造血器腫瘍診療ガイドライン

第Ⅰ章 白血病

Ⅰ 白血病

2 急性前骨髄球性白血病(acute promylocytic leukemia:APL)
総論

1.病因・病態
急性前骨髄球性白血病(acute promylocytic leukemia:APL)は,FAB分類ではM3,WHO分類(2008)では反復性染色体異常t(15;17)(q22;q12);PML-RARAを伴う急性前骨髄球性白血病,の名称で呼ばれている。AMLの10~15%を占めており,30~50歳台の若年層に好発し60歳以上で減少傾向となる1)。APLの治療は,PML-RARA融合遺伝子に作用する,オールトランス型レチノイン酸(all-trans retinoic acid:ATRA)と亜ヒ酸(arsenic trioxide:ATO)の有効性が確立されている点が他の急性白血病と大きく異なっている。APLは発病初期に線溶亢進型の播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)がみられ致命的な臓器出血を合併しやすいが,DICをコントロールすると完全寛解率は80~90%以上,無病生存割合(DFS)は60~80%以上であり,他のAMLと比較して高い治癒率が得られる2)。このように,APLは疾患特異的な分子に作用する分子標的療法が有効な白血病である。

2.予後因子2)
予後因子による層別化として低リスク(白血球≦10,000/μL),高リスク(白血球>10,000/μL)の2群分類が広く用いられているほか,血小板数を加えた3群分類,低リスク(白血球≦10,000/μL,血小板>40,000/μL),中リスク(白血球≦10,000/μL,血小板≦40,000/μL),高リスク(白血球>10,000/μL)も用いられている。

3.寛解導入療法3)4)
ATRAとアントラサイクリン系薬剤[イダルビシン(IDR)またはダウノルビシン(DNR)]とシタラビン(AraC)の併用療法が基本であり,寛解導入率は概ね90~95%である。DICに対する十分な治療を行う。APLが臨床的,形態学的に疑われる場合は可及的速やかにATRA投与を開始し,t(15;17)やPML-RARAの検査結果による確定診断を待つことが出血合併症の予防に有効である。ATRA投与中はAPL分化症候群(differentiation syndrome:DS)の合併に注意する(CQ4)。

4.地固め療法3)4)
寛解導入療法と同じくアントラサイクリン系薬剤とAraCが基本であり,2ないし3コース行われる。なおAraCの併用は高リスク群でのみ有用,また地固め療法においてもATRAの併用が有効であるとする報告もある。実地臨床ではいずれの方法を用いても問題ない。最も重要なポイントは地固め療法終了時に分子生物学的寛解が達成されていることである。

5.維持療法と経過観察3)4)
地固め療法終了時にRQ-PCR法によりPML-RARAの陰性化が確認された場合,維持療法が考慮されるが高リスク群にのみ有効との報告もある。ATRAまたはATRA/メルカトプリン(6MP)/メトトレキサート(MTX)(内服または皮下注)併用療法が考慮される。維持療法終了後の経過観察にはRQ-PCR法によるPML-RARAの追跡が有用であり,血液学的再発に先行する分子生物学的再発が検出できる。

6.再発APLの治療3)4)
ATRAと化学療法による治療後の再発APLに対し,ATOによる再完全寛解率は80~90%ときわめて高く,ATO単独で分子生物学的寛解を得られることが特筆すべき特徴である。また第二選択薬としてタミバロテンも有効である。

7.今後の展望4)
APLはATRAを用いた標準治療がほぼ確立されている。しかしながら治療初期にみられるDIC対策は依然として極めて重要である。近年ATOやタミバロテンにより再発例においても高い寛解率が得られるようになり,現在これらの薬剤を初発例に対して用いた研究が進行中である。

[参考文献]

1) Swerdlow SH, et al. eds. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. Lyon, IARC ; 2008 ; pp112-4.
2) Sanz MA, et al. Definition of relapse risk and role of nonanthracycline drugs for consolidation in patients with acute promyelocytic leukemia : a joint study of the PETHEMA and GIMEMA cooperative groups. Blood. 2000 ; 96 (4) : 1247-53.(3iiiDii)
3) Sanz MA, et al. Management of acute promyelocytic leukemia : recommendations from an expert panel on behalf of the European Leukemia Net. Blood. 2009 ; 113 (9) : 1875-91.(ガイドライン)
4) Sanz MA, et al. Modern Approaches to Treating Acute Promyelocytic Leukemia. J Clin Oncol. 2011 ; 29 (5) : 495-503. (レビュー)

アルゴリズム

 APLの診断(CQ1)ではFISHやRT-PCR法によるPML-RARAの検出が重要である。t(15 ; 17)以外の転座ではオールトランス型レチノイン酸(ATRA)や亜ヒ酸(ATO)の反応性が異なるからである。APLの初期治療においては凝固異常に伴う脳出血と肺出血による早期死亡が非寛解の主因となるので凝固検査を頻回に行う必要がある。APLの無病生存割合(DFS)における予後不良因子は治療前白血球数10,000/μL以上である。
 未治療APLの寛解導入療法(CQ2)ではATRAと化学療法の併用が標準療法である。初回寛解導入療法では治療抵抗例はほとんどなく,出血とAPL分化症候群などによる早期死亡が非寛解の主因である。したがって,出血予防(CQ3)とAPL分化症候群対策(CQ4)が重要である。
 血液学的寛解が得られた後,2ないし3コースの化学療法からなる地固め療法(CQ5)を行い,RQ-PCR法を用いた骨髄細胞のPML-RARA陰性化による分子生物学的寛解への到達を目指す。地固め療法におけるATRAの併用やATOの導入が試みられている。
 維持療法(CQ6)としての多剤併用化学療法は予後を改善しない。ATRA単独療法やATRAにメトトレキサート(MTX)/メルカトプリン(6MP)を併用した維持療法の有効性が報告されているが,その効果は地固め療法までの治療にも影響される。
 再発時(CQ7)の第一選択はATO治療である。血液学的再発では出血やAPL分化症候群も合併しやすく,PML-RARAのみ陽性の分子生物学的再発時に治療を行うのがよい。再寛解後(CQ8),亜ヒ酸による地固め療法を行い,骨髄PML-RARAが陽性ならば同種造血幹細胞移植,陰性化すれば自家造血幹細胞移植が勧められる。移植の適応がない場合はATO治療後の再発例にも有効なゲムツヅマブオゾガマイシン(GO)が勧められる。
 その他,特殊なAPLの治療として高齢者(CQ9)と妊婦(CQ10)の治療についても記述する。

