日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版補訂版

第Ⅰ章 白血病

Ⅰ 白血病

1 急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)

総論

1.AMLの病態と治療
 急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)は分化・成熟能が障害された幼若骨髄系細胞のクローナルな自律性増殖を特徴とする多様性に富む血液腫瘍である。骨髄における白血病細胞の異常な増殖の結果,正常な造血機能は著しく阻害され,白血球減少,貧血,血小板減少に伴うさまざまな症状を呈する。適切な治療がなされない場合は,感染症や出血により短期間で致死的となる重篤な疾患である。
 初発AMLに対する基本的な治療戦略は治癒を目指した強力な化学療法であり,多剤併用療法が基本となる。しかし,その適応は化学療法による臓器毒性や合併症に耐えられるかを年齢,臓器機能,全身状態などによって慎重かつ厳密に判断する必要がある(表11, 2)。AMLに対する化学療法は寛解導入療法と寛解が得られた後に行う寛解後療法からなる。化学療法のみでは良好な長期予後が得られない症例に対しては第一寛解期で同種造血幹細胞移植が適応となる。
 寛解導入療法に対する不応例や,完全寛解(complete remission:CR)に到達したものの,その後再発をきたした症例は,再発・難治例として救援療法が必要となる。しかし,再発・難治例においては化学療法のみでの治癒は期待しがたいため,可能な症例では同種造血幹細胞移植療法が適応となる。FLT3遺伝子変異陽性例の再発・難治性症例に対しては,2種類のFLT3阻害薬(ギルテリチニブ,キザルチニブ)が使用可能である。両剤ともに使用前に承認されたコンパニオン診断キットでのFLT3遺伝子変異の同定が必要である。また,キザルチニブはFLT3-ITD変異陽性例のみに適応があることに注意する。
 高齢者AMLでは,臓器機能などの患者側要因により,若年成人と同等の治療強度を持つ化学療法を一律に実施することは困難である。全身状態や臓器機能が充分に保たれている場合には化学療法の適応となるが,一般的に,高齢者AMLに対する化学療法は治療関連合併症の頻度・程度が高く,強力化学療法の適応は慎重に判断しなければならない。

表1 強力化学療法適応規準1, 2)

項目 基準
年齢 65歳未満
心機能 左室駆出率(LVEF)50%以上
肺機能 PaO2 60Torr以上または SpO2 90%以上(room air)
肝機能 血清ビリルビン2.0 mg/dL以下
腎機能 血清クレアチニン施設基準値の上限の1.5倍以下
感染症 制御不能の感染症の合併なし

JALSG(日本成人白血病治療共同研究グループ)における臨床第Ⅲ相試験で定める適格規準などを参考に強力化学療法を行うにあたり上記規準が目安となるが,患者の全身状態やその他の合併症を考慮して総合的に判断する必要がある。

2.AMLの診断と病型分類
 AMLの診断は,①骨髄における白血病細胞の存在(WHO分類では20%以上,FAB 分類では30%以上),②白血病細胞が骨髄系起源であること,③白血病細胞の染色体核型・遺伝子変異解析によって行われ,その後WHO分類に従って病型分類される(表23)。WHO分類は2017年に改訂が行われたが,AMLおよび関連悪性腫瘍の項目では,特定の遺伝子異常を有するAMLに新たな遺伝子異常を有するAMLの追加,骨髄中赤芽球が50%以上存在する場合の診断基準の見直し,芽球形質細胞様樹状細胞腫瘍の削除が主たる変更点である。分類不能のAML(AML, not otherwise specified)の細分類には従来通りFAB分類における形態学的・免疫組織学的診断が用いられる4)

表2 AMLのWHO分類(2017)3)

AML with recurrent genetic abnormalities
  AML with t (8;21)(q22;q22.1); RUNX1-RUNX1T1
  AML with inv(16)(p13.1q22) or t(16;16)(p13.1;q22); CBFB-MYH11
  APL with PML-RARA
  AML with t (9;11)(p21.3;q23.3); MLLT3-KMT2A
  AML with t (6;9)(p23;q34.1);DEK-NUP214
  AML with inv (3)(q21.3q26.2) or t(3;3)(q21.3;q26.2); GATA2, MECOM
  AML (megakaryoblastic) with t(1;22)(p13.3;q13.3); RBM15-MKL1
  Provisional entity: AML with BCR-ABL1
  AML with mutated NPM1
  AML with biallelic mutations of CEBPA
  Provisional entity: AML with mutated RUNX1
AML with myelodysplasia-related changes
Therapy-related myeloid neoplasms
AML, NOS
  AML with minimal differentiation
  AML without maturation
  AML with maturation
  Acute myelomonocytic leukemia
  Acute monoblastic/monocytic leukemia
  Pure erythroid leukemia
  Acute megakaryoblastic leukemia
  Acute basophilic leukemia
  Acute panmyelosis with myelofibrosis
Myeloid sarcoma
Myeloid proliferations related to Down syndrome
  Transient abnormal myelopoiesis (TAM)
  Myeloid leukemia associated with Down syndrome

3.AMLの予後因子
 標準的な化学療法を受けた若年成人AML全体では,70~80%のCRと40%前後の5年無再発生存が得られるが,種々の予後因子により予後良好群,中間群,不良群の3種類に区別される。
 AMLの予後には患者側要因と白血病細胞側要因の双方が関係するとともに,治療反応性も長期予後に影響を及ぼす因子となる(表32, 5-7)
 患者側要因として,年齢(60歳以上),全身状態(performance status:PS 3および4),合併症の存在(感染症など)が予後不良因子として重要である。
 白血病細胞側要因として,染色体核型,発症様式(de novoまたは二次性),初診時白血球数,細胞形態(異形成の有無,FAB病型,myeloperoxidase:MPO染色陽性率)が予後因子となる。
 染色体核型はAMLにおける予後層別化因子として最も使用されているが,種々の遺伝子変異の予後因子としての重要性が明らかとなり,従来の染色体核型に基づくリスク分類を遺伝子変異の状態によって細分化するシステムが提唱されている。しかし,AMLに生じている遺伝子変異は固形がんに比較して少ないものの,複数の遺伝子変異が協調的に病態に関与しているため,個々の遺伝子変異単独での予後層別化には注意をする必要があり,複数の遺伝子変異を組み合わせた層別化システムの構築が模索されている。2010年にEuropean LeukemiaNetから,遺伝子変異と従来の染色体核型に基づく予後因子を組み合わせた新たな予後層別化システムが提唱されたが,2017年に新たな染色体異常および遺伝子変異の状態を組み入れた改訂が行われた(表48)

表3 AMLにおける予後層別化因子2, 5-7)

層別化因子 良好となる因子 不良となる因子
年齢 50歳以下 60歳以上
全身状態(PS) PS 2以下 PS 3以上
発症様式 de novo 二次性
染色体核型 t(8;21)(q22;q22.1)
inv(16)(p13.1q22)
t(16;16)(P13.1;q22)
t(15;17)(q24.1;q21.2)
3q異常[inv(3)(q21.3q26.2),
t(3;3)(q21.3;q26.2)など]
5番・7番染色体の欠失または長腕欠失
t(6;9)(p23;q34.1)複雑核型
遺伝子変異 NPM1変異
両アレルCEBPA変異
FLT3-ITD変異
寛解までに要した治療回数 1回 2回以上

表4 ELNによるAMLの層別化システム

Risk category Genetic abnormality
Favorable t(8;21)(q22;q22.1): RUNX1-RUNX1T1
Inv(16)(p13.1q22) or t(16;16)(p13.1;q22): CBFB-MYH11
Mutated NPM1 without FLT3-ITD or with FLT3-ITDlow*
Biallelic mutated CEBPA
Intermediate Mutated NPM1 and FLT3-ITDhigh*
Wild type NPM1 without FLT3-ITD or with FLT3-ITDlow*(without adverse risk genetic lesions)
t(9;11)(p21.3;q23.3); KMT2A-MLLT3
Cytogenetic abnormalities not classified as favorable or adverse
Adverse t(6;9)(q23;q34.1): DEK-NUP214
t(v;11)(v;q23): KMT2A rearranged
t(9;22)(q34.1;q11.2); BCR-ABL1
inv(3)(q21.3q26.2) or (t 3;3)(q21.3;q26.2); GATA2, MECOMEVI1
-5 or del(5q), -7, -17 or abn(17p)
Complex karyotype§, monosormal karyotype
Wild type NPM1 and FLT3-ITDhigh*
Mutated RUNX1
Mutated ASXL1
Mutated TP53

