日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版補訂版

第Ⅱ章 リンパ腫

Ⅱ リンパ腫

1 濾胞性リンパ腫
(follicular lymphoma:FL)

総論

 濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma:FL)は,非ホジキンリンパ腫全体の10〜20%を占める,代表的なインドレント(低悪性度)B細胞リンパ腫である1)。日本でのFLの罹患数は,最近増加しつつある2)。FLは,病理組織学的にグレード1,2,3A,3Bに分類されるが,グレード3Bは,通常,アグレッシブ(中・高悪性度)リンパ腫として治療される。ほとんどの患者がリンパ節(LN)腫大をきたして診断に至るが,診断時70~85%の患者が臨床病期Ⅲ・Ⅳの進行期であり,骨髄浸潤を高率に認める。最近,消化管あるいは皮膚に限局する節外性FLが注目されているが,本ガイドラインでは節性FLを主な対象とする。FLでは,一般的に経過が緩徐であり,かつ当初は化学療法感受性が良好である。しかし,FLの患者では再発を繰り返すのが一般的で,その傾向は進行期において顕著である。リツキシマブ(R)導入後の解析では,5年間で10%程度の患者がアグレッシブリンパ腫への組織学的形質転換(histologic transformation)をきたす。R導入以前のデータではFLの患者の50%生存期間は7~10年とされていたが,最近の報告では診断時40歳以下の患者においては50%生存期間が20年を超えるとされている3)
 FLにおける病期分類はAnn Arbor分類が用いられる。FLに特化した予後予測モデルとして,濾胞性リンパ腫国際予後指標(Follicular Lymphoma International Prognostic Index:FLIPI)4)とFLIPI2がある5)(悪性リンパ腫・総論参照)。未治療の進行期FLの患者の一部では,診断後ただちに治療を開始せず,FLによる臓器障害や症状をきたすまで無治療で経過観察を行う,watchful waitingがしばしば選択される。国内外の臨床試験で,個々の患者での治療開始(あるいはwatchful waitingが妥当と判断される)規準としては,FLIPIやFLIPI2よりも,GELF(Groupe d’Etude des Lymphomes Folliculaires)6-8)やBNLI(British National Lymphoma Investigation)9)による腫瘍量の評価が用いられることが多い。一般の診療でもこれらの規準が参考となる。

1.GELF(Groupe d’Etude des Lymphomes Folliculaires)高腫瘍量規準6-8)
 以下のいずれかに該当する場合は高腫瘍量と判断する。
(1)節性病変,節外病変にかかわらず最大長径≧7 cm
(2)長径3 cm以上の腫大リンパ節領域が3つ以上
(3)全身症状(B症状)
(4)下縁が臍線より下の脾腫(CT上≧16 cm)
(5)胸水または腹水貯留(胸水・腹水中のリンパ腫細胞浸潤の有無にかかわらず)
(6)局所(硬膜,尿管,眼窩,胃腸などの)の圧迫症状
(7)白血化(リンパ腫細胞>5,000/μL)
(8)骨髄機能障害(Hb<10 g/dL,好中球<1,000/μL,血小板<100,000/μL)
 ・LDH,β2ミクログロブリン高値が加えられることもある6)

2.BNLI(British National Lymphoma Investigation)の治療開始規準9)
(1)B症状または高度の搔痒症
(2)急激な全身への病勢進行
(3)骨髄機能障害(Hb≦10 g/dL,白血球<3,000/μL,または血小板<100,000/μL)
(4)生命を脅かす臓器浸潤
(5)腎浸潤
(6)骨病変
(7)肝浸潤