CQ 1 初発APLの治療開始前に行うべき検査と予後因子は何か
推奨グレード
カテゴリー2A

FISHないしはRT-PCRによるPML-RARAの早期診断が勧められる。

推奨グレード
カテゴリー1

予後因子である治療前白血球数により治療戦略を立てることが勧められる。

推奨グレード
カテゴリー2B

臓器出血による早期死亡の予防のために頻回の凝固検査が勧められる。

[解 説]

 APLの約98%にt(15;17)由来のPML-RARAが陽性である1)。残る少数例の大部分もRARAに転座するが,オールトランス型レチノイン酸(ATRA)および亜ヒ酸(ATO)に対する反応性が異なる1)。例えば,t(11;17)由来のPLZF-RARA陽性例にはともに無効である。したがって,ATRAと化学療法の併用による初期治療が標準療法であるAPLにおいてはFISHやRT-PCR法によりPML-RARAが陽性か否かを早期に診断することが重要である。また,PML-RARAの定量は微小残存病変の検出に有用であり,地固め療法後の有無は重要な予後因子となり,治療方針を左右するので診断時にその有無を確認する必要がある2)
 顆粒が乏しいM3vの診断はときに困難である。M3vは白血球高値例に多く,CD2陽性と相関する。M3vの全生存割合(OS),無病生存割合(DFS)はM3と比較すると有意に低いが,白血球数などで補正するとM3vのみでは有意差がなくなる3)
 APLにおけるDFSにおける予後不良因子は治療前白血球数10,000/μL以上である4)5)。また,CD56陽性は約10%にみられ,白血球数高値,PML切断点bcr3と相関する。CD56陽性例は髄外再発のリスクも高く,再発に対する独立した予後不良因子である6)FLT3遺伝子変異はAPLの約40%にみられ,治療前白血球数,M3vやbcr3と相関する。多数例の解析では非寛解と相関し,5年再発率やOSとは相関しなかった7)
 ATRAと化学療法による初期治療に対する治療抵抗例はほとんどなく,出血とAPL分化症候群などによる早期死亡が問題である。APL分化症候群を予測する指標はないが,凝固異常を頻回にチェックして出血の予防を行うことが重要である(CQ3CQ4)。

[参考文献]

1) Grimwade D, et al. Characterization of acute promyelocytic leukemia cases lacking the classic t(15;17) : results of the European Working Party. Blood. 2000 ; 96 (4) : 1297-308. (3iiDiv)
2) Grimwade D, et al. Prospective minimal residual disease monitoring to predict relapse of acute promyelocytic leukemia and to direct pre-emptive arsenic trioxide therapy. J Clin Oncol. 2009 ; 27 (22) : 3650-8. (3iiDii)
3) Tallman MS, et al. Does microgranular variant morphology of acute promyelocytic leukemia independently predict a less favorable outcome compared with classical M3 APL? A joint study of the North American Intergroup and the PETHEMA Group. Blood. 2010 ; 116 (25) : 5650-9. (3iiA)
4) Asou N, et al. Analysis of prognostic factors in newly diagnosed acute promyelocytic leukemia treated with all-trans retinoic acid and chemotherapy. Japan Adult Leukemia Study Group. J Clin Oncol. 1998 ; 16 (1) : 78-85. (3iiDii)
5) Sanz MA, et al. Definition of relapse risk and role of nonanthracycline drugs for consolidation in patients with acute promyelocytic leukemia : a joint study of the PETHEMA and GIMEMA cooperative groups. Blood. 2000 ; 96 (4) : 1247-53. (3iiiDii)
6) Montesinos P, et al. Clinical significance of CD56 expression in patients with acute promyelocytic leukemia treated with all-trans retinoic acid and anthracycline-based regimens. Blood. 2011 ; 117 (6) : 1799-805. (3iiDii)
7) Gale RE, et al. Relationship between FLT3 mutation status, biologic characteristics, and response to targeted therapy in acute promyelocytic leukemia. Blood. 2005 ; 106 (12) : 3768-76. (3iiA)


CQ 2初発APLの寛解導入療法として何が勧められるか
推奨グレード
カテゴリー1

初発APLの初回寛解導入療法として,ATRAとアントラサイクリン系を主体とした化学療法の併用が勧められる。

推奨グレード
カテゴリー2B

未治療APLの初回寛解導入療法において,ATRAと化学療法に加えて亜ヒ酸を用いる治療は無病生存割合を改善する可能性がある(国内適応外)。

[解 説]