 Low:low allelic ratio(<0.5),high;high allelic ratio(≧0.5)
 稀な予後不良遺伝子変異の重複よりも優先される。
§ 3つ以上の染色体異常あり,かつ以下の転座・逆位を伴わない;t(8;21),inv(16)/t(16;16),t(9;11),t(v;11)(v;q23.3),t(6;9),inv(3)/(t 3;3),BCR-ABL1
 少なくとも1つ以上の付加的モノソミーまたは染色体構造異常(core-binding factor AMLを除く)を伴う1つのモノソミー(XまたはY染色体欠失を除く)。
 これらのマーカーはFavorable群のリスク因子を伴った場合,Adverseとして扱わない。
 TP53変異は染色体複雑核型と関連する。

参考文献

1)Ohtake S, et al. Randomized study of induction therapy comparing standard-dose idarubicin with highdose daunorubicin in adult patients with previously untreated acute myeloid leukemia : the JALSG AML201 Study. Blood. 2011 ; 117(8): 2358-65.(1iiDiv)
2)NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Acute Myeloid Leukemia. Version 3. 2020-December 23, 2019.(ガイドライン)
3)Arber DA, et al. Acute myeloid leukaemia and related precursor neoplasms. Swerdlow SH, et al. eds. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues, Lyon, IARC ; 2017 : pp129-71.(テキストブック)
4)Bennett JM, et al. Proposed revised criteria for the classification of acute myeloid leukemia. A report ofthe French-American-British Cooperative Group. Ann Intern Med. 1985 ; 103(4): 620-5.
5)Grimwade D, et al. The importance of diagnostic cytogenetics on outcome in AML : analysis of 1,612 patients entered into the MRC AML 10 trial. The Medical Research Council Adult and Children’s Leukaemia Working Parties. Blood. 1998 ; 92(7): 2322-33.(3iiiD)
6)日本血液学会.日本リンパ網内系学会編.造血器腫瘍取扱い規約規約 第1版.2010年3月.(ガイドライン)
7)Kuriyama K, et al. Trial to extract prognostic factors prior to the start of induction chemotherapy for adult AML. Berlin : Springer. 1998, pp901-5.
8)Dühner H, et al. Diagnosis and management of AML in adults : 2017 ELN recommendations from an international expert panel. Blood. 2017 ; 129(4): 424-47.(レビュー)

 

アルゴリズム

1.若年者AML
 AMLと診断された場合は上記のアルゴリズムに従うことが推奨される。若年AMLに対する標準的寛解導入療法はアントラサイクリン+標準量シタラビン(CQ2)である。その際のアントラサイクリン系薬剤の至適な種類と投与量は1つに限定されないが,ダウノルビシンまたはイダルビシンの使用が推奨される(CQ2, 3)。1コース目の寛解導入療法で非寛解症例に対しては同一レジメンが繰り返されることが多く(CQ5),2コース目の治療でも寛解が得られない場合は,大量あるいは中等量シタラビンを含む救援療法が行われる。
 地固め療法は染色体などの予後因子により層別化して行われる。予後良好群に対しては,シタラビン大量療法(CQ6)が,予後中間群,不良群に対しては同種造血幹細胞移植が推奨されるが(CQ8),適切なドナーが不在の場合は,非交差耐性のアントラサイクリン系薬剤を含んだレジメンが実施される(CQ7)。維持療法は必要ない。AMLの予後分類において,AML細胞の要因として染色体核型に基づく層別化が汎用されているが,遺伝子変異を組み入れた予後分類も提唱されている(CQ1)。

2.高齢者AML
 高齢者の定義は定かではないが,わが国では65歳以上とすることが多い。標準的な治療が可能かどうかは,全身状態(PS)や合併症,さらには染色体分析の結果を参考に担当医師により判断される。治療可能と判断された症例に対してはダウノルビシン+シタラビンが推奨される(CQ4)。高齢者AMLに対する標準的寛解後療法は確立されてないが,わが国では,非交差耐性のアントラサイクリン系薬剤を含む多剤併用レジメンが実施されることが多い(CQ9)。最近では,予後不良の症例には寛解後療法として骨髄非破壊的前処置による同種造血幹細胞移植も行われることがある。標準治療は困難だが,治療は可能と判断された症例には,低用量シタラビンや新規薬剤による治療が行われる。

3.非寛解期AMLに対する同種造血幹細胞移植
 再発AMLに対する再寛解導入療法を行わない非寛解のままでの移植の適応を決定する明確な指標は確立されていない。また寛解導入療法不応非寛解症例に対する移植の適応を決定する明確な指標も確立されていない(CQ10)。

4.支持療法
 AMLの寛解導入療法,寛解後療法時におけるG-CSF 投与は,好中球減少期間の短縮やQOLの改善が期待でき,高齢者や重症感染症を併発した症例では検討されても良い(CQ11)。
 AMLに対する化学療法開始前に末梢白血球数と血清乳酸脱水素酵素値,腎機能に基づきリスク分類をおこない,リスクに応じた腫瘍崩壊症候群の予防を行うことが推奨される(CQ12)。

5.中枢神経白血病予防
 AMLでは中枢神経系白血病の発症頻度が低く,無症状の症例に対して予防的に抗がん薬を髄腔内投与する適応はない。単球系への分化を示す症例,mixed phenotype,末梢血白血球数が4万/μLを超える症例,髄外白血病では神経症状がみられなくても寛解に到達した時点で腰椎穿刺によるスクリーニングが考慮される(CQ13)。

6.腫瘤形成性AMLに対する治療
 腫瘤形成性AMLに対しては単独発症の場合であっても通常の寛解導入療法が考慮される(CQ14)。

7.AMLにおける微小残存病変(MRD)の評価
 微小残存病変(minimal residual disease:MRD)の正確な評価は,再発の予測や造血細胞移植を含む治療戦略の個別化に有用な情報となる。AMLにおけるMRDのモニタリングに経時的な疾患特異的キメラ遺伝子やWT1遺伝子のmRNA発現定量が考慮される。マルチカラーフローサイトメトリ法の有用性も示唆されているが,わが国では保険適用がない(CQ15)。

8.AMLに対するゲムツズマブ オゾガマイシン(gemtuzumab ozogamicin:GO)の使用
 わが国におけるGOの適応疾患は再発または難治CD33陽性AMLである。GOの投与回数は,少なくとも14日間の投与間隔をおいて,2回とし,他の抗悪性腫瘍剤と併用しない(CQ16)。

 

CQ1 AMLの診断時に必要な遺伝子検査は何が勧められるか

推奨グレード
カテゴリー2A

染色体核型検査は病型分類,予後予測,治療法選択において必須である。FLT3NPM1CEBPARUNX1ASXL1TP53遺伝子などの変異解析によってさらなる予後層別化が可能とされている。

解説

 AML細胞の染色体核型は,寛解導入療法に対する反応性および生存に対する最も強い予後因子であり,WHO分類(2017)における病型診断,さらには治療法の選択においても重要な情報となる。
 若年成人においては,染色体核型に基づき,予後良好群,中間群,不良群の3群に分類される1, 2)。NCCNガイドラインでは,(t 8;21)(q22;q22.1),inv(16)(p13.1q22)またはt(16;16)(p13.1;q22)が予後良好な染色体核型,inv(3)(q21.3q26.2)またはt(3;3)(q21.3;q26.2),-5またはdel(5q),-7またはdel(7q),t(6;9)(p23;q34.1),t(9;11)(p21.3;q23.3)以外のKMT2MLL)遺伝子(11q23)を含む染色体転座,t(9;22)(q34.1;q11.2),複雑核型,monosomal karyotypeが予後不良染色体核型,正常核型,+8のみ,t(9;11)(p21.3;q23.3),その他の核型は予後中間群に分類されている3)。MRC AML-11試験の結果によると,高齢者AMLにおいても染色体核型に基づく層別化が可能であることが示されている4)
 一方,予後良好群として分類されているt(8;21)(q22;q22.1),inv(16)(p13.1q22)またはt(16;16)(p13.1;q22)核型を有する症例においても,KITFLT3遺伝子変異を併せ持つ症例は予後不良である可能性があることや,染色体正常核型を中心とする予後中間群においては,FLT3NPM1CEBPA遺伝子などをはじめとする多くの遺伝子変異の存在の有無により,その長期予後に対するリスクを細分化できる可能性が示唆されている3, 5-8)
 WHO分類(2017)では,NPM1遺伝子変異,両アレルでのCEBPA遺伝子変異,RUNX1遺伝子変異を有する症例が,染色体転座以外のAML with recurrent genetic abnormalities中の一病型として含められている9)
 本邦においてはこれら遺伝子変異検索の保険適用が得られておらず,また多くの遺伝子変異解析は研究室レベルでのみ実施可能である。

