造血器腫瘍診療ガイドライン

Ⅰ章 白血病

Ⅰ 白血病

6.骨髄異形成症候群 (myelodysplastic syndromes:MDS)
総論

 骨髄異形成症候群(Myelodysplastic syndromes:MDS)は造血細胞の異常な増殖とアポトーシスによって特徴付けられる単クローン性の疾患で,未熟な造血細胞に生じた異常が原因であると考えられている1)。1982 年のFrench-American-British (FAB)分類2)によって疾患概念が明らかとなり,現在はWHO 分類(2001)3)とWHO 分類(2008)4)を用いて取り扱われている。しかし,FAB 分類による取り扱いも併用されているのが現状である。単一あるいは複数系統の血球減少,形態学的異形成,骨髄における無効造血,急性白血病転化のリスクを特徴としているが,単一疾患ではなく複数の疾患からなる症候群の集まり(Syndromes)と捉えられている。したがって,現在の病型分類のみでは臨床的な対応を決定するには十分ではないと考えられる。MDS の半数以上に染色体異常があり,未分化な造血細胞に生じた遺伝子異常が発症に関与すると考えられている。さらに,染色体検査レベルでは確認できない新たな遺伝子異常が次々に同定されてはいるが,その全貌は未だ明らかになっていない。
 一般に診断はWHO 分類(2008)に基づき,血球減少,末梢血と骨髄の芽球割合,造血細胞の異形成,染色体異常によってなされ,一部ではFAB 分類による診断も参考とされている。MDSは種々の血液疾患と境界を接しており,経過観察や他疾患の除外とともに,現在も診断の重要な部分は形態学的な判断に負うところが大きい1)。確定診断が得られた後は,診断に用いられた血液所見,骨髄所見,染色体異常などによって予後予測が行われ,治療方針が決定されていく。予後は,血球減少に関連した事象(感染症,出血など)と白血病化によって大きく決定されるが,本疾患は高齢者に多いことより,合併症など患者背景も予後に大きな影響を持っている。
 現在でも根治療法は同種造血幹細胞移植のみであるが,患者集団の年齢などから同種移植の恩恵にあずかる症例は一部に限られている。一方,最近,MDS に対する新薬が開発され治療にも新たな展開がみられている。


[参考文献]

1) 小澤敬也編集 特発性造血障害疾患の診療の参照ガイド 平成22 年度改訂版
2) Bennett JM, et al. Proposals for the classifi cation of the myelodysplastic syndromes. Br J Haematol. 1982 ;51( 2) : 189-99.
3) Jaff e WS, et al, eds. World Health Organization Classifi cation of Tumours. Pathology and genetics, Tumor of Haematopoietic and lymphoid Tissues. Lyon, IARC ; 2001.
4) Swerdlow SH, et al. eds. WHO Classifi cation of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. Lyon,IARC ; 2008.


アルゴリズム

【第1.2版修正】

 MDS は多様な病態を有する疾患の集合体であり,治療方針を決定する上では診断と病型分類のみでは不十分である。そのため,主に臨床的な因子を用いて予後予測がなされる(CQ1)。複数の予後予測スコアリングシステムが提唱されており,それぞれに特徴がみられるが,臨床的な対応は低リスクと高リスクに分けて考慮されることが多い。頻用されるのはInternational prognositic scoring system(IPSS)におけるLow, Intermediate(Int)-1 を低リスク,Int-2, High を高リスクとするものである(CQ1)。
 低リスク症例においては血球減少に対する対応,その改善を治療の第一目標とし,高リスク例では白血病転化リスクが高いことより,より積極的な治療方針がとられる。
 血球減少に対しての基本的な支持療法は輸血であるが,赤血球輸血に伴う輸血後鉄過剰症はMDS の予後に関連している可能性がある。そのため,MDS の輸血後鉄過剰症に対しては適切な鉄キレート療法が治療の選択肢として考えられる(CQ2)。低リスク例の血球減少に対しては免疫抑制療法(CQ3,国内適応外),サイトカイン療法(CQ4,国内適応外)【第1.2版修正】サイトカイン療法(CQ4),また,5 番染色体長腕の欠損を伴う5q- 症候群でみられる血球減少へのレナリドミド(LEN)(CQ5),一部の低リスク例に対するアザシチジン(AZA)投与(CQ6)などが行われる。それぞれの治療によって一定の血球回復がみられるが,この群についてはこうした治療によって生存期間の延長がみられるのか,明らかなエビデンスはない。
 高リスク症例は予後が悪いため,積極的な対応がなされる。年齢や患者背景,ドナーなどの条件が許せば同種造血幹細胞移植(CQ7)の積極的な適応が考慮される。これまでのところ治癒が得られる治療法は同種造血幹細胞移植のみであるが,移植がなされない例に対してはAZA が選択される(CQ8)。AZA は前方視的試験によって高リスク症例の予後を改善することが示されている。5 番染色体長腕の欠損を伴った例ではLEN も投与可能である(CQ9)。一部の高リスク例に対しては白血病治療に準じた抗腫瘍薬投与も考慮される(CQ10)。


