構造化抄録
第Ⅱ章 リンパ腫
Ⅱ リンパ腫
4 マントル細胞リンパ腫
分類 | MCL |
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番号 | CQ2-1) |
文献ID | PMID:19188674 |
文献タイトル | Outcome of deferred initial therapy in mantle-cell lymphoma. |
Evidence level | 3iiiA |
著書名 | Martin P, Chadburn A, Christos P, Weil K, Furman RR, et al. |
雑誌名,巻:出版年 | J Clin Oncol. 2009; 27: 1209-13. |
目的 | マントル細胞リンパ腫(MCL)の初回治療において、早期治療開始例とwatchful wait(W&W)が可能であった例の治療結果を解析する。 |
研究デザイン | 後方視的症例集積研究 |
研究施設、組織 | Weill Cornell Medical Center (USA)、単独 |
研究期間 | 1997年~2007年(析対象症例登録期間) |
対象患者 | Weill Cornell Medical Centerの病理データベースに登録されたMCLのうち、登録基準を満たし治療法別の評価が可能であった97例。 |
介入 | 診断後3か月以内に治療を開始(早期治療)するか、症状の進行がければ3か月以降も無治療で経過観察(W&W)した。 |
主要評価項目 | 全生存(OS)期間 |
結果 | W&Wした31例は、MCL International Prognostic Index(MIPI)では54%がintermediateかhigh-risk群であった。W&W期間の中央値は12か月で、performance statusが良好でMIPIではlower-riskの例が多かった。多変量解析の結果、OS期間は治療開始までの期間では有意差はないが、W&W群は早期治療開始群にくらべ有意に良好であった(中央値で未到達vs.64か月;P= .004)。 |
結論 | 一部の無症候性MCLは、W&Wも治療選択として可能である。 |
作成者 | 岡本昌隆 |
コメント | 結果としてW&Wできた例は早期に治療を必要とした例にくらべ予後良好であったが、W&Wが可能か否かを診断時に鑑別する方法は確立しておらず、現時点では実臨床での前方視的な導入は困難である。 |
分類 | MCL |
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番号 | CQ2-2) |
文献ID | PMID:21782057 |
文献タイトル | Molecular pathogenesis of mantle cell lymphoma: new perspectives and challenges with clinical implications. |
Evidence level | レビュー |
著書名 | Navarro A, Royo C, Hernández L, Jares P, Campo E. |
雑誌名,巻:出版年 | Semin Hematol. 2011;48: 155-65. |
目的 | マントル細胞リンパ腫(MCL)の最近の病理学的知見と今後の展望に関する総説。 |
研究デザイン | Pathology & Review |
研究施設、組織 | University of Barcelona (Spain)、単独 |
研究期間 | - |
対象患者 | - |
介入 | - |
主要評価項目 | - |
結果 | ・cyclin(Cy)D1陰性例はCyD2、D3の発現が高く、CyD1の役割を代行している。 ・CyD1陰性例ではCCND2、CCND3がIG、特に軽鎖遺伝子と転座するが頻度は低い。 ・SOX11はMCLに特異性の高い遺伝子で、遺伝子プロファイリングではCyD1陰性例も全例が陽性である。 ・MCLの15~40%の例はIGHVのsomatic hypermutationを有しpost germinal center cellの性質を有する。 ・indolent MCLはSOX11の低発現、IGHVの高い遺伝子変異、単純な染色体異常などで特徴づけられる。 |
結論 | ・SOX11免疫染色はCyD1陰性MCLの診断、indolent MCLの同定に有用である。 ・MCLはnaïve B-cell以外からも生ずる。 ・節外病変優位、白血化例はindolentな経過をとる頻度が高く、異なる分子亜型である可能性がある。 |
作成者 | 岡本昌隆 |
コメント | indolent MCLの診断法が確定すれば治療の層別化が可能である。現時点では臨床像、SOX11、Ki-67などが診断要因の候補に挙がるが確定には至っていない。 |
分類 | MCL |
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番号 | CQ2-3) |
文献ID | PMID:21609366 |
文献タイトル | Small cell variant of mantle cell lymphoma is an indolent lymphoma characterized by bone marrow involvement, splenomegaly, and a low Ki-67 index. |
Evidence level | 3iiiA |
著書名 | Kimura Y, Sato K, Imamura Y, Arakawa F, Kiyasu J, et al. |
雑誌名,巻:出版年 | Cancer Sci. 2011; 102: 1734-41. |
目的 | indolentな経過を呈するマントル細胞リンパ腫(MCL)small cell variant(small- MCL)の臨床病態を明らかとする。 |
研究デザイン | 後方視的症例集積研究 |
研究施設、組織 | Kurume University、ほか2施設の共同研究 (Japan) |