参考文献

1)Grimwade D, et al. The importance of diagnostic cytogenetics on outcome in AML : analysis of 1, 612 patients entered into the MRC AML 10 trial. The Medical Research Council Adult and Children’s Leukaemia Working Parties. Blood. 1998 ; 92(7): 2322-33.(3iiiD)
2)Slovak ML, et al. Karyotypic analysis predicts outcome of preremission and postremission therapy in adult acute myeloid leukemia : a Southwest Oncology Group/Eastern Cooperative Oncology Group Study. Blood. 2000 ; 96(13): 4075-83.(3iiiD)
3)NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Acute Myeloid Leukemia. Version 3. 2020-December 23, 2019.(ガイドライン)
4)Grimwade D, et al. The predictive value of hierarchical cytogenetic classification in older adults with acute myeloid leukemia(AML): analysis of 1065 patients entered into the United Kingdom Medical Research Council AML11 trial. Blood. 2001 ; 98(5): 1312-20.(3iiiD)
5)Marcucci G, et al. Molecular genetics of adult acute myeloid leukemia : prognostic and therapeutic implications. J Clin Oncol. 2011 ; 29(5): 475-86.(レビュー)
6)Kihara R, et al. Comprehensive analysis of genetic alterations and their prognostic impacts in adult acute myeloid leukemia patients. Leukemia. 2014 ; 28 : 1586-95.(3iiiD)
7)Papaemmanuil E, et al. Genomic classification and prognosis in acute myeloid leukemia. N Engl J Med. 2016 ; 374 : 2209-21.(3iiiD)
8)Döhner H, et al. Diagnosis and management of AML in adults : 2017 ELN recommendations from an international expert panel. Blood. 2017 ; 129(4): 424-47.(ガイドライン)
9)Arber DA, et al. Acute myeloid leukaemia and related precursor neoplasms. Swerdlow SH, et al. eds. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues, Lyon, IARC ; 2017 : pp129-71.(テキストブック)

 

CQ2 若年者de novo AMLに対する標準的寛解導入療法としてどのレジメンが勧められるか

推奨グレード
カテゴリー1

若年成人de novo AMLに対する標準的寛解導入療法はアントラサイクリン(イダルビシンまたはダウノルビシン)+標準量シタラビンである。

解説

 従来,60歳未満の若年成人de novo AMLに対する標準的寛解導入療法は,ダウノルビシン(DNR)45~50 mg/m2 3日間+シタラビン(AraC)100 mg/m2または200 mg/m2 7日間持続投与の“3+7”療法であったが,イダルビシン(IDR)+AraCとDNR+AraCとの比較試験およびメタアナリシスの結果,IDR+AraCのDNR+AraCに対する優越性が報告された1)。しかし,従来のDNR投与量(45~50 mg/m2)はIDR投与量(12 mg/m2)と比較して,生物学的に少ないことが指摘された。
 米国Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)では,60歳未満のde novo AMLに対し増量DNR(90 mg/m2)3日間+AraC(100 mg/m2)7日間と従来のDNR(45 mg/m2)3日間+AraC(100 mg/m2)7日間とのランダム化比較試験が実施され,寛解率,生存割合ともに増量DNR(90 mg/m2)群が有意に優れていることが示された2)
 英国National Cancer Research Institute(NCRI)では,DNR(90 mg/m2)3日間とDNR(60 mg/m2)3日間の比較試験が実施され,寛解率および生存割合に有意差は認められず,60日時点での死亡割合はDNR(90 mg/m2)群で有意に高いことが示された3)
 Japan Adult Leukemia Study Group(JALSG)で実施されたDNR(50 mg/m2)5日間+AraCとIDR+AraCとのランダム化比較試験(AML 201 study)の結果では,寛解率および生存割合ともに両群の同等性が示されている4)
 その他のアントラサイクリン系薬剤として,ミトキサントロン(MIT)(総量18~30 mg/m2)とIDR(総量24~36 mg/m2)との比較試験が行われているが,寛解率および生存割合に有意差は認められていない5)
 したがって,若年成人de novo AMLに対する標準的寛解導入療法は,IDR+AraCまたはDNR+AraCである。NCCNガイドラインでは,DNR+AraC療法におけるDNR投与量は60~90 mg/m2 3日間が推奨されている6)が,50 mg/m2 5日間投与も同等の成績が得られることが示されている。また,わが国でのDNRの承認用法・用量は,体重1 kgあたり1 mgを連日あるいは隔日に3~5回投与であることに留意する必要がある。

参考文献

1)A systematic collaborative overview of randomized trials comparing idarubicin with daunorubicin (or other anthracyclines) as induction therapy for acute myeloid leukaemia. The AML Collaborative Group. Br J Haematol. 1998 ; 103(1): 100-9.(1iiA)
2)Fernandez HF, et al. Anthracycline dose intensification in acute myeloid leukemia. N Engl J Med. 2009 ; 361(13): 1249-59.(1iiDiv)
3)Burnett AK, et al. A randomized comparison of daunorubicin 90 mg/m2 vs 60 mg/m2 in AML induction : results from the UK NCRI AML17 trial in 1206 patients. Blood. 2015 ; 125(25): 3878-85.(1iiA)
4)Ohtake S, et al. Randomized study of induction therapy comparing standard-dose idarubicin with highdose daunorubicin in adult patients with previously untreated acute myeloid leukemia : the JALSG AML201 Study. Blood. 2011 ; 117(8): 2358-65.(1iiDiv)
5)Li X, et al. The effects of idarubicin versus other anthracyclines for induction therapy of patients with newly diagnosed leukaemia. Cochrane Database Syst Rev. 2015 ;(6): CD010432.(1iiA)
6)NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Acute Myeloid Leukemia. Version 3. 2020-December 23, 2019.(ガイドライン)

 

CQ3 若年者de novo AMLの寛解導入療法(アントラサイクリン+標準量シタラビン)に他の薬剤の追加やシタラビン大量療法の組み込みは有効か

推奨グレード
カテゴリー3

標準的寛解導入療法であるアントラサイクリン(イダルビシンまたはダウノルビシン)+標準量シタラビン療法に他剤を追加した場合の優越性は認められていない。また,シタラビン大量療法を組み入れた場合の優越性のエビデンスは乏しく,有害事象の危険性が増すため推奨されない。

解説

 アントラサイクリン[イダルビシン(IDR)またはダウノルビシン(DNR)]3日間+標準量シタラビン(AraC)7日間による寛解導入療法にチオグアニンやエトポシド(ETP)を加えた場合の優越性に関するエビデンスは乏しい。Australian Leukemia Study Group(ALSG)では,DNR(50 mg/m2)3日間+AraC(100 mg/m2)7日間とDNR(50 mg/m2)3日間+AraC(100 mg/m2)7日間+ETP(75 mg/m2)7日間とのランダム化比較試験が行われた。寛解期間中央値はエトポシド追加群で有意に長期であった(18カ月vs 12カ月)が,寛解率,生存割合では両群間に有意差を認めていない1)。Japan Adult Leukemia Study Group(JALSG)での検討でもエトポシドの追加による効果は認めないと報告されている2)
 寛解導入療法におけるAraC大量療法(HiDAC)の意義については,ALSGとSouthwesternOncology Group(SWOG)でランダム化比較試験が実施されている。
 ALSGではDNR(50 mg/m2)3日間+ETP(75 mg/m2)7日間+AraC(100 mg/m2)7日間とDNR(50 mg/m2)3日間+ETP(75 mg/m2)7日間+AraC(3 g/m2)12時間ごと4日間のランダム化比較試験が実施された。5年無再発生存割合(RFS)はHiDAC群が有意に優れていた(48% vs 25%)が,生存割合,寛解率では有意差を認めていない3)
 SWOGではDNR(45 mg/m2)3日間+AraC(200 mg/m2)7日間とDNR(45 mg/m2)3日間+AraC(2 g/m2)12時間ごと6日間のランダム化比較試験が実施された。4年RFSはHiDAC群が優れていた(33% vs 21%,p=0.049)が,生存割合,寛解率では有意差を認めていない。また,HiDAC群では有意に治療関連死亡(TRM)と神経毒性が高頻度に認められている4)
 HiDACと高用量DNRまたはIDR併用療法に関するエビデンスはない。
 標準的寛解導入療法であるアントラサイクリン(DNRまたはIDR)+標準量AraC療法に他剤の追加した場合,およびHiDAC療法を組み入れた場合の優越性に関するエビデンスは乏しい。また,HiDACを組み入れた場合にはTRM,神経毒性などの有害事象の危険性が増すため,HiDACの組み入れは推奨されない。

参考文献

1)Bishop JF, et al. Etoposide in acute nonlymphocytic leukemia. Australian Leukemia Study Group. Blood. 1990 ; 75(1): 27-32.(1iiDiv)
2)Miyawaki S, et al. No beneficial effect from addition of etoposide to daunorubicin, cytarabine, and 6-mercaptopurine in individualized induction therapy of adult acute myeloid leukemia : the JALSG-AML92 study. Japan Adult Leukemia Study Group. Int J Hematol. 1999 ; 70(2): 97-104.(1iiDiv/3iDiv
3)Bishop JF, et al. A randomized study of cytarabine in induction in acute myeloid leukemia. Blood. 1996 ; 87(5): 1710-7.(1iiA)
4)Weick JK, et al. A randomized investigation of high-dose versus standard-dose cytosine arabinoside with daunorubicin in patients with previously untreated acute myeloid leukemia : a Southwest Oncology Group study. Blood. 1996 ; 88(8): 2841-51.(1iiA)

