造血器腫瘍診療ガイドライン

Ⅰ章 白血病

Ⅰ 白血病

4 慢性骨髄性白血病/ 骨髄増殖性腫瘍
(chronic myelogenous leukemia : CML/myeloproliferative neoplasms:MPN)
総論

 骨髄増殖性腫瘍(myeloproliferative neoplasms:MPN)は,造血幹細胞レベルでの腫瘍化によって発症する疾患であり,骨髄系細胞(顆粒球,赤芽球,骨髄巨核球,肥満細胞)の著しい増殖を特徴とする1)。MPN には,慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia:CML),慢性好中球性白血病(chronic neutrophilic leukemia:CNL),真性赤血球増加症または真性多血症(polycythemia vera:PV),原発性骨髄線維症(primary myelofibrosis:PMF),本態性血小板血症(essential thrombocythemia:ET),慢性好酸球性白血病(chronic eosinophilic leukemia:CEL),好酸球増加症候群(hypereosinophilic syndrome:HES),肥満細胞症(mastocytosis),分類不能骨髄増殖性腫瘍(myeloproliferative neoplasms,unclassifiable:MPN, U)が含まれる。発症初期のMPN は,分化能を有する骨髄細胞の過形成と,末梢血における顆粒球,赤血球,血小板の増加を示す。理学的には脾腫や肝種大を認める。MPN は発症時期,自覚症状に乏しいが,全身症状を伴い段階的に増悪し,最終的には骨髄の線維化,あるいは,形質転換して成熟能喪失(急性転化)へ至り,骨髄不全という致死的な終末期へと進行する。MPN の治療については,CML とそれ以外のMPN では方針が異なる。本ガイドラインでは,MPN のうち主にCML とPV,ET,そしてPMF の治療を提示する。

1.慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia:CML)
1)病期
 CML は,多能性造血幹細胞の異常により惹起される白血病でt(9;22)(q34;q11)により形成されるPhiladelphia(Ph)染色体を特徴とする。Ph 染色体上のBCR-ABL1 融合遺伝子にコードされて産生されるBCR-ABL チロシンキナーゼ(tyrosine kinase:TK)が恒常的に活性化し,白血病細胞の増殖に関与し,3 つの病期を経て進行する2)。CML は,白血球や血小板の増加を認めるが自覚症状の乏しい慢性期(chronic phase:CP,診断後約3~5 年間)で多くの患者(85%)が診断され,顆粒球の分化異常が進行する移行期(accelerated phase:AP,3~9 カ月間)を経て,未分化な芽球が増加して急性白血病に類似する急性転化期(blast phase:BP,約3~6 カ月)へ進展し致死的となる。WHO 分類(2008)の規準に従いCP,AP,BP 期が定義される(表1)。
【第1.2版修正】
European LeukemiaNet (ELN)またはWHO 分類(2008)の規準に従いAP,BP 期が定義される(表1)。
2)CML の予後分類
 初診時の年齢,脾腫(肋骨弓下cm),血小板数,末梢血芽球(%)の4 因子を用いて計算されるSokal スコア3)や,年齢,脾腫(肋骨弓下cm),末梢血芽球(%),末梢血好酸球数(%),末梢血好塩基球(%),血小板数の6 因子を用いて計算されるHasford スコア4)は,これまでも化学療法やインターフェロンα(IFNα)療法時代に用いられてきたが,イマチニブ治療においても有用であり,Low,Intermediate,High の3 リスク群に分類される(http://www.leukemia-net.org/content/leukemias/cml/cml_score/)。イマチニブ治療患者を対象とした解析より構築された予後予測システムEUTOS スコア5) は, 初診時の好塩基球(%) と脾腫のみで計算され(7×basophils%+4×spleen size cm),87 以下のLow と87 より大きいHigh の2 リスク群が提唱されている(http://www.leukemia-net.org/content/leukemias/cml/eutos_score/)。

表1 WHO 分類(2008)によるCML の病期分類

慢性期(chronic phase)
以下の移行期,急性芽球転化期を満たさないもの
移行期(accelerated phase)
以下のいずれかひとつに該当するもの
  • ・末梢血あるいは骨髄における芽球割合10 〜19%
  • ・末梢血における好塩基球割合≧20%
  • ・血小板数治療に無関係の血小板減少(<10,000/μL)
    治療が奏効しない血小板増加(>1,000,000/μL)
  • ・白血球数および脾腫治療が奏効しない持続する白血球増加(>10,000/μL)
    ±持続あるいは増強する脾腫
  • ・染色体異常付加的な染色体異常の発現
急性転化期(blast phase)
下記のいずれかひとつに該当するもの
  • ・末梢血あるいは骨盤における芽球割合≧20%
  • ・髄外浸潤髄外病変の出現
    骨髄生検標本で芽球の大きな集積像を認める

【第1.2版修正】

表1 European LeukemiaNet (ELN)またはWHO 分類(2008)によるCML の病期分類

移行期(accelerated phase)
WHO 分類 以下のいずれかひとつに該当するもの
  • ・末梢血あるいは骨髄における芽球割合10 〜19%
  • ・末梢血における好塩基球割合≧20%
  • ・血小板数治療に無関係の血小板減少(<10,000/ μL)
    治療が奏効しない血小板増加(>1,000,000/ μL)
  • ・白血球数および脾腫治療が奏効しない持続する白血球増加(>10,000/ μL)
    ±持続あるいは増強する脾腫
  • ・染色体異常付加的な染色体異常の発現

ELN 分類 以下のいずれかひとつに該当するもの
  • ・末梢血あるいは骨髄における芽球割合15 ~29%, または芽球と前骨髄芽球が30%以上
  • ・末梢血における好塩基球割合≧20%
  • ・血小板数治療に無関係の血小板減少(<10,000/ μL)
  • ・染色体異常付加的な染色体異常の発現(major route)
急性転化期(blast phase)
WHO 分類 下記のいずれかひとつに該当するもの
  • ・末梢血あるいは骨盤における芽球割合≧20%
  • ・髄外浸潤髄外病変の出現
    骨髄生検標本で芽球の大きな集積像を認める

ELN 分類 下記のいずれかひとつに該当するもの
  • ・末梢血あるいは骨盤における芽球割合≧30%
  • ・髄外浸潤髄外病変の出現

3)CML の治療効果判定
 CML 治療のコンセプトはPh 陽性(BCR-ABL1 陽性)白血病細胞のコントロールと病期進行の回避にあり,治療効果はEuropean LeukemiaNet(ELN)の判定規準に従う6)7)(表2)。
 CP 期の治療効果は,血液学的奏効(hematologic response:HR),細胞遺伝学的奏効(cytogenetic response:CyR),分子遺伝学的奏効(molecular response:MR)の3 つのレベルで判定する(表2)。HR は末梢血所見の改善,CyR は骨髄細胞中のPh 染色体割合で,MR はポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)により血液細胞中のBCR-ABL1 遺伝子発現量で判断される。AP/BC 期では,血液学的奏効規準がCP 期と異なるが,CyR とMR は同じ規準を用いる。
4)CML の治療概略
①BCR-ABL1チロシンキナーゼ阻害剤療法: BCR-ABL1 チロシンキナーゼを選択的に阻害し,血液学的,細胞遺伝学的,分子遺伝学的に優れた有効性を示すチロシンキナーゼ阻害剤(tyrosine kinase inhibitor:TKI)には,イマチニブ8)~11)のほか,ニロチニブ12)とダサチニブ13)が臨床的に用いられる。イマチニブはIFNα+低用量シタラビン(AraC)との比較試験の5 年-長期成績の結果,IFNαに替わって初発CML-CP 期に対する第一選択薬となった9)。日本人においても,イマチニブ治療の優れた長期成績が確認された11)
②ニロチニブとダサチニブは,イマチニブ治療に抵抗性・不耐容のCML に対する治療薬として開発された第二世代TKI であるが,イマチニブとの比較試験の結果12)13),初発CML-CP 期の治療としても選択できる。(第1.1版追加コメント)また、新規第二世代TKIのボスチニブは、先に投与したTKI(イマチニブ、ニロチニブ、またはダサチニブ)治療に抵抗性・不耐容のCMLに対する治療薬である32)
③同種造血幹細胞移植(allogeneic stem cell transplantation:allo-HSCT):根治が期待できる治療法であるが,治療関連毒性のために早期死亡のリスクが高い。CML-CP から進行したTKI 耐性のAP/BP 期や初発時AP/BP 期に適応がある。また,適切なドナーの確保,移植関連毒性に耐え得る年齢的および全身状態であることなど適応を考慮する14)
④ IFNα:IFNα単剤15)あるいは低用量AraC との併用9)はイマチニブ以前の標準療法であり,一部の症例でPh 染色体の消失を認め,全生存期間(overall survival:OS)の改善に寄与することが知られている。
⑤その他の薬物療法:上記治療以外に選択される治療法であるが,Ph 染色体陽性細胞の十分な除去は困難であり,症状緩和的な治療法である。ヒドロキシウレア(HU),ブスルファン(BU),低用量AraC が含まれる。初回治療にBU は推奨されないが,HU はCML の診断がつくまで短期間投与されることがある。

表2 慢性骨髄白血病に対する治療効果の判定規準

血液学的奏効(Hematologic Response:HR) 血液・骨髄検査所見および臨床所見
慢性期CML 完全(complete)HR:CHR 1.WBC<10,000/μL
2.PLT<450,000/μL
3.末梢血液中で芽球も前骨髄球もなし
4.末梢血液中の骨髄球+後骨髄球=0%
5.好塩基球<5%
6.脾臓および肝臓の腫大なく,髄外病変なし
進行期CML
(移行期+急性期)
完全(complete)HR:CHR 1.WBC≦施設基準値の上限
2.好中球数≧1,000/μL
3.PLT≧100,000/μL
4.末梢血液中で芽球も前骨髄球もなし
5.骨髄中の芽球≦5%
6.末梢血液中の骨髄球+後骨髄球<5%
7.好塩基球<20%
8.脾臓および肝臓の腫大なく,髄外病変なし
白血病の所見なし:
No Evidence of Leukemia(NEL)
1.WBC≦施設基準値の上限
2.末梢血液中で芽球も前骨髄球もなし
3.骨髄中の芽球≦5%
4.末梢血液中の骨髄球+後骨髄球<5%
5.好塩基球<20%
6.脾臓および肝臓の腫大なく,髄外病変な
細胞遺伝学的奏効(Cytogenetic Response:CyR) 骨髄有核細胞中のPh 染色体(BCR-ABL)陽性率
細胞遺伝学的大(major)奏効:MCyR
 細胞遺伝学的完全(complete)奏効:CCyR
 細胞遺伝学的部分(partial)奏効:PCyR
0 〜35%
0%
1 〜35%
細胞遺伝学的小(minor)奏効:Minor CyR 36 〜65%
細胞遺伝学的微小(minimum)奏効:Mini CyR 66 〜95%
細胞遺伝学的非(none)奏効:No CyR >95%
分子遺伝学的奏効(Molecular Response:MR) BCR-ABL1 遺伝子レベル(RT-PCR 法)
分子遺伝学的大(major)奏効:MMR BCR-ABL1IS*2 ≦ 0.1%
分子遺伝学的に白血病未検出
MR4.0*1

