造血器腫瘍診療ガイドライン

序文

 白血病,リンパ腫,骨髄腫などの造血器腫瘍は,病態が分子・遺伝子レベルで次々と明らかになり,診断法や治療法が急速に進歩している分野である。従来の標準的化学療法に加え,分子標的療法,造血幹細胞移植,抗腫瘍免疫療法,補助療法において毎年新たな報告がなされ,治療の選択肢が広がっている。EBM(evidence-based medicine)に重要な科学的根拠は年々増加しているが,日常の業務に多忙の臨床医が,造血器腫瘍領域における膨大な最新知識を常に入手し,そのエビデンス(科学的根拠)のレベル(質)を正確に判断するのは容易なことではない。また,造血器腫瘍
の中には,頻度の低い疾患や,多数例解析によるエビデンスレベルが高い成績が存在しない場合も経験する。これらの理由から,現時点で明らかになっているエビデンスを整理し,医療の現場で適切に診断や治療が行えるように補助する診療ガイドラインの必要性が増してきている。
日本血液学会では,学会内外ならびに日本癌治療学会からの要望に応え,本学会が主体となり白血病,リンパ腫,骨髄腫の3 領域に関する造血器腫瘍診療ガイドラインを作成することが2010 年12 月の理事会で承認された。学会の診療・学術・教育の3 委員会が中心となって造血器腫瘍診療ガイドラインの作成・評価を行うことになり,黒川峰夫先生に作成委員会委員長,大西一功先生には疾患別作成委員会委員長を依頼した。2011 年より白血病,リンパ腫,骨髄腫の細かな病型別に数名の専門家からなる作成委員会が設けられ,ガイドラインの作成が開始された。ガイドライン案の作成後,独立した評価委員会による評価を行い,日本血液学会会員によるパブリックコメントも得て,出版の運びとなった。
本ガイドラインは,造血器腫瘍の各病型について,総論,アルゴリズム,Clinical question(CQ)の構成となっている。我が国の造血器腫瘍の特徴や医療の実情も加味した独自の診療ガイドラインであり,診断・治療・予後予測などの実地診療に有益な情報が簡潔に提供されている。なお,本ガイドラインは,現時点における標準的な診療情報の提供であり,個々の症例における診断・治療の決定・責任は医師と患者にあることを改めてご認識いただいた上で,ご活用いただければ幸いである。
今後も時代に即したより良い造血器腫瘍診療ガイドラインを提供するため,定期的に改訂する予定である。日本血液学会会員諸氏の継続的なご支援とご助力をお願いしたい。最後に,誠にご多忙な折に本造血器腫瘍ガイドラインの作成・評価をお引き受け頂いた先生方にこの場を借りて深謝する次第である。

2013年10月

日本血液学会理事長 金倉 譲

造血器腫瘍診療ガイドライン作成委員会

作成委員会 委員長
黒川 峰夫 東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科
副委員長 赤司 浩一 九州大学大学院医学研究院病態修復内科学
委員
小松 則夫 順天堂大学医学部内科学血液学講座
真部  淳 聖路加国際病院小児科
中尾 眞二 金沢大学医薬保健研究域医学系細胞移植学(血液・呼吸器内科)
疾患別作成
委員会
委員長 大西 一功 浜松医科大学医学部附属病院腫瘍センター
副委員長 宮﨑 泰司 長崎大学原爆後障害医療研究所原爆・ヒバクシャ医
療部門血液内科学研究分野
事務局 南谷 泰仁 東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科
白血病 委員長 宮﨑 泰司 長崎大学原爆後障害医療研究所原爆・ヒバクシャ医
療部門血液内科学研究分野
委員 AML 宮脇 修一* 東京都立大塚病院輸血科(血液内科)
岡本真一郎 慶應義塾大学医学部血液内科
坂巻  壽 東京都立駒込病院血液内科
清井  仁 名古屋大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科
APL 麻生 範雄* 埼玉医科大学国際医療センター造血器腫瘍科
品川 克至 岡山大学病院血液・腫瘍内科
藤田 浩之 済生会横浜市南部病院血液内科
ALL/LBL 竹内  仁* 国際医療福祉大学塩谷病院血液内科
神田 善伸 自治医科大学附属さいたま医療センター血液科
秋山 秀樹 東京都保健医療公社荏原病院内科
楠本  茂 名古屋市立大学大学院医学研究科腫瘍・免疫内科学
伊豆津宏二 虎の門病院血液内科
CML/MPN 薄井 紀子* 東京慈恵会医科大学附属第三病院輸血部/ 腫瘍・血
液内科
木崎 昌弘 埼玉医科大学総合医療センター血液内科
下田 和哉 宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野
高橋 直人 秋田大学医学部血液腎臓膠原病内科
CLL/SLL 鈴宮 淳司* 島根大学医学部附属病院腫瘍センター/ 腫瘍・血液
内科
高松  泰 福岡大学医学部腫瘍・血液・感染症内科学
MDS 宮﨑 泰司* 長崎大学原爆後障害医療研究所原爆・ヒバクシャ医
療部門血液内科学研究分野
鈴木 隆浩 自治医科大学医学部内科学講座血液学部門
リンパ腫 委員長 飛内 賢正 国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科
委員 FL 鈴宮 淳司* 島根大学医学部附属病院腫瘍センター/ 腫瘍・血液
内科
渡辺  隆 小牧市民病院血液内科
MALT リンパ腫
/MZL
LPL/WM
小林 幸夫* 国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科
山本 一仁 愛知県がんセンター中央病院臨床試験部/ 血液・細
胞療法部
MCL 小椋美知則* 名古屋第二赤十字病院血液・腫瘍内科
岡本 昌隆 藤田保健衛生大学医学部血液内科学
DLBCL 木下 朝博* 愛知県がんセンター中央病院血液・細胞療法部
大間知 謙 東海大学医学部血液腫瘍科
山本 一仁 愛知県がんセンター中央病院臨床試験部/ 血液・細
胞療法部
BL 石澤 賢一* 東北大学病院臨床研究推進センター/ 血液免疫科
丸山  大 国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科
PTCL
ENKL
山口 素子* 三重大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学
鈴木 律朗 名古屋大学大学院医学系研究科造血細胞移植情報管
理・生物統計学
ATL 塚崎 邦弘* 国立がん研究センター東病院血液腫瘍科
福島 卓也 琉球大学医学部保健学科
HL 永井 宏和* 国立病院機構名古屋医療センター血液内科
新津  望 埼玉医科大学国際医療センター造血器腫瘍科
骨髄腫 委員長 飯田 真介* 名古屋市立大学大学院医学研究科腫瘍・免疫内科学
委員 村上 博和 群馬大学大学院保健学研究科
尾崎 修治 徳島県立中央病院血液内科
島崎 千尋 社会保険京都病院血液内科
清水 一之 公立学校共済組合東海中央病院血液内科
安倍 正博 徳島大学大学院生体情報内科学
畑  裕之 熊本大学大学院生命科学研究部(保健学系)生体情
報解析学