 

CQ4 高齢者AMLに対して推奨される寛解導入療法は何か

推奨グレード
カテゴリー2A

60~65歳までの高齢者AMLにおいては,若年成人と同等の寛解導入療法を実施した方が良好な寛解率と生存割合が期待できる。しかし,高齢者AMLでは全身状態(PS),併存疾患などの程度により,治療強度の軽減やbest supportive careの選択を検討することが必要である。

解説

 高齢者の定義は明確ではないが,一般的に60歳以上のAML患者では,暦年齢だけではなく,全身状態(performans status:PS)や併存疾患ならびにAMLの特性(染色体核型や発症様式)によって治療法の選択を行うべきである。
 高齢者AMLに対する寛解導入療法で若年者と同様に標準的寛解導入化学療法を行う場合と,低用量の治療ないしbest supportive careを比較するランダム化比較試験では,標準的寛解導入療法群は寛解率・生存割合ともに成績が勝ることが示されている1)。しかし,高齢者AMLにおいてはPS,合併症が治療成績に及ぼす影響が強いことに留意する必要がある。
 合併症がなく良好な全身状態(PS 0~1)であり,予後良好な染色体核型を有する高齢者AMLでは,年齢に関係なく標準的なアントラサイクリン3日間+標準量シタラビン(AraC)7日間からなる寛解導入療法の恩恵を受けることができる可能性がある。しかし,75歳以上,あるいは60~74歳までの患者であっても重篤な併存疾患やPS 3以上の場合には,治療関連死亡(TRM)の危険性が高いため,他の治療強度の低い治療法またはbest supportive careを選択すべきである2)。MRC AML14試験では,低用量AraC(20 mg/m2皮下注1日2回)療法においても,30日以内のTRMを26%に認めている3)
 Dutch-Belgian Hemato-Oncology Cooperative Group(HOVON)/Swiss Group for Clinical Cancer Research(SAKK)/German AML Study Group(AMLSG)では,60歳以上の高齢者AMLに対し,標準量のダウノルビシン(DNR)(45 mg/m2)+AraCと高用量DNR(90 mg/m2)+AraC療法のランダム化比較試験が実施された。高用量DNR(90 mg/m2)群は標準量のDNR群に比較して有意に高い寛解率を示したが,生存割合に有意差を認めていない。年齢別に解析した場合,60~65歳までの症例においてのみ,高用量DNR(90 mg/m2)群は標準量のDNR群に比較して有意に高い寛解率と生存割合を示している4)
 年齢,PS,合併症などに基づく高齢者AMLに対する治療強度の減弱規準に関しての明確なエビデンスはない。JALSG GML200試験では,65~69歳までの症例に対してはDNR(40 mg/m2)3日間+エノシタビン(BHAC)(200 mg/m2)8日間,70~79歳の症例に対してはDNR(30 mg/m2)3日間+BHAC(200 mg/m2)8日間による寛解導入療法が実施されており,年齢に基づくDNR投与量の目安になると思われる5)

参考文献

1)Löwenberg B, et al. On the value of intensive remission-induction chemotherapy in elderly patients of 65+years with acute myeloid leukemia : a randomized phase Ⅲ study of the European Organization for Research and Treatment of Cancer Leukemia Group. J Clin Oncol. 1989 ; 7(9): 1268-74.(1iiA)
2)Döhner H, et al. Diagnosis and management of acute myeloid leukemia in adults : recommendations from an international expert panel, on behalf of the European LeukemiaNet. Blood. 2010 ; 115(3): 453-74.(レビュー)
3)Burnett AK, et al. A comparison of low-dose cytarabine and hydroxyurea with or without all-trans retinoic acid for acute myeloid leukemia and high-risk myelodysplastic syndrome in patients not considered fit for intensive treatment. Cancer. 2007 ; 109(6): 1114-24.(1iiA)
4)Löwenberg B, et al. High-dose daunorubicin in older patients with acute myeloid leukemia. N Engl J Med. 2009 ; 361(13): 1235-48.(1iiA)
5)Wakita A, et al. Randomized comparison of fixed-schedule versus response-oriented individualized induction therapy and use of ubenimex during and after consolidation therapy for elderly patients with acute myeloid leukemia : the JALSG GML200 Study. Int J Hematol. 2012 ; 96(1): 84-93.(1iiiDiv)

 

CQ5 1回の寛解導入療法で完全寛解が得られない場合,どのような治療法を選択すべきか

推奨グレード
カテゴリー2B

同一の寛解導入療法をもう一度繰り返すべきか,治療法を変えるべきかのエビデンスは存在しない。しかし,一定の比率で寛解が得られることから,同一の寛解導入療法を再度繰り返すことは妥当と考えられる。

解説

 わが国におけるAMLの寛解導入療法はJapan Adult Leukemia Study Group(JALSG)のプロトコールで行われることが多い。JALSGではこれまでAML87,89,92,95,97,201の研究を終了している。いずれのプロトコールでも1コース目で寛解しなかった場合は,もう1コース同じ治療を繰り返すことになっている。これらの試験では1コースでの寛解率は57~72%と差があるものの,いずれの試験でも2コースでの寛解達成例を加えた寛解率は80%前後の成績が得られている1-5)。1コースで寛解しなかった症例では1コース目の抗白血病剤に抵抗性である場合が多く,同じ治療法を用いた場合の2コース目の寛解率は低く,治療薬を代えることの理由にはなる。しかし,2コース目の治療を替えたことにより,寛解率あるいは全生存割合(OS)が向上するというエビデンスはない。

参考文献

1)Ohno R, et al. Randomized study of individualized induction therapy with or without vincristine, and of maintenance-intensification therapy between 4 or 12 courses in adult acute myeloid leukemia. AML-87 Study of the Japan Adult Leukemia Study Group. Cancer. 1993 ; 71(12): 3888-95.(1iiDiv/3iDiv
2)Kobayashi T, et al. Randomized trials between behenoyl cytarabine and cytarabine in combination induction and consolidation therapy, and with or without ubenimex after maintenance/intensification therapy in adult acute myeloid leukemia. The Japan Leukemia Study Group. J Clin Oncol. 1996 ; 14(1): 204-13.(1iiDiv/3iDiv
3)Miyawaki S, et al. No beneficial effect from addition of etoposide to daunorubicin, cytarabine, and 6-mercaptopurine in individualized induction therapy of adult acute myeloid leukemia : the JALSG-AML92 study. Japan Adult Leukemia Study Group. Int J Hematol. 1999 ; 70(2): 97-104.(1iiDiv/3iDiv
4)Ohtake S, et al. Randomized trial of response-oriented individualized versus fixed-schedule induction chemotherapy with idarubicin and cytarabine in adult acute myeloid leukemia : the JALSG AML95 study. Int J Hematol. 2010 ; 91(2): 276-83.(1iiDiv/3iDiv
5)Miyawaki S, et al. A randomized, postremission comparison of four courses of standard-dose consolidation therapy without maintenance therapy versus three courses of standard-dose consolidation with maintenance therapy in adults with acute myeloid leukemia : the Japan Adult Leukemia Study Group AML 97 Study. Cancer. 2005 ; 104(12): 2726-34.(1iiDii/3iDiv

 

CQ6 CBF-AMLの寛解後療法として何が勧められるか

推奨グレード
カテゴリー2A

60歳以下のCBF(core binding factor)-AMLの寛解後療法として,シタラビン大量療法は無病生存期間の延長が期待でき勧められる。

解説

 Cancer and Leukemia Study Group B(CALGB)の行ったAML寛解後療法としてのシタラビン通常量(100 mg/m2/day,5日間持続),中等量(400 mg/m2/day,5日間持続)およびシタラビン大量療法(3 g/m2,1日2回3時間で静注,day1,3,5に投与)を前方視的に比較した。その結果,60歳以下でシタラビン大量療法の有効性が確認された1)。特にCBF白血病ではシタラビン大量療法が最も効果が高く2)また,CALGBの後方視的な解析でもt(8;21)AMLに対して3コース以上のシタラビン大量療法が有効であることを示している3)。inv(16)/ t(16;16)AMLは再発後も移植により良好にsalvageされるためOSは影響されないが,シタラビン大量療法により再発率は低下する。わが国で行われた前方視的試験では,2 g/m2,1日2回3時間で静注5日は,これまでの多剤併用療法と比較して無病生存期間(DFS),全生存期間(OS)ともに差がなかったが,CBF白血病ではシタラビン大量療法群でDFSの改善傾向が認められた4)

