日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版補訂版

第Ⅰ章 白血病

Ⅰ 白血病

5 慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫
(chronic lymphocytic leukemia/small lymphocytic lymphoma:CLL/SLL)

総論

 慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia:CLL)は,単一な小型円形から軽度の異型を持つBリンパ球の腫瘍で,CD5とCD23の発現がみられ,日本では稀な腫瘍である。小リンパ球性リンパ腫(small lymphocytic lymphoma:SLL)は末梢血や骨髄への浸潤がないCLLと同一の細胞の腫瘍と定義される1, 2)
 多くは緩徐な経過を示すが,一部に進行が速く,予後不良なものがみられる。病期分類にて病期を決定し,治療開始規準に準じて治療を実施する。ブルトン型チロシンキナーゼ(Bruton’s tyrosine kinase:BTK)阻害薬であるイブルチニブやリツキシマブを併用するフルダラビン+シクロホスファミド療法(FCR療法)が標準治療である。染色体17p欠失もしくはTP53遺伝子異常を認める症例は治療抵抗性で予後不良である2-5)

1.病期分類
 治療方針の決定に必須で,米国では改訂Rai分類,欧州ではBinet分類(表12, 3, 5)が使用される。診察所見と貧血,血小板減少だけで診断し,CTなどの画像所見は用いない。
 SLLの病期分類は,悪性リンパ腫の病期分類に準ずる。

表1-1 Raiの病期分類5)

改訂Rai分類 Rai分類病期 分類規準
低リスク 0 末梢血モノクローナルBリンパ球>5,000/μL+骨髄リンパ球>40%
中間リスク 病期0+リンパ節腫脹
病期0〜Ⅰ+肝腫,脾腫(どちらかまたは両方)
高リスク 病期0〜Ⅱ+貧血(Hb<11g/dLまたはHt<33%)
病期0〜Ⅲ+血小板<10万/μL

表1-2 Binetの病期分類

病期 分類規準
A Hb≧10 g/dL
+血小板≧10万/μL
+リンパ領域腫大が2カ所以下
B Hb≧10 g/dL
+血小板≧10万/μL
+リンパ領域腫大が3カ所以上
C Hb<10 g/dL
または血小板<10万/μL
リンパ節腫大領域数は規定しない

リンパ節領域は①頭頸部,②腋窩,③鼠径部,④脾臓,⑤肝臓の5領域(両側でも1領域と評価する)。身体診察のみの所見である。

2.予後因子
1)病期分類
 50%生存期間は,改訂Rai分類低リスクは10年以上,中間リスクは8年以上年,高リスクは6.5年,Binet分類の病期A期は10年以上,B期は8年以上,C期は6.5年である3)

2)17p欠失とTP53異常(変異と欠失)
 17p欠失またはTP53異常(変異と欠失)がみられる場合は,通常の化学免疫療法に抵抗性であることが知られており,治療選択には必須である3, 5-7)

3)Physical fitness
 Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のperformance status(PS)以外にも,併存疾患指数cumulative illness rating scale(CIRS)などの総合的高齢者機能評価を用い,標準治療が実施可能な“fit”群,標準治療が推奨されない“unfit”,そしてbest supportive care(BSC)が考慮される“frail”という考えが一般的になりつつある3, 5。総合的高齢者機能評価のなかでも併存疾患により全生存(OS)が異なることが報告されている8)

4)治療反応性
 17p欠失またはTP53異常(変異と欠失)の有無にかかわらず,プリンアナログ抵抗性,またはFCRもしくはFCR類似療法後2年(もしくは3年)の再発のものは,予後不良でハイリスクとされている2, 9)。また,ハイリスクの患者に17p欠失またはTP53異常(変異と欠失)があった場合はウルトラハイリスクと呼ばれる9)

5)その他の予後因子
 ①予後不良の染色体異常[11q(ATM座)と17p(p53座)の欠失の染色体異常],②免疫グロブリン重鎖可変部体細胞遺伝子変異somatic hypermutation of the immunoglobulin heavy chain variable region genes(IGHV)陰性,③ CD38発現,④ zeta-associated protein of 70kDa(ZAP-70)発現を示すものは予後不良である3-5, 6。その他,高齢,男性,びまん性骨髄浸潤,短いリンパ球倍加時間,Ki67高発現,血清チミジンキナーゼ,β2ミクログロブリン(β2MG),可溶性CD23やTNFαの高値,CD45d発現,染色体複雑核型,lipoprotein lipase高発現,microRNA発現変異などの報告と,NOTCH1BIRC3SF3B1MYD88変異など新しい遺伝子異常が報告されている3, 7, 9, 10)。前方視的試験の結果からも,TP53だけでなく,NOTCH1SF3B1変異があるものは予後不良であることが示されている11-13)。International prognostic index for patients with chronic lymphocytic leukaemia(CLL-IPI)により,未治療CLL患者を4つのグループに層別化可能であると報告された14)。これは5つの因子(17p欠失/TP53・変異4点,IGHV変異なし2点,血清β2-ミクログロブリン>3.5 mg/L,臨床病期Binet分類A期およびRai分類0期以外,年齢>65歳各1点)を10点満点でスコア化したもので,5年生存割合がlowリスク(0~1点)93.2%[95%CI:90.5-96.0],intermediateリスク(2~3点)79.3%[95%CI:75.5-83.2],highリスク(4~6点)63.3%[95%CI:57.9-68.8],very highリスク(7~10点)23.3%[95%CI:12.5-34.1]であった14)

3.治療
 CLLは経過の長い疾患であるため,治療関連死亡は避けるべきである。慎重な治療方法の選択の検討が必須であり,その概略を以下に示す。病期(Rai,Binet分類)ならびに治療の必要性は下記の治療開始基準(表2)を参考にする2)。活動性病変のない早期CLL患者(改訂Rai分類の低または中間リスク,Binet分類のAまたはB期)に,治療を行ってもOSは延長しないため実施しない。治療対象CLL(活動性病変のある早期および進行期)患者に対しては,FCR療法が標準治療であるが毒性が強いため,患者のphysical fittnessを考慮して実施する。FISH検査による17p欠失やTP53異常(変異と欠失)などを認める場合はフルダラビンなどの治療に抵抗性であるためBTK阻害薬であるイブルチニブなどで治療する。
 再発の場合は,Physical fitness,17p欠失/TP53異常(変異と欠失)に加え,初回治療の反応性により治療選択が異なる。治療抵抗性,または早期(2~3年以内)の再発の場合は予後不良であるため,それ以降の晩期再発の場合と治療戦略が異なる3, 5, 7)

表2 International Workshop on Chronic Lymphocytic Leukemia2)で示された治療開始規準

以下の項目のいずれかに該当すれば,活動性(active disease)とし,治療を考慮する。
1)進行性の骨髄機能低下による貧血や血小板減少の進行・悪化
2)左肋骨弓下6cm以上の脾腫,進行性または症候性の脾腫
3)長径10cm以上のリンパ節塊,進行性または症候性のリンパ節腫脹
4)2カ月以内に50%を超える進行性リンパ球増加,6カ月以下のリンパ球倍加時間
5)副腎皮質ステロイドや他の標準治療に反応の悪い自己免疫性貧血や血小板減少症
6)CLLに起因する以下のいずれかの症状のあるとき
①減量によらない過去6カ月以内の10%以上の体重減少
②労働や日常生活が困難である(ECOG PS 2以上)の倦怠感
③感染症の所見なしに2週間以上続く38℃以上の発熱
④感染症徴候のない寝汗