参考文献

1)Lymphoma Study Group of Japanese Pathologists, The World Health Organization classification of malignant lymphomas in Japan : Incidence of recently recognized entities. Pathol Int. 2000 ; 50(9): 696-702.
2)Chihara D, et al. Differences in incidence and trends of haematological malignancies in Japan and the United States. Br J Haematol. 2014 ; 164(4): 536-45.
3)Conconi A, et al. Life expectancy of young adults with follicular lymphoma. Ann Oncol 2015 ; 26(11): 2317-22.(3iiA)
4)Solal-Céligny P, et al. Follicular lymphoma international prognostic index. Blood. 2004 ; 104(5): 1258-65.(3iA)
5)Federico M, et al. Follicular lymphoma international prognostic index 2 : a new prognostic index for follicular lymphoma developed by the international follicular lymphoma prognostic factor project. J Clin Oncol. 2009 ; 27(27): 4555-62.(3iDiii)
6)Brice P, et al. Comparison in low-tumor-burden follicular lymphomas between an initial no-treatment policy, prednimustine, or interferon alfa : a randomized study from the Groupe d’Etude des Lymphomes Folliculaires. Groupe d’Etude des Lymphomes de l’Adulte. J Clin Oncol. 1997 ; 15(3): 1110-7.(1iiA/1iiDiii
7)Solal-Céligny P, et al. Doxorubicin-containing regimen with or without interferon alfa-2b for advanced follicular lymphomas : final analysis of survival and toxicity in the Groupe d’Etude des Lymphomes Folliculaires 86 Trial. J Clin Oncol. 1998 ; 16(7): 2332-8.(1iiDi/1iiA
8)Sebban C, et al. Standard chemotherapy with interferon compared with CHOP followed by high-dose therapy with autologous stem cell transplantation in untreated patients with advanced follicular lymphoma : the GELF-94 randomized study from the Groupe d’Etude des Lymphomes de l’Adulte(GELA).Blood. 2006 ; 108(8): 2540-44.(1iiDi)
9)Ardeshna KM, et al. Long-term effect of a watch and wait policy versus immediate systemic treatment for asymptomatic advanced-stage non-Hodgkin lymphoma : a randomised controlled trial. Lancet. 2003 ; 362(9383): 516-22.(1iiA)

 

アルゴリズム

RT: radiotherapy(放射線療法)
R: rituximab(リツキシマブ)
RIT: radioimmunotherapy(RI標識抗体療法)
SCT: stem cell transplantation(造血幹細胞移植)
抗CD20抗体:リツキシマブまたはオビヌツズマブ


 初発進行期高腫瘍量FLでは,抗CD20抗体(リツキシマブまたはオビヌツズマブ)併用化学療法を行うことが推奨され,ドキソルビシン(DXR)を含まない併用化学療法[R-CVP(R,CPA,VCR,PSL)療法,ベンダムスチン・R(BR)療法,オビヌツズマブ-CVP療法,オビヌツズマブ-B療法など],DXRを含む併用化学療法[R-CHOP(R,CPA,DXR,VCR,PSL)療法,オビヌツズマブ-CHOP療法など]などが主な治療選択肢となる(CQ1)。しかし,今のところ抗CD20抗体と併用する化学療法の選択についてのコンセンサスはない(CQ1)。高腫瘍量の未治療進行期FLでは,抗CD20抗体併用化学療法により奏効が得られた場合,抗CD20抗体維持療法が選択肢となる(CQ4)。リツキシマブ維持療法により,経過観察の場合と比較して無増悪生存期間が延長することが示されている。
 一方,初発進行期低腫瘍量FLの患者では,診断後直ちに治療を開始せず,病勢の進行がみられたり,全身症状,臓器圧迫症状,血球減少などが出現した時点で治療を開始する無治療経過観察(watchful waiting)や1),R単剤療法も選択肢となる(CQ2)。
 限局期FL(Ⅰ期ないし隣接するⅡ期)では,放射線治療により少なくとも一部の患者で治癒が期待できるとされる2)。このため放射線療法が可能な限局期FLでは,24〜30 Gyの放射線治療が推奨される(CQ3)。しかし,Ⅰ期の場合でも放射線治療によるリスクがベネフィットを上回ると考えられる場合には放射線治療を行わず,進行期FLと同様の治療も選択肢の一つである(CQ3)。
 進行期FLの患者では,初回治療により完全奏効が得られた場合でも,多くの場合,いずれは再発をきたし,何らかの治療が必要となるため,病変の広がりや,前治療の内容や奏効期間,患者の希望を踏まえて治療法を選択する(CQ5)。組織学的形質転換をきたした患者では,アグレッシブリンパ腫と同様の多剤併用化学療法を行うことが推奨される(CQ7)。また,組織学的形質転換の有無に関わらず,一部の再発・難治性FL患者では,化学療法後に地固め療法として造血幹細胞移植が行われる(CQ6)。