参考文献

1)Mayer RJ, et al. Intensive postremission chemotherapy in adults with acute myeloid leukemia. Cancer and Leukemia Group B. N Engl J Med. 1994 ; 331(14): 896-903.(1iiA)
2)Bloomfield CD, et al. Frequency of prolonged remission duration after high-dose cytarabine intensification in acute myeloid leukemia varies by cytogenetic subtype. Cancer Res. 1998 ; 58(18): 4173-9.(2Dii)
3)Byrd JC, et al. Patients with t(8;21)(q22;q22)and acute myeloid leukemia have superior failure-free and overall survival when repetitive cycles of high-dose cytarabine are administered. J Clin Oncol. 1999 ; 17(12): 3767-75.(3iiiDii)
4)Miyawaki S, et al. A randomized comparison of 4 courses of standard-dose multiagent chemotherapy versus 3 courses of high-dose cytarabine alone in postremission therapy for acute myeloid leukemia in adults : the JALSG AML201 Study. Blood. 2011 ; 117(8): 2366-72.(1iiDii)

 

CQ7 CBF-AML以外のAMLの寛解後療法として何が勧められるか

推奨グレード
カテゴリー2B

CBF-AML以外のAMLでは,非交差耐性のアントラサイクリン系薬剤を用いた多剤併用化学療法4コースの地固め療法が推奨される。

解説

 AMLでは寛解後地固め療法を行わないと再発が必至であり,寛解を維持するための種々の寛解後療法が試されてきた。早くから欧米ではシタラビン大量療法が地固め療法の主流であり,NCCNのガイドラインでは,CBF-AML以外の予後中間群のAMLに対しても,1回投与量が1.5~3 g/m2のAraC大量療法(一日2回1回あたり3時間で静注,day1,3,5に投与)3~4コースが推奨されている1)
 わが国では保険上の制約からシタラビン大量療法を選択できなかった時期が長く,非交差耐性のアントラサイクリン系薬剤と標準量シタラビンを用いた寛解後療法を選択してきた経緯がある。JALSGで実施されたAML201試験では,寛解到達症例に対する地固め療法として,標準量シタラビンと非交差耐性のアントラサイクリン系薬剤などを組み合わせた4コースの多剤併用化学療法とシタラビン大量療法3コースが比較された。CBF-AMLにおいてはシタラビン大量療法の優越性が認められたが,CBF-AML以外のAMLでは両治療法間に無病生存割合,全生存割合に統計学的有意差を認めなかった。また,同試験ではシタラビン大量療法群では感染症などの有害事象が多く認められたため,4コースの多剤併用化学療法が地固め療法として推奨される2)

参考文献

1)NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Acute Myeloid Leukemia. Version 3. 2020-December 23, 2019.(ガイドライン)
2)Miyawaki S, et al. A randomized comparison of 4 courses of standard-dose multiagent chemotherapy versus 3 courses of high-dose cytarabine alone in postremission therapy for acute myeloid leukemia in adults : the JALSG AML201 Study. Blood. 2011 ; 117(8): 2366-72.(1iiDii)

 

CQ8 若年者AMLの第一寛解期に同種造血幹細胞移植の適応はどのように決定すべきか

推奨グレード
カテゴリー1

現時点では初診時の染色体異常による患者層別化が重要である。予後良好な染色体異常を有するfavorable-riskの患者では造血幹細胞移植の有用性は示されていない。それ以外のAMLにおいては,HLA適合血縁者ドナーからの同種造血幹細胞移植の有用性は示されているが,更なる層別化システムの構築とHLA適合血縁者間以外のドナーからの移植に関するエビデンスの確立が必要である。

解説

 これまで,AML第一寛解期における同種造血幹細胞移植と寛解後化学療法を比較した多数のランダム化比較試験が施行されたが,結果は定まっておらず,無病生存割合で移植群の有効性を示す研究はあるものの,ほとんどの研究は全生存割合での有効性を示すことができなかった。また,化学療法の予後不良因子から両者を比較する検討が実施されたが,十分な統計学的power(症例数)がなく明確な結論に至っていない。しかし,24の臨床研究(症例数3,638)を対象としたmetaanalysisの結果では,AML第一寛解期のうち,予後不良および中間染色体異常のある症例では,移植による生存割合が有意に勝るが,予後良好染色体異常のある症例では移植の有効性は認められなかった1)。この結果からは,染色体異常の有無およびその種類を考慮し,AML第一寛解期の移植適応を決定することが妥当といえる。遺伝子レベルで適合している非血縁者間とHLA適合血縁者間移植はほぼ同じ成績であることが報告されているが,多くのランダム化比較試験で検討されたドナーソースはHLA適合血縁者である。わが国で施行されたランダム化比較試験でも同様の結果が得られているが,予後因子の定義が異なる(染色体異常のみではない)ことに加えて,サンプルサイズが少ない上に治療のコンプライアンスも低く,臨床試験としての質は高くない2)。最近では,遺伝子変異の有無も予後因子として注目されており,あるランダム化比較試験のサブグループ解析では,正常核型AML第一寛解期においてNPM1遺伝子変異がありFLT3-ITDのない症例を除いた症例群では,HLA適合血縁者間移植後の無再発生存割合が有意に勝ることが報告されている3)。一方,他の試験では,NPM1遺伝子変異がありFLT3-ITDのない症例もHLA適合血縁者間移植後の無再発生存割合が有意に良好であることが報告されている4)。日常診療では染色体核型や遺伝子変異による疾患リスクに加え,移植関連毒性を加味したうえで移植が選択されるが,そのエビデンスは確立されていない。

参考文献

1)Koreth J, et al. Allogeneic stem cell transplantation for acute myeloid leukemia in first complete remission : a systematic review and meta-analysis of prospective clinical trial. JAMA. 2009 ; 30(22): 2349-61.(1iiA)
2)Sakamaki H, et al. Allogeneic stem cell transplantation versus chemotherapy as post-remission therapy for intermediate or poor risk adult acute myeloid leukemia : results of the JALSG AML97 study. Int J Hematol. 2010 ; 91(2): 284-92.(1iiDi)
3)Schlenk RF, et al. Mutations and treatment outcome in cytogenetically normal acute myeloid leukemia. N Engl J Med. 2008 ; 358(18): 1909-18.(2Diii)
4)Röllig C, et al. Allogeneic stem-cell transplantation in patients with NPM1-mutated acute myeloid leukemia : results from a prospective donor versus no-donor analysis of patients after upfront HLA typing within the SAL-AML 2003 trial. J Clin Oncol. 2014 ; 33(5): 403-10.(2Diii)

 

CQ9 移植適応のない高齢者AMLに寛解後療法を施行するメリットはあるか

推奨グレード
カテゴリー2B

移植適応のない高齢者AMLに対する寛解後療法のメリットは明らかにされていないが,一部の症例では寛解後療法を行うことの有用性が示唆されている。

解説

 Cancer and Leukemia Study Group B(CALGB)は寛解後療法としてシタラビン大量投与[AraC 3 g/m2を1日2回3時間で静注,day 1, 3, 5(計6回)を4コース繰り返す]の有用性を検討し,60歳以上の症例におけるシタラビン大量投与はその標準量投与と比較してDFSを改善しないことを明らかにした1)。高齢者AMLを対象としたMRC-AML 11試験も1回の強化療法後に同様の化学療法を繰り返しても再発率,DFS,そしてOSに有意差は見られないことを示している2)。一方,AML HD98-B試験は寛解達成後の強化療法によって,favorable cytogeneticsを持つ高齢者AMLの20~30%に長期生存が得られることを示しており3),同様の傾向はMRC-AML11試験においても確認されている。これらの研究からは,一部の高齢者AMLでは寛解後療法を施行するメリットがあることが示唆される。しかし,染色体異常以外の患者選択に関する指標(年齢,co-morbidityなど)は明確にされていない。至適な寛解後療法に関しても確立したエビデンスはないが,Acute Leukemia French Association(ALFA)9803試験は強力な化学療法1回と外来での化学療法6回を比較し,後者で寛解後2年のOSが優れ,再発には差がないものの,治療関連死亡は外来化学療法で少なかったと報告している4)

参考文献

1)Mayer RJ, et al. Intensive postremission chemotherapy in adults with acute myeloid leukemia. Cancer and Leukemia Group B. N Engl J Med. 1994 ; 331(14): 896-903.(1iiA)
2)Goldstone AH, et al. Attempts to improve treatment outcomes in acute myeloid leukemia(AML) in older patients : the results of the United Kingdom Medical Research Council AML 11 trial. Blood. 2001 ; 98(5): 1302-11.(1iiA)
3)Frohling S, et al. Cytogenetics and age are major determinants of outcome in intensively treated acute myeloid leukemia patients older than 60 years : results from AMLSG trial AMD HD98-B. Blood. 2006 ; 108(10): 3280-8.(2A)
4)Gardin C, et al. Postremission treatment of elderly patients with acute myeloid leukemia in first complete remission after intensive induction chemotherapy : results of the multicenter randomized Acute Leukemia French Association(ALFA)9803 trial. Blood. 2007 ; 109(12): 5129-35.(1iiA)