4.治療効果判定
 治療効果判定2)表3によって実施する。
 日本でどのように実際の臨床に組み入れるのか問題も多いが,海外では,微小残存病変(MRD)により治療成績の評価がなされてきている。MRDの測定はフローサイトメトリー(FCM)と定量PCRの2つの測定法が海外では推奨されている。FCM法はB細胞同定のためのCD19とともにCD5,CD43,CD79b,CD81,および20または22の6種類のマーカーで測定する方法で,0.01%(10−4)の感度が得られるが,新鮮細胞が必要である。定量PCRは,新鮮細胞は不要であるが,患者特有のプライマーの設定が必要である7, 15)。メタアナリシスの結果,MRDは前方視的臨床研究の評価項目になりうると報告されている16)

表3 治療効果判定2)

完全奏効(complete response:CR)
以下の基準をすべて満たす状態が,3カ月以上継続すること
1.末梢血中にクローナルなBリンパ球がないこと(4,000/μL以下)
2.径1.5 cm以上のリンパ節がないこと
3.診察で肝脾腫がないこと(CTでは長径[cranio-caudal length]が13 cm未満)
4.消耗性の症状がないこと
5.血球が以下の条件
1)好中球>1,500/μL
2)血小板>10万/μL
3)輸血しない状況でHb>11.0 g/dL

部分奏効(partial response:PR)
以下の基準を少なくとも2つ以上満たす状態が,2カ月以上継続すること
1.末梢血中にクローナルなBリンパ球が50%以上減少すること
2.リンパ節が50%以上減少
3.肝脾腫が50%以上減少
4.血球が以下の条件
1)好中球>1,500/μLまたは治療前より50%以上の改善
2)血小板>10万/μLまたは治療前より50%以上の改善
3)輸血しない状況でHb>11.0 g/dL,または治療前より50%以上の改善

進行(progression:PD)
以下の基準を少なくとも1つ以上満たす状態
1.リンパ節腫脹
1)径1.5 cm以上の新たなリンパ節腫脹,新たな肝脾腫,臓器浸潤
2)最大径50%以上の増加,径1~1.5 cmのリンパ節では50%の増加,または径1.5 cm以上,1.5 cm以上のリンパ節では長径2.0 cm以上になること
3)多発しているリンパ節の径の和の50%以上の増大
2.肝臓,脾臓のサイズの50%以上の増大
3.末梢血中リンパ球数の50%以上の増大またはBリンパ球数5,000/μL以上
4.Richter症候群のような増殖が速い腫瘍への形質転換(可能な限り,リンパ節等の生検で確認する)
5.CLLと関連のある血球減少の出現

安定(stable disease)
CRやPRに達せず,進行にもあたらない場合

注1) リツキシマブは第2版第1刷発刊時には保険適用外であったが,2019年3月より保険適用となった。
注2) イブルチニブは第2版第1刷発刊時には初回治療は保険適用外であったが,2018年7月より初回治療も保険適用となった。

参考文献

1) Campo E, et al. Chronic lymphocytic leukaemia/small lymphocytic lymphoma. Swerdlow SH, et al. eds. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. Lyon, IARC ; 2017 : pp216-21.(テキストブック)
2) Hallek M, et al. iwCLL guidelines for diagnosis, indications for treatment, response assessment, and supportive management of CLL. Blood. 2018 ; 131(25): 2745-60.(ガイドライン)
3) Eichhorst B, et al. Chronic lymphocytic leukaemia : ESMO Clinical Practice Guidelines for diagnosis, treatment and follow-up. Ann Oncol 2015 ; 26 Suppl 5 : v78-84.(ガイドライン)
4) ESMO Guidelines Committee. eUpdate-Chronic Lymphocytic Leukaemia Treatment Recommendations. 27 June 2017.(ガイドライン)
5) NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Chronic Lymphocytic Leukemia/Small Lymphocytic Lymphoma. Version 2. 2020.(ガイドライン)
6) Ladetto M, et al. ESMO Lymphoma Consensus Conference Panel Members. ESMO consensus conference on malignant lymphoma : general perspectives and recommendations for prognostic tools in mature Bcell lymphomas and chronic lymphocytic leukaemia. Ann Oncol. 2018 ; 29(2): 525.(レビュー)
7) Hallek M. Chronic lymphocytic leukemia : 2017 Update on diagnosis, risk stratification, and treatment. Am J Hematol. 2017 ; 92(9): 946-65.(レビュー)
8) Goede V, et al. Interactions between comorbidity and treatment of chronic lymphocytic leukemia : results of German Chronic Lymphocytic Leukemia Study Group trials. Haematologica. 2014 ; 99(6): 1095-100.(3iiA)
9) Stilgenbauer S, et al. Management of chronic lymphocytic leukemia. Am Soc Clin Oncol Educ Book. 2015 : 164-75.(レビュー)
10) Delgado J, et al. Genetic evolution in chronic lymphocytic leukaemia. Best Pract Res Clin Haematol. 2016 ; 29(1): 67-78.(レビュー)
11) Nabhan C, et al. Predicting Prognosis in Chronic Lymphocytic Leukemia in the Contemporary Era. JAMA Oncol. 2015 ; 1(7): 965-74.(レビュー)
12) Schnaiter A, et al. NOTCH1, SF3B1, and TP53 mutations in fludarabine-refractory CLL patients treated with alemtuzumab : results from the CLL2H trial of the GCLLSG. Blood. 2013 ; 122(7): 1266-70.(1iiA)
13) Oscier DG1, et al. The clinical significance of NOTCH1 and SF3B1 mutations in the UK LRF CLL4 trial. Blood. 2013 ; 121(3): 468-75.(1iiA)
14) International CLL-IPI working group. An international prognostic index for patients with chronic lymphocytic leukaemia (CLL-IPI): a meta-analysis of individual patient data. Lancet Oncol. 2016 ; 17(6): 779-90.(1iiA)
15) Kovacs G, et al. Minimal Residual Disease Assessment Improves Prediction of Outcome in Patients With Chronic Lymphocytic Leukemia(CLL)Who Achieve Partial Response : Comprehensive Analysis of Two Phase III Studies of the German CLL Study Group. J Clin Oncol. 2016 ; 34(31): 3758-65.(1iiA)
16) Dimier N, et al. A model for predicting effect of treatment on progression-free survival using MRD as a surrogate endpoint in CLL. Blood. 2018 ; 131(9): 955-62.(1iiDiv)

 

アルゴリズム

*1:イブルチニブは第2版第1刷発刊時には初回治療は保険適用外であったが,2018年7月より初回治療も保険適用となった。
*2:chlorambucil(国内未承認)±リツキシマブ療法
*3:ベンダムスチン±リツキシマブ療法は,FCR療法よりも治療強度が弱く,毒性が軽度と考えられているため,対象を考慮した実施が推奨される。
*3:フルダラビン±リツキシマブ療法
*4:フルダラビン+シクロホスファミド±リツキシマブ療法
*5:シクロホスファミド±リツキシマブ療法
*2~6:リツキシマブは第2版第1刷発刊時には保険適用外であったが,2019年3月より保険適用となった。
*7:初回治療に引き続く同種移植は,17p欠失を有する細胞の%などや,他の移植のリスクを判断して慎重に対応が必要
CR:complete response,PR:partial response,Rel:relapsed,Ref:refractory
Early relapse:初回化学免疫治療から24~36カ月以内の再発
Late relapse:初回化学免疫治療から24~36カ月以降の再発

 