*は各疾患の責任者を示す。

造血器腫瘍診療ガイドライン評価委員会

評価委員


委員長 直江 知樹 国立病院機構名古屋医療センター
委員



小澤 敬也 自治医科大学医学部内科学講座血液学部門
上田 孝典 福井大学医学部血液・腫瘍内科
大屋敷一馬 東京医科大学医学部血液内科
小島 勢二 名古屋大学大学院医学系研究科小児科学
松村  到 近畿大学医学部血液・膠原病内科学
森島 泰雄 愛知県がんセンター中央病院疫学・予防部
檀  和夫 了徳寺大学健康科学部医学教育センター
外部評価委員 福井 次矢 聖路加国際病院
小口 正彦** がん研究会有明病院放射線治療部
笹井 啓資** 順天堂大学大学院医学研究科放射線治療学講座
長谷川正俊** 奈良県立医科大学医学部放射線腫瘍医学講座
鹿間 直人** 埼玉医科大学国際医療センター放射線腫瘍科

**放射線治療に関連する部分については,日本放射線腫瘍学会の外部委員に評価していただいた。

はじめに(エンビデンスレベル・奨励グレード)

1.目的

 現在の高齢化社会における造血器腫瘍患者の増加に加え,新規治療薬の開発も精力的に進められる中,日常臨床において最善の治療法の選択と実践は必ずしも容易ではなくなってきた。さらに,がん診療の「均てん化」を目的とした施策が実施され,血液専門医のみならず臨床腫瘍医にとっても造血器腫瘍患者に対する「標準的治療」の実施が求められるようになった。こうした状況下で,日本血液学会としても「造血器腫瘍診療ガイドライン」を作成することにより社会的要求に応えることとなった。
本ガイドラインは,医療者や患者が適切な判断や決断を下せるように支援することを目的とし,その利用により診療の質の向上と均てん化,患者ケアの向上を目指すものである。本ガイドラインは日本および海外のエビデンスに基づいたEBM の手法を用いて作成されたが,わが国の保険診療も考慮に入れている1)。第1 版としては医療従事者を主な対象としている。
もとより診療ガイドラインは,あくまで特定の対象と条件下での複数の試験成績を根拠とし,その中での平均的なエビデンスを示したものにすぎず,それを外挿あるいは敷衍して論ずることを保証するものではない。臨床の場における意思決定には,臨床研究によるエビデンスとともに医療の現状と環境,患者の価値観の三者が密接に関連し,それを統合することが医療者の専門職としての能力とされる。したがって,実際の診療においては医療担当者が個々の患者の状況に応じて専門的に総合判断することが求められる。この意味で,診療ガイドラインは医師の裁量に影響するが,そ
れを拘束するものではない2)。また,本診療ガイドラインの遵守の有無により法的責任が医療担当者や本ガイドラインに帰すものではない3)

2.作成の経緯

 わが国では厚生省(当時)により1999年から診療ガイドライン策定の検討が開始された。日本癌治療学会においても2001年から臓器別のがん診療ガイドライン作成が推進され,各領域専門学会に協力が要請された。造血器腫瘍に対する「抗がん剤適正使用ガイドライン」は,2005年に日本癌治療学会における抗がん剤適正使用ガイドライン作成委員会の中で造血器腫瘍の項目も作成され,Int J Clin Oncol : 10 Suppl June 2005に掲載された。その後,さらに本格的な「造血器腫瘍診療ガイドライン」作成の必要性が高まり,日本血液学会において2011年5月に造血器腫瘍診療ガイドライン作成委員会が設置され,作成が開始された。その後,評価委員会により3度の査読ならびに評価を受け,日本血液学会会員のパブリックコメントを受けた後,日本血液学会理事会の承認を得て公開された。

3.作成方法

 造血器腫瘍は由来する細胞系列により病型が多岐にわたる。本ガイドラインでは,白血病,リンパ腫,骨髄腫,および支持療法を対象とし,各病型ごとに2~5名の作成委員を任命し,さらに各病型を統括する責任者と全体を統括する委員長を設置した。全体の調整は各病型の責任者と全体を統括する委員長が主として行った。本ガイドライン作成にあたっては,EBMの手法を採用し,日本医療機能評価機構EBM医療情報部Mindsの方針を参照した1)。
全体の章立ては各病型ごとに行い,総論,治療アルゴリズム,アルゴリズムの簡潔な解説,clinical question(CQ)の設定と解説,とした。第1版は,全体を一冊にまとめる方針とし,CQの数を必須なものに限定した。また,エビデンスレベルが高いにもかかわらず日本では未承認の薬剤または適応外の薬剤を含む治療法については,日本の保険診療では使用できない旨を明記した上で記載した。

1)Clinical questionの選定
CQは各グループが分担して原案を作成した。対象は,初期治療,初回再発および支持療法として,救援療法については一定のエビデンスレベルがある場合に選択した。

2)文献検索
各CQにおけるキーワードを基に一次資料の網羅的な文献検索を行うと同時にハンドサーチによる検索を行った。検索データベースはPudMedおよび医学中央雑誌を用いた。また,エビデンスレベルの高い重要な学会抄録も対象に含めた。検索した文献を吟味した上で,各CQに対する解説を作成した。この段階では,国内外の既存のガイドライン等の二次情報を活用した。文献は各CQにおいて検索した文献のうち重要なものを掲載し,構造化抄録を作成した。作成した試案は,2回にわたり各グループ内で相互に査読を行い修正した。その後,独立した評価委員会の評価に基づき修正したのち最終版とした。

3)エビデンスレベル
文献のエビデンスレベルについては,各研究機関より種々のものが提案されている。本ガイドラインでは,このうち米国National Cancer Institute(NCI)のComprehensive Cancer DatabaseのPhysician Data Query(PDQ®)において用いられているエビデンスレベルの表示法を採用した4)。すなわちPDQ編集委員会におけるエビデンスレベルの公式順位分類により,試験結果を「研究デザインの強さ」および「エンドポイントの強さ」の2つの尺度に基づいて順位づけして表示した(表1)。エビデンスレベルは各CQの参考文献の末尾および構造化抄録に記載した。

4)推奨グレード
推奨グレードの表示形式についても種々のものが提案されている。推奨案は,エビデンスのレベルとエビデンスの数と結論のばらつき,臨床的有効性の大きさ,臨床上の適用性,有害性や費用に関するエビデンスの各要素を勘案して総合的に判断される。また,複数の信頼し得るエビデンスがあるが,利益と害が拮抗している場合,あるいは明確なエビデンスがないか質が低い場合は明確な推奨が困難となる。こうした場合は,エキスパート・オピニオンを参考にしたエビデンスと臨床医の経験を客観的に調和させるコンセンサスという形を取らざるを得ない。造血器腫瘍の臨床試験においてはランダム化比較試験の成績が提示されている場合は必ずしも多くはなく,第 Ⅱ相試験の成績に基づいて判断せざるを得ない場合も多い。そこで本ガイドラインではNational Comprehensive Cancer Network (NCCN) Clinical Practice Guideline in Oncologyが採用しているエビデンスとコンセンサスによるカテゴリー(2011年版)の一部改変したものを用いた5)NCCNのグレードはカテゴリー3までであるが,CQのうち強く否定される課題についてはカテゴリー4を設け,否定が明確に示されるようにした(表2)。また,本ガイドラインでは費用対効果に関する判断は含んでいない。

表1 エビデンス
エビデンスレベルは,「研究デザインの質」および「研究エンドポイントの質」の2 つのスケールで評価す るNCI-PDQ による尺度を用いた。

研究デザインの質
1.ランダム化比較試験
ⅰ.ダブルブラインド
ⅱ.ブラインドなし
2.ランダム化されていない前方視的比較試験
3.症例集積研究
ⅰ.ポピュレーションベースの継続的症例集団
ⅱ.ポピュレーションベースではない継続的症例集団
ⅲ.継続的ではない症例集団