MR4.5

BCR-ABL1IS*2 ≦ 0.01%,または ABL1 遺伝子 cDNA > 10,000 コピー中未検出
BCR-ABL1IS*2 ≦ 0.0032%,または ABL1 遺伝 子cDNA > 32,000 コピー中未検出

*1 ELN2009 では分子遺伝学的完全(complete)奏効(CMR)と定義された奏効レベル
*2 BCR-ABL1IS:国際指標で補正された値

表3-1 CML に対する1st line のチロシンキナーゼ阻害薬治療の効果(European LeukemiaNet 2013 年版)

評価時点 効果
至適奏効
Optimal
要注意
Warning
不成功
Failure
治療前
(ベースライン)
指摘なし 高リスク,または
CCA/Ph+
指摘なし
3 ヵ月 BCR-ABL1≦10%, またはPh+≦35% BCR-ABL1>10%,またはPh +=36〜95% CHR に未到達, またはPh+ 95%
6 ヵ月 BCR-ABL1≦1 % またはPh+=0% BCR-ABL1=1〜10%,またはPh+=1〜35% BCR-ABL1>10%,またはPh+>35%
12 ヵ月 BCR-ABL1≦0.1% BCR-ABL1=0.1〜1% BCR-ABL1>1%, またはPh+>0%(CCyR 未到達)
その後,
どの時点でも
BCR-ABL1≦0.1% CCA/Ph-(-7 または7q-) CHR の喪失,CCyR の喪失,確定したMMR 喪失,ABL キナーゼドメインの変異,CCA/Ph +

BCR-ABL1BCR-ABL1IS で表した値
MMR はBCR-ABL ≦ 0.1%でありMR3.0 あるいはそれ以上の効果
連続した2 回のMMR 喪失(BCR-ABL1>0.1%)で,そのうち1 つはBCR-ABL1 ≧ 1%
CCA/Ph +:Ph 染色体の付加的染色体異常,CCA/Ph-:Ph 染色体以外の付加的染色体異常

表3-2  CML に対するイマチニブ治療失敗患者に対する2nd line のTKI 阻害薬治療の効果(European LeukemiaNet 2013 年版)

評価時点 効果
至適奏効
Optimal
要注意
Warning
不成功
Failure
治療前(ベースライン) 指摘なし イマチニブ治療にてCHR 未達成やCHR の喪失,初回TKI 治療にてCyR 未到達,または高リスク 指摘なし
3 ヵ月 BCR-ABL1≦10%,またはPh+<65% BCR-ABL1>10%,またはPh+=65〜95% CHR に未到達,またはPh+>95%,またはABL キナーゼドメインの変異
6 ヵ月 BCR-ABL1≦10%またはPh+<35% Ph+=35〜65% BCR-ABL1>10%,またはPh+>65%、またはABL キナーゼドメインの変異
12 ヵ月 BCR-ABL1≦1 %,またはPh+= 0% BCR-ABL1=1〜10%, またはPh+=1〜35% BCR-ABL1>10%,またはPh+>35%,またはABL キナーゼドメインの変異
その後,
どの時点でも
BCR-ABL1 ≦ 0.1% CCA/Ph-(-7 または7q-),またはBCR-ABL1 > 0.1% CHR の喪失,CCyR の喪失,確定したMMR 喪失,ABL キナーゼドメインの変異,CCA/Ph+

BCR-ABL1BCR-ABL1IS で表した値
MMR はBCR-ABL ≦ 0.1%でありMR3.0 あるいはそれ以上の効果
連続した2 回のMMR 喪失(BCR-ABL1>0.1%)で,そのうち1 つはBCR-ABL1≧1%
CCA/Ph +:Ph 染色体の付加的染色体異常,CCA/Ph-:Ph 染色体以外の付加的染色体異常

5)CML 治療効果のモニタリング
 European LeukemiaNet 2009 6)および改訂された2013 7)に従い,イマチニブなどのTKI 療法のモニタリングを行う6)7)。治療効果の判定方法は,CyR は,骨髄細胞の染色体検査以外に末梢血液細胞の蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(fluorescence in situ hybridization:FISH)で判定できる。MR は,末梢血液を用いて定量(quantitative)逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)でBCR-ABL1 遺伝子レベルをABL あるいは対象となる遺伝子の比を,国際指標(International Scale:IS)で補正してBCR-ABL1IS と表す。初回(1st line)治療では,治療後3 カ月までにBCR-ABL1IS≦10%または部分CyR(partial CyR:PCyR),6 カ月までにBCR-ABL1IS < 1%または完全CCyR(complete CyR:CCyR),12 カ月までにBCR-ABL1IS≦0.1%すなわちMajor MR(MMR),それ以後はBCR-ABL1IS≦0.1%を維持するOptimal(至適)な効果を得ることを目指す(表3-1)。そして,Warning(要注意)ではモニタリングを頻回に行い,Failure(治療の失敗)では,治療の変更を考慮する。
 初回治療のイマチニブから第2 世代TKI に変更した場合は,3 カ月でBCR-ABL1IS≦10%またはPh 陽性細胞< 65%,6 カ月でBCR-ABL1IS≦10%またはMCyR,12 カ月でBCR-ABL1IS≦1%またはCCyR,それ以降BCR-ABL1IS≦0.1%を至適奏効としている(表3-2)。
ELN 2009 コンセンサス6)では,分子遺伝学的完全奏効(CMR)をBCR-ABL1 検出感度以下と定義されたが,ELN 2013 コンセンサス7)では,BCR-ABL1IS 0.01%以下をMR4BCR-ABL1IS 0.0032%以下をMR4.5BCR-ABL1IS 0.001%以下をMR5 とした規準16)を採用している。CML-CP治療においては,少なくともMMR の治療効果を得ることが大切であり,定量RT-PCR の検索はELN やNCCN など海外のCML 治療ガイドラインでは必須検査とされている。わが国においては,Amp-CML TMA 法によるBCR-ABL1 の検査は保険適用となっているが,国際指標で補正されたBCR-ABL1 の定量RT-PCR 検査が保険診療で施行されることが求められる。
【第1.2版修正】
わが国において国際指標で補正されたBCR-ABL1 の定量RT-PCR 検査が2015年4月から保険診療可能となった。
 具体的なTKI の治療効果判定のタイミングは以下の通りである。
①治療開始前は,血算と血液像,骨髄の染色体検査を施行し,Ph 陽性率と付加的染色体異常の有無を確認する。
②治療開始直後は,血算と血液像を毎週~2 週毎に検索する。
③ CHR 到達後は,末梢血FISH を少なくとも3 カ月毎に検索し,FISH でPh 陽性率が5%以下となれば,骨髄の染色体検査を施行する。
④骨髄検査は3 カ月毎に施行し,CCyR の判定ができれば,以後は末梢血液定量RT-PCR でMR を検索する。定量RT-PCR の著しい増加があり,MMR の喪失を疑う場合は,骨髄検査を行う。また,BCR-ABL1 点突然変異解析(保険適用外)に加え,イマチニブ血中濃度(保険適用,特定薬剤管理料)が目標値に達しているかは治療方針を決める参考になる。

2.Ph 陰性の骨髄増殖性腫瘍(myeloproliferative neoplasms:MPN)
 Ph 陰性MPN の発症と進行にも疾患関連遺伝子(多くが細胞内あるいは細胞膜のチロシンキナーゼをコードする)の異常が大きく関与している。特に,PV のほぼ全例とET およびPMF の約半数がJAK2 遺伝子変異(V617F 変異)を有し,JAK2 の恒常的な活性化が発症に関与していると考えられる。一方,CEL/HES の一部がFIP1L1-PDGFRα融合遺伝子を有し,mastocytosis がc-KIT の点突然変異を有している1)2)17)
 PV とET では重篤な血栓症の合併が予後に影響するため,血栓症のHigh リスク群を見極める必要がある。一方,PMF では急性期への進展が予後に影響するため,さまざまな予後リスク分類が試みられている。

表4 PV における血栓症のリスク分類

報告者 予後因子 リスク分類
Tefferi et al.
(Semin Hematol.
2005 : 42 : 206)
年齢<60 歳
血栓症の既往なし
血小板数<150 万/μL
心血管病変の危険因子(喫煙,高血圧,うっ血
性心不全がない)
のすべての項目を満たす
Low リスク群
Low リスク群にもHigh リスク群にも属さない Intermediate リスク群
年齢≧ 60 歳,または血栓症の既往がある High リスク群

3.真性赤血球増加症または真性多血症(polycythemia vera:PV)
1)PV の予後分類18)
 PV の生命予後は良好であり,治療により10 年以上の生存期間中央値が期待できる。そのため,合併する血栓症の予防が治療の主眼となる。年齢60 歳以上または血栓症の既往歴がある患者は,血栓症のHigh リスク患者である(表4)。
2)PV の治療概略
①瀉血療法:Ht 値45%未満を目標に,血圧,脈拍などの循環動態をみながら1 回200~400 mLの瀉血を月に1~2 度のペースで行う。高齢者や心血管障害を有する例では,循環動態の急激な変化がないように,少量(100~200 mL),頻回の瀉血が望ましい。
②低用量アスピリン療法:出血や消化器症状などの禁忌でなければ,75~100 mg/日のアスピリンの経口投与が選択される。
③ HU 療法:血栓症のHigh リスク群では,瀉血療法に加えて骨髄抑制薬であるHU 療法を併用する。(ただし,長期投与による二次発がんのリスクが完全には否定されていないため,特に若年者では,予後因子に基づき症例を選択する)
④ IFNα療法:妊娠中や挙児希望者では,催奇形性の問題からHU に代わり選択される。
⑤高血圧,高脂血症,肥満,糖尿病などの,いわゆる血栓症の一般的なリスクファクターがある場合は,これらの治療を行う。
⑥ PV 後骨髄線維症(myelofibrosis:MF):PMF に準じた治療法を選択する。
⑦急性骨髄性白血病(AML)あるいは骨髄異形成症候群(MDS)への進展:続発性のAML/MDS に対しては,AML/MDS の治療を行う。