*1:ベネトクラックス+リツキシマブ療法が再発または難治性のCLL(SLLを含む)に対して2019年9月に承認された。
*2:イブルチニブは第2版第1刷発刊時には初回治療は適用外であったが,2018年7月より初回治療も承認された。
*3:chlorambucil(国内未承認)±リツキシマブ療法
*4:ベンダムスチン±リツキシマブ療法は,FCR療法よりも治療強度が弱く,毒性が軽度と考えられているため,対象を考慮した実施が推奨される。
*5:フルダラビン±リツキシマブ療法
*6:フルダラビン+シクロホスファミド±リツキシマブ療法
*7:シクロホスファミド±リツキシマブ療法
*3~7:リツキシマブは第2版第1刷発刊時には保険適用外であったが,2019年3月より承認された。
*8:初回治療に引き続く同種移植は,17p欠失を有する細胞の%などや,他の移植のリスクを判断して慎重に対応が必要
CR:complete response,PR:partial response,Rel:relapsed,Ref:refractory
Early relapse:初回化学免疫治療から24~36カ月以内の再発
Late relapse:初回化学免疫治療から24~36カ月以降の再発

 CLLの診断がなされた場合,早期のCLL[総論の表2に示す活動性の病態がないBinet病期分類A期とB期,および無症状の改訂Rai分類病期低・中間リスク(Rai分類病期0期,Ⅰ期,Ⅱ期)]患者は,経過観察することが推奨される(CQ1)。活動性徴候が生じたり,進行期になった場合は,患者の状態(physical fitness)によりfit,unfit,frailであるかを評価し,fitであれば標準治療が実施し,unfitであれば標準治療が実施困難と判断をする1-4)。CLLのNCCNガイドライン3)では,併存疾患などの評価はCumulative Illness Rating Scale(CIRS),その他Comprehensive Geriatric assessmentとしてMini-Mental State Examination(MMSE),1.5-item Geriatric Depression Scale, Barthel Index, instrumental activities of daily living(IADLs)を用いる。
 日本でも,2018年7月にBTK阻害薬イブルチニブの初回治療,2019年3月にリツキシマブ,2019年9月にベネトクラクスが再発および難治性CLL/SLLに対してリツキシマブとの併用療法が承認された。しかし,オファツムマブとアレムツズマブは初回治療としての使用は適用外である。化学療法薬としてはchlorambucilが海外では標準治療薬であるが,日本では未承認である。また,PI3キナーゼ阻害薬は日本では未承認である。
 初回治療は,fitであればフルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブの併用療法とイブルチニブが標準治療として推奨されている(CQ2)。併存疾患などで,標準治療であるFCR療法などの多剤併用化学(免疫)療法が,不可能(unfit)な場合も,イブルチニブや抗体薬を併用する化学免疫療法が標準治療となっている。日本ではベンダムスチンやフルダラビン,シクロホスファミド単剤療法を実施するか,減量したFC療法などを実施する(CQ3)。
 染色体17p欠失もしくはTP53異常(変異と欠失)がある白血病細胞が主体である場合は,予後不良であることが明らかであるため,イブルチニブの使用が推奨される(CQ4)。
 再発や治療抵抗性を示す場合は,再検査によっても染色体17p欠失もしくはTP53異常(変異と欠失)がない場合,2~3年以降の再発は初回治療を再度実施するか(CQ5),ベネトクラクス+リツキシマブ,初回治療でイブルチニブが使用されていなければイブルチニブを考慮する(CQ5)。ハイリスクの患者(2~3年以内の再発,初回治療抵抗性)や染色体17p欠失もしくはTP53異常(変異と欠失)がある場合は,ベネトクラクス+リツキシマブやイブルチニブで救援療法を実施後,部分奏効以上の治療効果がある若年者や染色体17p欠失を有する症例は同種造血幹細胞移植(allogeneic hematopoietic stem cell transplantation:allo-HSCT,同種移植)を考慮する(CQ7)。また,再発例に対して抗CD20抗体オファツムマブと抗CD52抗体アレムツズマブの使用も可能である(CQ67)。自家造血幹細胞移植併用大量化学療法は,ランダム化比較試験で全生存期間の延長を示さないため推奨されない。同種移植は,若年者でハイリスクもしくはウルトラハイリスクの場合で,救援療法に反応がある場合には考慮する(CQ7)。Richter症候群形質転換した場合は,救援治療により完全奏効/部分奏効(CR/PR)に達した場合は造血幹細胞移植が考慮される(CQ8)。

参考文献

1) Eichhorst B, et al. Chronic lymphocytic leukaemia : ESMO Clinical Practice Guidelines for diagnosis, treatment and follow-up. Ann Oncol 2015 ; 26(Supplement 5): v78-v84.(ガイドライン)
2) ESMO Guidelines Committee. eUpdate-Chronic Lymphocytic Leukaemia Treatment Recommendations. 27 June 2017.(ガイドライン)
3) NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Chronic Lymphocytic Leukemia/Small Lymphocytic Lymphoma. version 2. 2020.(ガイドライン)
4) Hallek M. Chronic lymphocytic leukemia : 2020 Update on diagnosis, risk stratification, and treatment. Am J Hematol. 2019 ; 94(11): 1266-87.(レビュー)

 

CQ1 早期CLLに対して治療は勧められるか

推奨グレード
カテゴリー1

活動性の病態がないBinet病期分類AとB,および無症状の改訂Rai分類低リスクおよび中間リスク(Rai分類病期0~Ⅱ期)患者は,治療を開始しても生存の向上には寄与しないため,経過観察することが推奨される。

推奨グレード
カテゴリー2A

進行期(活動性病態のあるBinet AとB期,Binet C期,症状のあるRai分類病期0~Ⅱ期,Rai分類病期Ⅲ~Ⅳ期)の患者は治療を開始することを考慮する。

解説

 海外の臨床試験1, 2)とメタアナリシス3)の結果から,活動性病態がないBinet病期分類AとB,および無症状の改訂Rai分類低リスクおよび中間リスク(Rai分類病期0~Ⅱ期)の時期から治療を開始しても,10年全生存割合が治療群44%,未治療群47%と生存期間の延長は得られなかった。これらのランダム化比較試験は国内未承認薬であるchlorambucilとの比較試験であるが,すべての試験で生存期間の延長を示さなかった。
 早期(Binet A期)CLLのハイリスク(びまん性骨髄浸潤,リンパ球倍加時間が12カ月未満,血清thymidine kinase(TK)>7.0 U/L,またはβ2ミクログロビン>3.5 mg/L)の患者を対象にしたフルダラビン単剤と経過観察を比較したランダム化試験では,フルダラビン治療によりPFSは改善したが,OSの改善はみられなかった4)。またリンパ球倍化時間<12カ月,血清チミジンキナーゼ>10 U/L,unmutated immunoglobulin heavy chain variable region gene(IGHV)statusとFISHによる予後不良細胞遺伝学的異常(11q欠失,17p欠失,trisomy12)の存在という4つの因子のうち2つ以上あればハイリスクと定義し,ハイリスク早期CLL患者に対して,フルダラビン,シクロホスファミド,リツキシマブ併用療法(FCR療法)の早期介入の有用性を検証するランダム化比較第Ⅲ相試験が実施され,EFSの延長は有意に示したが,OSは変わらなかった5)。これらの結果から,現在もハイリスクであっても,早期に治療するメリットはないと考えられる。
 International Workshop on Chronic Lymphocytic Leukemiaの治療開始規準(総論の表2,p.122参照)が示されているが,他の低悪性度リンパ腫とは異なり,進行期の患者で,無治療経過観察と治療群とのランダム化比較試験が実施されたわけではない。しかしほとんどの患者が有症状であり,治療せずに経過観察をすることは不適切と考えられるため,治療を考慮すべきである6-10)