CQ 1MDS の予後予測法,リスク分類として勧められるのは何か
推奨グレード
カテゴリー2A

国際予後予測スコアリングシステム(International prognostic scoring system:IPSS)やWHO 分類に基づく予後予測スコアリ ングシステム(WHO classification-based prognostic scoring system:WPSS)のように複数の因子を組み合わせて予後を予測するスコアリングシステムが勧められる。特に,IPSS は頻用されている。

[解 説]

 MDS は多様な疾患単位の集合体であり,単なる病型分類では十分な予後予測はできないと考えられている。造血細胞の形態的な特徴,特に芽球割合,血球減少の程度や減少している系統数,染色体所見は予後と関連する。そこで,それらをスコア化し,その合計点数でMDS の予後を予測する方法が開発された。IPSS と呼ばれるもので,MDS を骨髄芽球割合,血球減少の系統数,染色体グループという3 因子の点数によって4 群に層別化するものである1)。FAB 分類に基づいて作成されているため,現在のWHO 分類(2008)では急性骨髄性白血病に含まれる芽球20~30%の例も取り扱っている。IPSS はこれまで多数の臨床研究で用いられている。
 予後予測因子にWHO 分類(2001)と輸血依存性を採用したのがWPSS で,初診時ばかりでなく病期進展時にも適応できるという特徴がある2)。しかし,現在はWHO 分類(2008)が既に出ており,WPSS は十分な利用がなされていない。


[参考文献]

1) Greenberg P, et al. International scoring system for evaluating prognosis in myelodysplastic syndromes. Blood. 1997 ; 89( 6) : 2079-88.( 3iiA)
2) Malcovati L, et al. Time-dependent prognostic scoring system for predicting survival and leukemic evolution in myelodysplastic syndromes. J Clin Oncol. 2007 ; 25( 23) : 3503-10.( 3iiA)


CQ 2輸血による鉄過剰症への鉄キレート剤が適応とされる状態は何か
推奨グレード
カテゴリー2B

一年以上など一定の予後が期待されかつ,定期的な赤血球輸血を必要とするMDS で,輸血による鉄過剰状態に至った場合には鉄キレート療法を実施する。

[解 説]

 一定量の赤血球輸血を受けたMDS 患者は鉄過剰状態に陥っており,MDS 患者で臓器不全を生じた例や死亡例では鉄過剰状態に陥っている場合が高い1)。組織の過剰鉄は活性酸素種の産生を亢進させることで組織障害を引き起こしていると考えられている。鉄キレート剤を投与することで体内の鉄過剰が改善され2)3),生存期間の延長に寄与する可能性が指摘されている4)
 鉄過剰症の診断規準や鉄キレート療法の開始規準と適応,実際の治療に関しては,「輸血後鉄過剰症の診療ガイド」として本邦の特発性造血障害に関する調査研究班より診療ガイドが出されている5)。それによると,赤血球輸血依存となった患者(月2 単位以上の輸血を6 カ月以上継続)のうち1 年以上の余命が期待できる例において,総赤血球輸血量が40 単位を超え血清フェリチン値が2 カ月以上にわたって1,000 ng/mL を超える場合に鉄キレート療法の開始が推奨されている。治療効果は血清フェリチン値でなされ,500~1,000 ng/mL の維持が目標とされている。
 しかし,MDS において輸血後鉄過剰症に対する鉄キレート療法が生存延長に寄与するかどうかは,前方視的なランダム化検証がなされていない。


[参考文献]

1) Takatoku M, et al ; Japanese National Research Group on Idiopathic Bone Marrow Failure Syndromes.Retrospective nationwide survey of Japanese patients with transfusion-dependent MDS and aplastic anemia highlights the negative impact of iron overload on morbidity/mortality. Eur J Haematol. 2007 ; 78(6) : 487-94.( 3iiiDiv)
2) Gattermann N, et al ; EPIC study investigators. Deferasirox in iron-overloaded patients with transfusiondependent myelodysplastic syndromes : Results from the large 1-year EPIC study. Leuk Res. 2010 ; 34 (9) : 1143-50.( 3iiDiv)
3) Greenberg PL, et al. Prospective assessment of eff ects on iron-overload parameters of deferasirox therapy in patients with myelodysplastic syndromes. Leuk Res. 2010 ; 34(12) : 1560-5.( 3iiDiv)
4) Rose C, et al ; GFM (Groupe Francophone des Myélodysplasies). Does iron chelation therapy improve survival in regularly transfused lower risk MDS patients? A multicenter study by the GFM (Groupe Francophone des Myélodysplasies). Leuk Res. 2010 ; 34(7) : 864-70.( 3iiA)
5) 研究代表者 小澤敬也 輸血後鉄過剰症の診療ガイド 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業特発性造血障害に関する調査研究班 平成20 年度(ガイドライン)


