学療法に感受性があると判断された症例を対象にした場合,治療成功割合(FFTF)はHDC/AHSCT群が有意に優れていた。全生存割合(OS)には有意差は認められなかった。ただし,第2再発以降の症例ではHDC/AHSCTの優位性は示されていない。また,British Lymphoma National Investigation(BLNI)での通常救援化学療法とHDC/AHSCTの比較試験は,40例のみの登録で早期終了となっているが,無イベント生存割合(EFS)と無増悪生存割合(PFS)においてHDC/AHSCTが良好な傾向を示した2)。Stanford大学からは後方視的解析でHDC/AHSCTの有用性(初回再発または初回非奏効例)を示した研究も報告されている3)。以上より65歳以下のCHLの初回再発で救援化学療法が奏効した場合,HDC/AHSCTは推奨される治療法である。ただし,初発時限局期で短縮化学療法を用いたcombined modality therapy(CMT)により治療された症例の再発においては,HDC/AHSCTの有用性のエビデンスはないため,適応は慎重に判断されなければならない。

参考文献

1) Schmitz N, et al. Aggressive conventional chemotherapy compared with high-dose chemotherapy with autologous haemopoietic stem-cell transplantation for relapsed chemosensitive Hodgkin’s disease : a randomised trial. Lancet. 2002 ; 359 (9323) : 2065-71. (1iiDiii)
2) Linch DC, et al. Dose intensification with autologous bone-marrow transplantation in relapsed and resistant Hodgkin’s disease : results of a BNLI randomised trial. Lancet. 1993 ; 341 (8852) : 1051-4. (3iiiDi)
3) Yuen AR, et al. Comparison between conventional salvage therapy and high-dose therapy with autografting for recurrent or refractory Hodgkin’s disease. Blood. 1997 ; 89 (3) : 814-22. (3iiiDi)

 

CQ12 再発・難治性CD30陽性CHLに対してブレンツキシマブ ベドチンは有効か

推奨グレード
カテゴリー2A

ブレンツキシマブ ベドチンは,再発・難治性CD30陽性CHLに有効である。

解説

 ブレンツキシマブ ベドチンは,CD30を標的とする抗体薬剤複合体であり,CD30陽性の再発・難治性CHL患者において第Ⅰ相臨床試験が行われた1)。自家造血幹細胞移植併用大量化学療法(high-dose chemotherapy with autologous hematopoietic stem cell transplantation:HDC/AHSCT)の治療歴を有する再発・難治性CD30陽性CHLを対象とした第Ⅱ相多施設共同試験では,全奏効割合(OR)は75%であり,34%の症例で完全奏効(CR)が得られた2)。5年の経過観察では全患者における無増悪生存期間(PFS)の中央値は9.3カ月であった3)。わが国では第Ⅰ/Ⅱ相試験が施行され,同等のORが得られた4)
 再発・難治性のCD30陽性CHLにおいては,HDC/AHSCTが不成功であった患者およびHDC/AHSCTの適応にかかわらず2レジメン以上の化学療法による前治療が不成功であった患者の治療選択肢として,ブレンツキシマブ ベドチンが考慮される。他の化学療法との併用のエビデンスは極めて少なく,単剤で使用される。

参考文献

1) Younes A, et al. Brentuximab Vedotin (SGN-35) for Relapsed CD30-Positive Lymphomas. N Engl J Med. 2010 ; 363 (19) : 1812-21. (3iiiDiv)
2) Younes A, et al. Results of a Pivotal Phase II Study of Brentuximab Vedotin for Patients With Relapsed or Refractory Hodgkin’s Lymphoma. J Clin Oncol 2012 ; 30 (18) : 2183-9. (3iiiDiv)
3) Chen R, et al. Five-year survival and durability results of brentuximab vedotin in patients with relapsed or refractory Hodgkin lymphoma. Blood. 2016 ; 128 (12) : 1562-6. (3iiiDiv)
4) Ogura M, et al. Phase I/II study of brentuximab vedotin in Japanese patients with relapsed or refractory CD30-positive Hodgkin’s lymphoma or systemic anaplastic large-cell lymphoma. Cancer Sci. 2014 ; 105 (7) : 840-6. (3iiiDiv)

 

CQ13 再発・難治性CHLに対して抗PD-1抗体は有効か

推奨グレード
カテゴリー2A

抗PD-1抗体は,再発・難治性CHLに有効である。

解説

 再発・難治性CHLに対して抗PD-1抗体(ニボルマブ,ペムブロリズマブ)の第Ⅰ相試験,第Ⅱ相試験が報告された。ニボルマブの第Ⅰ相試験は23例の再発・難治CHLを対象として行われた1)。78%の症例で大量化学療法,78%の症例でブレンツキシマブ ベドチンの既治療歴があるコホートであるが,奏効割合(OR)は完全奏効割合(CR)17%を含む87%であった。残りの13%の症例は奏効とは判定されなかったが,効果判定は全例病勢安定(SD)であり,病勢進行(PD)は認められなかった。また,大量化学療法,ブレンツキシマブ ベドチン後の再発・難治性CHL 80例を対象としたニボルマブ単剤治療の第Ⅱ相試験では,66.7%のORが得られている2)。Grade3以上の有害事象は,好中球減少,リパーゼ上昇,感染症などであったが,頻度は5%以下であった。また,ペムブロリズマブも同様な効果が報告されている。大量化学療法,ブレンツキシマブ ベドチン治療後に再発・再燃を認めたホジキンリンパ腫210例を対象とした臨床第Ⅱ相試験では,ORは69.0%,CRは22.4%であった3)
 抗PD-1抗体は,再発・難治性CHLに対して高い有効性を示した。安全性においては免疫関連の有害事象が特徴的であり,重篤なものも報告されているため注意を要する。

参考文献

1) Ansell SM, et al. PD-1 blockade with nivolumab in relapsed or refractory Hodgkin’s lymphoma. N Engl J Med. 2015 ; 372 (4) : 311-9. (3iiiDiv)
2) Younes A, et al. Nivolumab for classical Hodgkin’s lymphoma after failure of both autologous stem-cell transplantation and brentuximab vedotin : a multicentre, multicohort, single-arm phase 2 trial. Lancet Oncology. 2016 ; 17 (9) : 1283-94. (3iiiDiv)
3) Chen R, et al. Phase II Study of the Efficacy and Safety of Pembrolizumab for Relapsed/Refractory Classic Hodgkin Lymphoma. J Clin Oncol. 2017 ; 35 (19) : 2125-32. (3iiiDiv)

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