参考文献

1)Dighiero G, et al. Chlorambucil in indolent chronic lymphocytic leukemia. French Cooperative Group on Chronic Lymphocytic Leukemia. N Engl J Med. 1998 ; 338(21): 1506-14.(1iiA)
2)Shustik C, et al. Treatment of early chronic lymphocytic leukemia : intermittent chlorambucil versus observation. Hematol Oncol. 1988 ; 6(1): 7-12.(1iiA)
3)Chemotherapeutic options in chronic lymphocytic leukemia : a meta-analysis of the randomized trials. CLL Trialists’Collaborative Group. J Natl Cancer Inst. 1999 ; 91(10): 861-8.(1iiA)
4)Hoechstetter MA, et al. Early, risk-adapted treatment with fludarabine in Binet stage A chronic lymphocytic leukemia patients : results of the CLL1 trial of the German CLL study group. Leukemia. 2017 ; 31(12): 2833-7.(1iiDiii)
5)Schweighofer CD, et al. Early versus deferred treatment with combined fludarabine, cyclophosphamide and rituximab(FCR)improves event-free survival in patients with high-risk Binet stage A chronic lymphocytic leukemia : first results of a randomized German-French cooperative phase III trial[abstract]. Blood 2013 ; 122(21). Abstract 524.(1iiDi)
6)Hallek M, et al. iwCLL guidelines for diagnosis, indications for treatment, response assessment, and supportive management of CLL. Blood. 2018 ; 131(25): 2745-60.(ガイドライン)
7)Cheson BD, et al. National Cancer Institute-sponsored Working Group guidelines for chronic lymphocytic leukemia : revised guidelines for diagnosis and treatment. Blood. 1996 ; 87(12): 4990-7.(ガイドライン)
8)Eichhorst B, et al. Chronic lymphocytic leukaemia : ESMO Clinical Practice Guidelines for diagnosis, treatment and follow-up. Ann Oncol 2015 ; 26 Suppl 5 : v78-84,(ガイドライン)
9)Hallek M. Chronic lymphocytic leukemia : 2020 Update on diagnosis, risk stratification, and treatment. Am J Hematol. 2019 ; 94(11): 1266-87.(レビュー)
10)Stilgenbauer S, et al. Management of chronic lymphocytic leukemia. Am Soc Clin Oncol Educ Book. 2015 : 164-75.(レビュー)

 

CQ2 標準治療実施可能(fit)な未治療進行期CLLに対して化学免疫療法は勧められるか

推奨グレード
カテゴリー1

17p欠失/TP53変異がなければ化学免疫療法が推奨される。
高齢者ではBTK阻害薬イブルチニブも推奨される。

解説

 抗体薬をフルダラビン+シクロホスファミド(FC)療法に加えることは,ドイツの5つの臨床試験のメタアナリシスの結果からも推奨される1)。FC療法にリツキシマブを加えた治療法(FCR療法)とFC療法の大規模ランダム化比較試験(CLL8試験)2)によりFCR療法が,実施可能であれば標準治療である3, 4)。FCR療法が実施可能な条件としては,CLL8試験の登録基準から考えられることが多い。CLL8試験では年齢制限はなかったが,一般的には年齢は80歳未満であり,併存疾患指数Cumulative Illness Rating Scale(CIRS) score (http://farmacologiaclinica.info/scales/CIRS-G/)のスコアが6以下で,クレアチニン・クリアランスが70 ml/分以上をさすことが多い。しかしFCR療法も17p欠失症例に対しては治療効果が乏しく予後が不良である2)。また,CLL8は長期の治療成績も報告されており,FCR療法はFC療法に比較して,17p欠失症例を除いてPFSもOSも有意に延長しており,サブ解析の結果IGHV遺伝子変異のあるもの予後が特に良好である5)
 フルダラビンの代わりにペントスタチン6),クラドリビン7)も同様に有効であると考えられるが,フルダラビンに比較してエビデンスは乏しい。ベンダムスチン+リツキシマブ(BR)療法とFCR療法の比較試験があるが,治療成績はFCR療法が良好であった8)
 65歳以上の高齢者ではBTK阻害薬であるイブルチニブ単剤治療は,標準治療であったchlorambucilよりPFSとOSを有意に延長し9),BR療法と比較して,OSの延長はみられなかったがPFSを有意に延長させた10)

注1)リツキシマブは第2版第1刷発刊時には適用外であったが,2019年3月より保険適用となった。CLLに対するリツキシマブは500 mg/m2である。
注2)chlorambucilは国内未承認,クラドリビン,ペントスタチンはCLLに対して保険適用外である。
注3)イブルチニブは第2版第1刷発刊時には初回治療は適用外であったが,2018年7月より初回治療も適用となった。

参考文献

1)Cramer P, et al. Outcome of advanced chronic lymphocytic leukemia following different first-line and relapse therapies : a meta-analysis of five prospective trials by the German CLL Study Group(GCLLSG). Haematologica. 2015 ; 100(11): 1451-9.(1iiA)
2)Hallek M, et al. International Group of Investigators ; German Chronic Lymphocytic Leukaemia Study Group. Addition of rituximab to fludarabine and cyclophosphamide in patients with chronic lymphocytic leukaemia : a randomised, open-label, phase 3 trial. Lancet. 2010 ; 376(9747): 1164-74.(1iiDiii)
3)Eichhorst B, et al. Chronic lymphocytic leukaemia : ESMO Clinical Practice Guidelines for diagnosis, treatment and follow-up. Ann Oncol 2015 ; 26 Suppl 5 : v78-84.(ガイドライン)
4)Hallek M. Chronic lymphocytic leukemia : 2020 Update on diagnosis, risk stratification, and treatment. Am J Hematol. 2019 ; 94(11): 1266-87.(レビュー)
5)Fischer K, et al. Long-term remissions after FCR chemoimmunotherapy in previously untreated patients with CLL : updated results of the CLL8 trial. Blood. 2016 ; 127(2): 208-15.(1iiDiii)
6)Reynolds C, et al. A Phase III trial of fludarabine, cyclophosphamide, and rituximab vs. pentostatin, cyclophosphamide, and rituximab in B-cell chronic lymphocytic leukemia. Investigational New Drugs. 2012 ; 30(3): 1232-40.(1iiDiv)
7)Robak T, et al. Comparison of cladribine plus cyclophosphamide with fludarabine plus cyclophosphamide as first-line therapy for chronic lymphocytic leukemia : a phase Ⅲ randomized study by the Polish Adult Leukemia Group(PALG-CLL3 Study). J Clin Oncol. 2010 ; 28(11): 1863-9.(1iiDiv)
8)Eichhorst B, et al. First-line chemoimmunotherapy with bendamustine and rituximab versus fludarabine, cyclophosphamide, and rituximab in patients with advanced chronic lymphocytic leukaemia(CLL10): an international, open-label, randomised, phase 3, non-inferiority trial. Lancet Oncol. 2016 ; 17(7): 928-42.(1iiDiii)
9)Burger JA, et al. Ibrutinib as Initial Therapy for Patients with Chronic Lymphocytic Leukemia. N Engl J Med. 2015 ; 373(25): 2425-37.(1iiDiii)
10)Woyach JA, et al. Ibrutinib Regimens versus Chemoimmunotherapy in Older Patients with Untreated CLL. N Engl J Med. 2018 ; 379(26): 2517-28.(1iiDiii)

 