 

CQ10 非寛解期AMLに対する同種造血幹細胞移植の適応に関する指標はあるか

推奨グレード
カテゴリー3

再発AMLに対し再寛解導入療法を行わない非寛解のままでの移植の適応を決定する明確な指標は確立されていない。また寛解導入療法不応非寛解症例に対する移植の適応を決定する明確な指標も確立されていない。現時点では後方視的解析に基づく予後因子と移植に関連する因子(ドナーソースなど)を総合的に評価し,患者とのshared-decision makingで移植適応を決めることが勧められる。

解説

 初回再発期において同種造血幹細胞移植と化学療法の有用性を前方視的に比較検討した報告はない。Breemsらは年齢15~60歳の初回再発AMLの移植成績を後方視的に解析し,4つの予後因子(第一寛解の期間,診断時の染色体異常,初回再発時の年齢,初回再発前の造血幹細胞移植の有無)を同定し,これを基に初回再発期を3つの予後グループ(favorable,intermediate,unfavorable)に分類している。第二寛解期が達成できた症例に限定して移植と化学療法を比較した検討では,いずれの群においても5年生存割合で移植の優位性が示唆されている1)。わが国の初回再発期AMLの移植成績の後方視的解析で,第二寛解期を達成することで3年生存割合は有意に改善することが報告されている2)。一方,芽球の割合の少ない初回再発期に再寛解導入療法を行わずに同種移植を行うことで第二寛解期と同等の生存割合が得られるとの報告もあるが,そのエビデンスレベルは低い3)。非寛解期AMLに対する同種造血幹細胞移植の成績は散見されるが,少数例での報告が多いことと患者のselection biasにより,その移植適応の指標を導き出すことは難しいが,the Center for International Blood and Marrow Transplant Research(CIBMTR)はAML非寛解期移植1,673例を解析し,第一寛解期の期間,末梢血中の芽球%,ドナーの種類,PS,染色体異常の有無から,移植後の3年生存割合42%の予後良好群から6%の予後不良群までの患者の層別化が可能であることを報告している4)

参考文献

1)Breems DA, et al. Prognostic index for adults patients with acute myeloid leukemia in first relapse. J Clin Oncol. 2005 ; 23(9): 1969-78.(2A)
2)Kurosawa S, et al. Prognostic factors and outcomes of adults patients with acute myeloid leukemia after first relapse. Hematologica. 2010 ; 95(11): 1857-64.(3iA)
3)Clift RA, et al. Allogeneic marrow transplantation during untreated first relapse of acute myeloid leukemia. J Clin Oncol. 1992 ; 10(11): 1723-9.(3iiA)
4)Duval M, et al. Hematopoietic stem-cell transplantation for acute leukemia in relapse or primary induction failure. J Clin Oncol. 2010 ; 28(23): 3730-8.(3iA)

 

CQ11 AMLにおいて治療後の好中球減少期にG-CSFを使用するのは有用か

推奨グレード
カテゴリー2B(寛解導入療法),カテゴリー2A(寛解後療法)

AMLの寛解導入療法,寛解後療法時におけるG-CSF投与は,好中球減少期間の短縮やQOLの改善が期待でき,高齢者や重症感染症を併発した症例では検討されても良い。

解説

 AMLに対する治療は,寛解導入療法,寛解後療法ともに強化され,若年成人AMLにおける寛解率は80%,5年生存割合は50%前後と向上している。この治療の強化は,骨髄抑制による出血や易感染性の対策の向上により可能になった。
 このAMLの寛解導入療法や地固め療法後に出現する感染症を予防できるかどうか,これまでにいくつかのG-CSF投与の第Ⅲ相試験が実施された。
 若年成人AMLを対象とした第Ⅲ相試験では,好中球数減少期間,発熱期間,非経口抗生剤の投与期間さらには入院期間の短縮が示されている1)。わが国で行われた研究でも,好中球数減少期間,発熱期間の短縮が観察されている2)
 骨髄抑制が高度となる高齢者AMLを対象にした試験でも,好中球数減少期間,発熱期間,非経口抗生剤の投与期間の短縮が認められている3, 4)。また,死亡率は減少しなかったが,寛解率は向上したとの報告もある5)
 AML細胞は,G-CSF受容体を発現することから,AMLへのG-CSFの投与は問題視されているが,再発率の増加はみられず,長期観察においても生存期間へも影響を与えていないと報告されている6)
 AMLの寛解導入,地固め療法時においては,G-CSF投与により好中球減少期間は短縮するものの,重症感染症の発症率や死亡率は減少せず,生存期間の延長も認められていない。従って,European LeukemiaNetの勧告やNCCNのガイドラインでは高齢者や重症感染症を併発した症例以外のAML症例へのG-CSFの投与は推奨していない。しかし,ASCO(American Society of Clinical Oncology)のガイドラインでは寛解導入療法後のG-CSF投与は妥当,地固め療法後は推奨できるとしている7)

参考文献

1)Heil G, et al. A randomized, double-blind, placebo-controlled, phase III study of filgrastim in remission induction and consolidation therapy for adults with de novo acute myeloid leukemia. The International Acute Myeloid Leukemia Study Group. Blood. 1997 ; 90(12): 4710-8.(1iD)
2)Usuki K, et al. Efficacy of granulocyte colony-stimulating factor in the treatment of acute myelogenous leukemia : multicentre randomized study. Brit J Haematology. 2002 ; 116(1): 103-12.(1iiD)
3)Growin JE, et al. A double-blind placebo-controlled trial of granulocyte colony-stimulating factor in elderly patients with previously untreated acute myeloid leukemia. : A Southwest Oncology Group Study(9031). Blood. 1998 ; 91(10): 3607-15.(1iD)
4)Amadori S, et al. Use of glycosylated recombinant human G-CSF(lenograstim) during and/or after induction chemotherapy in patients 61 years of age and older with acute myeloid leukemia : final results of AML-13. A randomized phase-3 study. Blood. 2005 ; 106(1): 27-34.(1iiD)
5)Dombret H, et al A controlled study of recombinant human granulocyte colony-stimulating factor in elderly patients after treatment for acute myelogenous leukemia. N Eng J Med. 1995 ; 332 (25): 1678-83.(1iiD)
6)Heil G, et al. Long-term survival data from a phase 3 study of Filgrastim as an adjunct to chemotherapy in adults with de novo acute myeloid leukemia. Leukemia. 2006 ; 20(3): 404-9.(1iD)
7)Smith TJ, et al. 2006 update of recommendations for the use of white blood cell growth factor : an evidence-based clinical practice guide line. J Clin Oncol. 2006 ; 24(19): 3187-205.(ガイドライン)

 

CQ12 AMLの化学療法において,どのような場合に腫瘍崩壊症候群の予防を実施すべきか

推奨グレード
カテゴリー2A

化学療法開始前に末梢白血球数と血清乳酸脱水素酵素値,腎機能に基づきリスク分類をおこない,リスクに応じた腫瘍崩壊症候群の予防を行うことが推奨される。

解説

 腫瘍崩壊症候群(tumor lysis syndrome:TLS)は腫瘍細胞の破壊により核酸,リン,カリウムなどが血液中に一気に放出され,高尿酸血症,高リン血症,高カリウム血症状態となり,急性腎不全や呼吸不全,場合によっては心停止が引き起こされる症候群である1)。AMLでのTLS発症頻度は17%と報告されている2)。TLS診療ガイダンスでは,白血球25,000/μL未満かつ乳酸脱水素酵素が基準値上限の2倍未満は低リスク,白血球25,000/μL未満かつ乳酸脱水素酵素が基準値上限の2倍以上,あるいは白血球25,000/μL以上100,000/μL未満は中間リスク,白血球100,000/μL以上は高リスクに分類される1)。腎障害時には1段階上方へ調整される。低リスクではモニタリングのもと通常量の補液を行う。中間リスクでは大量補液に加えキサンチンオキシダーゼ阻害薬が使用される。従来薬アロプリノールは腎障害時に薬物蓄積毒性を生じる。フェブキソスタットは軽度から中等度の腎機能低下時にも用量調整を要せず使用可能で,2016年に「がん化学療法に伴う高尿酸血症」に対する適応追加が承認された。TamuraらはTLS中間リスク以上のがん患者(急性白血病を含む)においてアロプリノール300 mg/日とフェブキソスタット60 mg/日のランダム化比較試験をおこない,血清尿酸値の濃度曲線下面積でアロプリノールに対するフェブキソスタットの非劣性が示された3)。高リスクでは大量補液に加え尿酸オキシダーゼであるラスブリカーゼが使用される。Ishizawaらによれば,AMLを含む成人造血器腫瘍50例にラスブリカーゼ0.15 mg/kgまたは0.20 mg/kgが5日間投与され,血清尿酸値は投与後4時間以内に急激に低下し,その後も尿酸値はコントロールされ,有効率は全体で98%であった4)。芽球が急激に増加する場合,すでに高尿酸血症を生じている場合,腎障害時にはラスブリカーゼの使用が考慮されるべきである5)。メタアナリシスの結果から,白血球増多に対して機械的に白血病細胞を除去するアフェレーシスは早期死亡を減少させない6)