CQ 3低リスクMDS の治療において免疫抑制療法は勧められるか
推奨グレード
カテゴリー2A

MDS の一部の症例に対しては造血の回復に免疫抑制療法が勧められる。特にHLA-DR15,赤血球輸血歴の短い例,若年例での効果が期待される(国内適応外)。

[解 説]

 MDS,特に芽球増加のみられない低リスク例の一部において,抗胸腺細胞グロブリン(antithymocyte globurin:ATG)によって造血回復がみられる1)。また,シクロスポリンを用いた免疫抑制療法も一定の造血回復効果を示す2)。両者の組み合わせによるランダム化比較試験でも有意な造血回復が得られたが,全生存割合(OS),無輸血生存割合は改善されなかった3)
 造血回復は,多変量解析によるとHLA-DR15,若年例,赤血球輸血歴の短い例でより効果が得られていた4)。国内の解析ではHLA-DRB115:01 が造血回復と関連していた2)。その他,PNH (paroxysmal nocturnal hemoglobinuria)型赤血球の存在が治療反応性と関連する5)


[参考文献]

1) Molldrem JJ, et al. Antithymocyte globulin for patients with myelodysplastic syndrome. Br J Haematol. 1997 ; 99( 3) : 699-705.( 3iiDiv)
2) Shimamoto T, et al. Cyclosporin A therapy for patients with myelodysplastic syndrome : multicenter pilot studies in Japan. Leuk Res. 2003 ; 27( 9) : 783-8.( 3iiDiv)
3) Passweg JR, et al. Immunosuppressive therapy for patients with myelodysplastic syndrome : a prospective randomized multicenter phase Ⅲ trial comparing antithymocyte globulin plus cyclosporine with best supportive care--SAKK 33/99. J Clin Oncol. 2011 ; 29( 3) : 303-9.( 1iiDiv)
4) Saunthararajah Y, et al. HLA-DR15 (DR2) is overrepresented in myelodysplastic syndrome and aplastic anemia and predicts a response to immunosuppression in myelodysplastic syndrome. Blood. 2002 ; 100( 5) : 1570-4.(3iiiDiv)
5) Wang H, et al. Clinical signifi cance of a minor population of paroxysmal nocturnal hemoglobinuria-type cells in bone marrow failure syndrome. Blood. 2002 ; 100( 12) : 3897-902.( 3iiiDiv)


CQ 4低リスクMDS の貧血に対してサイトカイン療法は勧められるか
推奨グレード
カテゴリー2A

血清エリスロポエチン濃度低値(200 または500 mU/mL 未満),環状鉄芽球15%未満,赤血球輸血依存のないまたは月2 単位程度の 輸血を必要とする貧血を有するMDS に対してはエリスロポエチン(40,000~60,000U 週1~3 回投与)の投与が貧血を改善させる(国内適応外)。顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の併用は反応性を上昇させる。ダルベポエチン投与も同様の効果を示す(国内適応 外)

[解 説]

 MDS の貧血に対するエリスロポエチン(EPO)投与は,一部の例で貧血を改善する。17 の試験における205 例のMDS に対するEPO 治療の統合解析では33 例(16%)に血球減少の改善が得られていた1)。反応性に関する因子の解析で非鉄芽球性貧血例,治療前血清EPO 200 mU/mL 未満,輸血必要のない貧血例において有効性が有意に高かった。
 G-CSF とEPO との併用例ではその効果が39%と高く2),併用療法の第Ⅱ相試験の長期観察例を,多変量解析を用いて検定したところ治療例では非治療例と比較して有意に良好な生存を示していた3)。しかし,この治療法の生存に対する効果は前方視的第Ⅲ相比較試験での検証がなされていない。
 持続性のEPO 製剤であるダルベポエチン300μg 週一回投与または500μg の3 週間おき投与にもMDS の赤血球造血促進効果がみられる4)5)。治療前血清EPO 500 mU/mL 未満の例を対象としたダルベポエチン300μg 週一回投与の第Ⅱ相試験では62 例中44 例(71%)で反応が得られた。この試験でもEPO 低値と赤血球輸血非依存が治療反応性の有意な予測因子であった。500μg の3週間おき投与試験では初回投与例の49%に赤血球造血促進効果がみられた。また,ダルベポエチン150μg 週一回投与試験では全体の有効率は40.5%であり,EPO 低値,赤血球輸血月2 単位以下,骨髄芽球割合,骨髄低形成が反応性予測因子であった6)
 両薬剤ともに有害事象は軽微であった。しかし,いずれの薬剤も国内ではMDS の貧血に対して保険診療としての適応がない。