CQ3 標準治療実施不可能(unfit)な未治療進行期CLLに対して化学免疫療法は勧められるか

推奨グレード
カテゴリー1

17p欠失/TP53異常(変異と欠失)がなければ化学免疫療法が推奨される。BTK阻害薬イブルチニブも推奨される。

解説

 FCR療法が標準治療となったCLL8試験1)では年齢制限はなかったが,一般的には年齢は80歳未満であり,併存疾患指数Cumulative Illness Rating Scale(CIRS)score.(http://farmacologiaclinica.info/scales/CIRS-G/)A CIRS ≤ 6(CIRS)のスコアが6以下で,クレアチニン・クリアランスが70 mL/分以上を適格基準にしたため,この条件がFCR療法を実施する基準になっていることが多い。
 FCR療法などの化学免疫療法が実施できない高齢者ならびに,併存疾患があり標準治療が不可能な場合の標準治療は確立されていない。従来は,65歳以上の患者を対象にしたフルダラビンとchlorambucilのランダム化比較試験で,フルダラビンの優位性は証明されず2),高齢者に対するフルラダラビン+シクロホスファミド併用療法はフルダラビン単独療法に比較して奏効割合は高いが,生存期間は延長せず,骨髄抑制などの有害事象の頻度が高い3)ため,欧米ではchlorambucil単独療法が標準治療とされてきた。国内ではchlorambucilが未承認薬のため使用できないため,フルダラビンを中心とする治療が実施されるが,その用量は決定されていない。少数例であるが前方視研究で,経口フルダラビン+シクロホスファミドの有効性が報告されている4)
 年齢の制限がない大規模臨床試験では,年齢により治療成績の差はみられない1, 5)。しかし,実際は高齢者や併存疾患がある患者では通常量での標準治療を実施することは困難であり,患者個々の状況をよく把握し,治療方法の選択をすべきである。
 Chloramubucilとリツキシマブ併用の第Ⅱ相の比較試験が報告されている6, 7)。Chloramubucilと抗体薬の併用の有効性は,リツキシマブならびにオビヌツズマブ(保険適用外)併用療法の治療成績が良好である8)。またオファツムマブ(初回治療は適用外)との併用もランダム化比較第Ⅲ相試験で,有効性が証明されている9)。ベンダムスチン単剤との比較試験10)が実施され,ORRとPFSは優れており,有害事象も管理可能であった。またFCR療法とBR療法の非劣性をみる比較第Ⅲ相試験が実施され,65歳以上に限ればBR療法はFCR療法とPFSは特に差はなく,有害事象も軽度であった5)。そのため,高齢者やunfitな患者にはBR療法がよいのではないかと考えられているが,エビデンスは高くない11)。また,減量をしたFC療法にリツキシマブを加えた治療も後方視研究であるが報告され,この場合は外来治療が可能であったと報告されている12, 13)
 これらの報告からchlorambucil(国内未承認),ベンダムスチンにリツキシマブやオファツムマブ(保険適用外),オビヌツズマブ(保険適用外)などの化学免疫療法が推奨される。
 65歳以上の高齢者ではBTK阻害薬であるイブルチニブ単剤治療は,標準治療であったchlorambucilよりPFSとOSを有意に延長し9),BR療法と比較して,OSの延長はみられなかったがPFSを有意に延長させた10)。これらの試験結果からunfitなCLL患者に対して初回治療からイブルチニブが標準治療になるが,高価な薬剤であり医療経済的な側面も考慮する必要があると考えられる。

注1)リツキシマブは第2版第1刷発刊時には初回治療は適用外であったが,2019年3月より初回治療も保険適用となった。
注2)イブルチニブは第2版第1刷発刊時には初回治療は適用外であったが,2018年7月より初回治療も適用となった。

参考文献

1)Hallek M, et al. International Group of Investigators ; German Chronic Lymphocytic Leukaemia Study Group. Addition of rituximab to fludarabine and cyclophosphamide in patients with chronic lymphocytic leukaemia : a randomised, open-label, phase 3 trial. Lancet. 2010 ; 376(9747): 1164-74.(1iiDiii)
2)Eichhorst BF, et al. German CLL Study Group(GCLLSG). First-line therapy with fludarabine compared with chlorambucil does not result in a major benefit for elderly patients with advanced chronic lymphocytic leukemia. Blood. 2009 ; 114(16): 3382-91.(1iiA)
3)Catovsky D, et al. UK National Cancer Research Institute( NCRI) Haematological Oncology Clinical Studies Group ; NCRI Chronic Lymphocytic Leukaemia Working Group. Assessment of fludarabine plus cyclophosphamide for patients with chronic lymphocytic leukaemia(the LRF CLL4 Trial): a randomised controlled trial. Lancet. 2007 ; 370(9583): 230-9.(1iiA/1iiDiii
4)Forconi F, et al. Low-dose oral fludarabine plus cyclophosphamide in elderly patients with untreated and relapsed or refractory chronic lymphocytic leukaemia. Hematol Oncol. 2008 ; 26(4): 247-51.(3iiiA)
5)Eichhorst B, et al. First-line chemoimmunotherapy with bendamustine and rituximab versus fludarabine, cyclophosphamide, and rituximab in patients with advanced chronic lymphocytic leukaemia(CLL10): an international, open-label, randomised, phase 3, non-inferiority trial. Lancet Oncol. 2016 ; 17(7): 928-42.(1iiDiii)
6)Hillmen P, et al. Rituximab plus chlorambucil as first-line treatment for chronic lymphocytic leukemia : Final analysis of an open-label phase II study. J Clin Oncol. 2014 ; 32(12): 1236-41.(3iiDiv)
7)Foà R, et al. Chlorambucil plus rituximab with or without maintenance rituximab as first-line treatment for elderly chronic lymphocytic leukemia patients. Am J Hematol. 2014 ; 89(5): 480-6.(3iiDiv)
8)Goede V, et al. Obinutuzumab plus chlorambucil in patients with CLL and coexisting conditions. N Engl J Med. 2014 ; 370(12): 1101-10.(1iiDiii)
9)Hillmen P, et al. Chlorambucil plus ofatumumab versus chlorambucil alone in previously untreated patients with chronic lymphocytic leukaemia(COMPLEMENT 1) : a randomised, multicentre, open-label phase 3 trial. Lancet. 2015 ; 385(9980): 1873-83.(1iiDiii)
10)Knauf WU, et al. Phase Ⅲ randomized study of bendamustine compared with chlorambucil in previously untreated patients with chronic lymphocytic leukemia. J Clin Oncol. 2009 ; 27(26): 4378-84.(1iiDiii)
11)Laurenti L, et al. Bendamustine in combination with rituximab for elderly patients with previously untreated B-cell chronic lymphocytic leukemia : A retrospective analysis of real-life practice in Italian hematology departments. Leuk Res. 2015 ; 39(10): 1066-70.(3iiiDiv)
12)Foon KA, et al. Chemoimmunotherapy with low-dose fludarabine and cyclophosphamide and high dose rituximab in previously untreated patients with chronic lymphocytic leukemia. J Clin Oncol. 2009 ; 27(4): 498-503.(3iiiDiv)
13)Gozzetti A, et al. Chemoimmunotherapy with oral low-dose fludarabine, cyclophosphamide and rituximab(old-FCR)as treatment for elderly patients with chronic lymphocytic leukaemia. Leuk Res. 2014 ; 38(8): 891-5.(3iiiA)
14)Burger JA, et al. Ibrutinib as Initial Therapy for Patients with Chronic Lymphocytic Leukemia. N Engl J Med. 2015 ; 373(25): 2425-37.(1iiDiii)
15)Woyach JA, et al. Ibrutinib Regimens versus Chemoimmunotherapy in Older Patients with Untreated CLL. N Engl J Med. 2018 ; 379(26): 2517-28.(1iiDiii)

 

CQ4 17p欠失/TP53異常(変異と欠失)のある進行期CLLに対してBTK阻害薬や抗CD52抗体薬は勧められるか

推奨グレード
カテゴリー1

17p欠失/TP53異常(変異と欠失)のある進行期CLLでは,BTK阻害薬であるイブルチニブの使用が推奨される。

解説

 染色体17p欠失とTP53異常(変異と欠失)があると,化学免疫療法に抵抗性である1-3)。染色体17p欠失/TP53異常(変異と欠失)を持つ白血病細胞が多くなれば,これらの細胞は,フルダラビンなどの抗がん薬に抵抗性であり,50%OSは2~5年と不良である1)
 17p欠失/TP53異常(変異と欠失)は診断時5%未満にみられるが,治療開始時には10%,治療抵抗性になった場合は50%近くまで増加してくる4)ため,17p欠失/TP53異常(変異と欠失)の検査は,治療法の変更の前には実施することが推奨される2)
 17p欠失/TP53異常(変異と欠失)のある患者に対しても,BTK阻害薬であるイブルチニブ単独療法が有効である5-7)
 65歳以上の高齢者ではBTK阻害薬であるイブルチニブ単剤治療は,BR療法と比較して,PFSを有意に延長させた。17p欠失/TP53変異を有する場合も有効であった8)