参考文献

1)Horning SJ, et al. The natural history of initially untreated low-grade non-Hodgkin’s lymphomas. N Engl J Med. 1984 ; 311(23): 1471-5.(3iA)
2)Mac Manus MP, et al. Is radiotherapy curative for stageⅠ and Ⅱ low-grade follicular lymphoma? Results of a long-term follow-up study of patients treated at Stanford University. J Clin Oncol. 1996 ; 14(4): 1282-90.(3iA)

 

CQ1 初発進行期高腫瘍量のFLに対する治療は何が勧められるか

推奨グレード
カテゴリー1

抗CD20抗体(リツキシマブまたはオビヌツズマブ)併用化学療法が推奨される。

解説

 初発進行期高腫瘍量FLでは,リツキシマブ(R)併用化学療法により,化学療法単独と比べて全生存期間(OS)の延長が得られることが複数のランダム化比較試験とそのメタ解析により示されている1-3)。具体的な化学療法のレジメンとしては,R-CVP療法(R,CPA,VCR,PSL)2, 4),R-CHOP療法(R,CPA,DXR,VCR,PSL)1, 4)や,BR療法(ベンダムスチン,R)5)などが代表的なものとして挙げられる。2018年には,オビヌツズマブ併用化学療法としてオビヌツズマブ-CVP療法,オビヌツズマブ-CHOP療法,オビヌツズマブ-B療法も承認された。
 R-CHOP療法,R-CVP療法,R-FM療法(R,FLU,MIT)の三者を比較したランダム化比較試験において,R-CHOP療法とR-CVP療法を比較すると,R-CHOP療法は治療成功期間の点で優れていたが,血液毒性などの有害事象が多く,両者の3年全生存割合(OS)には差がみられなかった4)。R-CHOP療法とBR療法を比較したランダム化比較試験では,BR療法の無増悪生存期間(PFS)が優れていたが,OSは同等であった5)。有害事象では,R-CHOP療法は好中球減少や末梢神経障害,感染症,脱毛などが主であり,BR療法では消化器毒性や皮膚障害,リンパ球減少症,感染症などが主であり,有害事象のプロファイルが異なる5)

参考文献

1)Hiddemann W, et al. Frontline therapy with rituximab added to the combination of cyclophosphamide, doxorubicin, vincristine, and prednisone(CHOP)significantly improves the outcome for patients with advanced-stage follicular lymphoma compared with therapy with CHOP alone : results of a prospective randomized study of the German Low-Grade Lymphoma Study Group. Blood. 2005 ; 106(12): 3725-32.(1iiA)
2)Marcus R, et al. Phase Ⅲ study of R-CVP compared with cyclophosphamide, vincristine, and prednisone alone in patients with previously untreated advanced follicular lymphoma. J Clin Oncol. 2008 ; 26(28): 4579-86.(1iiA/1iiDiii
3)Schulz H, et al. Immunochemotherapy with rituximab and overall survival in patients with indolent or mantle cell lymphoma : a systematic review and meta-analysis. J Natl Cancer Inst. 2007 ; 99(9): 706-14.(1iiA)
4)Federico M, et al. R-CVP versus R-CHOP versus R-FM for the initial treatment of patients with advanced-stage follicular lymphoma : results of the FOLL05 trial conducted by the Fondazione Italiana Linfomi. J Clin Oncol. 2013 ; 31(12): 1506-13.(1iiDi)
5)Rummel MJ, et al. Bendamustine plus rituximab versus CHOP plus rituximab as first-line treatment for patients with indolent and mantle-cell lymphomas : an open-label, multicentre, randomised, phase 3 non-inferiority trial. Lancet. 2013 ; 381(9873): 1203-10.(1iiDiii)
6)Marcus R, et al. Obinutuzumab for the First-Line Treatment of Follicular Lymphoma. N Engl J Med. 2017 ; 377(14): 1331-44.(1iiDiii)