4.本態性血小板血症(essential thrombocythemia:ET)
1)ET の予後分類
 ET の生命予後は良好であり,健常者とほぼ同等の生命予後が期待される。そのため,合併する血栓症の予防が治療の主眼となる。年齢60 歳以上または血栓症の既往歴がある患者は,血栓症のHigh リスク患者である。
 血小板数増加や高血圧,高脂血症,糖尿病,喫煙などを血栓症の危険因子として扱うかは報告により異なっており,結論は得られていない。最近,白血球数やJAK2 変異の割合が多いと血栓症が生じやすいとの報告もある。一般的には,年齢,血栓症の既往,血小板数より,Low リスクとHigh リスクに分類されている(表5)19)。最近,年齢と初診時白血球数より,生命予後に関して3つのリスクに分類する20)ことが提唱されている(表6)。

表5 ET における血栓症のリスク分類

予後因子 リスク分類
年齢<60 歳,かつ血栓症の既往はなし,かつ血小板数<150 万/μL Low リスク群
年齢≧60 歳,または血栓症の既往あり,または血小板数≧150 万/μL High リスク群

表6 ET における生命予後のリスク分類

報告者 予後因子 リスク分類 生存期間中央値(年)
Wolanskyj et al.
(Mayo Clin Proc.
2006 ; 81 : 159)
年齢<60 歳,
かつ白血球数<15,000/μL
Low リスク群 25.3
年齢≧60 歳,
または白血球数≧15,000/μL
Intermediate リスク群 16.9
年齢≧60 歳,
かつ白血球数≧15,000/μL
High リスク群 10.3

2)ET の治療概略
①血栓症Low リスクの治療:定期的な経過観察のみを行う。骨髄抑制をきたす薬剤や血小板を低減する薬剤の投与は不要である19)
②血栓症High リスクの治療:合併する血栓症の予防を目的としてHU と低用量アスピリンを併用する21)22)。(ただし,長期投与による二次発がんのリスクが懸念されるため,特に若年者では,予後因子に基づき症例を選択する。)血小板数が著増している場合(血小板数150 万/μL 以上)のアスピリン単独投与は,出血を助長する危険があるため,HU 投与により血小板数を減らしてから投与する。ET の発症年齢はPV と比べ若く,やや女性に好発することから,妊娠,挙児希望が問題となることがある。このような場合は,HU に代わり,IFNαを投与する。HU 不耐容もしくは抵抗性の症例には,わが国では保険適用がないが,欧米ではアナグレライドが使用されている。アナグレライド(+低用量アスピリン)はHU(+低用量アスピリン)より静脈血栓症のリスクは低いが,心房血栓,重篤な出血,骨髄線維症への進展頻度が高い22)
【第1.1版修正】②血栓症Highリスクの治療:合併する血栓症の予防を目的としてHUと低用量アスピリンを併用する21)22)。(ただし,長期投与による二次発がんのリスクが懸念されるため,特に若年者では,予後因子に基づき症例を選択する。)血小板数が著増してい る場合(血小板数150万/μL以上)のアスピリン単独投与は,出血を助長する危険があるため,HU投与により血小板数を減らしてから投与する。ETの発症年齢はPVと比べ若く,やや女性に好発することから,妊娠,挙児希望が問題となることがある。このような場合は,HUに代わり,IFNαを投与する。HU不耐容もしくは抵抗性の症例には、アナグレリド(+アスピリン)を投与する。アナグレリド+低用量アスピリンは、HU+低用量アスピリンより静脈血栓症のリスクは低いが、心房血栓、重篤な出血、骨髄線維症への進展頻度が高く、EFSは劣るという報告22)と、アナグレリドはHUと較べEFSに有意差を認めない33)との報告がある。

5.原発性骨髄線維症(primary myelofibrosis:PMF)
1)PMF の予後分類
 これまで広く用いられてきたLille 分類などに加え,3 つの国際的予後分類(international prognostic scoring system:IPSS)が臨床応用されている。年齢>65 歳,体重減少,夜間盗汗,発熱などの臨床症状,ヘモグロビン値(Hb)<10 g/dL,診断時WBC>25,000/μL,末梢血液中の芽球割合≧ 1%の5 つを予後因子とするIPSS 23),前述の5 因子に異なった重み付けをしたDynamic IPSS(DIPSS)24),DIPSS に染色体異常,血小板数,輸血依存性を付加したDIPSS Plus 25)が提唱されている(表7)。因子の数により,Low,Intermediate-1(Int-1),Intermediate-2(Int-2) そしてHigh の4 つのリスクグループに分類され,予後予測が可能であり,治療選択に用いられる。

表7 原発性骨髄線維症の予後予測モデル

予後予測モデル 予後不良因子(スコア) 予後評価
スコアの合計 リスク分類 生存期間
中央値(年)
Lille 分類
(Blood 1996 ; 88 :1013)
Hb<10 g/dL(1)
WBC<4,000/μL(1)
または>30,000μL(1)
0
1
2
Low リスク
Intermediate リスク
High リスク
7.8
2.2
1.1
IPSS
(Blood 2009 ; 113 : 2895)
年齢>65 歳(1)
発熱・夜間盗汗・体重減少の持続(1)
Hb<10 g/dL(1)
WBC>25,000/μL(1)
末梢血芽球≧1%(1)
0
1
2
≧ 3
Low リスク
Intermediate-1 リスク
Intermediate-2 リスク
High リスク
11.3
7.9
4.0
2.3
DIPSS/aaDIPSS
(Blood 2010 ; 115 :1703)
DIPSS: 年齢>65 歳(1)
発熱・夜間盗汗・体重減少の持続(1)
Hb<10 g/dL(2)
WBC>25,000/μL(1)
末梢血芽球≧1%(1)
0
1 〜2
3 〜4
5 〜6
Low リスク
Intermediate-1 リスク
Intermediate-2 リスク
High リスク
到達せず
14.2
4.0
1.5
Age-adjusted DIPSS (65 歳未満):
発熱・夜間盗汗・体重減少の維持(2)
Hb<10 g/dL(2)
WBC>25,000/μL(1)
末梢血芽球≧1%(2)
0
1 〜2
3 〜4
> 4
Low リスク
Intermediate-1 リスク
Intermediate-2 リスク
High リスク
到達せず
9.8
4.8
2.3
DIPSS plus
(J Clin Oncol 2011; 29 : 392)
予後不良核型(複雑核型
(3 種類以上の異常),+8,-7/7q-,i(17q),-5/5q-,12p-,inv(3),
11q23 異常)(1)
血小板<100,000/μL(1)
輸血の必要性(1)
DIPSS Intermediate-1 リスク(1)
DIPSS Intermediate-2 リスク(2)
DIPSS High リスク(3)
0
1
2 〜3
4 〜6
Low リスク
Intermediate-1 リスク
Intermediate-2 リスク
High リスク
15.4
6.5
2.9
1.3

2)PMF の治療概略
① Low およびInt-1 リスクの治療:臨床症状,貧血症状を欠く患者の生存期間は10 年を超えるため,現時点では経過観察が望ましい。
② Int-2 およびHigh リスクの治療:適応可能年齢であれば,allo-HSCT は根治的治療法であり,診断早期より推奨される。allo-HSCT の適応とならない患者に対しては,臨床症状の軽減を主目的とする対症療法が施行される。
③薬物療法:タンパク同化ステロイドホルモン薬,HU,副腎皮質ステロイド,欧米では,サリドマイド(THAL),レナリドミド(LEN),JAK2 阻害剤(ruxolitinib)26)などが用いられている。わが国でもJAK 阻害剤の臨床試験が行われており,保険適用となれば,使用可能である。

【第1.1版修正】 ③薬物療法:タンパク同化ステロイドホルモン薬、HU、副腎皮質ステロイド、欧米では、サリドマイド(THAL)、レナリドミド(LEN)、JAK阻害剤(ルキソリチニブ)26)などが用いられている。わが国でもルキソリチニブが保険適用となり、臨床応用が可能となった。

④脾臓摘出術・脾照射:巨大脾腫による疼痛,貧血,血球減少,重度の門脈圧亢進に対して脾臓摘出術や脾照射が施行される。
⑤急性白血病への進展:急性白血病に準じた治療を施行する。

6.その他のMPN の病態と治療について
 上記以外のMPN で,比較的稀な疾患である慢性好中球性白血病(chronic neutrophilic leukemia:CNL)27),慢性好酸球性白血病(chronic eosinophilic leukemia:CEL)28),肥満細胞症(mastocytosis)29),分類不能骨髄増殖性腫瘍(myeloproliferative neoplasms,unclassifiable:MPNU)30)について追加する。 ① CNL は成熟した好中球の著しい増加をみとめ,BCR-ABL1 融合遺伝子を認めないことが診断規準となっている。一般的には貧血,血小板減少を伴い緩徐な進行を示すが,生命予後は6カ月から20 年と幅が広い。症状緩和的な治療が中心となる。時に急性白血病化をきたすが, 化学療法に関連した二次がんとの関係は不明である。
② CEL は好酸球前駆細胞のクローナルな増殖の結果,末梢血にて著しい好酸球増多症を認めるMPN である。好酸球増加症候群(hypereosinphilic syndrome:HES)の骨髄増殖variant(HES/CEL)と捉えられ,無症状の症例から,臓器浸潤を伴いさまざまな臨床症状を伴い,生命予後も極めて幅が広い。HES の10~14%でFIP1L1-PDGFα融合遺伝子が検出され,クローナリティが証明される。こうしたHES/CEL では,FIP1L1-PDGFRαチロシンキナーゼ を阻害するイマチニブの有効性が認められる31)
③ Mastocytosis は肥満細胞(mast cell)の腫瘍性増殖により引き起こされるMPN であり,慢性じんましん様の皮膚肥満細胞症から全身臓器に浸潤する肥満細胞症,肥満細胞白血病などに分類されその症状,予後も極めて多彩である。肥満細胞症では肥満細胞の増殖に関与しているc-KIT の点突然変異が報告されている29)
④分類不能型MPN は上記のMPN の診断規準に完全に合致しないものの,2 つ以上のMPN の病状がオーバーラップしている疾患概念である。PV/ET/PMF の極めて発症早期の症例か,逆に進行した状態の症例のことが多い30)


[参考文献]