研究エンドポイントの質
A.全生存
B.Cause-specific survival
C.質の高いQOL 研究
D.間接的なエンドポイント
ⅰ.無イベント生存割合または期間(event-free survival:EFS)
ⅱ.無病生存割合または期間(disease-free survival:DFS)
ⅲ.無増悪生存割合または期間(progression-free survival:PFS)
ⅳ.治療反応割合など(tumor response rate)

注)NCI(National Cancer Institute)におけるPDQ®(Physician Data Query)で用いられているエビデンスレベル [Levels of Evidence for Adult and Pediatric Cancer Treatment Studies (PDQ®
http://www.cancer.gov/cancertopics/pdq/levels-evidence-adult-treatment/HealthProfessional/page1]を採用した。
このエビデンスレベルの表記の不明確な点については,名古屋大学医学部造血細胞移植情報管理・生物統計学 熱田由子先生にNCI に問い合わせいただき以下の注釈を加えた。

 癌治療研究に関して,NCI は,上記のレベルを公開し,これをもとに個々の研究のエビデンスレベルを検討する一つの尺度としている。尺度としては,「研究デザインの質」および「研究エンドポイントの質」の二つのスケールで評価し,個々の研究の総合的なエビデンスレベルの概要を把握する。しかし,NCI も,このエビデンスレベル尺度を常に用いるべきと言っているわけではなく,専門分野により,あるいは目的により,研究者があるいは学会などが異なった分け方を行うことを否定しているわけではない。2 つの尺度により,例えば以下のように研究のエビデンスレベルを表現できる。
1iiA :Phase Ⅲ RCT(盲検なし)で,OS がエンドポイント
3iiiDiv:Phase Ⅱ single arm trial で,治療反応率がエンドポイント
ただし,NCI-PDQ では,以下のような事項は2 つのスケールの評価対象に含まれていないことに留意する必要が
ある。

  • 前方視的研究か,後方視的研究か
  • 観察研究か,介入を規定して実施する臨床試験か
  • 治療毒性の評価
  • 観察された点推定値(OS など)の信頼区間の幅
  • 臨床研究(臨床試験)の規模
  • 臨床試験におけるデータ管理などの質管理程度
  • 研究に必要とされた費用
  • 研究デザインの質
    1.ランダム化比較試験
    ⅰ.ダブルブラインド
    ⅱ.ブラインドなし
    注)
    ⅰは,ランダム化前後および介入治療経過中においても,医師にもブラインドされていることが必要である。
    ・RCT のメタアナリシスの場合もこの項(1.)に入る。メタアナリシスをより上位のレベルとする規準もあるが,NCI-PDQ では,小規模RCT のメタアナリシスが大規模RCT の結果と一致しないことがしばしばあることや,研究者によって同じclinical question を検討するメタアナリシスの別の研究結果が異なることもあり,RCT と同じ項(1.)に含められている。
    ・RCT の主要評価項目ではないサブセット解析に関しては,次の項(2.)に入るが,研究計画時に明確な仮説およびパワー・症例数設定がされていた場合は(1.)に含める場合もある。*
    ・Phase Ⅲ RCT は基本的にこの項に入ると考えられる。
    ・Randomized phase Ⅱ trial は通常はこの項には含まれない(NCI の説明によると,標準治療群がコントロール群として設定されていた場合にはこの項に含まれる場合があるということである)。
    * サブセット解析や副次的評価項目の解析結果を引用した場合は,主要評価項目に関するエビデンスレベルの後に,その解析の評価項目に関するエビデンスレベルを下線を付して併記した(例:1iiA/2Div)。

    2.ランダム化されていない前方視的比較試験
    注)
    ・比較試験だが,ランダム化されていない場合もこの項(2.)に含める。
    ・Historical control との比較は,この項に含めない。
    3.症例集積研究
    ⅰ.ポピュレーションベースの継続的症例集団
    ⅱ.ポピュレーションベースではない継続的症例集団
    ⅲ.継続的ではない症例集団
    注)
    ・稀な疾患や,治療内容によっては,可能である研究デザインの質レベルが3 となる場合もあるので,必ずしもこれのみで研究の意義を評価するものではない。
    ・選択バイアスの可能性や,研究対象が母集団を代表しているかという点を重視し,外的妥当性がより高いと考えられる研究対象であるかどうかにより,3 の内部で ⅰから ⅲに分かれている。
    ・Phase Ⅰdose finding study や,単群のphase Ⅱ trial は,患者選択規準・除外規準を用いて選択された集団における研究であるため,本レベルでは3iii に分類される。
    ・Randomized phase Ⅱ trial は一般的には新規治療どうしを選択デザインあるいはスクリーニングデザインなどで比較する研究であるが,これも3iii に含む。
    研究エンドポイントの質
    A.全生存
    B.Cause-specific survival
    C.質の高いQOL 研究
    D.間接的なエンドポイント
    ⅰ.無イベント生存割合または期間(event-free survival:EFS)
    ⅱ.無病生存割合または期間(disease-free survival:DFS)
    ⅲ.無増悪生存割合または期間(progression-free survival:PFS)
    ⅳ.治療反応割合など(tumor response rate)
    注)
    がんの研究エンドポイントの質を評価するレベルとして,上記が設けられている。長期生存の評価が最もレベ
    ルが高く,評価者の評価により個々の症例のエンドポイントが変わりうるもの(よりsubjective なもの)かど
    うか,という点が重視されている。しかし,がんの治療薬あるいは治療方法の開発により,生存期間が延長し,
    より間接的なエンドポイント(代替エンドポイント)を研究のエンドポイントとして用いらざるを得ないもの
    も存在する。

    表2 推奨グレード
    日血ガイドライン委員会の推奨グレード*

    カテゴリー1 高レベルのエビデンス(例:ランダム化比較試験)に基づく推奨で,統一したコンセ
    ンサスが存在する。
    カテゴリー2A 比較的低レベルのエビデンスに基づく推奨で,統一したコンセンサスが存在する。
    カテゴリー2B 比較的低レベルのエビデンスに基づく推奨で,統一したコンセンサスは存在しない
    (ただし大きな意見の不一致もない)。
    カテゴリー3 いずれかのレベルのエビデンスに基づく推奨ではあるが,大きな意見の不一致があ
    る。
    カテゴリー4** 無効性あるいは害を示すエビデンスがあり,行わないよう勧められるコンセンサスが
    存在する。

    * NCCN の「エビデンスとコンセンサスによるカテゴリー2011 年版」に基づきNCCN Guidelines ®の許諾を得て改変した。NCCN のカテゴリーは現在改訂されているが,本ガイドラインの次回改訂時には最新版を参照する予定である5)。
    ** 否定的推奨については,統一したコンセンサスがある場合に限り,否定的推奨であることを明確にするためカテゴリー4 を設けた。
    また,カテゴリー4 は一般診療としての否定的推奨を意味しており,適切な研究計画と倫理指針に従った臨床試験での実施を否定しているわけではない。