注)イブルチニブは第2版第1刷発刊時には初回治療は適用外であったが,2018年7月より初回治療も保険適用となった。

参考文献

1)Hallek M, et al. Addition of rituximab to fludarabineand cyclophosphamide in patients with chronic lymphocytic leukemia : a randomised, open-label, phase III trial. Lancet. 2010 ; 376(9747): 1164-74.(1iiDiii)
2)Eichhorst B, et al. Chronic lymphocytic leukaemia : ESMO Clinical Practice Guidelines for diagnosis, treatment and follow-up. Ann Oncol 2015 ; 26 Suppl 5 : v78-84.(ガイドライン)
3)ESMO Guidelines Committee. eUpdate-Chronic Lymphocytic Leukaemia Treatment Recommendations. 27 June 2017.(ガイドライン)
4)Zent CS, et al. Mutations in chronic lymphocytic leukemia and how they affect therapy choice : focus on NOTCH1, SF3B1, and TP53. Hematology Am Soc Hematol Educ Program. 2014 ; 2014(1): 119-24.(レビュー)
5)Byrd JC, et al. Targeting BTK with ibrutinib in relapsed chronic lymphocytic leukemia. N Engl J Med. 2013 ; 369(1): 32-42.(3iii3iv)
6)Burger JA, et al. Safety and activity of ibrutinib plus rituximab for patients with high-risk chronic lymphocytic leukaemia : a single-arm, phase 2 study. Lancet Oncol. 2014 ; 15(10): 1090-9.(3iiiDi)
7)Farooqui MZ, et al. Ibrutinib for previously untreated and relapsed or refractory chronic lymphocytic leukaemia with TP53 aberrations : a phase 2, single-arm trial. Lancet Oncol. 2015 ; 16(2): 169-76.(3iiiDiv)
8)Woyach JA, et al. Ibrutinib Regimens versus Chemoimmunotherapy in Older Patients with Untreated CLL. N Engl J Med. 2018 ; 379(26): 2517-28.(1iiDiii)

 

CQ5 晩期再発CLLに対して初回治療と同様の治療は勧められるか

推奨グレード
カテゴリー2A

24~36カ月以降の再発は,初回治療と同様な治療を考慮する。

推奨グレード
カテゴリー2A

化学療法単独治療後の再発には化学免疫療法を考慮する。

解説

 CLLの再発の場合は,2~3年以内の早期再発と2~3年以降の晩期再発に分けて考える必要がある。2~3年以降の晩期再発は,初回治療と同様の治療を実施することは,ドイツの5つの前方視的試験のメタアナリシスの結果,デメリットがなく考慮すべき治療であることが示された1)。3年以降の再発で,再びFCR療法を受けた場合の5年OS割合は70%で,その他の治療を実施した場合は,50% OSは37カ月と有意に短かった(p<0.001)2)。これらのことから,FCR療法を初回治療実施後,3年以降の再発CLLはFCR療法を繰り返すことで,良好な結果を得ることができ,FCR療法の再投与は妥当な治療と考えられる3)
 さらに,初回治療と同様に抗体薬を併用することが,FCR療法,BR療法などの前方視的比較試験,後方視的研究で,有意に予後を改善することが報告されている4-7)
 初回治療でイブルチニブが使用されていない場合は,イブルチニブが有効であり8),長期の観察でも有効性が確認された9)。さらに再発・難治例にはベネトクラクス+リツキシマブ療法の優れた治療成績が報告されている10)

注1)イブルチニブは第2版第1刷発刊時には初回治療は適用外であったが,2018年7月より初回治療も保険適用となった。
注2)第2版第1刷発刊時にはベネトクラクスは未承認であったが,2019年9月よりリツキシマブと併用で保険適用となった。

参考文献

1)Cramer P, et al. Outcome of advanced chronic lymphocytic leukemia following different first-line and relapse therapies : a meta-analysis of five prospective trials by the German CLL Study Group(GCLLSG). Haematologica. 2015 ; 100(11): 1451-9.(1iiA)
2)Tam CS, et al. Long-term results of first salvage treatment in CLL patients treated initially with FCR(fludarabine, cyclophosphamide, rituximab). Blood. 2014 ; 124(20): 3059-64.(3iiiDiii)
3)Eichhorst B, et al. Chronic lymphocytic leukaemia : ESMO Clinical Practice Guidelines for diagnosis, treatment and follow-up. Ann Oncol 2015 ; 26 Suppl 5 : v78-84.(ガイドライン)
4)Robak T, et al. Rituximab plus fludarabine and cyclophosphamide prolongs progression-free survival compared with fludarabine and cyclophosphamide alone in previously treated chronic lymphocytic leukemia. J Clin Oncol. 2010 ; 28(10): 1756-65.(1iiDiii)
5)Leblond V, et al. Rituximab in Combination with Bendamustine or Chlorambucil for Treating Patients with Chronic Lymphocytic Leukemia : Interim Results of a Phase IIIb Study(MaBLe). Blood. 2012 ; 120 : 2744.(abstract)(1iiDiv)
6)Fischer K, et al. Bendamustine combined with rituximab in patients with relapsed and/or refractory chronic lymphocytic leukemia : A multicenter phase Ⅱ trial of the German Chronic Lymphocytic Leukemia Study Group. J Clin Oncol. 2011 ; 29(26): 3559-66.(3iiiDiv)
7)Fornecker LM, et al. Salvage outcomes in patients with first relapse after fludarabine, cyclophosphamide, and rituximab for chronic lymphocytic leukemia : the French intergroup experience. Am J Hematol. 2015 ; 90(6): 511-4.(3iiiDiii)
8)Byrd JC, et al. Ibrutinib versus ofatumumab in previously treated chronic lymphoid leukemia. N Engl J Med. 2014 ; 371(3): 213-23.(1iiDiii)
9)Byrd JC, et al. Long-term follow-up of the RESONATE phase 3 trial of ibrutinib vs ofatumumab. Blood. 2019 ; 133(19): 2031-42.(1iiDiii)
10)Seymour JF, et al. Venetoclax-Rituximab in relapsed or refractory chronic lymphocytic leukemia. N Engl J Med. 2018 ; 378(12): 1107-20.(1iiDiii)

 

CQ6 治療抵抗性・早期再発CLLに対してBCL-2阻害薬やBTK阻害薬は勧められるか

推奨グレード
カテゴリー1

高リスク患者,染色体17p欠失やTP53異常(変異と欠失)がある場合は通常の化学療法に対して難治性であるが,ベネトクラクスやイブルチニブが有効である。

推奨グレード
カテゴリー2A

治療抵抗性である染色体17p欠失もしくはTP53異常(変異と欠失)のある再発にはアレムツズマブを考慮する。また,オファツムマブも考慮する。

解説

 ハイリスク患者(化学免疫療法から1年以内の再発17p13.1欠失/TP53異常(変異と欠失)のいずれか1つがみられる)は,通常の化学免疫療法に対して,治療抵抗性である。BTK阻害薬イブルチニブは,これらのハイリスク患者において,優れた効果を示している1-4)高齢者や併存疾患がある患者においても有効である4)。また,海外のガイドラインでは,再発17p13.1欠失/TP53異常(変異と欠失)がある患者で,BTK阻害薬に抵抗性,もしくは使用できない場合には,BCL-2阻害薬ベネトクラクス(リツキシマブ併用)が推奨されている5, 6)。ベネトクラクスは,腫瘍崩壊症候群をきたすことがあり,使用方法には注意を要する6)
 フルダラビン治療後の再発や治療抵抗性で,17p欠失/TP53異常(変異と欠失)がある場合はアレムツズマブが有効とされるが,ウイルス感染などの再活性化など感染症の増加が報告されている7-10)。再発または難治性のCLLに対してリツキシマブとは異なるエピトープを認識する抗CD20抗体薬オファツムマブが承認された。そのため,フルダラビンやアレムツズマブ抵抗性の場合だけでなく,リツキシマブ治療後でもオファツムマブが有効なことがある11)