[参考文献]

1) Hellström-Lindberg E. Effi cacy of erythropoietin in the myelodysplastic syndromes : a meta-analysis of 205 patients from 17 studies. Br J Haematol. 1995 ; 89( 1) : 67-71.(3iiiDiv)
2) Hellström-Lindberg E, et al. A validated decision model for treating the anaemia of myelodysplastic syndromes with erythropoietin+granulocyte colony-stimulating factor : signifi cant eff ects on quality of life. Br J Haematol. 2003 ; 120( 6) : 1037-46.( 3iiiC)
3) Jädersten M, et al. Erythropoietin and granulocyte-colony stimulating factor treatment associated with improved survival in myelodysplastic syndrome. J Clin Oncol. 2008 ; 26(21) : 3607-13.( 3iiiA)
4) Mannone L, et al. High-dose darbepoetin alpha in the treatment of anaemia of lower risk myelodysplastic syndrome results of a phase Ⅱ study. Br J Haematol. 2006 ; 133( 5) : 513-9.( 3iiiDiv)
5) Gabrilove J, et al. Phase 2, single-arm trial to evaluate the eff ectiveness of darbepoetin alfa for correcting anaemia in patients with myelodysplastic syndromes. Br J Haematol. 2008 ; 142(3) : 379-93.( 3iiiDiv)
6) Musto P, et al. Darbepoetin alpha for the treatment of anaemia in low-intermediate risk myelodysplastic syndromes. Br J Haematol. 2005 ; 128(2) : 204-9.( 3iiiDiv)


【第1.2版修正】

CQ 4低リスクMDS の貧血に対してサイトカイン療法は勧められるか
推奨グレード
カテゴリー2A

血清エリスロポエチン濃度低値(200 または500 mU/mL 未満),環状鉄芽球15%未満,赤血球輸血依存のないまたは月2 単位程度の 輸血を必要とする貧血を有するMDS に対してはエリスロポエチン(40,000~60,000U 週1~3 回投与)あるいはダルベポエチン(150~500mg 週1~3 回投与)の投与が貧血を改善させる。ダルベポエチンはMDSに伴う貧血に対して保険適応となっている。顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の併用はESA製剤への反応性を上昇させるが、ダルベポエチンの効果増強を目的としたG-CSFの使用は本邦では保険適応となっていない。

[解 説]

 MDS の貧血に対するエリスロポエチン(EPO)投与は,一部の例で貧血を改善する。17 の試験における205 例のMDS に対するEPO 治療の統合解析では33 例(16%)に血球減少の改善が得られていた1)。反応性に関する因子の解析で非鉄芽球性貧血例,治療前血清EPO 200 mU/mL 未満,輸血必要のない貧血例において有効性が有意に高かった。
 G-CSF とEPO との併用例ではその効果が39%と高く2),併用療法の第Ⅱ試験の長期観察例を,多変量解析を用いて検定したところ治療例では非治療例と比較して有意に良好な生存を示していた3)。しかし,この治療法の生存に対する効果は前方視的第Ⅲ相比較試験での検証がなされていない。
 持続性のEPO 製剤であるダルベポエチン300μg 週一回投与または500μg の3 週間おき投与にもMDS の赤血球造血促進効果がみられる4)5)。治療前血清EPO 500 mU/mL 未満の例を対象としたダルベポエチン300μg 週一回投与の第Ⅱ相試験では62 例中44 例(71%)で反応が得られた。この試験でもEPO 低値と赤血球輸血非依存が治療反応性の有意な予測因子であった。500μg の3週間おき投与試験では初回投与例の49%に赤血球造血促進効果がみられた。また,ダルベポエチン150μg 週一回投与試験では全体の有効率は40.5%であり,EPO 低値,赤血球輸血月2 単位以下,骨髄芽球割合,骨髄低形成が反応性予測因子であった6)。日・韓で行われた第Ⅱ相試験は、MDSを対象とするESA製剤の世界初の用量反応試験であった7)。ダルベポエチンの60μg、120μg及び240μg 週一回投与群がランダムに割り付けられたが、輸血量が50%以上減少する効果は、それぞれ64.7%(60μg群)、44.4%(120μg群)、66.7%(240μg群)(各群間に統計学的有意差なし)、全体として58.0%であった。一方、赤血球輸血非依存となり、Hb値が1.0 g/dL以上増加する効果は、17.6%(60μg群)、16.7%(120μg群)、33.3%(240μg群)であり、240μg群が有意に高かった。本邦では本試験の結果をもとに、ダルベポエチンはMDSに伴う貧血に対して追加適応を取得し、240μgが推奨用量となった。ダルベポエチンは、高リスクMDSには有効性及び安全性が評価されていないため、投与しない。血清EPO値が500 mU/mL以上であっても投与することは可能であるが、EPO値が低く、輸血量が少ない例の反応性が良いことを考慮する。ダルベポエチンの効果増強を目的としたG-CSFの使用は本邦では保険適応外である。
 両薬剤ともに有害事象は軽微である。AMLへの移行を有意に促進するとする報告はない。