 

CQ2 初発進行期低腫瘍量のFLに対する治療は何が勧められるか

推奨グレード
カテゴリー1

経過観察(watchful waiting)を選択肢としてもよい。

推奨グレード
カテゴリー2A

リツキシマブ単剤療法を選択肢としてもよい。

解説

 進行期FLでは一旦治療が奏効しても再発を繰り返し,治癒は困難である。無症候性かつ低腫瘍量の進行期FL患者では,診断後ただちに治療を開始しなくても,数年以上にわたって無症状の状態が維持できることが知られている。また,一部の患者では自然経過で一時的に腫瘍縮小がみられる。初発低腫瘍量FL患者を対象としたランダム化比較試験のwatchful waiting群では,1年時点の全奏効(OR)割合が10%で,3年時点で殺細胞性抗腫瘍薬や放射線療法の介入を必要としない患者割合が46%と高かった1)。このため,診断時に無症候性かつ低腫瘍量の進行期FL患者では,watchful waiting(注意深い観察のもとに治療開始を延期すること)を行うことを選択肢の一つとしてよい。低腫瘍量の進行期FL患者に対するwatchful waitingが,診断後ただちに治療を開始する場合と比較して全生存期間(OS)の点で不利ではないことが,複数のランダム化比較試験で示されている1-3)
 未治療進行期FLの患者を対象としたリツキシマブ(R)単剤療法の臨床試験は,主に低腫瘍量の患者を対象として行われた4)。Ⅱ-Ⅳ期低腫瘍量FLを対象として英国で行われたランダム化比較試験1)では,R導入+R維持療法群はwatchful waiting群に比較して次治療(殺細胞性抗腫瘍薬または放射線療法)を開始するまでの期間が延長した。しかし,OSの改善は認められていないことから,低腫瘍量FL患者においてwatchful waitingに対するR単剤早期介入の優位性は未確定である。

参考文献

1)Ardeshna KM, et al. Rituximab versus a watch-and-wait approach in patients with advanced-stage, as-ymptomatic, non-bulky follicular lymphoma : an open-label randomised phase 3 trial. Lancet Oncol. 2014 ; 15 (4) : 424-35. (1iiDi)
2)Ardeshna KM, et al. Long-term effect of a watch and wait policy versus immediate systemic treatment for asymptomatic advanced-stage non-Hodgkin lymphoma : a randomised controlled trial. Lancet. 2003 ; 362 (9383) : 516-22. (1iiA)
3)Brice P, et al. Comparison in low-tumor-burden follicular lymphomas between an initial no-treatment policy, prednimustine, or interferon alfa : a randomized study from the Groupe d’Etude des Lymphomes Folliculaires. Groupe d’Etude des Lymphomes de l’Adulte. J Clin Oncol. 1997 ; 15 (3) : 1110-7. (1iiA/ 1iiDiii
4)Colombat P, et al. Rituximab induction immunotherapy for first-line low-tumor-burden follicular lymphoma : survival analyses with 7-year follow-up. Ann Oncol. 2012 ; 23 (9) : 2380-5. (3iiiDiv)

 