参考文献

1)Byrd JC, et al. Targeting BTK with ibrutinib in relapsed chronic lymphocytic leukemia. N Engl J Med. 2013 ; 369(1): 32-42.(3iiiDiv)
2)Burger JA, et al. Safety and activity of ibrutinib plus rituximab for patients with high-risk chronic lymphocytic leukaemia : a single-arm, phase 2 study. Lancet Oncol. 2014 ; 15(10): 1090-9.(3iiiDi)
3)Farooqui MZ, et al. Ibrutinib for previously untreated and relapsed or refractory chronic lymphocytic leukaemia with TP53 aberrations : a phase 2, single-arm trial. Lancet Oncol. 2015 ; 16(2): 169-76.(3iiiDiv)
4)Byrd JC, et al. Ibrutinib versus ofatumumab in previously treated chronic lymphoid leukemia. N Engl J Med. 2014 ; 371(3): 213-23.(1iiiDiii)
5)ESMO Guidelines Committee. eUpdate-Chronic Lymphocytic Leukaemia Treatment Recommendations. 27 June 2017.(ガイドライン)
6)Seymour JF, et al. Venetoclax-Rituximab in Relapsed or Refractory Chronic Lymphocytic Leukemia. N Engl J Med. 2018 ; 378(12): 1107-20.(1iiDiii)
7)Lozanski G, et al. Alemtuzumab is an effective therapy for chronic lymphocytic leukemia with p53 mutations and deletions. Blood. 2004 ; 103(9): 3278-81.(3iiiDiv)
8)Stilgenbauer S, et al. German Chronic Lymphocytic Leukemia Study Group. Subcutaneous alemtuzumab in fludarabine-refractory chronic lymphocytic leukemia : clinical results and prognostic marker analyses from the CLL2H study of the German Chronic Lymphocytic Leukemia Study Group. J Clin Oncol. 2009 ; 27(24): 3994-4001.(3iiiDiv)
9)Pettitt AR, et al. Alemtuzumab in combination with methylprednisolone is a highly effective induction regimen for patients with chronic lymphocytic leukemia and deletion of TP53 : final results of the national cancer research institute CLL206 trial. J Clin Oncol. 2012 ; 30(14): 1647-55.(3iiiDiv)
10)Elter T, et al. Fludarabine plus alemtuzumab versus fludarabine alone in patients with previously treated chronic lymphocytic leukaemia : a randomised phase 3 trial. Lancet Oncol. 2011 ; 12(13): 1204-13.(1iiDiii)
11)Wierda WG, et al. Hx-CD20-406 Study Investigators. Ofatumumab is active in patients with fludarabinerefractory CLL irrespective of prior rituximab : results from the phase 2 international study. Blood. 2011 ; 118(19): 5126-9.(3iiiDiv)

 

CQ7 再発CLLに対して造血幹細胞移植は勧められるか

推奨グレード
カテゴリー4

自家造血幹細胞移植併用大量化学療法はCLLに対する治療として推奨されない。

推奨グレード
カテゴリー2B

同種造血幹細胞移植は,予後不良な染色体異常を持つ患者やハイリスクな患者で完全奏効/部分奏効(CR/PR)に達した場合は,長期予後を改善する治療法として考慮される。

解説

 CLLに対する自家造血幹細胞移植併用大量化学療法(high-dose chemotherapy with autologous hematopoietic stem cell transplantation:HDC/AHSCT)(自家移植)の有効性は,ランダム化比較試験で初発1, 2)および再発1)患者で検証され,CR割合,無イベント生存期間(EFS)や無増悪生存期間(PFS)は自家移植群が有意に優れていたが,全生存期間(OS)の改善はみられなかった。標準治療であるFCRとも比較され,CR割合は自家移植が優れていたが,PFS,OSは変わらなかった3)。未治療あるいは再発のCLL患者に対する地固め療法として自家移植を行っても,全生存期間を延長する効果は認められず,骨髄異形成症候群をはじめとする二次発がんの頻度が高まる危険があるため,CLLに対する治療として自家移植は推奨されない。
 同種造血幹細胞移植(allo-HSCT,同種移植)は,BTK阻害薬などの新規薬剤が導入されても治癒困難と考えられるCLLに対し治癒が可能な唯一の治療法と考えられる。高リスクCLL(17p欠失/TP53異常(変異と欠失)の有無にかかわらず,①プリンアナログ抵抗性,② FCRもしくはFCR類似療法後2年以内の再発したもの)が対象とされる4)。さらに,染色体17p欠失/TP53異常(変異と欠失)を持つ異常細胞が多くなれば,これらの細胞は化学免疫療法抵抗性で,予後不良であるため,患者がfitな状態であれば,第1 CRでの同種移植が推奨されている5, 6)。前方視的解析7, 8)の結果から,同種移植により移植片対白血病(GVL)効果が得られ,CLL患者の長期生存が期待される。また。後方視的解析9)あるが,多変量解析では,染色体17p欠失の有無およびプリンアナログ治療に対する抵抗性は予後不良因子として検出されず,同種移植を行うことでこれらの予後不良因子は克服されると考えられる。他の後方視研究から,非寛解期の患者および径5 cmを超えるリンパ節腫脹がある患者は,同種移植を行っても再発する危険性が高く長期予後は不良である10)
 前処置に関しては,myeloablative conditioning(MAC)とreduced-intensity conditioning(RIC)があり,骨髄破壊的造血幹細胞移植では再発以外の原因での死亡率が高いため,大半の臨床試験では骨髄非破壊的造血幹細胞移植が実施されているが,両者の直接の比較試験は行われていないため,エビデンスレベルの高いものはない。後方視的研究であるが,ハイリスクCLLにもRICによる同種移植の有効性が示されている10-12)
 17p欠失/TP53異常(変異と欠失)や他の予後不良の遺伝子異常を有するCLLに対してもイブルチニブなどのBCR関連シグナル阻害薬が一定の効果を示すことから,これらの薬剤も選択肢として挙げられている5, 6)。ただ,これらの分子標的薬がCLLの治癒をもたらす可能性は低く,同種移植の役割はなくなることはないと考えられる。日本でも再発・難治CLLに対してイブルチニブやベネトクラクスが使用可能となっており,同種移植の有用性と危険性を考慮した実施が必要である。