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12) Saglio G, et al. Nilotinib versus imatinib for newly diagnosed chronic myeloid leukemia. N Engl J Med. 2010 ; 362( 24) : 2251-9.( 1iiDiv)
13) Kantarjian H, et al. Dasatinib versus imatinib in newly diagnosed chronic-phase chronic myeloid leukemia. N Engl J Med. 2010 ; 362( 24) : 2260-70.( 1iiDiv)
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17) Vardiman JW, et al. The 2008 revision of the World Health Organization( WHO) classification of myeloid neoplasms and acute leukemia : rationale and important changes. Blood. 2009 ; 114 (5) : 937-51. (レ ビュー)
18) Tefferi A, et al. Polycythemia vera : scientific advances and current practice. Semin Hematol. 2005 ; 42( 4): 206-20.( レビュー)
19) Ruggeri M, et al. No treatment for low-risk thrombocythaemia : results from a prospective study. Br J Haematol. 1998 ; 103( 3) : 772-7.( 2C)
20) Wolanskyj AP, et al. Essential thrombocythemia beyond the first decade : life expectancy, long-term complication rates, and prognostic factors. Mayo Clin Proc. 2006 ; 81( 2) : 159-66.( 3iiA)
21) Palandri F, et al. Long-term follow-up of 386 consecutive patients with essential thrombocythemia : safety of cytoreductive therapy. Am J Hematol. 2009 ; 84( 4) : 215-20.( 3iiA)
22) Harrison CN, et al. Hydroxyurea compared with anagrelide in high-risk essential thrombocythemia. N Engl J Med. 2005 ; 353( 1) : 33-45.( 1iiC)
23) Cervantes F, et al. New prognostic scoring system for primary myelofibrosis based on a study of the International Working Group for Myelofibrosis Research and Treatment. Blood. 2009 ; 113 (13) : 2895-901. (3iA) 24) Passamonti F, et al. A dynamic prognostic model to predict survival in primary myelofibrosis : a study by the IWG-MRT (International Working Group for Myeloproliferative Neoplasms Research and Treatment). Blood. 2010 ; 115( 9) : 1703-8.( 3iA)
25) Gangat N, et al. DIPSS plus : a refined Dynamic International Prognostic Scoring System for primary myelofibrosis that incorporates prognostic information from karyotype, platelet count, and transfusion status. J Clin Oncol. 2011 ; 29( 4) : 392-7.( 3iA)
26) Verstovsek S, et al. A double-blind, placebo-controlled trial of ruxolitinib for myelofibrosis. N Engl J Med. 2012 ; 366( 9) : 799-807.( 1iDiv)
27) Bain BJ, et al. Chronic neutrophilic leukaemia. Swerdlow SH, Campo, et al. eds. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. Lyon, IARC ; 2008 : pp38-9.( レビュー)
28) Bain BJ, et al. Chronic eosinophilic leukaemia, not otherwise specified. Swerdlow SH, et al. eds. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. Lyon, IARC ; 2008 : pp51-3.( レビュー)
29) Horny H-P, et al. Mastocytosis. Swerdlow SH, et al. eds. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. Lyon, IARC ; 2008 : pp54-63.( レビュー)
30) Kvasnicka HM, et al. Myeloproliferative neoplasm, unclassifiable. Swerdlow SH, et al. eds. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. Lyon, IARC ; 2008 : pp64-5.( レビュー)
31) Cools J, et al. A tyrosine kinase created by fusion of the PDGFRA and FIP1L1 genes as a therapeutic target of imatinib in idiopathic hypereosinophilic syndrome. N Engl J Med. 2003 ; 348 (13) : 1201-14.(3iiiDiv)

【第1.1版追記】
32) Gambacorti-Passerini C, et al. Bosutinib efficacy and safety in chronic phase chronic myeloid leukemia after imatinib resistance or intolerance:minimum 24-month follow-up. Am J Hematol 2014: 89(7): 732-42. (2Diii)
33) Gisslinger H, et al. Anagrelide compared with hydroxyurea in WHO-classified essential thrombocythemia: the ANAHYDRET Study, a randomized controlled trial. Blood. 2013;121(10):1720-1728. (1iiDiv)

アルゴリズム

1.CML のアルゴリズム
 現在のCML 治療のKey Drug はTKI である。CML-CP 期にはTKI(イマチニブ,ニロチニブ,ダサチニブ)を投与する(CQ1)。治療開始後,至適奏効(Optimal)の場合は治療継続(CQ2),Warning(要注意)の場合はモニタリングを頻回にして,Failure(不成功)の場合はイマチニブは他のTKI へ,ニロチニブはダサチニブ,ダサチニブはニロチニブへ治療変更と同胞のHLA 検索を行う(CQ3)。点突然変異解析に加え,イマチニブ血中濃度が目標値に達しているかは治療方針を決める参考になる(CQ4)。CML-CP から進展したAP 期には未使用TKI で治療し,BC 期にはTKI 単独もしくは急性白血病に準じた化学療法を併用する(CQ5)。移植適応であれば,allo-HSCT を推奨する(CQ5)。TKI 治療中にT315I 点突然変異が確認された場合は,allo-HSCT もしくはT315I に有効な薬剤の臨床試験を選択することが考慮される。現在のところTKIを中止できる規準はなく,分子遺伝学的完全奏効(CMR)が得られても治療を継続すべきである(CQ6)。

【第1.1版修正】

1.CML のアルゴリズム
現在のCML治療のKey DrugはTKIである。CML-CP期にはTKI(イマチニブ,ニロチニブ,ダサチニブ)を投与する(CQ1)。治療開始後,至適奏効(Optimal)の場合は治療継続(CQ2),Warning(要注意)の場合はモニタリングを頻回にして,Failure(不成功)の場合はイマチニブは他のTKIへ,ニロチニブはダサチニブまたはボスチニブ,ダサチニブはニロチニブまたはボスチニブへ治療変更と同胞のHLA検索を行う(CQ3)。点突然変異解析に加え,イマチニブ血中濃度が目標値に達しているかは治療方針を決める参考になる(CQ4)。CML-CPから進展したAP期には未使用TKIで治療し,BC期にはTKI単独もしくは急性白血病に準じた化学療法を併用する(CQ5)。移植適応であれば,allo-HSCTを推奨する(CQ5)。TKI治療中にT315I点突然変異が確認された場合は,allo-HSCTもしくはT315Iに有効な薬剤の臨床試験を選択することが考慮される。現在のところTKIを中止できる規準はなく,分子遺伝学的完全奏効(CMR)が得られても治療を継続すべきである(CQ6)。

2.MPN のアルゴリズム
 PV,ET,PMFを診断し,リスク別に治療方針を立てることが基本となる。
 PVとETの治療目標は,血栓症や出血を予防することである。全てのリスクカテゴリーに属するPV患者に対して低用量アスピリン投与(CQ8)と瀉血(CQ7)が有効である。LowリスクET(<60歳,かつ血栓症の既往がない)の中で,心血管リスクファクター(喫煙,高血圧,高コレステロール血症,糖尿病)のある症例,JAK2変異のある症例では,血栓症発症リスクを低下させるため抗血小板療法(アスピリン投与)を推奨する(CQ9)。これらのリスクのないLowリスクETに対する抗血小板療法の有用性は不明であり,さらに若年者に対しては化学療法による発がん性も心配されることから,一部の患者では無治療経過観察の方針も選択される(CQ10)。一方,HighリスクのPVやET症例(60歳以上または血栓症の既往あり)にはヒドロキシウレア(HU)の投与を行ってもよい(CQ9)。妊娠合併ETに対する低用量アスピリンやインターフェロンα(IFNα)による治療介入は流産を減らす可能性がある(CQ10)。PMFに対しては薬物療法がPMFの予後を改善するかに関しては現時点で不明であるので,貧血,全身倦怠感,脾腫に伴う腹部膨満感などがある場合は,症状緩和を目的とした治療を行う。症状改善の手段の一つとしてHUなどを用いた化学療法が有用である。また,JAK2阻害剤などの臨床試験に参加することもできる。症状のない場合は無治療経過観察の方針が望ましい(CQ10)。PMFに対する根治的治療法はallo-HSCTである。予後予測モデルにより予後不良と判断され,適切なドナーが存在する場合は,allo-HSCTの適応を考慮する必要がある(CQ11)。

【第1.1版修正】

2.MPN のアルゴリズム
 PV,ET,PMFを診断し,リスク別に治療方針を立てることが基本となる。
 PVとETの治療目標は,血栓症や出血を予防することである。全てのリスクカテゴリーに属するPV患者に対して低用量アスピリン投与と瀉血(CQ7)が有効である。LowリスクET(<60歳,かつ血栓症の既往がない)の中で,心血管リスクファクター(喫煙,高血圧,高コレステロール血症,糖尿病)のある症例,JAK2変異のある症例では,血栓症発症リスクを低下させるため抗血小板療法(アスピリン投与)を推奨する(CQ8)。これらのリスクのないLowリスクETに対する抗血小板療法の有用性は不明であり,さらに若年者に対しては化学療法による発がん性も心配されることから,一部の患者では無治療経過観察の方針も選択される(CQ9)。一方,HighリスクのPVやET症例(60歳以上または血栓症の既往あり)にはヒドロキシウレア(HU)の投与を行っても良い(CQ9)。HU不耐容、あるいは抵抗性のHighリスクETには、アナグレリド(+アスピリン)を投与する。妊娠合併ETに対する低用量アスピリンやインターフェロンα(IFNα)による治療介入は流産を減らす可能性がある (CQ10)。PMFに対しては薬物療法がPMFの予後を改善するかに関しては現時点で不明であるので,貧血,全身倦怠感,脾腫に伴う腹部膨満感などがある場合は,症状緩和を目的とした治療を行う。症状改善の手段の一つとしてHUなどを用いた化学療法が有用である。PMFに対する根治的治療法はallo-HSCTである。予後予測モデルによりHighリスクと判断され、適切なドナーが存在する場合は、allo-HSCTの適応を考慮する(CQ11)。適切なドナーが得られず、かつ全身倦怠感、脾腫に伴う腹部症状などがある場合は、ルキソリチニブを投与する(追加CQ)。Lowリスクであり、かつ症状のない場合は無治療経過観察の方針が望ましい(CQ9)。


CQ 1初発CML-CP に対する治療として何を投与すべきか
推奨グレード
カテゴリー1

CML-CP に対しては,TKI であるイマチニブ400 mg QD(1 回/日),ニロチニブ300 mgBID(2 回/日),ダサチニブ100 mg QDのいずれかの投与を推奨する。3 剤の副作用プロファイルが異なることから,合併疾患などの患者背景を考慮して治療薬を選択することが望ましい