4.改訂と公開

 本ガイドラインは,3~4年を目処に定期的に改訂を予定する。この間に重要なエビデンスが明らかになった場合は逐次改訂を考慮する。また,幅広い利用のため小冊子として出版する他,学会のホームページで公開する。本ガイドライン第1版は対象を医療者に限るが,今後は患者の視点に立ったガイドラインの作成も予定している。本ガイドラインの利用普及により,診療内容への影響,患者アウトカムの改善が望まれる。さらに,その検証のため遵守状況のモニタリングも必要である。

5.資金と利益相反

 本ガイドラインの作成のための資金は日本血液学会の支援により得られた。本ガイドラインの内容は特定の営利・非営利団体,医薬品,医療機器企業などとの利害関係はなく,作成委員は利益相反の状況を日本血液学会に開示している。

疾患別作成委員会委員長 大西一功

[参考文献]

1) Minds 診療ガイドライン作成の手引き2007.Minds 診療ガイドライン選定部会 監修.福井次矢ほか 編集.
医学書院.東京.2007
2) 中山健夫.診療ガイドライン:適切な作成・利用・普及に向けて.日児腎誌.2008;21(2):157︲65.
3) 長澤道行ほか.診療ガイドラインの新たな法的課題.日本医事新報.2010;4504:54︲64.
4) National Cancer Institute : PDQ ® Levels of Evidence for Adult and Pediatric Cancer Treatment Studies.
Bethesda, MD : National Cancer Institute. Date last modifi ed <08/26/2010>. Available at :
http://cancer.gov/cancertopics/pdq/levels-evidence-adult-treatment/HealthProfessional. Accessed
<09/05/2013>.
5) NCCN Categories of Evidence and Consensus adapted with permission from the NCCN Clinical Practice
Guidelines in Oncology( NCCN Guidelines®) for Chronic Myelogenous Leukemia V. 2011. © 2013 National
Comprehensive Cancer Network, Inc. All rights reserved. The NCCN Guidelines ® and illustrations
herein may not be reproduced in any form for any purpose without the express written permission of
the NCCN. To view the most recent and complete version of the NCCN Guidelines, go online to NCCN.
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other NCCN Content are trademarks owned by the National Comprehensive Cancer Network, Inc.

目次

Ⅰ 白血病

No テクニカルクエスチョン グレード
1.急性骨髄性白血病(AML)
総論
アルゴリズム
CQ 1 AMLの診断時に必要な遺伝子検査は何が勧められるか 2A
CQ 2 若年者de novo AMLに対する標準的寛解導入療法としてどのレジメンが勧められるか 1
CQ 3 若年者de novo AMLの寛解導入療法(アントラサイクリン+標準量シタラビン)に他の薬剤の追加やシタラビン大量療法の組み込みは有効か 3
CQ 4 高齢者AMLに対して推奨される寛解導入療法は何か 2A
CQ 5 1回の寛解導入療法で完全寛解が得られない場合,どのような治療法を選択すべきか 2B
CQ 6 シタラビン大量療法はすべてのAMLの寛解後療法として行うべきか 2A
CQ 7 寛解後療法としてのシタラビン大量療法の投与量,標準的回数および期間は何が勧められるか 3
CQ 8 シタラビン大量療法以外のAML地固め療法は何が勧められるか 2B
CQ 9 若年者AMLの第一寛解期に同種造血幹細胞移植の適応はどのように決定すべきか 1
CQ 10 移植適応のない高齢者AMLに寛解後療法を施行するメリットはあるか 2B
CQ 11 非寛解期AMLに対する同種造血幹細胞移植の適応に関する指標はあるか 3
CQ 12 AMLにおいて治療後の好中球減少期にG-CSFを使用するのは有用か 2B, 2A
CQ 13 AMLの化学療法において,どのような場合に腫瘍崩壊症候群の予防を実施すべきか 2A
CQ 14 AMLにおいて中枢神経系白血病の予防は勧められるか 2A
CQ 15 腫瘤形成性AMLに対して通常の寛解導入療法を行うのは妥当か 2B
2.急性前骨髄球性白血病(APL)
総論
アルゴリズム
CQ 1 初発APLの治療開始前に行うべき検査と予後因子は何か 2A, 1, 2B
CQ 2 初発APLの寛解導入療法として何が勧められるか 1, 2B
CQ 3 初発APLの寛解導入療法におけるDIC対策として何が勧められるか 2B, 2A, 3
CQ 4 APL分化症候群の治療は何が勧められるか 2A
CQ 5 未治療APLのATRAと化学療法による寛解後の至適な地固め療法は何か 1, 2B, 2A
CQ 6 未治療APLの寛解例における至適な維持療法は何か 2A
CQ 7 再発APLの至適な再寛解導入療法は何か 2A, 2A, 2B
CQ 8 亜ヒ酸によるAPL第二寛解例の寛解後治療として何が勧められるか 2A, 2A, 2B
CQ 9 高齢者APLの至適な治療方法は何か 2A, 2B
CQ 10 妊娠中に発症したAPLをどのように治療すべきか 4, 2A, 2B
3.急性リンパ芽球性白血病/ リンパ芽球性リンパ腫(ALL/LBL)
総論
アルゴリズム
CQ 1 骨髄浸潤のないリンパ芽球性リンパ腫の治療はALLと同じ治療が勧められるか 2B
CQ 2 Ph 陽性ALL に対してチロシンキナーゼ阻害剤はどの薬剤をどのように使うべきか 2A
CQ 3 思春期・若年成人ALL は小児プロトコールでの治療が推奨されるか 2A
CQ 4 高齢者ALL の治療法は何が勧められるか 2B
CQ 5 一般成人Ph 陰性ALL の治療法は何が勧められるか 2B
CQ 6 T 細胞性ALL とB 細胞性ALL は同じ治療方法でよいか 2B
CQ 7 成人ALL における寛解導入療法prephase でのプレドニゾロン反応性は予後判定に有用か 2B
CQ 8 成人ALL の治療において中枢神経系再発予防は勧められるか 2B
CQ 9 寛解期成人ALL の治療における微小残存病変の評価の意義はあるか 2A
CQ 10 成人ALL の寛解後療法において大量シタラビンや大量メトトレキサートは勧められるか 2B
CQ 11 成人Ph 陰性ALL に対する地固め療法として自家造血幹細胞移植併用大量化学療法は妥当か 4
CQ 12 縦隔病変を有するT 細胞性LBL に対して縦隔照射は行うべきか 2B
CQ 13 第一寛解期の同種造血幹細胞移植はどのような症例に適応されるべきか(Ph 陽性,Ph 陰性を含む) 1
CQ 14 ALL に対する減弱前処置による同種造血幹細胞移植は有用か 2B
CQ 15 ALL 再発例(Ph 陰性前駆B 細胞ALL,Ph 陽性前駆B 細胞ALL,前駆T 細胞ALL)に対する再寛解導入療法の選択肢として何が勧められるか 2B, 2A, 2B
4.慢性骨髄性白血病/ 骨髄増殖性腫瘍(CML/MPN)
総論
アルゴリズム
CQ 1 初発CML-CP に対する治療として何を投与すべきか 1
CQ 2 イマチニブにてOptimal な効果が得られているCML-CP 症例はイマチニブを継続すべきか,第2 世代TKI に変更するほうがよいか 2A
CQ 3 Warning やFailure 症例に対してイマチニブの増量と第2 世代TKI のどちらを選択すべきか 2A,2A
CQ 4 イマチニブトラフ濃度の目標値を1,000 ng/mL としてイマチニブ療法は勧められるか 2B
CQ 5 進行期CML(AP およびBP)の治療はTKI が勧められるか 2A,2A
CQ 6 CMR 到達後にTKI 中止は勧められるか 4
CQ 7 すべてのPV 症例に瀉血は勧められるか 2A
CQ 8 心血管リスクファクターを有するLow リスクET 症例に対してアスピリン投与は勧められるか 2A
CQ 9 若年者Low リスクMPN 症例に対してヒドロキシウレアによる治療介入は勧められるか 4
CQ 10 妊娠合併ET に対して流産を減少させるための治療介入は勧められるか 2B
CQ 11 PMF に対して同種造血幹細胞移植は勧められるか 2B
追加 CQ Highリスク*PMF患者の薬物療法の第一選択薬は何か。*IPSSリスク分類で中間-II、または高リスク 1
5.慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)
総論
アルゴリズム
CQ 1 どのようなCLL 患者を治療すべきか 1,2A
CQ 2 初発進行期CLL の最適な治療は何が勧められるか 2A,2A
CQ 3 再発・難治性CLL の治療は何が勧められるか 2A,2A,1
CQ 4 CLL に対する造血幹細胞移植は勧められるか 4,2B
6.骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes:MDS)
総論
アルゴリズム
CQ 1 MDS の予後予測法,リスク分類として勧められるのは何か 2A
CQ 2 輸血による鉄過剰症への鉄キレート剤が適応とされる状態は何か 2B
CQ 3 低リスクMDS の治療において免疫抑制療法は勧められるか 2A
CQ 4 低リスクMDS の貧血に対してサイトカイン療法は勧められるか 2A
CQ 5 MDS の治療としてレナリドミドは勧められるか 1,2B
CQ 6 低リスクMDS の治療としてアザシチジンは勧められるか 2B
CQ 7 MDS に対する同種造血幹細胞移植の適応と適切な実施時期はいつか 2A,2A,2A
CQ 8 高リスクMDS に対してアザシチジンは勧められるか 1,2B,2A
CQ 9 高リスクMDS に対してレナリドミドは勧められるか 2B,2B
CQ 10 高リスクMDS において化学療法は勧められるか 2A,2B,2B