[参考文献]

1) Hellström-Lindberg E. Efficacy of erythropoietin in the myelodysplastic syndromes : a meta-analysis of 205 patients from 17 studies. Br J Haematol. 1995 ; 89(1) : 67-71.(3iiiDiv)
2) Hellström-Lindberg E, et al. A validated decision model for treating the anaemia of myelodysplastic syndromes with erythropoietin+granulocyte colony-stimulating factor : significant effects on quality of life. Br J Haematol. 2003 ; 120(6) : 1037-46.( 3iiiC)
3) Jädersten M, et al. Erythropoietin and granulocyte-colony stimulating factor treatment associated with improved survival in myelodysplastic syndrome. J Clin Oncol. 2008 ; 26(21) : 3607-13.(3iiiA)
4) Mannone L, et al. High-dose darbepoetin alpha in the treatment of anaemia of lower risk myelodysplastic syndrome results of a phase Ⅱ study. Br J Haematol. 2006 ; 133(5) : 513-9.(3iiiDiv)
5) Gabrilove J, et al. Phase 2, single-arm trial to evaluate the eff ectiveness of darbepoetin alfa for correcting anaemia in patients with myelodysplastic syndromes. Br J Haematol. 2008 ; 142(3) : 379-93.(3iiiDiv)
6) Musto P, et al. Darbepoetin alpha for the treatment of anaemia in low-intermediate risk myelodysplastic syndromes. Br J Haematol. 2005 ; 128(2) : 204-9.( 3iiiDiv)
7) Jang JH, et al. A randomized controlled trial comparing darbepoetin alfa doses in red blood cell transfusion-dependent patients with low- or intermediate-1 risk myelodysplastic syndromes. Int J Hematol. 2015 on-line( 1iiDiv)


CQ 5MDS の治療としてレナリドミドは勧められるか
推奨グレード
カテゴリー1

5 番染色体長腕の欠失[del(5q)]を伴う低リスク MDS で赤血球輸血依存例に対してはレナリドミドが赤血球造血促進効果を示し,レナリドミドによる治療が推奨される。10 mg/日の21 日間投与を28日サイクルで実施する。

推奨グレード
カテゴリー2B

del(5q)を伴わない赤血球輸血依存低リスク MDSに対しては,赤血球輸血非依存が達成される例がみられるが,現時点では第一選択薬としては推奨されない(国内適応外)。

[解 説]

 レナリドミド(LEN)はサリドマイド(THAL)の誘導体で,免疫調節をはじめとして生体に対して多彩な効果を発揮する。5 番染色体長腕の欠失を伴うMDS で赤血球輸血依存例を対象とした第Ⅱ試験1),第Ⅲ相試験2)において赤血球輸血量の減少効果が明らかに認められている。また,国内でも少数例ながら第Ⅱ相試験が実施された3)
 米国を中心とした第Ⅱ相試験においては148 例が登録され,赤血球系改善が67%にみられ,さらに45 例で細胞遺伝学的寛解(CyR)が得られた1)
 LEN 10 mg/日,5 mg/日,プラセボによる二重盲検試験では26 週を超える輸血非依存達成はそれぞれ56.1%,42.6%,5.9%であり,有意にLEN 治療が優っていた(p<0.001)。細胞遺伝学的反応性もLEN 10 mg/日,5 mg/日群でそれぞれ50%,25%に観察された。白血病への移行は3 群間で差はなかった1)。有害事象も重篤なものはなかった。本試験では16 週での試験治療群クロスオーバーが一部で認められていたが,全生存割合(OS)では3 群間に有意差を認めなかった。
 国内の試験では低リスク11 例が登録され,赤血球系改善は全例に,CyR は3 例にみられた3)
 del(5q)を伴わない輸血依存低リスクMDS に対しては米国で第Ⅱ相試験が実施され,LEN 10 mg/ 日,21 日投与(28 日サイクル)の効果が検証された。赤血球輸血非依存達成率は26%で,これらの症例におけるヘモグロビン上昇中央値は3.2 g/dL,その持続期間の中央値は41 週であった 4)。この結果からLENがdel(5q)を伴わないMDSに対して一定の有効性を示すことが期待されるが,海外での第Ⅱ相試験までの結果しかなく,国内では試験が実施されていない(国内適応外)。