[解 説]

 初発CML-CP に対しては,TKI であるイマチニブと化学療法+インターフェロンα(IFNα)の併用療法との比較試験(IRIS 試験)の結果,イマチニブの優位性が示された1)。イマチニブ投与による8 年間全生存割合(OS)は85%(CML 関係死による死亡のみを対象とした8 年間OS は93%)と長期間の有効性と安全性も示された2)。その後,高用量(800 mg QD)イマチニブと通常用量(400 mg QD)イマチニブの比較試験が実施されたが,両群の有効性に関する差は明らかでない3)~5)。したがって現時点では,イマチニブ400 mg QD が推奨投与の一つである。
 イマチニブを対照薬として第2 世代TKI であるニロチニブ,ダサチニブの臨床第Ⅲ相試験が発表されている。ニロチニブ300 mg BID(ENESTnd 試験)6),ダサチニブ100 mg QD(DASISION試験)7)は,細胞遺伝学的完全奏効(CCyR),分子遺伝学的大奏効(MMR)達成率について12 カ月時点でイマチニブ400 mg QD より優れていた。24 カ月までの公表されたデータによるとAP/BC への移行も少ない8)が,長期間の有効性や安全性の評価が必要である。
 最新のELN 2013 コンセンサス版では,第2 世代のニロチニブとダサチニブ同士を直接比較した検討もないため,現時点では3 剤のうちどれを投与すべきか断定されていない9)。しかし,第2 世代TKI が速やかで非常に深い分子遺伝学的奏効(MR)をもたらす利点を考慮し,至適奏効達成の有無はELN 2009 コンセンサス版6)より早い時点で判断される。TKI 3 剤の副作用プロファイルが異なることから,合併する疾患など患者背景を考慮し,治療薬を選択することが望ましい。


[参考文献]

1) O’Brien SG, et al. Imatinib compared with interferon and low-dose cytarabine for newly diagnosed chronic-phase chronic myeloid leukemia. N Engl J Med. 2003 ; 348( 11) : 994-1004.( 1iiDiv)
2) Deininger M, et al. International randomized study of interferon vs STI571( IRIS) 8-year follow-up : sustained survival and low risk for progression or events in patients with newly diagnosed chronic myeloid leukemia in chronic phase( CML-CP) treated with imatinib. Blood. 2009 ; 114 : abstract #1126.( 2Diii)
3) Baccarani M, et al. Comparison of imatinib 400 mg and 800 mg daily in the front-line treatment of highrisk,Philadelphia-positive chronic myeloid leukemia : a European LeukemiaNet Study. Blood. 2009 ; 113 (19) : 4497-504.( 1iiDiv)
4) Cortes JE, et al. Phase Ⅲ, Randomized, open-label study of daily imatinib mesylate 400 mg versus 800 mg in patients with newly diagnosed, previously untreated chronic myeloid leukemia in chronic phase using molecular end points : tyrosine kinase inhibitor optimization and selectivity study. J Clin Oncol. 2010 ; 28( 3) : 424-30.( 1iiDiv)
5) Hehlmann R, et al. Tolerability-Adapted Imatinib 800mg/d Versus 400mg/d Versus 400mg/d Plus Interferon-alpha in Newly Diagnosed Chronic Myeloid Leukemia. J Clin Oncol. 2011 ; 29 (12) : 1634-42.(1iiDiv)
6) Saglio G, et al. Nilotinib versus imatinib for newly diagnosed chronic myeloid leukemia. N Engl J Med.2010 ; 362( 24) : 2251-9.( 1iiDiv)
7) Kantarjian H, et al. Dasatinib versus imatinib in newly diagnosed chronic-phase chronic myeloid leukemia.N Eng J Med. 2010 ; 362( 24) : 2260-70.( 1iiDiv)
8) Kantarjian HM, et al. Nilotinib versus imatinib for the treatment of patients with newly diagnosed chronic phase, Philadelphia chromosome-positive, chronic myeloid leukemia : 24-month minimum follow-up of the phase 3 randomized ENESTnd trial. Lancet Oncol. 2011 ; 12( 9) : 841-51.( 1iiDiii)
9) Beccarani M, et al. European LeukemiaNet recommendations for the management of chronic myeloid leukemia : 2013. Blood. 2013 ; 122(6) : 872-84.(レビュー)


CQ 2イマチニブにてOptimal な効果が得られているCML-CP 症例はイマチニブを継続すべきか,第2 世代TKI に変更するほうがよいか
推奨グレード
カテゴリー2A

イマチニブの継続治療を推奨する。イマチニブの副作用などにより,アドヒアランス(内服治療の継続性)の低下が危惧される場合は,副作用のプロファイルの異なる第2 世代TKI に変更することも可能である。

[解 説]

 2009 年ELN コンセンサス改訂版による“Optimal response”は,イマチニブ投与12 カ月時点での細胞遺伝学的完全奏効(CCyR)達成および18 カ月時点での分子遺伝学的大奏効(MMR)達成と規定されている1)。IRIS 試験のサブセット解析では,イマチニブ投与後12 カ月CCyR 達成例の5 年無増悪生存割合(PFS)は97%であり,18 カ月でMMR 達成例の7 年無イベント生存割合(EFS)95% , PFS 99%と極めて良好である。イマチニブ投与後12 カ月でMMR 達成例はCMLAP/BP への移行が8 年時点まで報告されていない2)~4)。このようにOptimal 症例は,イマチニブ継続により良好な長期予後が得られると考えられる。
 イマチニブ投与によるOptimal 症例を第2 世代TKI に変更するかについては,イマチニブ継続投与群と第2 世代TKI への変更群との臨床比較試験をすることで,明らかになると考えられる。現在,イマチニブを2 年以上投与し分子遺伝学的完全奏効(CMR)に到達していない症例を,ニロチニブ400 mg BID 群とイマチニブ維持群にランダム化し,CMR をエンドポイントとした臨床試験(ENESTcmr)が進行中であり,24 カ月時点での結果が発表された5)。ニロチニブへ変更することで12 カ月時点のCMR 達成率が有意に増加し(23% vs 11%,p=0.02),24 カ月時点ではさらに増加(32.7% vs 16.5%,p=0.005)し,BCR-ABL1 が検出限界以下の達成率が有意に高くなった(22.1% vs 8.7%,p=0.0087)。しかし,この結果が薬剤中止につながるのかは今後の長期観察を要する。
 なお,MMR の維持とアドヒアランスには強い相関があり,90%以上イマチニブを服薬できた場合は有意にOptimal response を維持できるという6)。しかしながら,Optimal 症例においても副作用に耐えながらイマチニブを継続している不耐容症例が存在するため,このような症例には副作用のプロファイルが異なる第2 世代TKI へ治療変更するのも一つの選択肢と考えられる。
 ELN 2013 コンセンサス版では,副作用などでイマチニブの至適奏効が得られない不耐容例などでは,早期にニロチニブやダサチニブへの変更を推奨している7)


[参考文献]

1) Baccarani M, et al. Chronic myeloid leukemia : an update of concepts and management recommendations of European LeukemiaNet. J Clin Oncol. 2009 ; 27( 35) : 6041-51.( レビュー)
2) Druker BJ, et al. Five-year follow-up of patients receiving imatinib for chronic myeloid leukemia. N Engl J Med. 2006 ; 355(23) : 2408-17.( 2Diii)
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5) Hughes TP, et al. Switching to Nilotinib Is Associated with Continued Deeper Molecular Responses in CML-CP Patients with Minimal Residual Disease After 2 Years On Imatinib : Enestcmr 2-Year Followup Results Blood( ASH Annual Meeting Abstracts). 2012 ; 120 : abstract 694( 1iiDiv)
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7) Baccarani M, et al. European LeukemiaNet recommendations for the management of chronic myeloid leukemia : 2013. Blood. 2013 ; 122(6) : 872-84.(レビュー)


CQ 3Warning やFailure 症例に対してイマチニブの増量と第2 世代TKI のどちらを選択すべきか
推奨グレード
カテゴリー2A

イマチニブ投与でFailure 例はイマチニブ増量よりも第2 世代TKIへの変更を推奨する。

推奨グレード
カテゴリー2A

イマチニブ投与でWarning 例には,モニタリングを頻回に行いFailure となれば第2 世代TKI への変更を推奨する。

[解 説]

 イマチニブFailure に対してイマチニブ400 mg を800 mg に,300 mg を600 mg に増量した場合,61 カ月の観察中央期間において細胞遺伝学的完全奏効(CCyR)達成率40%,3 年無イベント生存割合(EFS),全生存割合(OS)は47%,76%と良好であったとの報告がなされている1)。第2 世代TKI に関しては,ニロチニブ400 mg BID に変更した場合,24 カ月後のCCyR 達成率は44%であり,そのうちの56%が分子遺伝学的大奏効(MMR)を達成しOS は87%と良好であった2)。ダサチニブに関しては,イマチニブFailure に対して,ダサチニブ70 mg BID 群とイマチニブ大量(400 mg BID)群にランダマイズした第Ⅱ相試験(START-R)では,2 年間の観察期間においてCCyR 達成はダサチニブ群44%,イマチニブ大量群18%であった(p=0.0025)。18 カ月時点でのMMR 達成は各々29%,12%(p=0.028)であった3)。以上より,イマチニブFailure に対してはイマチニブ増量よりも第2 世代TKI の反応が良好であった。観察期間が短いものの,無増悪生存割合(PFS)の延長も示唆されることから,イマチニブFailure に対しては第2 世代TKI が推奨される。
【第1.1版追加コメント】
また、新規第二世代TKIのボスチニブは先に投与したTKI(イマチニブ、ニロチニブ、またはダサチニブ)治療に抵抗性・不耐容のCMLに対する治療薬である。イマチニブ600mg QDのFailure症例(n=200)をボスチニブ500mg QDに変更した場合、24ヶ月の観察期間の累積CCyR達成率は46%、累積MMR達成率は34%であり、2年OSは88%と良好であった9)。イマチニブFailureに対してボスチニブも選択肢の一つとなった。さらに、他のTKI抵抗性CMLに対して3rd lineとしても投与可能である10)
 IRIS 試験におけるランドマーク解析では,イマチニブ投与6 カ月時点で細胞遺伝学的非奏効(No CyR),細胞遺伝学的微小奏効(Mini CyR)/ 細胞遺伝学的小奏効(Minor CyR),細胞遺伝学的部分奏効(PCyR),CCyR における6 年EFS は59, 58, 85, 91%であり,ELN 2009 コンセンサス8)で定義されたSuboptimal response であるPCyR が得られていない場合の予後は不良である4)。しかし,18 カ月時点でのMMR 未達成のSuboptimal response はOptimal response と長期予後は同等である5)。英国のHammersmith 病院のデータでは,3, 6, 12 カ月のSuboptimal response でのPFS はFailure に近く,18 カ月時点でのSuboptimal response とOptimal response は同等のPFS であった6)。MD アンダーソンがんセンターの検討でも,6, 12 カ月のSuboptimal response 症例のEFS は不良であったが,18 カ月のSuboptimal response 症例のEFS はOptimal response 例と同等に良好であった7)
 CQ2 のOptimal 症例でも言及したように,副作用に耐えながらイマチニブを継続している不耐容症例が存在するため,このような症例には副作用のプロファイルが異なる第2 世代TKI へ治療変更するのも一つの選択肢と考えられる。