参考文献

1)腫瘍崩壊症候群(TLS)診療ガイダンス,日本臨床腫瘍学会編,金原出版,東京,2013.(ガイドライン)
2)Montesinos P, et al. Tumor lysis syndrome in patients with acute myeloid leukemia : identification of risk factors and development of a predictive model. Haematologica. 2008 ; 93(1): 67-74.(3iD)
3)Tamura K, et al. Efficacy and safety of febuxostat for prevention of tumor lysis syndrome in patients with malignant tumors receiving chemotherapy : a phase III, randomized, multi-center trial comparing febuxostat and allopurinol. Int J Clin Oncol. Int J Clin Oncol. 2016 ; 21(5): 996-1003.(1iiD)
4)Ishizawa K, et al. Safety and efficacy of rasburicase(SR29142)in a Japanese phase II study. Cancer Sci. 2009 ; 100(2): 357-62.(2D)
5)NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Acute Myeloid Leukemia. Version 3. 2020-December 23, 2019.(ガイドライン)
6)Oberoi S, et al. Leukapheresis and low-dose chemotherapy do not reduce early mortality in acute myeloid leukemia hyperleukocytosis : a systematic review and meta-analysis. Leuk Res. 2014 ; 38(4): 460-8.(1A)

 

CQ13 AMLにおいて中枢神経白血病の予防は勧められるか

推奨グレード
カテゴリー2A

AMLでは中枢神経系白血病の発症頻度が低く,無症状の症例に対して予防的に抗がん薬を髄腔内投与する適応はない。単球系への分化を示す症例,mixed phenotype,末梢血白血球数が4万/μLを超える症例,髄外白血病では神経症状がみられなくても寛解に到達した時点で腰椎穿刺によるスクリーニングが考慮される。

解説

 中枢神経系白血病は,白血病細胞が脳軟膜に浸潤し,通常髄膜白血病として発症するが,AMLでの発症頻度は5%以下と報告されている1, 2)。寛解後療法としてAraC大量療法や同種造血幹細胞移植が行われた場合その発症頻度は低下するとの報告と,AraC大量療法でも発症頻度は変わらないとする報告がある3, 4)。中枢神経系白血病の予防治療の前方視的研究は1986年のthe Medical Research Council(MRC)1)から報告されたものと1992年the Southwest Oncology Group(SWOG)5)からの2報のみである。前者ではAraCとMTX,後者ではAraCの髄腔内投与が行われたが,中枢神経再発の頻度は変わらなかった。このようにAMLでは中枢神経系白血病の発症頻度は低く,予防治療の有効性も確認されていない。National Comprehensive Cancer Network(NCCN)ガイドラインやEuropean LeukemiaNet(ELN)では,中枢神経系白血病の予防治療は通常推奨されないが,単球系への分化を示す症例,mixed phenotype,末梢白血球数が4万/μLを超える症例,髄外白血病,では神経症状がみられなくても寛解に到達した時点で腰椎穿刺によるスクリーニングが考慮されるべきとしている6, 7)。中枢神経白血病が発症した場合の治療は,ELNではAraC 40~50 mgの週2~3回髄腔内投与が推奨されている7)。また,薬剤性の髄膜炎を予防するためステロイドの投与も記載されている。

参考文献

1)Rees JK, et al. Principal results of the medical research council’s 8th acute myeloid leukemia trial. Lancet. 1986 ; 2(8518): 1236-41.(1iiD)
2)Castagnola C, et al. The value of combination therapy in adult acute myeloid leukemia with central nervous system involvement. Haematokogica. 1997 ; 82(5): 577-80.(3iD)
3)Martínez-Cuadrón D, et al. Central nervous system involvement at first relapse in patients with acute myeloid leukemia. Haematologica. 2011 ; 96(9): 1375-9.(3iD)
4)Rozovski U, et al. Incidence of and risk factors for involvement of the central nervous system in acute myeloid leukemia. Leuk Lymphoma. 2015 ; 56(5): 1392-7.(3iiiA)
5)Morrison FS, et al. Late intensification with POMP chemotherapy prolongs survival in acute myelogenous leukemia-Results of a Southwest Oncology Group study of rubidazone versus adriamycin for remission induction, prophylactic intrathecal therapy late intensification, and levamisole maintenance. Leukemia. 1992 ; 6(7): 708-14.(1iiD)
6)NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Acute Myeloid Leukemia. Version 3. 2020-December 23, 2019.(ガイドライン)
7)Döhner H, et al. Diagnosis and management of AML in adults : 2017 ELN recommendations from an international expert panel. Blood. 2017 ; 129(4): 424-47.(ガイドライン)

 

CQ14 腫瘤形成性AMLに対して通常の寛解導入療法を行うのは妥当か

推奨グレード
カテゴリー2B

腫瘤形成性AMLに対しては孤発性であっても通常の寛解導入療法が考慮される。

解説

 腫瘤形成性AMLの腫瘤は骨髄球系の白血病細胞から成り,緑色を呈することから緑色種(chloroma)と称される。myeloblastoma,monoblastoma,granulocytic sarcomaとも記述されていたが,WHO分類(2017)では骨髄肉腫(myeloid sarcoma)と記載されている。骨髄肉腫の発症頻度は3%程度1)で,白血病の発症時に出現することが多いが,初発や再発の前駆症状として出現することもある。また,末梢血や骨髄での芽球増加とともに生じる場合と孤発性に生じる場合がある。骨髄肉腫は発症頻度も低いことから,治療法についての前方視的研究は行われておらず,症例報告を取りまとめた後方視的な報告がほとんどである。Imrieらは7例の自験例を含めた孤発性骨髄肉腫90例を文献的に検討し,診断時に化学療法を施行することが有意に白血病への進展割合を減じ(41% vs 71%),50%生存期間を延長させた(25カ月 vs 13カ月)と報告した2)。YamauchiとYasudaは,2例の自験例を含めた74例の骨髄肉腫の治療成績を文献的に検討し,切除や放射線照射といった局所療法施行例はAMLに準じた化学療法施行例より有意に短期間で白血病に進展したと報告した3)。以上から,腫瘤形成性AMLに対しては単独発症であっても早期に化学療法を実施することが考慮される。National Comprehensive Cancer Network(NCCN)ガイドラインやEuropean LeukemiaNet(ELN)においても孤発性骨髄肉腫腫に対して化学療法が推奨されている4, 5)。なお,孤発性骨髄肉腫腫の予後については相反する報告がなされている。Reinhardtらは小児孤発性骨髄肉腫34例と通常のAML 710例とを後方視的に解析・比較し,5年無イベント生存割合は前者で19%,後者で48%であった(p<0.03)。5年推定全生存割合は前者で44%,後者で55%あった6)。Tsimberidouらは孤発性骨髄肉腫23例のうち通常の化学療法を受けた16例と通常のAML 1,720例とを後方視的に解析・比較し,完全寛解割合,2年の無イベント生存割合と全生存割合に差がなかったことを示した7)

参考文献

1)Muss HB, et al. Chloroma and other myeloblastic tumors. Blood. 1973 ; 42(5): 721-8.(3iD)
2)Imrie KR, et al. Isolated chloroma : the effect of early antileukemic therapy. Ann Intern Med. 1995 ; 123(5): 351-3.(3iiiA)
3)Yamauchi K, et al. Comparison in treatments of nonleukemic granulocytic sarcoma : report of two cases and a review of 72 cases in the literature. Cancer. 2002 ; 94(6): 1739-46.(3iiiD)
4)NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Acute Myeloid Leukemia. Version 3. 2020-December 23, 2019.(ガイドライン)
5)Döhner H, et al. Diagnosis and management of AML in adults : 2017 ELN recommendations from an international expert panel. Blood. 2017 ; 129(4): 424-47.(ガイドライン)
6)Reinhardt D, et al. Primary myelosarcomas are associated with a high rate of relapse : report on 34 children from the acute myeloid leukaemia-Berlin-Frankfurt-Münster studies. Br J Haematol. 2000 ; 110(4): 863-6.(3iiiD)
7)Tsimberidou AM, et al. Myeloid sarcoma is associated with superior event-free survival and overall survival compared with acute myeloid leukemia. Cancer. 2008 ; 113(6): 1370-8.(3iiiD)

 