[参考文献]

1) List A, et al. Lenalidomide in the myelodysplastic syndrome with chromosome 5q deletion. N Engl J Med. 2006 ; 355(14) : 1456-65.( 3iiiDiv)
2) Fenaux P, et al. A randomized phase 3 study of lenalidomide versus placebo in RBC transfusion-dependent patients with Low-/Intermediate-1-risk myelodysplastic syndromes with del5q. Blood. 2011 ; 118 (14) : 3765-3776.( 1iDiv)
3) Harada H, et al. Lenalidomide is active in Japanese patients with symptomatic anemia in low- or intermediate- 1 risk myelodysplastic syndromes with a deletion 5q abnormality. Int J Hematol. 2009 ; 90( 3) : 353- 60.(3iiiDiv)
4) Raza A, et al. Phase 2 sutdy of lenalidomide in transfusion-dependent, low-risk, and intermediate-1-risk myelodysplastic syndromes with karyotypes other than deletion 5q. Blood. 2008 ; 111(1) : 86-93. (3iiiDiv)


CQ 6低リスクMDS の治療としてアザシチジンは勧められるか
推奨グレード
カテゴリー2B

低リスクMDS に対してアザシチジンにより造血の回復は認められるが,生存期間延長を目的とした第一選択薬としての使用は推奨されない。

[解 説]

現時点で低リスクMDS の生存期間延長を目的とした第一選択薬としての使用は推奨されない。

 アザシチジン(AZA)は高リスクMDS に対する第Ⅲ相臨床試験で生存延長効果が示されている1)。その試験では60%の例で造血回復が観察された。低リスクのみを対象としたAZA の試験はないが,74 例の低リスクMDS に対する後方視的解析ではAZA 治療によって45.9%の例で造血回復が観察された2)。その中で4 コース以上の治療を受けた64 例では51.6%の反応が得られ,治療反応を得られた例は非反応例と比較して生存期間が延長していた。
 前方視的試験での検討は臨床試験の部分解析のみであり,生存に関する解析はない。
 現時点で低リスクMDS の生存期間延長を目的とした第一選択薬としての使用は推奨されない。


[参考文献]

1) Fenaux P, et al. Effi cacy of azacitidine compared with that of conventional care regimens in the treatment of higher-risk myelodysplastic syndromes : a randomised, open-label, phase Ⅲ study. Lancet Oncol. 2009 ; 10( 3) : 223-32.(1iiA)
2) Musto P, et al. Azacitidine for the treatment of lower risk myelodysplastic syndromes : a retrospective study of 74 patients enrolled in an Italian named patient program. Cancer. 2010 ; 116 (6) : 1485-94. (3iiiDiv)


CQ 7MDS に対する同種造血幹細胞移植の適応と適切な実施時期はいつか
推奨グレード
カテゴリー2A

高リスクMDS 患者では,できる限り速やかに同種造血幹細胞移植を行う。HLA 1 座不適合以内の血縁者間移植が最も望ましいが,血縁ドナーが得られない場合はHLA 一致非血縁者間移植も考慮する。

推奨グレード
カテゴリー2A

低リスクMDS 患者では同種造血幹細胞移植は推奨されない。しかし,リスクの悪化または悪化傾向がある症例,高度の輸血依存例,繰り返し感染症がみられる例,免疫抑制療法など他の治療法に反応がみられない症例は造血幹細胞移植の候補となる。

推奨グレード
カテゴリー2A

臍帯血移植は推奨されないが,骨髄・末梢血ドナーが得られない高リスクMDS 患者では考慮される。

[解 説]

 MDS において治癒が期待できる治療は,現在のところ同種造血幹細胞移植のみである。
 高リスクMDS では血球減少や白血病への進展リスクが高く,そのままでは予後不良である。このため,同種造血幹細胞移植が可能であれば原則として速やかにこれを実施する(表1)。55 歳未満の患者でHLA 血清学的1 座不適合以内の血縁ドナーが存在し,移植に耐えられる全身状態の症例が最も良い適応とされ,日本造血幹細胞移植学会データ(平成23 年度)によれば,16 歳以上のRAEB/RAEB-t 症例における血縁者間骨髄移植の5 年全生存割合(OS)は50%である1)。血縁者ドナーが存在しない場合は非血縁者間移植が行われるが,同データによると16 歳以上のRAEB/RAEB-t 症例における非血縁骨髄移植の5 年OS は42%と報告されており,一定の長期生存が認められている1)