 初発APL例に対する初回寛解導入療法において,化学療法のみの群と化学療法にオールトランス型レチノイン酸(ATRA)を加えた群の大規模ランダム化比較試験がヨーロッパと米国で行われ,ともに寛解率には有意差を認めなかったが,無病生存割合(DFS)はATRA併用群が有意に良好であった1)2)。わが国でもJapan Adult Leukemia Study Group(JALSG) APL92研究においてATRAと化学療法の併用を行い,化学療法のみの以前のAML87,AML89研究と比較して優れた無イベント生存割合(EFS)が得られた3)
 ATRAに併用する化学療法の内容については十分なエビデンスはない。アントラサイクリン系の有効性が高く,いずれの治療法においても用いられる4)。60歳未満の治療前白血球数10,000/μL以下を対象に,アントラサイクリン系に加えてシタラビン(AraC)の有無による比較試験を行ったヨーロッパAPL2000研究では2年累積再発率(cumulative incidence of relapse:CIR),EFS,全生存割合(OS)いずれもAraC併用群が有意に優れていた5)。しかしながら,両群のアントラサイクリンは同量であり,AraC併用の分だけ治療強度が強かったと考えられる。アントラサイクリン系のみを化学療法に用いるPETHEMA研究とAPL2000研究の結果を比較すると,白血球数10,000/μL以下の症例ではPETHEMA治療の方が3年CIRは有意に低かった6)。一方,白血球数10,000/μL以上の症例ではAraCを併用したAPL2000のOSが良好でCIRも低い傾向にあった。白血球数低値例の化学療法の併用時期も意見が分かれる。ヨーロッパAPL93研究では白血球数5,000/μL以下を対象に最初から化学療法を併用する群と白血球数に応じて化学療法を追加する群の比較試験が行われ,2年OSに差はないが,前者のCIRが有意に低かった7)。JALSGでは治療前白血球数に応じて併用する化学療法を層別化し,白血球数3,000/μL未満かつAPL細胞1,000/μL未満の例ではATRA単独で治療を開始して白血球増加例に化学療法を追加し,各群に遜色ない成績が得られている8)
 再発例に有効な亜ヒ酸(ATO)を初回寛解導入に用いた上海グループの研究ではATRA単独,ATO単独群と比較して両者の併用群のDFSが有意に良好であった9)。また,ATO単独で寛解導入と寛解後治療を行うインドグループの成績では寛解率86%,DFS 80%,OS 74%と良好な成績が得られ,初回寛解導入におけるATOの導入は有効と考えられる10)

[参考文献]

1) Fenaux P, et al. Effect of all transretinoic acid in newly diagnosed acute promyelocytic leukemia. Results of a multicenter randomized trial. European APL 91 Group. Blood. 1993 ; 82(11) : 3241-9. (1iiDi)
2) Tallman MS, et al. All-trans-retinoic acid in acute promyelocytic leukemia. N Engl J Med. 1997 ; 337 (15) : 1021-8. (1iiA)
3) Kanamaru A, et al. All-trans retinoic acid for the treatment of newly diagnosed acute promyelocytic leukemia. Japan Adult Leukemia Study Group. Blood. 1995 ; 85 (5) : 1202-6. (2Di)
4) Head D, et al. Effect of aggressive daunomycin therapy on survival in acute promyelocytic leukemia. Blood. 1995 ; 86 (5) : 1717-28. (2A)
5) Adès L, et al. Is cytarabine useful in the treatment of acute promyelocytic leukemia? Results of a randomized trial from the European Acute Promyelocytic Leukemia Group. J Clin Oncol. 2006 ; 24 (36) : 5703-10. (1iiDii)
6) Adès L, et al. Treatment of newly diagnosed acute promyelocytic leukemia (APL) : a comparison of French-Belgian-Swiss and PETHEMA results. Blood. 2008 ; 111 (3) : 1078-84. (3iiiDi)
7) Fenaux P, et al. A randomized comparison of all transretinoic acid (ATRA) followed by chemotherapy and ATRA plus chemotherapy and the role of maintenance therapy in newly diagnosed acute promyelocytic leukemia. The European APL Group. Blood. 1999 ; 94 (4) : 1192-200. (1iiDi)
8) Asou N, et al. A randomized study with or without intensified maintenance chemotherapy in patients with acute promyelocytic leukemia who have become negative for PML-RARalpha transcript after consolidation therapy : the Japan Adult Leukemia Study Group (JALSG) APL97 study. Blood. 2007 ; 110 (1) : 59-66.(1iiDii/3iiiDii)
9) Shen ZX, et al. All-trans retinoic acid/As2O3 combination yields a high quality remission and survival in newly diagnosed acute promyelocytic leukemia. Proc Natl Acad Sci U S A. 2004 ; 101 (15) : 5328-35.
(1iiDii)
10) Mathews V, et al. Single-agent arsenic trioxide in the treatment of newly diagnosed acute promyelocytic leukemia : long-term follow-up data. J Clin Oncol. 2010 ; 28 (24) : 3866-71. (3iiiA)

CQ 3初発APLの寛解導入療法におけるDIC対策として何が勧められるか
推奨グレード
カテゴリー2B

初発APLのATRAと化学療法による初回寛解導入療法において,低フィブリノゲン血症(<100mg/dL),白血球数高値(>20,000/μL)およびPS 2~3の症例は出血の高リスク群であり,十分な出血予防が勧められる。

推奨グレード
カテゴリー2A

寛解導入療法中の出血予防には,血小板輸血により血小板数30,000~50,000/μL以上,凍結血漿によりフィブリノゲン150mg/dL以上に保つ補充療法が薦められる。

推奨グレード
カテゴリー3

低分子ヘパリン,ダナバロイドナトリウム,遺伝子組み換えトロンボモジュリンなどによる抗凝固療法およびトラネキサム酸による抗線溶療法の効果は証明されていない。

[解 説]