[参考文献]

1) Jabbour E, et al. Imatinib mesylate dose escalation is associated with durable responses in patients with chronic myeloid leukemia after cytogenetic failure on standard-dose imatinib therapy. Blood. 2009 ; 113 (10) : 2154-60.( 3iiiDiv)
2) Kantarjian HM, et al. Nilotinib is effective in patients with chronic myeloid leukemia in chronic phase after imatinib resistance or intolerance : 24-month follow-up results. Blood. 2011 ; 117 (4) : 1141-5. (3iiiDiv)
3) Kantarjian H, et al. Dasatinib or high-dose imatinib for chronic-phase chronic myeloid leukemia resistant to imatinib at a dose of 400 to 600 miligrams daily. Cancer. 2009 ; 115( 18) : 4136-47.( 3iiiDiv)
4) Hochhaus A, et al. Six-year follow-up of patients receiving imatinib for the first-line treatment of chronic myeloid leukemia. Leukemia. 2009 ; 23( 6) : 1054-61.( 2Diii)
5) Huges TP, et al. Long-term prognostic significance of early molecular response to imatinib in newly diagnosed chronic myeloid leukemia : an analysis from the International Randomized Study of Interferon and STI571( IRIS). Blood. 2010 ; 116( 19) : 3758-65.( 2Diii)
6) Marin D, et al. European LeukemiaNet criteria for failure or suboptimal response reliably identify patients with CML in early chronic phase treated with imatinib whose eventual outcome is poor. Blood. 2008 ; 112 (12) : 4437-44.( 3iiDiii)
7) Alvarado Y, et al. Significance of suboptimal response to imatinib, as defined by the European Leukemia-Net, in the long-term outcome of patients with early chronic myeloid leukemia in chronic phase. Cancer.2009 ; 115( 16) : 3709-18.( 3iiDiii)
8) Beccarani M, et al. Chronic myeloid leukemia : an update of concepts and management recommendations of European LeukemiaNet. J Clin Oncol 2009 ; 27(35) : 6041-51.(レビュー)

【第1.1版追記】
9) Gambacorti-Passerini C, et al. Bosutinib efficacy and safety in chronic phase chronic myeloid leukemia after imatinib resistance or intolerance:minimum 24-month follow-up. Am J Hematol 2014: 89(7): 732-42. (2Diii)
10) Khoury HJ, et al. Bosutinib is active in chronic phase chronic myeloid leukemia after imatinib and dasatinib and/or nilotinib therapy failure.Blood 2014: 119 (15): 3403-12. (2Diii)


CQ 4イマチニブトラフ濃度の目標値を1,000 ng/mL としてイマチニブ療法は勧められるか
推奨グレード
カテゴリー2B

CML のイマチニブ療法において治療効果が認められない場合,イマチニブのトラフ値を参考にすることができる。

[解 説]

 CML 慢性期に対するイマチニブの抵抗性の理由として,ABL1 遺伝子点突然変異や付加的染色体異常など白血病細胞の問題のほかイマチニブの薬物動態に関わる問題が知られている。薬理学的に半減期の比較的長いイマチニブの薬物動態はトラフ値で評価することが可能であり,治療効果とトラフ値の相関についていくつかのコホート研究が報告されている。
 Picard らは少なくとも12 カ月イマチニブ療法を受けている患者(n=68)のイマチニブトラフ値と細胞遺伝学的効果または分子遺伝学的効果との相関を初めて示した。さらにROC 曲線(receiver operating characteristic curve)よりイマチニブトラフ値の閾値を1,002 ng/mL に設定した場合,分子遺伝学的大奏効(MMR)達成を感度77%,特異度71%で予測可能であるとした1)。多数例の前方視的コホート研究(n=351)であるIRIS 試験のサブ解析は治療29 日目のイマチニブトラフ値が細胞遺伝学的完全奏効(CCyR)達成に関係することを示した2)。日本人多数例のコホート研究(n=254)ではイマチニブトラフ値とMMR 達成の相関が示された3)。標準投与量の400 mg 内服症例を対象とした複数のコホート研究において,イマチニブトラフ値が1,000 ng/mL以上の症例で有意にMMR 達成率の高いことが追試されている3)~5)
 高用量イマチニブの忍容性の問題はあるものの,TOPS 試験により標準量との比較にて高用量イマチニブの治療効果の早期達成が報告されているが6),トラフ値をターゲットとして治療介入を行うランダム化比較試験は報告されていない。しかしながら,比較的多数例の複数のコホート研究によりトラフ値と治療効果の関連性が示されていることから,期待される治療効果が得られない場合は点突然変異解析(保険適用外)に加え,イマチニブ血中濃度測定(保険適用,特定薬剤管理料)が治療内容の再考のみならず,併用薬との相互作用やコンプライアンスの確認に有用である。


[参考文献]

1) Picard S, et al. Trough imatinib plasma levels are associated with both cytogenetic and molecular responses to standard-dose imatinib in chronic myeloid leukemia. Blood. 2007 ; 109( 8) : 3496-9.( 3iiiDiv)
2) Larson RA, et al. Imatinib pharmacokinetics and its correlation with response and safety in chronic-phase chronic myeloid leukemia : a sub analysis of the iris study. Blood. 2008 ; 111( 8) : 4022-8.( 2Div)
3) Takahashi N, et al. Correlation between imatinib pharmacokinetics and clinical response in Japanese patients with chronic-phase chronic myeloid leukemia. Clin Pharmacol Ther. 2010 ; 88( 6) : 809-13.( 3iDiv)
4) Marin D, et al. Adherence is the critical factor for achieving molecular responses in patients with chronic myeloid leukemia who achieve complete cytogenetic responses on imatinib. J Clin Oncol. 2010 ; 28( 14):2381-8.( 3iiDiv)
5) Ishikawa Y, et al. Trough plasma concentration of imatinib refl ects BCR-ABL kinase inhibitory activity and clinical response in chronic-phase chronic myeloid leukemia : a report from the BINGO study. Cancer Sci. 2010 ; 101( 10) : 2186-92.( 3iiDiv)
6) Cortes JE, et al. Phase Ⅲ, Randomized, open-label study of daily imatinib mesylate 400 mg versus 800 mg in patients with newly diagnosed, previously untreated chronic myeloid leukemia in chronic phase using molecular end points : tyrosine kinase inhibitor optimization and selectivity study. J Clin Oncol. 2010 ; 28(3) : 424-30.( 1iiDiv)


CQ 5進行期CML(AP およびBP)の治療はTKI が勧められるか
推奨グレード
カテゴリー2A

AP の治療は,チロシンキナーゼ阻害剤(高用量イマチニブまたは第2 世代TKI)を推奨する。TKI で至適奏効が得られない場合は同種HSCT を考慮する。

推奨グレード
カテゴリー2A

BP の治療はTKI 単剤またはTKI を含む化学療法で最大効果を得た後,可能な限り同種HSCT を推奨する。

[解 説]

 CML-AP の治療は,TKI で開始され,イマチニブであれば高用量600 mgQD が推奨される1)2)。イマチニブ治療で血液学的奏効(HR) 82%,完全HR(CHR) 34%,細胞遺伝学的大奏効(MCyR)24%,細胞遺伝学的完全奏効(CCyR) 17%であり,12 カ月時点での無病生存割合(PFS)59%,全生存割合(OS)74%であった2)。historical control であるインターフェロンα(IFNα)や化学療法と比較し,イマチニブ治療群の4 年OS は53%,IFNα群42%,他のCT 群0~21%とイマチニブの治療優位性が示されている3)。一方,イマチニブ治療抵抗性もしくは不耐容CML-AP 症例では第2 世代TKI が有用であるため,治療薬を第2 世代TKI に変更する。ニロチニブに切り替えにてCHR 26%,CCyR 16%(観察中央期間202 日)4),ダサチニブに切り替えにてCHR 45%CCyR 32%(観察中央期間14.1 カ月)であった5)。ニロチニブの24 カ月時点でのOS とPFS はそれぞれ70%と33%であった6)。なお,移植適応がある場合はTKI による治療反応性を見極めた上で,allo-HSCT を考慮してもよい。
 CML-BP に対してはTKI 単剤7)8)またはAML/ALL に準じた化学療法の併用9)で治療する。しかしながらTKI 単剤もしくは化学療法の治療成績は十分とは言えないため,移植適応の患者ではallo-HSCT が強く推奨される。ドイツのCML グループの報告では進行期のCML に対するallo-HSCT の3 年OS は59%である10)。また,CML におけるTKI 治療中にT315I 変異が確認された場合,現在のTKI では臨床効果がないため,移植適応のある患者ではallo-HSCT あるいは臨床試験への参加が推奨される。
 ELN 2013 コンセンサス11)では,AP/BC 期の治療方針として,前治療にTKI 投与のない初発AP/BP 期では,高用量のイマチニブ(400 mgBID)もしくはダサチニブ(70 mgBID または140 mgQD)を選択し,allo-HSCT のドナー探しを推奨している。そして,BC 期は可能な限り全員,AP 期はOptimal 奏効が得られない場合は,allo-HSCT を推奨し,allo-HSCT 前には化学療法の施行も認めている。TKI の治療歴があるAP/BC 期には未使用のTKI を選択し,可能な限り全員にallo-HSCT を推奨している。ただし,化学療法でallo-HSCT が施行できるように十分病勢をコントロールすべきとしている。なお,治療抵抗性のBC 期に対してはallo-HSCT は推奨されていない。


[参考文献]