CQ3 初発限局期FLに対する治療は何が勧められるか

推奨グレード
カテゴリー2A

Ⅰ期または隣接するⅡ期の場合,病巣部放射線治療が推奨される。

推奨グレード
カテゴリー2B

放射線治療のリスクがベネフィットを上回ると考えられる場合には,進行期FLに準じた治療が推奨される。

解説

 未治療限局期(Ⅰ期または隣接するⅡ期)FLで,巨大病変がない場合,病巣部放射線療法が推奨される1)。しかし,限局期FLは稀であり,放射線療法を行う際には,PET-CTや骨髄生検によって進行期であることを除外する必要がある。FLを含むB細胞性インドレントリンパ腫に対する放射線療法では,局所制御に必要な照射線量は24~30Gyで十分であるとの国際的な放射線腫瘍医のコンセンサスがある2)
 限局期インドレントリンパ腫において,放射線療法と多剤併用化学療法とのcombined modality therapyがhistorical controlの放射線療法単独よりも成績が良いとの報告もあるが3),限局期低悪性度リンパ腫を対象とした放射線療法単独と化学療法併用の比較では,化学療法の併用による予後の改善は示されなかった4)
 限局期FLに対する放射線療法の有用性については,ランダム化比較試験に基づく強い根拠はない。前方視的観察研究に登録されたⅠ期のFLの後方視的研究で,無治療経過観察や化学療法単独治療の患者の無増悪生存期間(PFS)は放射線療法が行われた患者と同様に良好であった5)。限局期FLで放射線療法を行わないことを支持する臨床試験の報告はないが,放射線療法のリスクがベネフィットを上回ると考えられる場合には放射線療法を行わず,進行期FLに準じた治療が推奨される。

参考文献

1)Pugh TJ, et al. Improved survival in patients with early stage low-grade follicular lymphoma treated with radiation : a Surveillance, Epidemiology, and End Results database analysis. Cancer. 2010 ; 116 (16) : 3843-51. (2A)
2)Illidge T, et al. Modern radiation therapy for nodal non-Hodgkin lymphoma-target definition and dose guidelines from the International Lymphoma Radiation Oncology Group. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2014 ; 89 (1) : 49-58. (ガイドライン)
3)Seymour JF, et al. Long-term follow-up of a prospective study of combined modality therapy for stage I-II indolent non-Hodgkin’s lymphoma. J Clin Oncol. 2003 ; 21 (11) : 2115-22. (3iiiA)
4)Kelsey SM, et al. A British National Lymphoma Investigation randomised trial of single agent chlorambucil plus radiotherapy versus radiotherapy alone in low grade, localised non-Hodgkins lymphoma. Med Oncol. 1994 ; 11 (1) : 19-25. (1iiA)
5)Friedberg JW, et al. Effectiveness of first-line management strategies for stage I follicular lymphoma : analysis of the National LymphoCare Study. J Clin Oncol. 2012 ; 30 (27) : 3368-75. (3iiiDiii)

 

CQ4 初発進行期のFLに対してリツキシマブ維持療法を実施すべきか

推奨グレード
カテゴリー1

リツキシマブ併用化学療法により奏効がえられた場合,リツキシマブ維持療法は無増悪生存期間の延長を期待できる治療として推奨される。ただし初発進行期低腫瘍量では,リツキシマブ維持療法は推奨されない。

解説

 初発進行期・高腫瘍量FLで,リツキシマブ(R)併用化学療法[主にR-CHOP(R,CPA,DXR,VCR,PSL)療法あるいはR-CVP(R,CPA,VCR,PSL)療法]により奏効が得られた患者で,R維持療法と経過観察を比較したランダム化第Ⅲ相試験では,2年間のR維持療法を行った群において無増悪生存割合(PFS)の改善がみられた1)。しかし全生存割合(OS)の改善は示されていない。従って,リツキシマブ維持療法はPFS改善を期待して行う治療として推奨される。なお,初回治療としてベンダムスチン・R(BR)療法を行った場合のR維持療法の有用性については不明である。
 一方,初発進行期・低腫瘍量FLにおいてR併用化学療法後のR維持療法の意義を評価した臨床試験の報告はない。未治療の進行期・低腫瘍量FLを対象として,R単剤療法後にR維持療法と再燃時のR再治療を比較した臨床試験では,両者で治療成功期間(Rの効果がみられる期間)には差がみられなかった2)。このため,初発進行期・低腫瘍量の患者ではR維持療法は推奨されない。