 初発APLの寛解導入療法においてはオールトランス型レチノイン酸(ATRA)の導入により減少したとは言え臓器出血が最も大きな非寛解の原因である。Japan Adult Leukemia Study Group(JALSG)APL97研究では283例中の非寛解16例のうち9例(3%)に脳出血や肺出血による早期死亡を認めた1)。PETHEMA研究でも出血による早期死亡を5%に認めている2)。さらに,スウェーデンの人口動態調査では105例のAPL例の29%が早期死亡であり,うち41%に出血を認めた。早期死亡の35%は主に診断以前に出血を併発し,ATRA治療を受けていなかった3)。このように,臨床試験に登録されない実地診療例では依然早期死亡例は多いと予想され,早期診断による出血予防が重要である。
 JALSG APL97研究において臓器出血を併発した18例と併発しなかった261例を比較し,出血の高リスク因子は多変量解析において低フィブリノゲン血症(<100mg/dL),白血球数高値(>20,000/μL)および全身状態(performance status:PS)2~3であった1)
 APLの凝固異常は線溶過剰が主体であり,血小板輸血により血小板数をできれば50,000/μL以上,少なくとも30,000/μL以上,凍結血漿によりフィブリノゲン150mg/dL以上を目標とする補充療法が推奨される。ATRA療法による寛解導入時のこれらの目標値を比較した試験はない。化学療法のみの時代に,血小板およびフィブリノゲンの補充療法のみ,ヘパリンによる抗凝固療法およびトラネキサム酸等による抗線溶療法の3群による後方視的解析が行われ,寛解率,出血による早期死亡に有意差を認めなかった4)。低分子ヘパリン,ダナバロイドナトリウム,遺伝子組み換えトロンボモジュリンなどによる抗凝固療法およびトラネキサム酸による抗線溶療法の有効性は十分証明されていない。トラネキサム酸による抗線溶療法についてはATRAと併用することで血栓症が増加する危険がある5)。低分子ヘパリン,ダナバロイドナトリウム,メシル酸ガベキサートやメシル酸ナファモスタットの合成蛋白分解酵素阻害剤による抗凝固療法については,比較試験の報告に乏しい。遺伝子組換えトロンボモジュリン使用については,DICからの早期離脱と新鮮凍結血漿輸血量の減少が得られたとの報告があるが,少数例の解析である6)。APLの凝固異常は症例によって大きく異なり,特定の症例には抗凝固療法や抗線溶療法が有効な可能性もあり,今後の研究課題である。さらに,ATRAはAPLの凝固異常を直接および間接に改善するので,臨床的にAPLが疑われた場合にはPML-RARAの結果を待たずに早期にATRAを含む治療を開始することは出血予防につながる7)

[参考文献]

1) Yanada M, et al. Severe hemorrhagic complications during remission induction therapy for acute promyelocytic leukemia : incidence, risk factors, and influence on outcome. Eur J Haematol. 2007 ; 78 (3) : 213-9. (3iiDi)
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4) Rodeghiero F, et al. Early deaths and anti-hemorrhagic treatments in acute promyelocytic leukemia. A GIMEMA retrospective study in 268 consecutive patients. Blood. 1990 ; 75 (11) : 2112-7. (3iiiB)
5) Brown JE et al. All-trans retinoic acid (ATRA) and tranexamic acid : a potentially fatal combination in acute promyelocytic leukaemia. Br J Haematol. 2000 ; 110 (4) : 1010-2.(3iiA)
6) Ikezoe T, et al. Recombinant human soluble thrombomodulin safely and effectively rescues acute promyelocytic leukemia patients from disseminated intravascular coagulation. Leukemia Res. 2012 ; 36(11) : 1398-402.(3iiiDiv)
7) Di Bona E, et al. Early haemorrhagic morbidity and mortality during remission induction with or without all-trans retinoic acid in acute promyelocytic leukaemia. Br J Haematol. 2000 ; 108 (4) : 689-95. (2A)

CQ 4APL分化症候群の治療は何が勧められるか
推奨グレード
カテゴリー2A

APL分化症候群(DS)の診断と治療のポイントは臨床症状による早期発見と,DSの重症度によるATRAやATO投与の中止,副腎皮質ステロイドの早期開始が推奨される。初診時白血球数が多い症例,治療中に白血球が増加する症例では,化学療法の併用が推奨される。プレドニゾロンの予防投与は勧められない。

[解 説]

1.症候と診断
 フランスのAPL93研究1),米国のIntergroup study 0129研究2),およびスペインのLPA96とLPA99研究3)によれば,APL分化症候群(differentiation syndrome:DS)の発生率は2.5~26%であり,全症例に対する死亡率は0~3.4%である。DSの発現日(診断日)は,治療開始から中央値7~11日(0~47日)である。頻度の高い症候は,①頻呼吸,呼吸困難,低酸素血症(SpO2の低下),②不明熱,③体重増加,④浮腫,⑤血圧低下,⑥急性腎不全,うっ血性心不全,⑦肺浸潤影,胸水,心嚢水(胸部X線,CTなど),である。

2.DS発症の危険因子
 寛解導入療法では初診時白血球数の少ない症例でオールトランス型レチノイン酸(ATRA)単独治療中の場合,白血球増加がみられれば速やかに化学療法を追加する。初診時の白血球数とDSの発症率は必ずしも相関しないことが知られているが,重症のDSは白血球増加時,特に5,000/μL以上が有意な発症危険因子として指摘されている1)~3)

3.治療
 DSの重症度によりATRAや亜ヒ酸(ATO)を休薬することと,デキサメタゾン(DEX)またはメチルプレドニゾロンパルス療法である。DSが重症化した場合(腎不全や呼吸不全による集中治療を要する)やDEXの効果がみられない場合にのみ休薬するとする意見もある。しかし,DSの多面的な症候に関する明確な重症度規準がないため,DS診断時でのATRAの治療効果とDSによる臓器不全の重症度を症例ごとに考慮して判断する。ATRAは症状が完全に消失してから再開するが,再開時の投与量は初回の75%量から開始し,3~5日間症状が再燃しないことを確認してから元の量に戻していく方法もある。DEXは10mgを1日2回経静脈的に投与する。投与開始は症状や症候が出現した早期であるほど望ましく,症状が完全に消失するまで継続する。

4.発症予防としての化学療法の併用,追加
 化学療法の併用により白血球数の増加が抑制され,DSの発症をおさえていると考えられる。フランスのAPL93研究では4),白血球5,000/μL未満の症例で,ATRAと化学療法同時(実際には3日後)開始群と単独ATRA治療群を比較しているが,前者でDS発症率は低かった。またATRA単独治療の場合,day5で6,000/μL以上,day10で10,000/μL以上,day15で15,000/μL以上となれば速やかに化学療法が追加される方針が示されている。