1) Kantarjian HM, et al. Treatment of philadelphia chromosome-positive, accelerated-phase chronic myelogenous leukemia with imatinib mesylate. Clin Cancer Res. 2002 ; 8( 7) : 2167-76. ( 3iiDiv)
2) Talpaz M, et al. Imatinib induces durable hematologic and cytogenetic responses in patients with acceler-ated phase chronic myeloid leukemia : results of a phase 2 study. Blood. 2002 ; 99( 6) : 1928-37.( 3iiDiv)
3) Kantarjian H, et al. Survival benefit with imatinib mesylate therapy in patients with accelerated-phase chronic myelogenous leukemia--comparison with historic experience. Cancer. 2005 ; 103 (10) : 2099-108. (3iiA)
4) le Coutre P, et al. Nilotinib( formerly AMN107), a highly selective BCR-ABL tyrosine kinase inhibitor, is active in patients with imatinib-resistant or -intolerant accelerated-phase chronic myelogenous leukemia. Blood. 2008 ; 111( 4) : 1834-9.( 3iiiDiv)
5) Apperley JF, et al. Dasatinib in the treatment of chronic myeloid leukemia in accelerated phase after imatinib failure : the START A trial. J Clin Oncol. 2009 ; 27( 21) : 3472-9. ( 3iiiDiv)
6) le Coutre PD, et al. Nilotinib in patients with Ph+chronic myeloid leukemia in accelerated phase following imatinib resistance or intolerance : 24-month follow-up results. Leukemia. Leukemia. 2012 ; 26 (6) :1189-94. ( 3iiiA)
7) Cortes J, et al. Dasatinib induces complete hematologic and cytogenetic responses in patients with imatinib-resistant or -intolerant chronic myeloid leukemia in blast crisis. Blood. 2007 ; 109 (8) : 3207-13.(3iiiDiv)
8) Nicolini FE, et al. Expanding nilotinib access in clinical trials( ENACT), an open-label, multicenter study of oral nilotinib in adult patients with imatinib-resistant or-intolerant chronic myeloid leukemia in the accelerated phase or blast crisis. Leuk Lymphoma. 2012 ; 53( 5) : 907-14.( 3iiiDiv)
9) Yanada M, et al. Imatinib combined chemotherapy for Philadelphia chromosome-positive acute lymphoblastic leukemia : major challenges in current practice. Leuk Lymphoma. 2006 ; 47 (9) : 1747-53. (レビュー)
10) Saussele S, et al. Allogeneic hematopoietic stem cell transplantation( allo SCT) for chronic myeloid leukemia in the imatinib era : evaluation of its impact within a subgroup of the randomized German CML Study Ⅳ. Blood. 2010 ; 115( 10) : 1880-5.( 2A)
11) Baccarani M, et al. European LeukemiaNet recommendations for the management of chronic myeloid leukemia : 2013. Blood. 2013 ; 122(6) : 872-84.(レビュー)


CQ 6CMR 到達後にTKI 中止は勧められるか
推奨グレード
カテゴリー4

CMR が得られて安全にTKI 治療が終了できる規準が確立されるまでは,臨床試験以外の実臨床で TKI を中止すべきではない。

[解 説]

 IRIS 試験の長期成績によれば,慢性期CML に対して初期よりイマチニブ治療を遂行された患者では,治療開始より数年間の年次増悪率は5%以下と,イマチニブ登場以前の10~20%に比べて著明に良好である1)。しかしながら,細胞遺伝学的完全奏効(CCyR)に到達している患者に対してイマチニブ治療を中止すると全例が再発した2)。一方,分子遺伝学的奏効[分子遺伝学的大奏効(MMR)や分子遺伝学的完全奏効(CMR)]を長期に維持している患者の中には,イマチニブ中止によっても分子遺伝学的奏効(MR)が持続する患者群が存在することが示され3)4),多施設共同試験でイマチニブ中止試験(STIM 試験)が施行された5)。成人で2 年以上CMR 持続のCML-CP患者100 人が登録されイマチニブが中止された。12 カ月以上の観察期間を有する69 人のCMR 維持率は1 年で41%,2 年で38%となり,長期にイマチニブを中止できた患者の存在が明確になった5)。一方,分子遺伝学的再発症例に対しイマチニブ再投与により,全例で分子遺伝学的効果を示しイマチニブ感受性が保たれていた。この試験では,50 カ月以上の長期にイマチニブが投与されていること,Sokal スコアが低いことがイマチニブ中止可能要因に挙げられた。
 また,国内においてもイマチニブ投与が中止された後方視的調査が実施され,イマチニブ投与が中止された43 例で47%が長期間CMR を維持した。多変量解析の結果,インターフェロンα(IFNα)の前治療とイマチニブの総投与量が再燃予測因子であった6)
 イマチニブに比べて分子遺伝学的効果の高いダサチニブやニロチニブについては,大規模な中止試験は施行されておらず,十分なデータがない。CMR に達して安全にTKI を中止するためには,適切な臨床試験による至適なTKI 投与方法の検討が必要となる。CMR が得られて安全にTKI 治療が終了できる規準が確立されるまでは,臨床試験以外でTKI を中止するべきではない。


[参考文献]

1) Hochhaus A, et al. Six-year follow-up of patients receiving imatinib for the fi rst-line treatment of chronic myeloid leukemia. Leukemia. 2009 ; 23( 6) : 1054-61.( 2Diii)
2) Goh HG, et al. Previous best responses can be re-achieved by resumption after imatinib discontinuation in patients with chronic myeloid leukemia : implication for intermittent imatinib therapy. Leuk Lymphoma.2009 ; 50( 6) : 944-51.( 3iiDiv)
3) Rousselot P, et al. Imatinib mesylate discontinuation in patients with chronic myelogenous leukemia in complete molecular remission for more than 2 years. Blood. 2007 ; 109( 1) : 58-60.( 3iiiDiv)
4) Burchert A, et al. Sustained molecular response with interferon alfa maintenance after induction therapy with imatinib plus interferon alfa in patients with chronic myeloid leukemia. J Clin Oncol. 2010 ; 28 (8): 1429-35.( 3iiiDiv)
5) Mahon FX, et al. Discontinuation of imatinib in patients with chronic myeloid leukaemia who have maintained complete molecular remission for at least 2 years : the prospective, multicentre Stop Imatinib (STIM) trial. Lancet Oncol. 2010 ; 11( 11) : 1029-35. ( 3iiiDiv)
6) Takahashi N, et al. Discontinuation of imatinib in Japanese patients with CML-CP. Haematologica. 2012 ;97( 6) : 903-6.( 3iDiv)


CQ 7すべてのPV 症例に瀉血は勧められるか
推奨グレード
カテゴリー2A

あらゆるリスク群のPV 患者に瀉血を推奨する。瀉血後の目標Ht 値は45%である。低用量アスピリン,ヒドロキシウレア等による抗血 小板療法,細胞減少療法併用症例では,もう少し高い値(48%または55%)でも許容されるかもしれない。

[解 説]

 良好な生命予後が期待されるPV に対する治療の目標は,赤血球の増加による循環障害を改善し,血栓症や出血を予防することである。Ht 値を45%未満となるようコントロールすると血栓症発症率が低下する1)という報告から,PV 患者のHt 値は,瀉血によって45%未満となるようにコントロールすることが広く推奨されてきた。British Committee for Standards in Haematology より2005 年に発表されたガイドラインにおいても,瀉血後の目標Ht 値45%未満が推奨されている。ただし,Ht 値45%未満という目標は低用量アスピリン療法が行われる以前の報告に基づくものである。アスピリン,ヒドロキシウレア(HU)も併用した瀉血後の目標Ht 値に関する前方視的研究では,①アスピリン,HU 等で抗血小板療法を行っている患者では,Ht 値が55%未満の場合も,45%未満の場合と同程度の血栓症リスク,および生存割合であるという報告2)と,② Ht 値45%未満を目標に瀉血を行った場合,心血管障害による死亡と主要血栓症のリスクが,Ht 値45~50%の場合と比べ有意に減少するという報告3)の,相反する結果となってしまっている。また小数例の後方視的研究では,Ht 値が48%を超えると血栓症が増加し,生存割合が低下すると報告されている4)
 これらを勘案すると,原則としてHt 値45%を瀉血の目標とすべきであるが,もう少し高い値も許容可能かもしれない。


[参考文献]

1) Pearson TC, et al. Vascular occlusive episodes and venous haematocrit in primary proliferative polycythaemia. Lancet. 1978 ; 2(8102) : 1219-22.( 3iiiC)
2) Di Nisio M, et al. European Collaboration on Low-dose Aspirin in Polycythemia Vera( ECLAP) Investigators. The haematocrit and platelet target in polycythemia vera. Br J Haematol. 2007 ; 136 (2) : 249-59. (3iC)
3) Marchioli R,et al. Cardiovascular events and intensity of treatment in polycythemia vera. N Engl J Med.2013 ; 368(1) : 22-33.( 1iiiA)
4) Crisà E, et al. A retrospective study on 226 polycythemia vera patients : Impact of median hematocrit value on clinical outcomes and survival improvement with anti-thrombotic prophylaxis and non-alkylating drugs. Ann Hematol. 2010 ; 89(7) : 691-9.( 3iiA)


CQ 8心血管リスクファクターを有するLow リスクET 症例に対してアスピリン投与は勧められるか
推奨グレード
カテゴリー2A

Low リスクET(60 歳未満,かつ血栓症の既往がない)のなかで,心血管リスクファクター(喫煙,高血圧,高コレステロール血症,糖尿病)のある症例,JAK2 変異のある症例では,血栓症発症リスクを低下させるために, 抗血小板療法(低用量アスピリン75~100 mg/日)投与を推奨する。

[解 説]

 High リスクET(60 歳以上,または血栓症の既往がある)では,ヒドロキシウレア(HU)と低用量アスピリン投与が血栓症の発症を有意に抑制した1)が,Low リスクET(60 歳未満,かつ血栓症の既往がない)に対する抗血小板療法の有用性はこれまで不明であった。Alvarez-Larrán らは,Low リスクET 患者300 例を後方視的に解析し,無治療経過観察群と抗血小板療法群(アスピリン投与を含む)における血栓症発症頻度を比較した2)。この解析によって,Low リスクET 患者のうち,心血管リスクファクター(喫煙,高血圧,高コレステロール血症,糖尿病)のある患者,JAK2 変異のある患者に対する抗血小板療法が血栓症発症リスクを低下させることが明らかとなったことより,Low リスクET でも一部の症例では抗血小板療法が推奨される2)。一方,それ以外のLow リスクET 患者では,抗血小板療法に出血リスクを凌駕する有益性は見出せず,投与は推奨されない。


[参考文献]