表1 日本造血細胞移植学会ガイドラインによるMDS に対する移植適応(抜粋)3)

IPSS(risk) 病型 HLA 適合同胞 HLA 適合非血縁 臍帯血移植*3
Low RA/RARS*1 CO CO Dev
Intermediate-1 RA/RCMD/RS*1 CO CO Dev
RAEB-1*1 CO CO Dev
Intermediate-2 RA/RCMD/RAEB-1 S S CO
RAEB-2*2 S S CO
High RAEB-1/2*2 S S CO

S: standard of care,移植が標準治療である(合併症,QOL などの不利益についても検討した上 で総合的に決定すべきである)。
CO:clinical option,移植を考慮してもよい。
Dev:developmental,開発中であり,臨床試験として実施すべき。
*1 血球減少高度で血液補充療法依存性あるいは重症感染症・出血ハイリスクの症例で,他の保存的治療法無効の場合。
*2 染色体異常がgood prognosis を示す一部の症例では移植適応を慎重に考慮する。
*3 患者年齢,臍帯血細胞数などによりCO またはDev となる。

 低リスクMDS ではそのままでも比較的長期の生存が期待できるため,造血幹細胞移植の適応は慎重に考慮すべきであり,決断分析の手法を用いた移植時期の解析では,国際予後予測スコアリングシステム(IPSS)Low~Intermediate-1 の症例は病期が進行してからの移植の方が望ましいことが示されている2)。しかし,輸血高度依存,感染症の反復など骨髄不全症状が顕在化している患者では合併症による死亡や生活の質(QOL)の著しい低下が予想されるため,十分な同意を得た上で移植を考慮することは可能である。
 臍帯血移植は施行例数が少なく評価が不十分であり,現段階では標準治療としては推奨されない。血縁・非血縁者骨髄移植ドナーが見つからないか,時間的余裕がない場合に臨床研究の枠組みで行うべき治療と考えられる。


[参考文献]

1) 日本造血幹細胞移植学会 JSHCT データセンター,平成23 年度全国調査報告書 : http://www.jshct.com/ report_2011/
2) Cutler CS, et al. A decision analysis of allogeneic bone marrow transplantation for the myelodysplastic syndromes : Delayed transplantation for low-risk myelodysplasia is associated with improved outcome. Blood. 2004 ; 104( 2) : 579-85.( 3iiiA)
3) 日本造血幹細胞移植学会 造血幹細胞移植ガイドライン 骨髄異形成症候群(成人).JSHCT monograph vol. 18, ガイドライン.


CQ 8高リスクMDS に対してアザシチジンは勧められるか
推奨グレード
カテゴリー1

アザシチジンは,同種造血幹細胞移植が行われない高リスク症例では第一選択薬剤である。

推奨グレード
カテゴリー2B

明らかな増悪や有害事象による中止を除いて,有効性の判定には少なくとも4~6 コースの継続を要する。

推奨グレード
カテゴリー2A

アザシチジンの移植前治療としての意義は確立していないが,ドナーの準備を待つ間のつなぎ治療(bridge)として施行を考慮してもよ い。

[解 説]

 アザシチジン(AZA)はDNA に取り込まれてDNA のメチル化を抑制することで遺伝子発現を回復させ,またRNA に取り込まれることでタンパク合成を阻害して殺細胞効果を示す。
 米国におけるAZA と支持療法の比較試験(CALGB9221 試験)ではMDS のすべての病型において白血病化が遅れ(AZA 21 カ月vs 支持療法13 カ月),生存期間が延長し(AZA 19.9 カ月vs支持療法10.5 カ月),QOL が改善したことが示された1)。また,欧米における高リスクMDS を対象とした通常治療(支持療法,低用量化学療法,強力化学療法)との第Ⅲ相比較試験(AZA001試験)では生存期間の延長(AZA 24.5 カ月vs 通常治療15.0 カ月)と白血病化までの期間延長(AZA 17.8 カ月vs 通常治療11.5 カ月)が示されている2)
 高リスクMDS においては,同種造血幹細胞以外にMDS の予後を有意に改善できる治療法,薬剤は存在しなかったため,移植を行わない症例ではAZA が第一選択薬と位置づけられる。
 本剤の有効性は4 コース投与までに現れることが多いが,4 コース以降に効果が現れる症例も約25%みられるため,明らかな疾患増悪や有害事象による中止を除いて,有効性の判断は少なくとも4~6 コース施行した後に行う必要がある3)4)
 AZA を移植前治療に使用した報告はあるが,その治療効果・意義は明らかになっていない。移植前治療として使用は可能だが,効果発現まで時間がかかることを考慮して治療計画を立てる必要がある。