5.副腎皮質ステロイドの予防投与
 副腎皮質ステロイドの予防的投与によりDSの死亡率を減少させたとするエビデンスは乏しく,標準治療にはなっていない。スペインでのLPA99研究では,プレドニゾロン0.5mg/kg/日をday1~15まで内服しDSの発症予防効果を検討したが,過去のLPA96研究と比較して発症率に差はなかった5)

[参考文献]

1) De Botton S, et al. Incidence, clinical features, and outcome of All trans-retinoic acid syndrome in 413 cases of newly diagnosed acute promyelocytic leukemia. Blood. 1998 ; 92(8) : 2712-8. (3iiiDiv)
2) Tallman MS, et al. Clinical description of 44 patients with acute promyelocytic leukemia who developed the retinoic acid syndrome. Blood. 2000 ; 95(1) : 90-5. (3iiiDiv)
3) Montesinos P, et al. Differentiation syndrome in patients with acute promyelocytic leukemia treated with all-trans retinoic acid and anthracycline chemotherapy : characteristics, outcome, and prognostic factors. Blood. 2009 ; 113(4) : 775-83. (3iiiDiv)
4) de Botton S, et al. Early onset of chemotherapy can reduce the incidence of ATRA syndrome in newly diagnosed acute promyelocytic leukemia (APL) with low white blood cell counts : results from APL 93 trial. Leukemia. 2003 ; 17(2) : 339-42. (3iiiDiv)
5) Sanz MA, et al. Risk-adapted treatment of acute promyelocytic leukemia with all-trans-retinoic acid and anthracycline monochemotherapy : a multicenter study by the PETHEMA group. Blood. 2004 ; 103(4) : 1237-43. (3iiiDiv)

CQ 5未治療APLのATRAと化学療法による寛解後の至適な地固め療法は何か
推奨グレード
カテゴリー1

寛解導入療法後,血液学的完全寛解が達成された場合,引き続きアントラサイクリン系薬剤またはシタラビン併用による地固め療法を2ないし3コース行うことが推奨される。

推奨グレード
カテゴリー2B

治療前白血球数高値の高リスク群ではアントラサイクリン系薬剤とシタラビン併用の地固め療法が推奨される。

推奨グレード
カテゴリー2A

地固め療法終了時の分子生物学的寛解が長期生存の必須条件であり,骨髄PML-RARAの測定が推奨される。

[解 説]

 アントラサイクリン系薬剤[イダルビシン(IDR),ダウノルビシン(DNR),ミトキサントロン(MIT)]が基本であるが,これに併用されるシタラビン(AraC)とオールトランス型レチノイン酸(ATRA)の意義が検討されてきた。AraCを併用しているフランスのAPL93およびAPL2000研究と,AraCを用いないスペインのLPA99研究の比較検討が行われた1)。低および中リスク群では無イベント生存割合(EFS)に差はなかったが,高リスク群ではAPL93,2000群で82.2%,LPA99群で67.3%,と有意にAraC併用群が優れていた。スペインのLPA2005研究では,過去のLPA99研究を改訂し高リスク群でAraCを追加したところ,LPA99研究に比し優れた成績が得られた2)。イタリアのAIDA2000研究では過去のAIDA0493研究を改訂し,全例でATRAの併用と高リスク群でのAraCの併用を行ったところ,高リスク群で再発率が有意に減少した3)。高齢者では,地固め療法での感染症などによる治療関連死亡(TRM)が多いため,より毒性の少ないものが推奨される4)。最も重要なポイントは,地固め療法終了時に分子生物学的寛解が達成されていることである。この時点でRQ-PCR法による骨髄細胞のPML-RARAが陽性の場合は予後不良であるため,亜ヒ酸(ATO)治療などの二次治療を行い,PML-RARAが陰性になれば自家造血幹細胞移植が考慮される。二次治療後もPML-RARAが陽性の場合は,同種造血幹細胞移植が考慮される5)。他のAMLのように寛解後に中枢神経系再発予防のためメトトレキサート(MTX),AraCの髄注を行うこともあるが,高リスク群以外では特に推奨されていない6)

[参考文献]

1) Adés L, et al. Treatment of newly diagnosed acute promyelocytic leukemia (APL) : a comparison of French-Belgian-Swiss and PETHEMA results. Blood. 2008 ; 111 (3) : 1078-84. (3iiiDi)
2) Sanz MA, et al. Risk-adapted treatment of acute promyelocytic leukemia based on all-trans retinoic acid and anthracycline with addition of cytarabine in consolidation therapy for high-risk patients : further improvements in treatment outcome. Blood. 2010 ; 115 (25) : 5137-46. (3iiiDii)
3) Lo-Coco F, et al. Front-line treatment of acute promyelocytic leukemia with AIDA induction followed by risk-adapted consolidation for adults younger than 61 years : results of the AIDA-2000 trial of the GIMEMA Group. Blood. 2010 ; 116 (17) : 3171-9. (3iiiDii)
4) Ades L et al. Outcome of acute promyelocytic leukemia treated with all trans retinoic acid and chemotherapy in elderly patients : the European group experience. Leukemia. 2005 ; 19 (2) : 230-3. (3iiiDi)
5) Esteve J et al. Outcome of patients with acute promyelocytic leukemia failing to front-line treatment with all-trans retinoic acid and anthracycline-based chemotherapy (PETHEMA) protocols LPA96 and LPA99 : Benefit of an early intervention. Leukemia. 2007 ; 21 (3) : 446-52. (3iiiA/2A)
6) Montesinos P et al. Central nervous system involvement at first relapse in patients with acute promyelocytic leukemia treated with all-trans retinoic acid and anthracycline monochemotherapy without intrathecal prophylaxis. Haematologica. 2009 ; 94 (9) : 1242-9. (3iiiDii)

CQ 6未治療APLの寛解例における至適な維持療法は何か
推奨グレード
カテゴリー2A

地固め療法終了時にRT-PCR法によるPML-RARAが陰性化していることが確認された場合,高リスク群ではATRA内服を中心とした維持療法が考慮される。

[解 説]