1) Harrison CN, et al. United Kingdom Medical Research Council Primary Thrombocythemia 1 Study. Hydroxyurea compared with anagrelide in high-risk essential thrombocythemia. N Engl J Med. 2005 ; 353 (1) : 33-45.( 1iiC)
2) Alvarez-Larrán A, et al. Observation versus antiplatelet therapy as primary prophylaxis for thrombosis in low-risk essential thrombocythemia. Blood. 2010 ; 116( 8) : 1205-10( 3iiC)


CQ 9若年者Low リスクMPN 症例に対してヒドロキシウレアによる治療介入は勧められるか
推奨グレード
カテゴリー4

60 歳未満のLow リスクMPN 症例に対し,ヒドロキシウレアの有効性は示されていない。また,急性白血病化または二次がんの頻度を増加させる可能性が否定できないため,60 歳未満のLow リスクMPN 症例に対しヒドロキシウレアによる治療介入は推奨されない。

[解 説]

 MPN の細胞数を減少させるためにヒドロキシウレア(HU)を第一選択薬として用いることが多い。High リスク症例に対しては,HU+低用量アスピリンの血栓症,出血予防に対する有用性が示されている1)が,Low リスク症例に対しての有用性は不明である。一方,ブスルファン(BU)などのアルキル化剤の二次発がんはよく知られているが,HU の二次発がんについても懸念されている。ET に対する化学療法による二次がんとしてはAML/MDS のほかNHL などのリンパ系腫瘍,非血液腫瘍としては肺がん,大腸がん,腎がん,膀胱がん,前立腺がんなどさまざまな固形がんが報告されている。しかし,HU 単剤による治療介入が無治療群と比較し二次発がんを増加させるかは不明である(11.2% vs 7.3%)2)。また,MPN の自然史として急性白血病化が知られているが,治療介入によりその頻度が増加するか否かが治療選択を行う上で重要なポイントとなる。11,039 症例の大規模なスウェーデンのコホート研究では2.6%がAML/MDS に転化したが,HU の投与歴により有意にリスクが増加することはなかった3)
 初発MPN に対するHU 単剤とコントロール群のランダム化比較試験がないため,HU による二次がんのリスクを考え,多くの臨床医は60 歳以上または血栓症の既往がある症例を選んでHU を使っている。European LeukemiaNet は若年者Low リスク症例に対して,HU を含めcytotoxic agent の使用を控えるよう推奨している4)。以上より現在のところ,もし必要であれば60 歳未満では発がん性のないIFNαが第一選択薬になると考えられる(ただし,わが国ではCML 以外のMPN にはIFNαは保険適用外である)。
 High リスク群のPV/ET に対して,さらにPMF では症状緩和の目的でHU が必要になる場合があり,症例を選択してHU を安全に使用する必要がある。


[参考文献]

1) Harrison CN, et al. Hydroxyurea compared with anagrelide in high-risk essential thrombocythemia. N Engl J Med. 2005 ; 353(1) : 33-45.( 1iiC)
2) Radaelli F, et al. Second malignancies in essential thrombocythemia( ET) : a retrospective analysis of 331 patients with long-term follow-up from a single institution. Hematology. 2008 ; 13(4) : 195-202.( 3iiC)
3) Björkholm M, et al. Treatment-related risk factors for transformation to acute myeloid leukemia and myelodysplastic syndromes in myeloproliferative neoplasms. J Clin Oncol. 2011 ; 29(17) : 2410-5.( 3iC)
4) Barbui T, et al. Philadelphia-negative classical myeloproliferative neoplasms : critical concepts and management recommendations from European LeukemiaNet. J Clin Oncol. 2011 ; 29(6) : 761-70.( レビュー)


CQ 10妊娠合併ET に対して流産を減少させるための治療介入は勧められるか
推奨グレード
カテゴリー2B

流産を減らすことができる可能性があるため,少量アスピリンによる治療介入を推奨する。

[解 説]

 妊娠合併ET では合併症として妊娠早期の流産が多く(約3 分の1),稀に母体の出血や血栓症が報告されているが,比較的まれなため,治療介入の有無によるランダム化比較試験はない。しかしながら,比較的多数例の後方視的な検討において,少量アスピリンが,妊娠中の合併症や早産を有意に減らすという報告がある。特にJAK2V617F は妊娠合併ET において合併症を引き起こす独立した要因であり,JAK2V617F 変異を認める場合は積極的な介入が必要とされる1)。別の後方視的な検討においては,インターフェロンα(IFNα)が,胎児死亡を有意に減らすという報告がある。特にJAK2V617F 変異は流産をきたす独立した予後不良因子であり,IFNαで血小板数を減らすことにより合併症を回避できる可能性がある2)。妊娠合併ET 400 例のシステマティックレビューではリスクを問わず,妊娠合併ET に対しての少量アスピリンの有用性について言及している3)。しかしながら,血小板数が100 万を超える症例では出血傾向を示すため少量アスピリンは禁忌となる。また,出産の1~2 週前にはアスピリンを中止し,出産後出血がないことを確認した後,アスピリンを再開し6 週間は継続することが推奨されている3)。また,JAK2V617F 変異を有するHigh リスク症例に対しては少量アスピリン+IFNα(保険適用外)による治療介入も考慮される。


[参考文献]

1) Passamonti, et al. Aspirin in pregnant patients with essential thrombocythemia : a retrospective analysis of 129 pregnancies. J Thromb Haemost. 2010 ; 8( 2) : 411-3.( 3iC)
2) Melillo L, et al. Outcome of 122 pregnancies in essential thrombocythemia patients : A report from the Italian registry. Am J Hematol. 2009 ; 84( 10) : 636-40.( 3iC)
3) Griesshammer M, et al. Management of Philadelphia negative chronic myeloproliferative disorders in pregnancy. Blood Rev. 2008 ; 22( 5) : 235-45.( レビュー)


CQ 11PMF に対して同種造血幹細胞移植は勧められるか
推奨グレード
カテゴリー2B

若年,High リスクPMF に対する造血幹細胞移植は治療オプションとして推奨される。

[解 説]

 PMF の根治が望める治療はallo-HSCT であり,適切なドナーが存在する若年者では移植療法が広く行われている。しかしながら,allo-HSCT に関わる治療関連死亡(therapy-related mortality:TRM)は少なくない(30~50%)。
 最新の多施設前方視的共同研究が英国とフランスから報告されている。英国の報告では,51 例のPMF に対して骨髄破壊的移植または骨髄非破壊的移植(reduced-intensity stem cell transplantation:RIST)を行い,3 年全生存割合(OS)はそれぞれ44%と33%で,3 年TRM はそれぞれ41%と32%であった。再発はそれぞれ15%と46%に,extensive cGVHD をそれぞれ30%と35%に認めている1)。一方,フランスの報告では147 例のMF(PMF 53% , Secondary MF 47%)に対して骨髄破壊的移植またはRIST を行い,4 年OS は39%で,4 年無増悪生存割合(PFS)は32%,4 年非再発死亡割合(non-relapse mortality:NRM)が39%であった2)。TRM を減らすことが期待されるRIST で血液学的再発が多い傾向があるため,現在までのところPMF に対するRIST の有用性は明らかでない。
 ランダム化比較試験によると,allo-HSCT の必要な症例と適切な移植時期,移植前処置は明らかとされておらず,現時点では総論の表7 (p77 参照)に示した予後予測モデルにより予後不良(High またはInt-2 リスク)と判断され,適切なドナーが存在する若年者では,根治的な治療であるallo-HSCT が治療オプションとして推奨される。


[参考文献]

1) Stewart WA, et al. The role of allogeneic SCT in primary myelofi brosis : a British Society for Blood and Marrow Transplantation study. Bone Marrow Transplant. 2010 ; 45(11) : 1587-93.( 3iiiA)
2) Robin M, et al. Allogeneic haematopoietic stem cell transplantation for myelofi brosis : a report of the Société Française de Greff e de Moelle et de Thérapie Cellulaire( SFGM-TC). Br J Haematol. 2011 ; 152(3) : 331-9.( 3iiiA)


追加CQ Highリスク*PMF患者の薬物療法の第一選択薬は何か。
 *IPSSリスク分類で中間-II、または高リスク
推奨グレード
カテゴリー1

ルキソリチニブは、IPSSリスク分類で中間-II、または高リスクMF患者の脾腫、全身症状(掻痒感、全身倦怠感、盗汗、骨痛など)の改善効果を有する。

[解 説]

 2つのフェーズ3試験から、MF患者に対するルキソリチニブの使用は、プラセボ(COMFORT-I試験)または既存の治療(best available therapy: BAT)(COMFORT-II試験)と比較して、脾腫、全身症状(掻痒感、全身倦怠感、盗汗、骨痛など)の改善をもたらすことが示されている1)2)。両試験の長期フォローアップによると、ルキソリチニブ治療が継続された症例では、脾腫、全身症状の改善効果は長期間にわたって維持されている3)4)。これらの試験は生存をエンドポイントにしたものではないが、長期フォローアップの観察によると、ルキソリチニブ群において生存期間の有意な延長が認められている。なおCOMFORT試験は、IPSSのIntermediate-2リスクまたはHighリスクかつ血小板数≧10万個/μlのMF患者を対象としたものであるが、血球減少がある場合にも、少量からのルキソリチニブ投与による安全性と有効性が報告されている5)
 ルキソリチニブはすぐれた臨床効果を示すものの、腫瘍クローンの減少効果は僅かであることが知られている。そのため、予後予測モデルにより予後不良と判断され、適切なドナーが存在する若年者に対しては、allo-HSCTの可能性をまず考慮すべきである。


[参考文献]

1) Verstovsek S, et al. A double-blind, placebo-controlled trial of ruxolitinib for myelofibrosis. N Engl J Med. 2012;366:799-807. (1iC)
2) Harrison C, et al. JAK inhibition with ruxolitinib versus best available therapy for myelofibrosis. N Engl J Med. 2012;366:787-98. (1iiC)
3) Verstovsek S, et al. Efficacy, safety and survival with ruxolitinib in patients with myelofibrosis: results of a median 2-year follow-up of COMFORT-I. Haematologica. 2013;98:1865-71. (3iiA)
4) Cervantes F, et al. Three-year efficacy, safety, and survival findings from COMFORT-II, a phase 3 study comparing ruxolitinib with best available therapy for myelofibrosis. Blood. 2013;122:4047-53. (3iiA)
5) Talpaz M, et al. Interim analysis of safety and efficacy of ruxolitinib in patients with myelofibrosis and low platelet counts. J Hematol Oncol. 2013 Oct 29;6(1):81. (3iiC)