Ⅱ リンパ腫

悪性リンパ腫 総論
1.濾胞性リンパ腫(FL)
総論
アルゴリズム
CQ 1 初発進行期(ⅢまたはⅣ期)FL に対してどのような場合に無治療経過観察とし,どのような場合に治療を開始するか なし
CQ 2 初発進行期(ⅢまたはⅣ期)FL における標準治療は何が勧められるか 1,1,2A
CQ 3 初発限局期FL の標準治療は何が勧められるか 2A,3,2B,2B
CQ 4 高腫瘍量の初発進行期FL に対してリツキシマブ維持療法を実施すべきか 1,4
CQ 5 FL 初回再発時の治療選択としては何が勧められるか 2A
CQ 6 FL における自家移植の適応はup-front で行うべきか 4
CQ 7 再発FL に対して自家移植と同種造血幹細胞移植はそれぞれ妥当な治療選択肢であるか 2A
2.MALT リンパ腫/ 辺縁帯リンパ腫
総論
アルゴリズム
CQ 1 H. pylori 陽性限局期胃MALT リンパ腫の初期治療方針は何が勧められるか 2A
CQ 2 H. pylori 陽性限局期胃MALT リンパ腫で除菌失敗の時の治療法は何が勧められるか 2A
CQ 3 除菌後にリンパ腫の残存がみられる場合の治療は何が勧められるか 2B
CQ 4 H. pylori 陰性限局期胃MALT リンパ腫の治療は何が勧められるか 2B
CQ 5 進行期胃MALT リンパ腫の治療は何が勧められるか 2A
CQ 6 胃原発以外のMALT リンパ腫の治療は何が勧められるか 2B
CQ 7 DLBCL との境界病変の場合の治療は何が勧められるか 2A
CQ 8 節性辺縁帯リンパ腫の治療は何が勧められるか 2A
CQ 9 C 型肝炎ウイルス陽性の場合の脾B 細胞辺縁帯リンパ腫の治療は何が勧められるか 2A
CQ 10 HCV 陰性脾B 細胞辺縁帯リンパ腫の治療は何が勧められるか 2A
3.リンパ形質細胞性リンパ腫/ ワルデンストレームマクログロブリン血症(LPL/WM)
総論
アルゴリズム
CQ 1 原発性マクログロブリン血症の治療はどの時点で開始するのが適切か 2A
CQ 2 原発性マクログロブリン血症の初回治療として何が勧められるか 2A
CQ 3 原発性マクログロブリン血症の再燃・再発時の救援治療として何が勧められるか 2A
4.マントル細胞リンパ腫(MCL)
総論
アルゴリズム
CQ 1 限局期MCL の初回治療として推奨される治療法は何か 2A
CQ 2 MCL の初回治療として無治療経過観察は適切か 2B
CQ 3 初発進行期MCL の治療としてリツキシマブ単独療法は有用か 3
CQ 4 初発進行期MCL の化学療法にはリツキシマブを併用すべきか 1
CQ 5 65 歳以下の初発進行期MCL に推奨される化学療法は何か 2A
CQ 6 初回治療が奏効した比較的若年者のMCL には地固め療法として自家造血幹細胞移植併用大量化学療法を実施すべきか 2A
CQ 7 66 歳以上あるいは65 歳以下でも強力な化学療法の適応とならない初発進行期MCL に対する標準治療は何か 2A
CQ 8 再発・治療抵抗MCL に推奨される治療は何か 2B
5.びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫(DLBCL,NOS)
総論
アルゴリズム
CQ 1 DLBCL に対する化学療法にリツキシマブの併用は必要か 1
CQ 2 初発限局期DLBCL に対する標準治療は何が推奨されるか 2A,1
CQ 3 進行期DLBCL に対してdose intensified therapy は推奨されるか 4
CQ 4 進行期DLBCL に対するR-CHOP 療法におけるCHOP 療法の至適コース数は何コースか 2A
CQ 5 DLBCL では中枢神経系再発予防のための髄注は必要か 2A,2B
CQ 6 心機能の低下が予想される初発DLBCL に対して適切な化学療法は何が推奨されるか 2A
CQ 7 初回化学療法で奏効を得たDLBCL に対して引き続き自家造血幹細胞移植併用大量化学療法による地固め療法を行うことは勧められるか 4,4
CQ 8 再発・再燃DLBCL に対して自家造血幹細胞移植併用大量化学療法は勧められるか 1
CQ 9 再発・再燃DLBCL に対して同種造血幹細胞移植の適応はあるか 2B
CQ 10 節外性リンパ腫など治療上の特別な配慮が必要なDLBCL の病態・病型には何があるか 2A
CQ 11 胃原発DLBCL の治療方針は何が勧められるか 2A
6.バーキットリンパ腫(BL)
総論
アルゴリズム
CQ 1 BL に対する初回治療は何が勧められるか 2A
CQ 2 BL の初回治療にリツキシマブの併用は有効か 2B
CQ 3 BL において腫瘍崩壊症候群の予防は必須か 2A
CQ 4 BL に対して放射線治療は勧められるか 4
CQ 5 BL に対して造血幹細胞移植は勧められるか 4,2B,3
CQ 6 Intermediate DLBCL/BL に対する治療は何が勧められるか 3
7.末梢性T 細胞リンパ腫(PTCL)
総論
アルゴリズム
CQ 1 初発ALK 陽性ALCL に対する最適の治療は何か 2A
CQ 3 初発PTCL-NOS, AITL, ALK 陰性ALCL に対する最適の初回治療は何か 2A
CQ 3 初発進行期PTCL-NOS, AITL, ALK 陰性ALCL の化学療法後CR 例において地固め療法としての自家造血幹細胞移植併用大量化学療法は必要か 2A
8.成人T 細胞白血病・リンパ腫(ATL)
総論
アルゴリズム
CQ 1 初発アグレッシブATL に対して最も推奨される治療法は何か 1
CQ 2 アグレッシブATL に対する同種造血幹細胞移植は有用か 2A
CQ 3 インドレント(くすぶり型,予後不良因子を持たない慢性型)ATL の標準治療は無治療経過観察か 2B
CQ 4 再発・難治アグレッシブATL に対する治療法は何が勧められるか 2B
CQ 5 ATL に対するインターフェロンαとジドブジンの併用療法は有用か 3
9.節外性NK/T 細胞リンパ腫,鼻型(ENKL)
総論
アルゴリズム
CQ 1 初発鼻咽頭限局期(頸部リンパ節浸潤までのⅡE 期)ENKL における最も適した治療は何か 2A
CQ 2 初発鼻咽頭限局期のRT-2/3DeVIC 療法後CR 例に対して地固め療法としての自家造血幹細胞移植併用大量化学療法は必要か 4
CQ 3 初発進行期および初回再発/ 治療抵抗性ENKL に適した治療は何か 2A
CQ 4 初発進行期ENKL 全例および初回再発/ 治療抵抗性ENKL で救援療法後CR 例では造血幹細胞移植を追加すべきか 2B
CQ 5 初発進行期および初回再発/ 治療抵抗性ENKL の救援療法後非CR 例において造血幹細胞移植を追加する意義はあるか 3
10.ホジキンリンパ腫(HL)
総論
アルゴリズム
CQ 1 限局期予後良好CHL に対する化学療法と放射線療法の併用(CMT)は放射線単独療法より優れているか 1
CQ 2 限局期CHL に対する最適な化学療法レジメンは何か 2A
CQ 3 Bulky 病変を認めない限局期(予後良好)CHL に対する化学療法後に放射線療法は必要か 2B
CQ 4 予後良好限局期CHL ではABVD 療法2 コース後のIFRT が推奨されるか 2B
CQ 5 予後不良限局期CHL に対して推奨される治療法は何か 2A
CQ 6 限局期結節性リンパ球優位型HL(NLPHL)に対して推奨される治療法は何か 2B
CQ 7 進行期CHL の標準療法はABVD 療法か 1
CQ 8 進行期CHL において増量BEACOPP 療法はABVD 療法より臨床的に有用性が高いか 2B
CQ 9 進行期CHL において国際予後スコアに従った治療法選択は必要か 3
CQ 10 進行期CHL で化学療法によりCR(CT 効果判定)に至った症例において地固め療法としてのIFRT は必要か 4
CQ 11 若年者再発CHL に対して自家造血幹細胞移植併用大量化学療法は有効か 2A
CQ 12 進行期CHL において初回治療中間でのPET 検査(interim PET)は予後予測に有用か 2A
追加CQ 再発・難治性CD30陽性CHLに対してブレンツキシマブベドチンは有効か 2B