 維持療法に関して3つの重要な報告がある。イタリアのAIDA0493研究ではオールトランス型レチノイン酸(ATRA),ATRA/メトトレキサート(MTX)/メルカトプリン(6MP),MTX/6MP,維持療法なし,の4群の比較研究が行われたが,12年無病生存割合(DFS)は4群に有意差はなかった1)。フランスのAPL93研究では同じ4群での比較検討を行っているが,10年累積再発率はATRA/MTX/6MP群が最も低く,特に初診時白血球高値群(WBC>5,000/μL)において有効であった2)。また維持療法なしに比べて,ATRA単独,MTX/6MPも有効であった。わが国のAPL97研究では3),6コースの主に点滴静注による多剤併用化学療法と無治療観察群の前方向的比較研究が実施されたが,両群に有意差はなく,むしろ化学療法群で不良な傾向にあった。したがって多剤併用化学療法は維持療法として有効でなく,勧められない。以上より,低リスク群(白血球≦10,000/μL,血小板>40,000/μL),および中リスク群(白血球≦10,000/μL,血小板≦40,000/μL)での最適な維持療法は今後の課題であるが,高リスク群(白血球>10,000/μL)ではATRA内服を中心とした維持療法が考慮されるであろう。ただし,本適応での投与は国内適応外である。

[参考文献]

1) Avvisati G, et al. AIDA 0493 protocol for newly diagnosed acute promyelocytic leukemia : very long-term results and role of maintenance. Blood. 2011 ; 117 (18) : 4716-25. (1iiDii)
2) Ades L, et al. Very long-term outcome of acute promyelocytic leukemia after treatment with all-trans retinoic acid and chemotherapy : the European APL Group experience. Blood. 2010 ; 115 (9) : 1690-6.
(1iiDii)
3) Asou N, et al. A randomized study with or without intensified maintenance chemotherapy in patients with acute promyelocytic leukemia who have become negative for PML-RARalpha transcript after consolidation therapy : The Japan Adult Leukemia Study Group (JALSG) APL97 study. Blood. 2007 ; 110 (1) : 59-66. (1iiDii)

CQ 7再発APLの至適な再寛解導入療法は何か
推奨グレード
カテゴリー2A

RQ-PCR法による骨髄細胞のPML-RARAが陽性化すれば,血液学的寛解であっても再寛解導入療法を開始する。

推奨グレード
カテゴリー2A

亜ヒ酸を含むレジメンが第一選択となる。

推奨グレード
カテゴリー2B

亜ヒ酸が使用できないとき,ゲムツヅマブオゾガマイシンまたはタミバロテンを含むレジメンの使用を考慮する。

[解 説]

 寛解後のRQ-PCR法によるPML-RARAのモニタリング時に,血液学的に寛解状態でありながら,骨髄検査でPML-RARAが陽性化している症例では,ほとんどの症例が後に血液学的再発をきたす1)ことから,分子生物学的再発の状態で治療を始めた方が,その後の再発率・全生存割合(OS)ともに有意に優れる2)3)。オールトランス型レチノイン酸(ATRA)をベースとした寛解導入療法施行症例の再発では,亜ヒ酸(ATO)の投与により80~90%の症例で分子生物学的再寛解が得られ,1~3年のOSは50~70%に達する4)~8)
 ATO単独投与時には白血球数増加を半数に認め,25%がAPL分化症候群(differentiation syndrome:DS)を発症する5)ことから,白血球増加例ではアントラサイクリン系などの抗がん剤を併用したほうが安全である。DS発症時は,副腎皮質ホルモンの投与を開始し,重症であればATOの投与を中止する。ATOは,QT延長の副作用があり,致命的なtorsade de pointesタイプの心室性不整脈を引き起こすことがある。そのため,ATO投与期間中は心電図を定期的にモニタリングし,血清電解質濃度を適正に維持する(K>4.0mEq/dL,Mg>1.8mg/dL)。
 ATOとATRAはin vitroで,APL細胞に対して相乗的に作用することが知られているが,小規模なランダム化比較試験において,ATOにATRAを追加した群に予後の改善がみられなかったことから,ATRA治療後の再発例ではATOにATRAを併用する意義は大きくないと考えられている8)
 ATOを使用できない場合,ゲムツヅマブオゾガマイシン(GO)が第一選択となる。分子再発例に対するGO単剤の投与では,2回投与で81.8%の症例に分子生物学的再寛解が得られたと報告されている9)。GOは類洞閉塞症候群をきたす可能性があり,移植予定例には使用を避けるか,移植までに一定期間をあける必要がある。合成レチノイン酸タミバロテンについては,ATRA治療後の再発例に対する第Ⅱ相試験で58%の再寛解導入率であったが10),現時点ではATO,GOに次ぐ治療と考えられる。

[参考文献]