参考文献

1)Michallet M, et al ; EBMT Chronic Leukemia Working Party. Autologous hematopoietic stem cell transplantation in chronic lymphocytic leukemia : results of European intergroup randomized trial comparing autografting versus observation. Blood. 2011 ; 117(5): 1516-21.(1iiDi)
2)Sutton L, et al ; Société Française de Greffe de Moelle et de Thérapie Cellulaire(SFGM-TC)and Groupe Français d’étude de la Leucémie Lymphoïde Chronique (GFLLC). Autologous stem cell transplantation as a first-line treatment strategy for chronic lymphocytic leukemia : a multicenter, randomized, controlled trial from the SFGM-TC and GFLLC. Blood. 2011 ; 117(23): 6109-19.(1iiDi)
3)Magni M, et al. Results of a randomized trial comparing high-dose chemotherapy plus Auto-SCT and R-FC in CLL at diagnosis. Bone Marrow Transplant. 2014 ; 49(4): 485-91.(1iiDiv)
4)Zenz T, et al. Risk categories and refractory CLL in the era of chemoimmunotherapy. Blood. 2012 ; 119(18): 4101-7.(レビュー)
5)Eichhorst B, et al. Chronic lymphocytic leukaemia: ESMO Clinical Practice Guidelines for diagnosis, treatment and follow-up. Ann Oncol. 2015 Sep ; 26 Suppl 5 : v78-84.(ガイドライン)
6)NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Chronic Lymphocytic Leukemia/Small Lymphocytic Lymphoma. Version 2. 2020.(ガイドライン)
7)Schetelig J, et al. Allogeneic hematopoietic stem-cell transplantation for chronic lymphocytic leukemia with 17p deletion : a retrospective European Group for Blood and Marrow Transplantation analysis. J Clin Oncol. 2008 ; 26(31): 5094-100.(3iiiA)
8)Dreger P, et al. German CLL Study Group. Allogeneic stem cell transplantation provides durable disease control in poor-risk chronic lymphocytic leukemia : long-term clinical and MRD results of the German CLL Study Group CLL3X trial. Blood. 2010 ; 116(14): 2438-47.(3iiiA)
9)Schetelig J, et al. Allogeneic hematopoietic stem-cell transplantation for chronic lymphocytic leukemia with 17p deletion : a retrospective European Group for Blood and Marrow Transplantation analysis. J Clin Oncol. 2008 ; 26(31): 5094-100.(3iiiA)
10)Sorror ML, et al. Five-year follow-up of patients with advanced chronic lymphocytic leukemia treated with allogeneic hematopoietic cell transplantation after nonmyeloablative conditioning. J Clin Oncol. 2008 ; 26(30): 4912-20.(3iiiA)
11)Sobecks RM, et al. Outcomes of human leukocyte antigen-matched sibling donor hematopoietic cell transplantation in chronic lymphocytic leukemia : myeloablative versus reduced-intensity conditioning regimens. Biol Blood Marrow Transplant. 2014 ; 20(9): 1390-8.(3iiiDiii)
12)Brown JR, et al. Long-term follow-up of reduced-intensity allogeneic stem cell transplantation for chronic lymphocytic leukemia : prognostic model to predict outcome. Leukemia. 2013 ; 27(2): 362-9.(3iiiA)

 

CQ8 組織学的形質転換をきたしたCLL(Richter症候群)に対して造血幹細胞移植は勧められるか

推奨グレード
カテゴリー2B

Richter症候群に対する造血幹細胞移植は,救援治療により完全奏効/部分奏効(CR/PR)に達した場合は考慮される。また,適切なドナーがいた場合はRICによる同種移植を考慮する。

解説

 CLLからアグレッシブリンパ腫に形質転換することで,多くはdiffuse large B-cell lymphoma(DLBCL)に転化することが多い。治療前は0.5%/年,治療後は1%/年のRSへの形質転換のリスクがある1)。Richter症候群への形質転換はTP53, CDKN2A(p16INK4A)またはCDKN1A(p21)の異常,p27欠失,BCL2高発現,CD38とZAP-70高発現,IGHV陰性,IGHV4-39/IGHD6-13/IGHJ5,17p欠失および11q欠失,NOTCH1変異,などが危険因子として挙げられている1-3)。アルキル化薬やプリンアナログ薬の使用によりRichter症候群へのリスクが3倍になるという報告もあるが,関連はないという報告もあり明らかではない。新規分子標的薬に関しては,イブルチニブにより治療された患者の8%にRichter症候群が発生したとの報告もあるが,多くの前治療に加え,Richter症候群のクローンが治療前よりあったのではないかとの指摘もあり,関連は明確ではない2)。Richter症候群の腫瘍細胞は,もとのCLL細胞との関連は,20%の症例で無関係であり,80%の症例では関係があるとされている。CLLのクローンと無関係のRichter症候群症例は,de novoのDLBCLと予後は似ているが,CLLのクローンと関連のあるRichter症候群については形質転換後のOSは約1年である4)。上記よりRichter症候群に対する治療に関しては,大切なことはRichter症候群の腫瘍細胞はCLL細胞のクローンと関連性である。関連のない場合は,de novoのDLBCLに準じて治療を行うと総説には記載されている2)
 しかし,CLLクローンとの関連を検索することは本邦においては困難である。また,前方視的試験は少数例のものがあるだけで,エビデンスの高い臨床研究はない。Richter症候群に対するRCHOP療法の有効性をみるための前方視的試験(CLL2G)がドイツで実施され15例の小規模ではあるが,ORR 67%,CRは7%,50%OSは27カ月と報告されている5)。その他,hyper-CVXD療法(fractionated cyclophosphamide,vincristine,liposomal daunorubicin,dexamethasone)などさまざまな治療法が実施されているが,標準的な治療は未確立である3, 6, 7)。後方視研究であるがリツキシマブ併用はOSの延長がみられた8)
 治療に反応し,寛解状態が得られたならば,地固め療法として造血幹細胞移植を考慮する。その場合,適切なドナーがいれば同種移植を,いなければ自家移植を考慮する9, 10)。Hodgkinリンパ腫に稀に形質転換することがあるが,この場合はHodgkinリンパ腫の治療に準ずる2, 7)

参考文献

1)Parikh SA, et al. Diffuse large B-cell lymphoma( Richter syndrome) in patients with chronic lymphocytic leukaemia (CLL) : a cohort study of newly diagnosed patients. Br J Haematol. 2013 ; 162(6): 774-82.(3iiiA)
2)Parikh SA, et al. How we treat Richter syndrome. Blood. 2014 ; 123(11): 1647-57.(レビュー)
3)Eyre TA, Schuh A. An update for Richter syndrome-new directions and developments. Br J Haematol. 2017 ; 178(4): 508-20.(レビュー)
4)Rossi D, et al. The genetics of Richter syndrome reveals disease heterogeneity and predicts survival after transformation. Blood. 2011 ; 117(12): 3391-401.(3iiiA)
5)Langerbeins P, et al. Poor efficacy and tolerability of R-CHOP in relapsed/refractory chronic lymphocytic leukemia and Richter transformation. Am J Hematol. 2014 ; 89(12): E239-43.(3iiiDiv)
6)Eichhorst B, et al. Chronic lymphocytic leukaemia: ESMO Clinical Practice Guidelines for diagnosis, treatment and follow-up. Ann Oncol. 2015 Sep ; 26 Suppl 5 : v78-84.(ガイドライン)
7)NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Chronic Lymphocytic Leukemia/Small Lymphocytic Lymphoma. Version 2. 2020.(ガイドライン)
8)Tadmor T, et al. Richter’s transformation to diffuse large B-cell lymphoma : a retrospective study reporting clinical data, outcome, and the benefit of adding rituximab to chemotherapy, from the Israeli CLL Study Group. Am J Hematol. 2014 ; 89(11): E218-22.(3iiiA)
9)Tsimberidou AM, et al. Clinical outcomes and prognostic factors in patients with Richter’s syndrome treated with chemotherapy or chemoimmunotherapy with or without stem-cell transplantation. J Clin Oncol. 2006 ; 24(15): 2343-51.(3iiiDiv)
10)Cwynarski K, et al. Autologous and allogeneic stem-cell transplantation for transformed chronic lymphocytic leukemia (Richter’s syndrome): A retrospective analysis from the chronic lymphocytic leukemia subcommittee of the chronic leukemia working party and lymphoma working party of the European Group for Blood and Marrow Transplantation. J Clin Oncol. 2012 ; 30(18): 2211-7.(3iiiA)

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