Ⅲ 骨髄腫

1.多発性骨髄腫(MM)
総論
アルゴリズム
【無症候性骨髄腫】
CQ 1 無症候性骨髄腫患者に対して診断後直ちに化学療法を実施することは妥当か 4
CQ 2 無症候性骨髄腫患者に対するビスホスホネート製剤の投与は妥当か 3
【移植適応のある初発症候性骨髄腫】
CQ 1 若年者症候性骨髄腫患者における移植を前提とした寛解導入療法では何が勧められるか 1
CQ 2 若年者症候性骨髄腫患者に対する自家造血幹細胞移植併用大量メルファラン療法は通常量化学療法と比べて生存期間を延長させるか 1
CQ 3 若年者症候性骨髄腫患者に対して寛解導入後早期に自家造血幹細胞移植を行うことは再発時に移植を行うよりも勧められるか 1
CQ 4 自家造血幹細胞移植における前処置として大量メルファラン療法は全身放射線照射を含む前処置と比べて優れているか 1
CQ 5 若年者症候性骨髄腫患者に対して2 回連続自家造血幹細胞移植(タンデム自家移植)を行うことは1 回(シングル)移植と比べて生存期間を延長させるか 3
CQ 6 自家造血幹細胞移植における移植後の地固め・維持療法は生存期間を延長させるか 2B
CQ 7 若年者症候性骨髄腫患者に対するタンデム自家/ 同種(ミニ)移植はタンデム自家/ 自家移植と比べて生存期間を延長させるか 3
CQ 7 若年者症候性骨髄腫患者に対するタンデム自家/ 同種(ミニ)移植はタンデム自家/ 自家移植と比べて生存期間を延長させるか 3
【移植非適応の初発症候性骨髄腫】
CQ 1 移植非適応の初発症候性骨髄腫患者に対する新規薬剤併用療法はMP療法に比べて生存期間を延長させるか 1
CQ 2 移植非適応の初発症候性骨髄腫患者に対して初回化学療法によってプラトーに到達した後も再発・再燃まで化学療法を継続すべきか 4
CQ 3 高齢骨髄腫患者にデキサメタゾンを投与する場合は少量投与法が推奨されるか 1
【再発・難治性骨髄腫】
CQ 1 再発・難治性骨髄腫患者に対する新規薬剤療法は大量デキサメタゾン療法に比べて生存期間を延長させるか 1
CQ 2 再発・難治骨髄腫患者に対する新規薬剤を含む併用療法は新規薬剤の単剤療法に比べて高い効果が期待できるか 2A
CQ 3 再発・難治性骨髄腫患者に対する自家造血幹細胞移植や同種造血幹細胞移植は生存期間を延長させるか 2B,2B
【骨髄腫の合併症と治療関連毒性に対する支持療法】
CQ 1 骨病変を有する患者に対するビスホスホネート製剤の投与は骨関連事象の発生を抑制するか 1
CQ 2 骨病変を有する患者に対するデノスマブの投与は骨関連事象の発生を抑制するか 2B
CQ 3 ビスホスホネート製剤を投与する患者に対する口腔内予防処置は顎骨壊死の発生を抑制するか 2A
CQ 4 腎障害を有する患者に対する新規薬剤の使用はデキサメタゾン単独投与に比べて腎機能の回復を期待できるか 2A
CQ 5 ボルテゾミブ投与中の患者に対するアシクロビル内服は帯状疱疹の発生率を減少させるか 2A
CQ 6 ボルテゾミブ投与中の患者に対するボルテゾミブの投与法の変更は末梢神経障害を軽減させるか 1
CQ 7 サリドマイド,レナリドミド投与患者に対するアスピリンの内服は深部静脈血栓症の発生を抑制するか 2A
2.多発性骨髄腫の類縁疾患
【骨の孤立性形質細胞腫・髄外性形質細胞腫】
総論
CQ 1 孤立性形質細胞腫において放射線療法による初期治療後の補助化学療法は多発性骨髄腫への進展を遅らせるか 2B
【全身性AL アミロイドーシス】
総論
アルゴリズム
CQ 1 全身性AL アミロイドーシスに対する自家造血幹細胞移植併用大量メルファラン療法は予後を改善させるか 2B
CQ 2 移植適応のない全身性AL アミロイドーシス患者にはどのような治療が推奨されるか 2B
【POEMS 症候群】
総論
CQ 1 POEMS 症候群患者に対する治療介入は予後を改善させるか 2B