研究期間 | 1981年~2010年 |
対象患者 | CyclinD1陽性の初発small-MCL 15例。 |
介入 | 9例はCHOPまたは類似療法、3例はhyper-CVAD/MA療法で治療し、うち7例はリツキシマブを併用し、2例は自家造血幹細胞移植を実施した。1例はシクロホスファミド内服で治療し、他の2例はwatchful waitした。 |
主要評価項目 | 全生存(OS)期間 |
結果 | 年齢中央値は64歳、12例に骨髄浸潤、12例に脾腫を認め、10例はInternational Prognostic Indexのhighまたはhigh-intermediate riskであった。6例が完全奏効を維持し14例が中央値24か月で生存中であり、5年OS割合は83.3%であった。 |
結論 | 形態学的にはdiffuse patternが高率で、古典的MCLと比較し骨髄浸潤、脾腫の割合が高く(P<0.05)、MIB-1陽性率は12.5+/-17.3% vs. 25.2+/- 25.5%と低い(P<0.001)。small-MCLは特異な亜型で、診断は治療方針の選択に大きく貢献する。 |
作成者 | 岡本昌隆 |
コメント | Indolent MCLの組織学的特徴としてsmall cell variantが提唱された。このような知見の集積により、indolent MCLの臨床病態が明らかとなることが期待される。 |
分類 | MCL |
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番号 | CQ2-4) |
文献ID | PMID:18729857 |
文献タイトル | The subcellular Sox11 distribution pattern identifies subsets of mantle cell lymphoma: correlation to overall survival. |
Evidence level | 3iiiA |
著書名 | Wang X, Asplund AC, Porwit A, Flygare J, Smith CI, et al. |
雑誌名,巻:出版年 | Br J Haematol. 2008; 143: 248-52. |
目的 | マントル細胞リンパ腫(MCL)細胞のSOX11の発現様式がMCLのsubsetを同定し、全生存(OS)期間と関連することを明らかにする |
研究デザイン | 後方視的症例集積研究 |
研究施設、組織 | Karolinska Institute and Karolinska University Hospital (Sweeden)、単独 |
研究期間 | 記載なし |
対象患者 | MCL 55例、その他のindolent lymphoma 12例、およびMCL cell line 5種。 |
介入 | 治療に関する記載なし。対象検体につきgene expression analysis、SOX11のRT-PCR、immunoblot analysis、免疫染色(CyclinD1、Ki-67)を実施し、SOX11の発現様式とOS期間との関連を検討した。 |
主要評価項目 | OS期間 |
結果 | OS割合はKi-67陽性率が低い方が良好(P=0.0074)で、OS期間はSOX11陽性例は陰性例にくらべ有意に良好(P<0.0498)であった。 |
結論 | SOX11はMCLの新たな診断マーカーであり、臨床的、生物学的特徴と関連する。 |
作成者 | 岡本昌隆 |
コメント | Ki-67とSOX11免疫染色により、MCLの予後良好群と不良群とを鑑別できる可能性が示された。 |
分類 | MCL |
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番号 | CQ2-5) |
文献ID | PMID:21782061 |
文献タイトル | Is there a role of “watch and wait” in patients with mantle cell lymphoma. |
Evidence level | レビュー |
著書名 | Martin P, Leonard J. |
雑誌名,巻:出版年 | Semin Hematol. 2011; 48: 189-93. |
目的 | マントル細胞リンパ腫(MCL)治療におけるwatchful wait (W&W) 適応に関する総説。 |
研究デザイン | Review |
研究施設、組織 | Weill Cornell Medical College (USA)、単独 |
研究期間 | - |
対象患者 | - |
介入 | - |
主要評価項目 | - |
結果 | ・indolent MCLは存在するが、MCL International Prognostic Index (MIPI)ではindolent MCLを同定できるか否かは明らかではない。 ・indolent MCLの診断方法として、Ki-67陽性率、免疫グロブリン重鎖遺伝子可変領域のhypermutation、単純な染色体異常、SOX11免疫染色陰性、gene expression profileでの候補遺伝子、FDG-PETのSUVmaxなどが提案されているが、確定的なものはない。 ・indolent MCLをW&Wすることで全生存期間、QOLにはマイナス面はない。 |
結論 | MCLにはindolentな経過を呈する例があり近年は増加している。確実なデータはないが、indolent MCLは無治療で長期生存が可能で、良好なQOLが保たれる。しかし、現時点ではindolent MCLを確実に診断する方法はない。多施設共同でindolent MCLの臨床および病理学的な特徴を明らかとする必要がある。 |
作成者 | 岡本昌隆 |
コメント | 後方視的な観察研究により、indolentな経過を呈したMCLの病理、臨床、検査所見上の特徴が示されたが確定的なものはない。これらの中から将来indolent MCLを同定する因子が見出されるかもしれない。 |