1) Diverio D, et al. Early detection of relapse by prospective reverse transcriptase-polymerase chain reaction analysis of the PML/RARalpha fusion gene in patients with acute promyelocytic leukemia enrolled in the GIMEMA-AIEOP multicenter “AIDA” trial. Blood. 1998 ; 92 (3) : 784-9. (1iiDiv)
2) Lo Coco F, et al. Therapy of molecular relapse in acute promyelocytic leukemia. Blood. 1999 ; 94 (7) : 2225-9. (2A)
3) Esteve J, et al. Outcome of patients with acute promyelocytic leukemia failing to front-line treatment with all-trans retinoic acid and anthracycline-based chemotherapy (PETHEMA protocols LPA96 and LPA99) : benefit of an early intervention. Leukemia. 2007 ; 21 (3) : 446-52. (3iiiA)
4) Soignet SL, et al. Complete remission after treatment of acute promyelocytic leukemia with arsenic trioxide. N Engl J Med. 1998 ; 339 (19) : 1341-8. (3iiiDiv)
5) Soignet SL, et al. United States multicenter study of arsenic trioxide in relapsed acute promyelocytic leukemia. J Clin Oncol. 2001 ; 19 (18) : 3852-60. (3iiiA)
6) Niu C, et al. Studies on treatment of acute promyelocytic leukemia with arsenic trioxide : remission induction, follow-up, and molecular monitoring in 11 newly diagnosed and 47 relapsed acute promyelocytic leukemia patients. Blood. 1999 ; 94 (10) : 3315-24. (3iiiDii)
7) Shigeno K, et al. Arsenic trioxide therapy in relapsed or refractory Japanese patients with acute promyelocytic leukemia : updated outcomes of the phase Ⅱ study and postremission therapies. Int J Hematol. 2005 ; 82 (3) : 224-9. (3iiiA)
8) Raffoux E, et al. Combined treatment with arsenic trioxide and all-trans retinoic acid in patients with relapsed acute promyelocytic leukemia. J Clin Oncol. 2003 ; 21 (12) : 2326-34. (1iiDiv)
9) Lo-Coco F, et al. Gemtuzumab ozogamicin (Mylotarg) as a single agent for molecularly relapsed acute promyelocytic leukemia. Blood. 2004 ; 104 (7) : 1995-9. (3iiiDiv)
10) Tobita T, et al. Treatment with a new synthetic retinoid, Am80, of acute promyelocytic leukemia relapsed from complete remission induced by all-trans retinoic acid. Blood. 1997 ; 90(3) : 967-73. (3iiDiv)

CQ 8亜ヒ酸によるAPL第二寛解例の寛解後治療として何が勧められるか
推奨グレード
カテゴリー2A

亜ヒ酸による再寛解APL例では亜ヒ酸による地固め療法後,RQ-PCR法による骨髄PML-RARA陰性例には自家移植が勧められる。

推奨グレード
カテゴリー2A

骨髄PML-RARA陽性例には同種移植が勧められる。

推奨グレード
カテゴリー2B

移植の適応がない症例ではゲムツヅマブオゾガマイシンが勧められる。

[解 説]

 亜ヒ酸(ATO)の登場以前にはオールトランス型レチノイン酸(ATRA)と化学療法による再寛解導入療法が行われていた。その第二寛解期の自家移植と同種移植を比較したヨーロッパグループのAPL91とAPL93研究では7年全生存割合(OS)が自家移植群59.8%,同種移植群51.8%と自家移植が優れていた1)。無再発生存割合(RFS)は79.4% vs 92.3%と同種移植が良かったが,治療関連死亡(TRM)が6%と39%と同種移植に多かった。European Group for Blood and Marrow Transplantation(EBMT)の多数例の登録例を解析した結果では自家移植の無病生存割合(DFS) 51%,同種移植では59%であった2)
 ATOによる再寛解後にATOベースの寛解後治療を行った場合,1.5年OS 66%,RFS 56%と一定の長期生存も得られるが,再発も比較的多い3)。ATOによる再寛解後,ATOのみによる地固め療法とATOと化学療法の併用による地固め療法のOSを比較した上海グループの研究では後者が有意に優れていた4)。ATOによる再寛解後の自家移植とATOベースの寛解後治療を比較したインドの成績では自家移植群の無イベント生存割合(EFS) 83%に対して,ATO群は34%であった5)。ATOによる再寛解後に移植の適応がない症例には,ATO治療後の再発例にも有効なゲムツヅマブオゾガマイシン(GO)が薦められる6)
 再寛解後の治療についてはランダム化比較試験が行われていないので十分なエビデンスはない。50歳以下の血縁ドナーがいる例には同種移植が選択肢になるが,それ以外では自家移植が薦められる。自家移植は再発率が比較的高いので骨髄細胞のPML-RARAが陽性の症例には同種移植,陰性例には自家移植がよい。

[参考文献]

1) de Botton S, et al. Autologous and allogeneic stem-cell transplantation as salvage treatment of acute promyelocytic leukemia initially treated with all-trans-retinoic acid : a retrospective analysis of the European acute promyelocytic leukemia group. J Clin Oncol. 2005 ; 23 (1) : 120-6. (2A)
2) Sanz MA, et al. Hematopoietic stem cell transplantation for adults with acute promyelocytic leukemia in the ATRA era : a survey of the European Cooperative Group for Blood and Marrow Transplantation. Bone Marrow Transplant. 2007 ; 39 (8) : 461-9. (3iiiDii)
3) Soignet SL, et al. United States multicenter study of arsenic trioxide in relapsed acute promyelocytic leukemia. J Clin Oncol. 2001 ; 19 (18) : 3852-60. (3iiiA)
4) Niu C, et al. Studies on treatment of acute promyelocytic leukemia with arsenic trioxide : remission induction, follow-up, and molecular monitoring in 11 newly diagnosed and 47 relapsed acute promyelocytic leukemia patients. Blood. 1999 ; 94 (10) : 3315-24. (3iiiDii/2Dii)
5) Thirugnanam R, et al. Comparison of clinical outcomes of patients with relapsed acute promyelocytic leukemia induced with arsenic trioxide and consolidated with either an autologous stem cell transplant or an arsenic trioxide-based regimen. Biol Blood Marrow Transplant. 2009 ; 15 (11) : 1479-84. (2Di)
6) Lo-Coco F, et al. Gemtuzumab ozogamicin (Mylotarg) as a single agent for molecularly relapsed acute promyelocytic leukemia. Blood. 2004 ; 104 (7) : 1995-9. (3iiiDiv)

CQ 9高齢者APLの至適な治療方法は何か
推奨グレード
カテゴリー2A

全身状態が比較的良好な高齢者に対しては治癒を目指した治療を計画するが,治療強度は若年者より弱めるべきである。

推奨グレード
カテゴリー2B

重篤な併存症を持ち,アントラサイクリン系抗がん剤の投与が困難な高齢者に対しては,亜ヒ酸をベースにした治療を行ってもよい。

[解 説]