効果判定規準一覧

急性骨髄性白血病(AML) 完全寛解 Complete remission CR
血液学的寛解 Hematological CR
形態学的完全寛解 Morphological CR CR
細胞遺伝学的寛解 Cytogenetic CR CRc
分子学的寛解 Molecular CR CRm
部分寛解 Partial remission PR
再発 Relapse
髄外再発 Extramedullary relapse
治療不成功 Failure
寛解期間 Remission duration
急性リンパ性白血病(ALL) AML に準ずる
慢性骨髄性白血病(CML) 血液学的完全奏効 Complete hematologic response CHR
細胞遺伝学的完全奏効 Complete cytogenetic response CCyR
細胞遺伝学的部分奏効 Partial cytogenetic response PCyR
CCyR+PCyR Major CyR MCyR
分子遺伝学的大奏効 Major molecular response MMR
分子遺伝学的完全奏効 Complete molecular response CMR
至適奏効 Optimal response
至適奏効以下(イマチニブ治療) Suboptimal response
不成功 Failure
慢性リンパ性白血病(CLL) 悪性リンパ腫に準ずる
骨髄異形成症候群(MDS) 完全寛解 Complete remission CR
部分寛解 Partial remission PR
骨髄CR Marrow CR
血液学的改善効果 Hematologic improvement HI
病勢の安定 Stable disease
治療不成功 Failure
CR またはPR 後の再発 Relapse after CR or PR
細胞遺伝学的奏効 Cytogenetic response
完全細胞遺伝学的奏効 Complete cytogenetic response
部分細胞遺伝学的奏効 Partial cytogenetic response
進行 Disease progression/progressive disease
生存 Survival
再燃 Relapse
原病死 Cause-specific death
悪性リンパ腫 全奏効 Overall response OR
完全奏効 Complete response CR
不確定完全奏効 Complete response/unconfirmed CRu
部分奏効 Partial response PR
安定 Stable disease SD
進行 Progressive disease PD
再発 Relapse disease
多発性骨髄腫 全奏効 Overall response OR
厳格な完全奏効 Stringent CR sCR
完全奏効 Complete response CR
完全奏効に近い奏効 Near complete response nCR
最良部分奏効 Very good partial response VGPR
部分奏効 Partial response PR
最小奏効 Minimal response MR
安定 Stable disease SD
不変 No change NC
プラトー Plateau phase
再発 Relapse
臨床的再発 Clinical relapse
進行 Progressive disease PD
増悪 Progression
奏効期間 Duration of response
本書を通じて 全生存期間/割合 Overall survival OS
無病生存期間/割合 Disease-free survival DFS
無再発生存期間/割合 Relapse-free survival RFS
無イベント生存期間/割合 Event-free survival EFS
無増悪生存期間/割合 Progression-free survival PFS
治療成功生存期間/割合 Failure-free survival FFS
生存期間中央値 Median survival time MST
累積再発割合 Cumulative incidence of relapse CIR
無増悪期間 Time to progression TTP
治療成功期間 Time to treatment failure TTTF
次治療開始までの期間 Time to next treatment TNT
治療成功割合 Freedom from treatment failure FFTF
治療関連死亡 Therapy-related mortality TRM

薬剤名一覧

carmustine(国内未承認) BCNU
chlorambucil(国内未承認) CB
lomustine(国内未承認) CCNU
mechlorethamine(国内未承認) HN2
アザシチジン AZA
アシクロビル ACV
L-アスパラギナーゼ L-Asp
亜ヒ酸 ATO
アレムツズマブ  
イダルビシン IDR
イホスファミド IFM
イブリツモマブ チウキセタン
イマチニブ IMA
イリノテカン CPT11
インターフェロンα IFNα
エトポシド ETP
エノシタビン BHAC
エピルビシン EPI
エリスロポエチン EPO
オファツムマブ
オールトランス型レチノイン酸 ATRA
カルボプラチン CBDCA
クラドリビン
(CLL に対して国内未承認)
2-CdA
ゲムシタビン Gem
ゲムツヅマブ オゾガマイシン GO
サリドマイド THAL
シクロスポリン CsA
シクロホスファミド CPA
シスプラチン CDDP
シタラビン AraC
ジドブシン AZT
ソブゾキサン MST-16
ダウノルビシン DNR
ダカルバジン DTIC
ダサチニブ DAS
タミバロテン Am80
チオグアニン 6TG
デキサメタゾン DEX
ドキソルビシン DXR
ニロチニブ NIL
ネララビン AraG
ヒドロキシウレア HU
ピラルビシン THP-DXR
ビンクリスチン VCR
ビンデシン VDS
ビンブラスチン VBL
ブスルファン BU
フルダラビン FLU
ブレオマイシン BLM
プレドニゾロン PSL
プロカルバジン PCZ
ベンダムスチン
(CLL に対して国内未承認)
ペントスタチン DCF
ボルテゾミブ BOR
ポマリドミド POM
ミトキサントロン MIT
メチルプレドニゾロン mPSL
メトトレキサート MTX
メルカルトプリン 6MP
メルファラン MEL
モガムリズマブ
ラニムスチン MCNU
リツキシマブ
(CLL に対して国内未承認)
R
ルキソリチニブ   
レナリドミド LEN