参考文献

1)Salles G, et al. Rituximab maintenance for 2 years in patients with high tumour burden follicular lymphoma responding to rituximab plus chemotherapy(PRIMA): a phase 3, randomised controlled trial. Lancet. 2011 ; 377(9759): 42-51.(1iiDiii)
2)Kahl BS, et al. Rituximab extended schedule or re-treatment trial for low-tumor burden follicular lymphoma : eastern cooperative oncology group protocol e4402. J Clin Oncol. 2014 ; 32(28): 3096-102.(1iiDi)

 

CQ5 FLの初回再発時の治療として何が勧められるか

推奨グレード
カテゴリー2B

さまざまな治療選択肢があるが,その優劣は明らかでない。

解説

 FL初回再発時の治療は,初回治療の内容と再発までの期間,病変の広がり,組織学的形質転換の有無,患者の希望などを考慮して選択する。リツキシマブ(R)を含む治療に対して部分奏効(PR)未満の場合や,Rを含む治療によりPR以上が得られた後,半年以内に再燃した場合にはR抵抗性と判断する1)。R抵抗性でない場合にはR単剤療法またはR併用化学療法が推奨される。R抵抗性の患者を対象に,ベンダムスチン単剤とオビヌツズマブ併用ベンダムスチン療法(奏効例ではオビヌツズマブ維持療法を実施)を比較したランダム化第Ⅲ相試験では,無増悪生存割合および全生存割合の改善がみられた2)。初回再発時の治療としての治療選択肢には以下のようなものが挙げられるが,その優劣は明らかでない。また,再発時においても無症状かつ低腫瘍量であれば,無治療経過観察(watchful waiting)がしばしば行われるが,その意義をみた臨床研究は報告されていない。
①無治療経過観察(watchful waiting)
②R単剤療法3)
③ベンダムスチン単剤1)あるいはRまたはオビヌツズマブ+ベンダムスチン2, 4)
④フルダラビン(FLU)単剤あるいはFLUを含む多剤併用療法5, 6)
⑤R-CHOP療法(R,CPA,DXR,VCR,PSL)6)またはオビヌツズマブ-CHOP療法(先行治療がアントラサイクリンを含まないレジメンの場合)
⑥多剤併用化学療法
⑦放射線療法
⑧RI標識抗体療法(イブリツモマブ チウキセタン)7, 8)