[参考文献]

1) Silverman LR, et al : Randomized controlled trial of azacitidine in patients with the myelodysplastic syndrome : A study of the cancer and leukemia group B. J Clin Oncol. 2002 ; 20( 10) : 2429-40.( 1iiA)
2) Fenaux P, et al : Effi cacy of azacitidine compared with that of conventional care regimens in the treatment of higher-risk myelodysplastic syndromes : A randomized, open-label, phase Ⅲ study. Lancet Oncol. 2009 ; 10( 3) : 223-32.( 1iiA)
3) Silverman LR, et al. : Further analysis of trials with azacitidine in patients with myelodysplastic syndrome : studies 8421, 8921, and 9221 by the Cancer and Leukemia Group B. J Clin Oncol. 2006 ; 24( 24) : 3895-903.( 3iiDiv)
4) Gotze K, et al : Azacitidine for treatment of patients with myelodysplastic syndromes (MDS) : Practical recommendations of the German MDS Study Group. Ann Hematol. 2010 ; 89( 9) : 841-50.


CQ 9高リスクMDS に対してレナリドミドは勧められるか
推奨グレード
カテゴリー2B

高リスクMDS に対するレナリドミドの使用は推奨されない。

推奨グレード
カテゴリー2B

del(5q)を有するMDSにおいては,アザシチジン不応の場合,レナリドミドの使用を考慮してもよい。

[解 説]

 現時点で高リスクMDS におけるレナリドミド(LEN)の有用性を明確に証明したエビデンスはなく,高リスクMDS への使用は推奨されない。
 しかし,del(5q)を有する高リスクMDS 47例を対象とした臨床試験において,13 例(27%)に血液学的改善が認められ[7 例(15%)は完全奏効],5q 単独欠損9 例中6 例は完全奏効に入ったことが報告されている。アザシチジン(AZA)不応の del(5q)MDSでは LEN は候補薬として考慮される1)


[参考文献]

1) Ades L, et al : Effi cacy and safety of lenalidomide in intermediate-2 or high-risk myelodysplastic syndromes with 5q deletion : results of a phase 2 study. Blood. 2009 ; 113( 17) : 3947-52.( 3iiiDiv)


CQ 10高リスクMDS において化学療法は勧められるか
推奨グレード
カテゴリー2A

生存期間,白血病化までの期間を延長する化学療法の報告はなく,第一選択としては推奨されない(アザシチジンが推奨される)。

推奨グレード
カテゴリー2B

同種造血幹細胞移植が実施されない若年例で染色体異常,全身状態(PS),罹病期間などの予後不良因子のない症例では強力化学療法も候補となるが,化学療法はアザシチジンが使用できない場合に適応が考慮される。

推奨グレード
カテゴリー2B

強力化学療法と低用量化学療法の生存期間への影響はほぼ同等であり,その適応は症例ごとに判断する。

[解 説]

 従来,高リスクMDS に対しては化学療法が行われてきたが,一部若年例で,染色体異常,PS,罹病期間などの予後不良因子のない症例では強力化学療法の有用性が示されているものの1),それ以外の症例では生存期間や白血病化までの期間延長を明確に示したレジメンは存在しない。このため,化学療法の適応はアザシチジン(AZA)が使用できない症例(不応・不耐)に考慮される。
 MDS(RAEB-t および白血化症例を含む)における強力化学療法と低用量化学療法を比較したわが国の臨床試験(JALSG MDS200 試験)では,登録症例数が不十分で統計学的な比較がなされていないものの,寛解率では強力療法群が高かったにもかかわらず(強力化学療法64.7% vs 低用量化学療法43.9%),2 年無病生存割合(DFS)および2 年全生存割合(OS)ではほぼ同等であり(DFS;強力化学療法26.0% vs 低用量化学療法24.8%,OS;強力化学療法28.1% vs 低用量化学療法32.1%),MDS では寛解導入率が予後を必ずしも反映せず,強力化学療法と低用量化学療法はほぼ同等の成績であった2)


[参考文献]

1) Kantarjian H, et al : Long-term follow-up results of the combination of topotecan and cytarabine and other intensive chemotherapy regimens in myelodysplastic syndrome. Cancer. 2006 ; 106 (5) : 1099-109. (3iiiDiv)
2) Morita Y, et al : Comparative analysis of remission induction therapy for high-risk MDS and AML progressed from MDS in the MDS200 study of Japan Adult Leukemia Study Group. Int J Hematol. 2010 ; 91 (1) : 97-103.( 1iiDi)