構造化抄録

Ⅰ章 白血病

Ⅰ 白血病

5.慢性リンパ性白血病/ 小リンパ球性リンパ腫
分類 CLL/SLL
番号 CQ1-1)
文献ID PMID:9593789
文献タイトル Chlorambucil in Indolent Chronic Lymphocytic Leukemia
Evidence level 1iiA
著書名 Dighiero G, Maloum K, Desablens B, Cazin B, Navarro M, Leblay R, Leporrier M, Jaubert J, Lepeu G, Dreyfus B, Binet JL, Travade P. 
雑誌名,巻:出版年 N Engl J Med. 1998;338(21):1506-14
目的 Binet分類 A期の未治療CLL(indolent CLL)患者に対するクロラムブシル投与の有益性の検討
研究デザイン ランダム化試験
研究施設、組織 French Cooperative Group on Chronic Lymphocytic Leukemia
研究期間 【first trial】 1980-1985,【second trial】 1985-1990
対象患者 Binet分類A期の未治療CLL患者
介入 【first trial】クロラムブシル 0.1mg/kg/day投与群(301人)と非治療群(308人)の2群に無作為割付。 【second trial】クロラムブシル 0.3mg/kg/day + prednisone 40mg/m2/dayを毎月5日間投与群(460人)と非治療群(466人)の2群に無作為割付
主要評価項目 Primary endopoint:全生存割合、原病死割合、奏効割合、無増悪期間
結果 First trial11年、second trial 6年の中央観察期間で、どちらの臨床試験もindolent CLLは治療による患者の全生存期間の延長はみられなかった。治療群は非治療群に対して死亡の相対危険度はfirst trialで1.14(P=0.23)、second trialで0.96(P=0.74)、また奏効割合はそれぞれ76%と69%であった。クロラムブシルl投与は病気の進行を遅らせたが、全生存期間は改善しなかった。First trialの非治療群は49%の患者でフォローアップ期間中に病気の進行を認めず、治療を必要としなかったが、27%の患者は原疾患に関連する原因で死亡した。
結論 クロラムブシル治療はBinet分類 A期の CLL患者の全生存期間lを延長しない。Binet分類B期、C期になるまで治療を先延ばしにしても、生命予後に支障を来たさないため、indolent CLLの治療は不要である。
作成者 鈴宮淳司、池尻文良
コメント 大規模ランダム化試験(第Ⅲ相)であり、CLL患者は早期に治療を受けてもメリットがないことを示している。クロラムブシルは国内では未承認薬である。

分類 CLL/SLL
番号 CQ1-2)
文献ID PMID:3277904
文献タイトル Treatment of early chronic lymphocytic leukemia: intermittent chlorambucil versus observation.
Evidence level 1iiA
著書名 Shustik C, Mick R, Silver R, Sawitsky A, Rai K, Shapiro L. 
雑誌名,巻:出版年 Hematol Oncol 1988;6(1):7-12.
目的 CLLの病初期段階でのクロラムブシルの間欠治療の効果を検討する。
研究デザイン ランダム化試験
研究施設、組織 CALGB、アメリカ
研究期間 1976年11月~1983年5月
対象患者 Rai分類Ⅰ-Ⅱ期の未治療CLL患者(Rai分類 0期とⅢ-Ⅳ期は含まれない)
介入 クロラムブシル0.5mg/kg/dayを1日間、28日毎に内服する群と何も治療しない群の2群に無作為割り付け。
主要評価項目 Primary endopoint:全生存、time to progression
結果 計59例が登録され、クロラムブシル投与群23名、未治療経過観察群25名に割付。全体の5年生存割合は75%、5年生存期間は6.3年で、2群間で5年後の生存割合に大きな違いは認められなかった(有意差検定の記載なし)。5年後の盗汗・体重減少、臓器腫大、貧血進行、血小板減少、リンパ球数の上昇などで定義される病気の進行は無治療群では70%、クロラムブシル間欠治療群は55%であったが、有意差は認められなかった(P=0.24)。
結論 Rai分類Ⅰ-Ⅱ期の未治療CLL患者に対するクロラムブシル間欠治療は生命予後を改善しない。
作成者 鈴宮淳司、池尻文良
コメント 少数例のランダム化試験であるが早期CLLを治療するメリットはないことを示唆。クロラムブシルは国内では未承認薬である。

分類 CLL/SLL
番号 CQ1-3)
文献ID PMID:10340906
文献タイトル Chemotherapeutic options in chronic lymphocytic leukemia: a meta-analysis of the randomized trials. 
Evidence level 1iiA
著書名 CLL Trialists' Collaborative Group
雑誌名,巻:出版年 J Natl Cancer Inst. 1999;91(10):861-8.
目的 ランダム化試験のメタアナリシスによるCLLの治療オプションについて
研究デザイン ランダム化試験のメタアナリシス
研究施設、組織 CLL Trialists' Collaborative Group
研究期間 1990年より前に始まったCLLに対するランダム化試験
対象患者 a)CLL早期に対するimmediate versus deferred chemotherapy 6つのtrialの2048人の患者 b)進行期CLL患者に対する初期治療としての併用化学療法(COP療法やCHOP療法) とクロラムブシル単独療法を比較した10の臨床試験の2022人の患者
介入 a)早期CLLに対する早期治療immediate chemotherapyと遅延した治療 deferred chemotherapyの比較
b)進行期CLL患者に対する初期治療としての併用化学療法(COP療法やCHOP療法) とクロラムブシル単独療法の比較
主要評価項目 Primary endopoint:全生存割合
結果 a) 10年生存割合は早期治療のほうがわずかに悪かったが有意差はなかった(44% vs 47% ; difference=-3%; 95% CI = −10%-4%)。
b)5年生存割合は両群とも48%であった(difference = 0%;95% CI = −6%-5%)。アントラサイクリンを含んだ6つの臨床試験のサブグループ解析では全生存割合はクロラムブシル単剤よりよくはなかった(death rate ratio = 1.07; 95% CI = 0.91–1.25;有意差なし)。
結論 メタアナリシスより、ほとんどの早期CLL患者は経過観察、ほとんどの進行期CLL患者に対する初期治療としてはクロラムブシル単剤による治療戦略が示唆される。アントラサイクリンを初期治療に組み入れるメリットはない。しかし、この治療戦略は他の薬剤などの長期観察結果が得られるようになれば再検討する必要がある。
作成者 鈴宮淳司、三宅隆明
コメント メタアナリシスの結果、早期CLLでは経過観察、進行期CLLではクロラムブシル単剤を支持する結果となった。アントラサイクリンを含む治療は初期には有益性がなかったことを示す重要な論文である。