治療一覧

ABVD 療法 DXR,BLM,VBL,DTIC
ACVBP 療法 DXR,CPA,VDS,BLM,PSL
AdVP 療法 DXR,VCR,PSL
AspaMetDex 療法 L-Asp,MTX,DEX
ATRA/MTX/6MP 併用療法 ATRA,MTX,6MP
BAD 療法 BOR,DXR,DEX
BD 療法 BOR,DEX
BEACOPP 療法 BLM,ETP,DXR,CPA,VCR,PCZ,PSL
増量BEACOPP 療法 BLM,ETP,DXR,CPA,VCR,PCZ,PSL
BLD 療法 BOR,LEN,DEX
BMD 療法 BOR,MEL,DEX
BTD 療法 BOR,THAL,DEX
CALGB10002 療法 pre-phase(CPA,PSL),regimen A(R,IFM,MTX,VCR, AraC,ETP,DEX),regimen B(R,CPA,MTX,VCR,DXR, DEX)
CALGB9251 療法 pre-phase(CPA,PSL),regimen A(IFM,MTX,VCR,AraC, ETP,DEX),regimen B(CPA,MTX,VCR,ADR,DEX)
CBD 療法 BOR,DEX,CPA
CBD 療法 CPA,BOR,DEX
CCRT-VIPD 療法 CCRT(RT,CDDP),VIPD(ETP,IFM,CDDP,DEX)
CEC 療法 CPA,CCNU,VDS,MEL,PSL,EPI,VCR,PCZ,VBL,BLM
CHASE 療法 CPA,大量AraC,DEX,ETP
CHASER 療法 R,CPA,大量AraC,DEX,ETP
ChIVPP/EVA hybrid 療法 CLB,VBL,PCZ,PSL,ETP,VCR,DXR
ChIVPP/PABIOE 交替療法 CLB,VBL,PCZ,PSL,DXR,BLM,VCR,ETP
CHOMP 療法 CHOP,大量MTX
CHOP 療法 CPA,DXR,VCR,PSL
CHOP-14 療法 CPA,DXR,VCR,PSL
CNOP 療法 CPA,MIT,VCR,PSL
CODOX-M/IVAC 療法 CODOX-M(CPA,VCR,DXR,MTX),IVAC(IFM,ETP,AraC)
COP 療法 CPA,VCR,PSL
COPP/ABVD 療法 CPA,VCR,PCZ,PSL/DXR,BLM,VBL,DTIC
CTD 療法 CPA,THAL,DEX
DA-EPOCH 療法 ETP,PSL,VCR,CPA,DXR
DA-EPOCH-R 療法 ETP,PSL,VCR,CPA,DXR,R
DeVIC 療法 DEX,ETP,IFM,CBDCA
Dexa-BEAM 療法 DEX,BCNU,ETP,AraC,MEL
DHAP 療法 DEX,AraC,CDDP
EBVP 療法 EPI,BLM,VBL,PSL
ESHAP 療法 ETP,mPSL,AraC,CDDP
FC 療法 FLU,CPA
GDP 療法 Gem,DEX,CDDP
hyper-CVAD 療法 CPA,VCR,DXR,DEX
hyper-CVAD/MA 療法 CPA,VCR,DXR,DEX,高用量MTX,高用量AraC
ICE 療法 IFM,CBDCA,ETP
LAD 療法 LEN,DXR,DEX
LD 療法 LEN,DEX
VCAP-AMP-VECP 療法 VCAP(VCR,CPA,DXR,PSL),AMP(DXR,MCNU,PSL), VECP(VDS,ETP,CBDCA,PSL)
MACOP-B 療法 MTX,DXR,CPA,VCR,PSL,BLM
m-BACOD 療法 MTX,BLM,DXR,CPA,VCR,DEX
MD 療法 MEL,DEX
Mini-BEAM 療法 BCNU,ETP,AraC,MEL
modified CODOX-M/IVAC 療法 CODOX-M(CPA,VCR,DXR,MTX),IVAC(IFM,ETP,AraC)
modified EPOCH 療法 ETP,DXR,CPA,VCR,PSL
MOPP 療法 HN2,VCR,PCZ,PSL
MOPP/ABV 療法 MOPP(HN2,VCR,PCZ,PSL),ABV(DXR,BLM,VBL)
MOPP/ABV hybrid 療法 MOPP(HN2,VCR,PCZ,PSL),ABV(DXR,BLM,VBL)
MOPP/ABVD 療法 MOPP(HN2,VCR,PCZ,PSL),ABVD(DXR,BLM,VBL, DTIC)
MOPPEBVCAD 療法 HN2,CCNU,VDS,MEL,PSL,EPI,VCR,PCZ,VBL,BLM
MP 療法 MEL,PSL
MPB 療法 MEL,PSL,BOR
MPT 療法 MEL,PSL,THAL
OAP 療法 VCR,AraC,PSL
ProMACE-CytaBOM 療法 PSL,DXR,CPA,ETP,AraC,BLM,VCR,MTX
R-CHOP 療法 R, CPA,DXR,VCR,PSL
R-CVP 療法 R, CPA,VCR,PSL
R-FC 療法 R,FLU,CPA
R-FCM 療法 R,FLU,CPA,MIT
R-hyper-CVAD 療法 R, CPA,VCR,DXR,DEX
R-ICE 療法 R, IFM, CBDCA, ETP
RT-2/3DeVIC 療法 DEX,ETP,IFM,CBDCA
SMILE 療法 DEX,MTX,IFM,L-Asp,ETP
Stanford V 療法 DXR,VBL,HN2,ETP,VCR,BLM,PSL
TAD 療法 THAL,DXR,DEX
TD 療法 THAL,DEX
ThalDD 療法 THAL,DEX,PLD(Doxil)
THP-COP-14 療法 CPA,THP-DXR,VCR,PSL
VAD 療法 VCR,DXR,DEX
VBM 療法 VBL,BLM,MTX
VBMCP 療法 VCR,BCNU,MEL,CPA,PSL
VCAP-AMP-VECP
(modified LSG15)療法
VCAP(VCR,CPA,ADR,PSL),AMP(ADR,MCNU,PSL),VECP(VDS,ETP,CBDCA,PSL)

あとがき

 成人の血液疾患領域において,個別の疾患レベルでは,これまでも研究班などで作成された優れたガイドラインがいくつもあったが,造血器腫瘍全体を統一された形式で俯瞰したものは事実上存在しなかった。このたび,日本血液学会の編纂により,多岐にわたる造血器腫瘍を包摂して,最新の診療ガイドラインが刊行される運びとなったことは誠に意義深いことである。
 本ガイドラインは2011 年5 月に,日本血液学会会員から各疾患のエキスパートが一堂に会して,実質的な作成作業が始まった。疾患別作成委員会内に作られたワーキンググループ(WG)の精力的な活動のもと,極めて順調に原稿が寄せられたことが記憶に新しい。いずれも充実した内容で,分量の関係で項目を厳選するなどの調整を行った結果,一層密度の高いものとなった。その後,独立した評価委員会による3 回にわたる評価・修正を行い,さらに関連学会や研究班からの意見をいただくとともに日本血液学会会員から広くパップブリックコメントを募集した。その集大成が本ガイドラインである。
 本書は主要疾患ごとに,エッセンスを的確に集約した総論,現時点での治療の考え方をわかりやすく図示したアルゴリズム,選び抜かれたClinical question(CQ)からなっている。CQ のパートでは重要な文献に基づいて適切なエビデンスとそのレベルが明確に記載され,現時点での診療の到達点が見事に記されている。全体として現在のガイドラインで汎用される形式に則り,診療上標準となる情報を濃縮したものとなった。読み返してみると,造血器腫瘍領域にこれまでなかった待望の書であることを改めて感じ,血液の診療に携わる医師のみならず,他領域の医師や医療関係者にも広く役立つ内容であると確信する。本書の誕生の場に参加できたことを大変光栄に感じるところである。
 本書に関しては,文献の内容をコンパクトに把握できる構造化抄録も作成され,本文の一部とともにweb で閲覧可能となる。本書が多くの方にさまざまな形で幅広く活用されることが望まれる。一方,最新の情報を維持するためには,適切な方法で内容の追加,アップデートしていく必要があろう。そのような意味で,本書は造血器腫瘍の診療の携わる方に育てていただくものと考える。
 最後に,本ガイドライン作成に不可欠のリーダーシップを発揮された金倉 譲 日本血液学会理事長,実質的な作成作業を取りまとめてくださった大西一功 疾患別作成委員会委員長,的確な評価と修正指示を取りまとめてくださった直江知樹委員長をはじめとする評価委員の方々,各疾患別WG 責任者をはじめとする全ての執筆者ならびに作成委員会の各委員の方々,そして事務局として実務の労を執られた南谷泰仁氏(東京大学血液・腫瘍内科)に深甚の感謝の意を表したい。

2013 年9 月

ガイドライン作成委員会委員長 黒川峰夫