参考文献

1)Friedberg JW, et al. Bendamustine in patients with rituximab-refractory indolent and transformed non- Hodgkin’s lymphoma : results from a phase Ⅱ multicenter, single-agent study. J Clin Oncol. 2008 ; 26 (2) : 204-10. (3iiiDiv)
2)Cheson BD, et al. Overall Survival Benefit in Patients With Rituximab-Refractory Indolent Non-Hodgkin Lymphoma Who Received Obinutuzumab Plus Bendamustine Induction and Obinutuzumab Maintenance in the GADOLIN Study. J Clin Oncol. 2018 ; 36 (22) : 2259-66. (1iiA)
3)McLaughlin P, et al. Rituximab chimeric anti-CD20 monoclonal antibody therapy for relapsed indolent lymphoma : half of patients respond to a four-dose treatment program. J Clin Oncol. 1998 ; 16 (8) : 2825-33. (3iiiDiv)
4)Rummel M, et al. Bendamustine plus rituximab versus fludarabine plus rituximab for patients with relapsed indolent and mantle-cell lymphomas : a multicentre, randomised, open-label, non-inferiority phase 3 trial. Lancet Oncol. 2016 ; 17 (1) : 57-66. (1iiDiii)
5)Forstpointner R, et al. The addition of rituximab to a combination of fludarabine, cyclophosphamide, mitoxantrone (FCM) signifi cantly increases the response rate and prolongs survival as compared with FCM alone in patients with relapsed and refractory follicular and mantle cell lymphomas : results of a prospective randomized study of the German Low-Grade Lymphoma Study Group. Blood. 2004 ; 104 (10) : 3064-71. (1iiDiv/1iiDiii
6)van Oers MH, et al. Rituximab maintenance improves clinical outcome of relapsed/resistant follicular non-Hodgkin lymphoma in patients both with and without rituximab during induction : results of a prospective randomized phase 3 intergroup trial. Blood. 2006 ; 108 (10) : 3295-301. (1iiDiv)
7)Witzig TE, et al. Randomized controlled trial of yttrium-90-labeled ibritumomab tiuxetan radioimmunotherapy versus rituximab immunotherapy for patients with relapsed or refractory low-grade, follicular, or transformed B-cell non-Hodgkin’s lymphoma. J Clin Oncol. 2002 ; 20 (10) : 2453-63. (1iiDiv)
8)Witzig TE, et al. Treatment with ibritumomab tiuxetan radioimmunotherapy in patients with rituximab-refractory follicular non-Hodgkin’s lymphoma. J Clin Oncol. 2002 ; 20 (15) : 3262-9. (2Div)

 

CQ6 再発FLに対して自家移植併用大量化学療法,同種造血幹細胞移植は勧められるか

推奨グレード
カテゴリー2A

高リスク(初回抗CD20抗体併用化学療法の奏効期間が短い,組織学的形質転換など)の若年者に対して自家移植併用大量化学療法は考慮されるべき治療選択肢である。

推奨グレード
カテゴリー3

同種造血幹細胞移植は,一部の若年者(高リスク例や自家移植後再発例など)に対して治療選択肢となり得る。

解説

 自家移植併用大量化学療法は,とくに初回リツキシマブ(R)併用化学療法の奏効期間が短いなどの高リスク例において考慮されるべき治療選択肢である1-3)。治療選択肢の増加につれてその意義は見直されつつあるが,組織学的形質転換例では有用性が示唆されている4, 5)
 自家移植併用大量化学療法と同種造血幹細胞移植では,後者のほうが治療関連死亡(TRM)は高いが再発が少ない。このため両治療間で生存においては差がない6)。骨髄非破壊的(Reduced-in-tensity conditioning:RIC)造血幹細胞移植が導入され,TRMの軽減が図られている。Center for International Blood and Marrow Transplant Research(CIBMTR)のレジストリー・データの多変量解析にてRICでは骨髄破壊的前処置を用いた場合よりも再発が多い可能性が報告されたが,予後に差は認められず,背景因子の群間差もあり両者間の優劣の判断は困難である7)。European Group for Blood and Marrow Transplantation(EBMT)のレジストリー・データから,再発FLに対する初回移植として自家移植とRICを用いたHLA一致血縁・非血縁者間の同種移植を比較すると,無再発死亡は同種移植群で高く,再発は自家移植群で高いことが報告された6)。同種移植は若年者で,早期再発の高リスク例や自家移植後再発例の治療選択肢のひとつと考えられている。