 高齢者APLは,初発時白血球数が少ない低リスク例が多く,治療反応性は若年者と変わらないものの,感染症などの合併症によって死亡する患者が多い。そのため化学療法の強度を弱めることにより,高齢者APLの治療成績改善が期待される。
 スペインのPETHEMAグループはオールトランス型レチノイン酸(ATRA)とイダルビシン併用の寛解導入療法とアントラサイクリン系抗がん剤中心の地固め療法からなるLPA96/99研究を年齢制限なしで行った。60歳以上の寛解率は84%と良好だったものの,早期死亡の原因は感染症死が多く,寛解後療法中の死亡は71歳以上では19%と若年者に比べ高率であった1)。イタリアのGIMEMAグループは地固め療法3コースからなるAIDA療法を60歳以上には1コースに減らすことにより,治療関連有害事象を減らし,同等の治療成績を得た2)
 亜ヒ酸(ATO)は年齢依存の副作用が少なく,高齢者APLに対しても期待される。米国Intergroup C9710研究では,地固め療法でATOを単独で追加した群は61~79歳の高齢者群でも有意な予後の改善を認めた3)。MDアンダーソンがんセンターは,寛解導入・地固め療法にATOとATRAを併用投与した試験を行い,60歳以上での寛解率は83%,10例中9例が寛解維持(観察中央期間17カ月)との良好な結果を報告している4)
 以上より,高齢者には,通常の抗がん剤より致命的な有害事象をきたすことの少ないATOベースの治療を行うのも妥当と考えられる。

[参考文献]

1) Sanz MA, et al. All-trans retinoic acid and anthracycline monochemotherapy for the treatment of elderly patients with acute promyelocytic leukemia. Blood. 2004 ; 104 (12) : 3490-3. (3iiDii)
2) Mandelli F, et al. Treatment of elderly patients (>or=60 years) with newly diagnosed acute promyelocytic leukemia. Results of the Italian multicenter group GIMEMA with ATRA and idarubicin (AIDA) protocols. Leukemia. 2003 ; 17 (6) : 1085-90. (1iiA)
3) Powell BL, et al. Arsenic trioxide improves event-free and overall survival for adults with acute promyelocytic leukemia : North American Leukemia Intergroup Study C9710. Blood. 2010 ; 116 (19) : 3751-7. (1iiDi)
4) Estey E, et al. Use of all-trans retinoic acid plus arsenic trioxide as an alternative to chemotherapy in untreated acute promyelocytic leukemia. Blood. 2006 ; 107 (9) : 3469-73. (3iiDiv)

CQ 10妊娠中に発症したAPLをどのように治療すべきか
推奨グレード
カテゴリー4

妊娠初期において,患者が妊娠中絶に同意しない場合は,催奇性の高いATRAの投与を避ける。

推奨グレード
カテゴリー2A

妊娠の中後期においては,ATRAも含めて抗がん剤の投与は比較的安全となるが,流産や未熟産のリスクは高くなることから,治療クールの合間の計画的出産を検討する。

推奨グレード
カテゴリー2B

亜ヒ酸は妊娠のすべての期間に使用すべきではない。

[解 説]

 APLはAMLの中でも比較的若年者に発症し,妊娠と合併する頻度が高い。APLは発症時に著明な出血傾向を呈するとともに,オールトランス型レチノイン酸(ATRA)や亜ヒ酸(ATO)には強い催奇性がある1)2)。ATOは,胎児に対する重篤な毒性2)から,妊娠全期で投与を避ける必要がある。
 妊娠初期は,抗がん剤治療により胎児に重大な奇形を引き起こす可能性が高い。また胎児死亡の可能性も高く,母体の生命の安全を優先し,妊娠中絶を十分に検討する必要がある。挙児希望などの理由により妊娠中絶を行わない場合は,ATRAやATOの投与は避け,アントラサイクリン単剤で治療を行うことが望ましい3)。その場合,脂溶性が高く胎盤移行率の高いイダルビシン(IDR)よりもダウノルビシン(DNR)の投与の方が好ましいという意見がある4)。完全寛解が得られ,妊娠中期に移行後は,ATRA併用の抗がん剤治療を行う。
 妊娠中・後期は,ATRAを含む抗癌剤治療を行っても出生児に奇形が出現する可能性は比較的低いとされる5)。しかし,流産や,低体重児の出産・新生児好中球減少症・心合併症などのリスクは高くなる3)ため,心機能評価など胎児のモニタリングを頻回かつ厳密に行う必要がある。
 一般に32週を超えれば新生児科医師との連携の下,早産させることが可能となる。36週以前の出産では,新生児呼吸窮迫症候群によるリスク低減のため,ステロイドの前投与が望ましい3)
 出産後,抗がん剤治療中は授乳を避ける。また,維持療法中の妊娠は避けるように指導する。妊娠合併APLで中絶手術を行う場合,全身状態の悪い時期に行わず待機的に行うことも選択肢となるが,緊急手術が必要になる場合もある。産科医,麻酔科医,新生児科医と十分に連携を取らなければならない。

[参考文献]

1) Lammer EJ, et al. Retinoic acid embryopathy. N Engl J Med. 1985 ; 313 (14) : 837-41. (3iiiC)
2) Golub MS, et al. Developmental and reproductive toxicity of inorganic arsenic : animal studies and human concerns. J Toxicol Environ Health B Crit Rev. 1998 ; 1 (3) : 199-241. (レビュー)
3) Sanz MA, et al. Management of acute promyelocytic leukemia : recommendations from an expert panel on behalf of European Leukemia Net. Blood. 2009 ; 113 (9) : 1875-91 (ガイドライン)
4) Cardonick E, et al. Use of chemotherapy during human pregnancy. Lancet Oncol. 2004 ; 5 (5) : 283-91. (レビュー)
5) Culligan DJ, et al. The management of acute promyelocytic leukemia presenting during pregnancy. Clin Leukemia. 2007 ; 1(3) : 183-91. (レビュー)