CQ15 AMLにおける微小残存病変の評価として何が勧められるか

推奨グレード
カテゴリー2B

AMLにおける微小残存病変のモニタリングに経時的な疾患特異的キメラ遺伝子やWT1遺伝子のmRNA発現定量が考慮される。

解説

 微小残存病変(minimal residual disease:MRD)の正確な評価は,再発の予測や造血細胞移植を含む治療戦略の個別化に有用な情報となる。MRD評価法として,主に,RQ-PCR法(real-time quantitative polymerase chain reaction)による疾患特異的遺伝子発現定量とフローサイトメトリによる特異的細胞表面マーカー解析(multi-color flow cytometry)がある。CorbaciogluらはCBFB-MYH11陽性AML 52例を後方視ならびに前方視的に解析した。地固め療法中の骨髄サンプルの少なくとも一回CBFB-MYH11 mRNA発現値が陰性化した群の2年無再発生存割合(79%)は陽性例(54%)より有意に良好で(p=0.035),再発を予測できることを報告した1)。YinらはCBF白血病278例[t(8;21)163例,inv(16)115例]において治療経過中のキメラ遺伝子 mRNA発現値を前方視的に解析した。寛解導入療法第1コース終了時点での骨髄RUNX1-RUNX1T1 mRNA発現値が3 logを超える減衰例で再発割合が4%と最も低く,また末梢血CBFB-MYH11発現値が10コピー数未満の例で再発割合が21%と最も低いことが示された2)。Wilms’ tumor-1(WT1)はAMLの約9割に高発現し,非特異的ではあるが汎用性は高い3)。Miyawakiらによる後方視的検討において,完全寛解に到達したAML 50例で,導入療法終了後WT1 mRNA陽性群の再発割合は74%,陰性群では40%,地固め療法終了後WT1 mRNA陽性群の3年無病生存割合,3年全生存割合はそれぞれ20%,43%,陰性群ではそれぞれ50%,70%であった3)WT1 mRNA値は寛解後再発,無病生存,全生存と相関することが示唆された。Lokenらは小児AML 249例において寛解導入療法後,治療終了後の骨髄検体を用いてMRDをフローサイトメトリ法により前方視的に評価した。188例の寛解例のうちMRD陽性は46例,導入療法1コース後のMRD陽性例,陰性例での3年の再発危険割合はそれぞれ60%,29%(p<0.001),3年の無再発生存割合はそれぞれ30%,65%(p<0.001)であった4)。Inabaらは小児・思春期の新規発症AML 202例の骨髄検体を用いてフローサイトメトリ法によりMRDを前方視的に評価した。寛解導入療法後のMRDが5年無イベント生存割合(第1コース終了後MRD陽性率1%以上29%,0.1%未満73%)に関連した5)。なお,マルチカラーフローサイトメトリ法はわが国では保険適用がない。以上から,疾患特異的キメラ遺伝子やWT1遺伝子のmRNA発現定量によるMRDの経時的な評価が考慮される。しかし,MRD評価のための遺伝子発現定量検査は未だ標準化されていない。

参考文献

1)Corbacioglu A, et al. Prognostic impact of minimal residual disease in CBFB-MYH11-positive acute myeloid leukemia. J Clin Oncol. 2010 ; 28(23): 3724-9.(3iiD)
2)Yin JA, et al. Minimal residual disease monitoring by quantitative RT-PCR in core binding factor AML allows risk stratification and predicts relapse : results of the United Kingdom MRC AML-15 trial. Blood. 2012 ; 120(14): 2826-35.(3iiiD)
3)Miyawaki S, et al. Prognostic potential of detection of WT1 mRNA level in peripheral blood in adult acute myeloid leukemia. Leuk Lymphoma. 2010 ; 51(10): 1855-61.(3iiiD)
4)Loken MR, et al. Residual disease detected by multidimensional flow cytometry signifies high relapse risk in patients with de novo acute myeloid leukemia : a report from Children’s Oncology Group. Blood. 2012 ; 120(8): 1581-8.(3iiiD)
5)Inaba H, et al. Comparative analysis of different approaches to measure treatment response in acute myeloid leukemia. J Clin Oncol. 2012 ; 30(29): 3625-32.(3iiiD)

 

CQ16 AMLに対するGOの適切な使用法は何か

推奨グレード
カテゴリー2A

再発または難治性のCD33陽性AMLに対して,単剤で,少なくとも14日間の投与間隔をおいて,2回投与する。

解説

 ゲムツズマブ オゾガマイシン(gemtuzumab ozogamicin:GO)は抗CD33抗体にカリケアマイシンが結合した抗体薬物複合体である。3つの単アーム第Ⅱ相試験にて60歳以上の再発AMLにGOが投与され,GO単剤での全奏効割合は26%(完全寛解15%を含む)であったことから,2000年に米国で,2005年にはわが国でGOの発売が承認された1)。同試験の最終報告として,成人再発AML(年齢中央値61歳,20~87歳)において全奏効割合は26%(完全寛解13%を含む)で,奏効例の50%生存期間は12.6カ月であった2)。28日以内の早期死亡は16%にみられ,本薬に特徴的な肝静脈閉塞症は非移植症例の0.9%,GO投与後移植症例の17%にみられた2)。本邦でも再発・難治AML対する第Ⅰ/Ⅱ相試験が行われ3),用量規定毒性は肝障害で,推奨用量は9 mg/m2(14日空けて2回投与)であった。さらに,完全寛解が25%,形態学的寛解が5%に得られた。しかし,その後米国で未治療AMLに対する第Ⅲ相ランダム化比較試験が行われ,シタラビンとダウノルビシンによる寛解導入療法へのGOの併用効果並びに地固め療法後のGOの追加効果が認められなかったことより4),2010年に米国で本薬の承認取り下げが行われた。その後,Castaigneらによる第Ⅲ相ランダム化比較試験ALFA-0701では新規発症AML 271例に対してAraC+DNRにGO 3 mg/m2 3回投与(少量分割,第1,4,7日)の併用効果が検討された。GO併用群では非併用群に比し主要評価項目である無イベント生存割合が有意に改善された(2年推定無イベント生存割合41% vs 17%,50%無イベント期間15.6カ月vs 9.7カ月)5)。Amadoriらによる第Ⅲ相ランダム化比較試験AML-19では標準的寛解導入療法が適応とならない61歳以上の高齢者AML 237例に対してGOと支持療法が比較された。寛解導入療法としてGOは6 mg/m2と3 mg/m2が分割投与され,続けて2 mg/m2が4週ごとに投与された。1年の全生存割合はGO群で24%,支持療法群で10%,50%生存期間はGO群で4.9カ月,支持療法群で3.6カ月と有意に改善された6)。これらを受け2017年GOは米国で再承認された。わが国におけるGOの適応疾患は再発または難治CD33陽性AMLで,他の再寛解導入療法の適応がない以下のいずれかに該当する。すなわち,①再寛解導入療法(シタラビン大量療法等)に不応あるいは抵抗性があると予測される難治AML,②60歳以上の初回再発患者,③再発を2回以上繰り返す患者,④同種造血細胞移植後の再発患者である。GOの投与回数は,少なくとも14日間の投与間隔をおいて,2回とし,1回量は9 mg/m2である。また,本剤は他の抗悪性腫瘍剤と併用しない。

参考文献

1)Bross PF, et al. Approval summary : gemtuzumab ozogamicin in relapsed acute myeloid leukemia. Clin Cancer Res. 2001 ; 7(6): 1490-6.(レビュー)
2)Larson RA, et al. Final report of the efficacy and safety of gemtuzumab ozogamicin (Mylotarg) in patients with CD33-positive acute myeloid leukemia in first recurrence. Cancer. 2005;104(7):1442-52.(3iiiA)
3)Kobayashi Y, et al. Phase I/II study of humanized anti-CD33 antibody conjugated with calicheamicin, gemtuzumab ozogamicin, in relapsed or refractory acute myeloid leukemia : final results of Japanese multicenter cooperative study. Int J Hematol. 2009;89(4):460-9.(3iiiA)
4)Petersdorf SH, et al. A phase III study of gemtuzumab ozogamicin during induction and post-consolidation therapy in younger patients with acute myeloid leukemia. Blood. 2013 ; 121(24): 4854-60.(1iiA)
5)Castaigne S, et al. Effect of gemtuzumab ozogamicin on survival of adult patients with de-novo acute myeloid leukaemia(ALFA-0701): a randomised, open-label, phase 3 study. Lancet. 2012 ; 379(9825): 1508-16.(1iiA)
6)Amadori S, et al. Gemtuzumab Ozogamicin Versus Best Supportive Care in Older Patients With Newly Diagnosed Acute Myeloid Leukemia Unsuitable for Intensive Chemotherapy : Results of the Randomized Phase III EORTC-GIMEMA AML-19 Trial. J Clin Oncol. 2016 ; 34(9): 972-9.(1iiA)

このページの先頭へ