参考文献

1)Montoto S, et al. Indications for hematopoietic stem cell transplantation in patients with follicular lymphoma : a consensus project of the EBMT-Lymphoma Working Party. Haematologica. 2013 ; 98 (7) : 1014-21.
2)Schouten HC, et al. High-dose therapy improves progression-free survival and survival in relapsed follicular non-Hodgkin’s lymphoma : results from the randomized European CUP trial. J Clin Oncol. 2003 ; 21 (21) : 3918-27. (1iiDiii)
3)Sebban C, et al. Impact of rituximab and/or high-dose therapy with autotransplant at time of relapse in patients with follicular lymphoma : a GELA study. J Clin Oncol. 2008 ; 26 (21) : 3614-20. (2Di)
4)Kuruvilla J, et al. Salvage chemotherapy and autologous stem cell transplantation for transformed indolent lymphoma : a subset analysis of NCIC CTG LY12. Blood. 2015 ; 126 (6) : 733-8. (3iiiDi)
5)Sarkozy C, et al. Risk Factors and Outcomes for Patients With Follicular Lymphoma Who Had Histologic Transformation After Response to First-Line Immunochemotherapy in the PRIMA Trial. J Clin Oncol. 2016 ; 34 (22) : 2575-82. (1iiDiii/3iiiA
6)Robinson SP, et al. The outcome of reduced intensity allogeneic stem cell transplantation and autologous stem cell transplantation when performed as a first transplant strategy in relapsed follicular lymphoma : an analysis from the Lymphoma Working Party of the EBMT. Bone Marrow Transplant. 2013 ; 48 (11) : 1409-14. (3iDii)
7)Hari P, et al. Allogeneic transplants in follicular lymphoma : higher risk of disease progression after reduced- intensity compared to myeloablative conditioning. Biol Blood Marrow Transplant. 2008 ; 14 (2) : 236-45. (3iB)

 

CQ7 組織学的形質転換をきたしたFLに対する治療として何が勧められるか

推奨グレード
カテゴリー2B

未治療例もしくはアントラサイクリン治療歴がない患者が組織学的形質転換をきたした場合,R-CHOP療法が推奨される。

推奨グレード
カテゴリー2B

R-CHOP療法後に組織学的形質転換をきたした患者では,化学療法により奏効がえられた場合,若年者では自家移植併用大量化学療法を実施することが推奨される。

解説

 FLにおける組織学的形質転換は年間2%とされ,組織学的形質転換後の予後は不良である1-3)。そのうち,特にR-CHOP(R,CPA,DXR,VCR,PSL)療法後の組織学的形質転換をきたした場合の予後は2年未満と報告されている。しかし,形質転換時に初回R-CHOP療法を実施した患者では,R-CHOP療法後に形質転換したFLと比較して予後良好であり,初発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対するR-CHOP療法と同等の全生存期間(OS)が期待できる2)
 形質転換をきたしたFLにおいて,サルベージ化学療法が奏効した場合に地固め療法として自家移植併用大量化学療法を施行した場合,再発DLBCLと同等の予後が示されている4)。さらに,この群に対しても自家移植併用大量化学療法がOSの延長に寄与することが示唆されている5)

参考文献

1)Ban-Hoefen M, et al. Transformed non-Hodgkin lymphoma in the rituximab era : analysis of the NCCN outcomes database. Br J Haematol. 2013 ; 163 (4) : 487-95. (3iiiA)
2)Link BK, et al. Rates and outcomes of follicular lymphoma transformation in the immunochemotherapy era : a report from the University of Iowa/MayoClinic Specialized Program of Research Excellence Molecular Epidemiology Resource. J Clin Oncol. 2013 ; 31 (26) : 3272-8. (3iiiDiv/3iiiA
3)Wagner-Johnston ND, et al. Outcomes of transformed follicular lymphoma in the modern era : a report from the National LymphoCare Study (NLCS). Blood. 2015 ; 126 (7) : 851-7. (3iiiDiv/3iiiA
4)Kuruvilla J, et al. Salvage chemotherapy and autologous stem cell transplantation for transformed indolent lymphoma : a subset analysis of NCIC CTG LY12. Blood. 2015 ; 126 (6) : 733-8. (3iiiDi)
5)Sarkozy C, et al. Risk Factors and Outcomes for Patients With Follicular Lymphoma Who Had Histologic Transformation After Response to First-Line Immunochemotherapy in the PRIMA Trial. J Clin Oncol. 2016 ; 34 (22) : 2575-82. (1iiDiii/3iiiA

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