造血器腫瘍診療ガイドライン

Ⅱ章 リンパ腫

Ⅱ リンパ腫

10 ホジキンリンパ腫(Hodgkin lymphoma:HL)
総論

 ホジキンリンパ腫(Hodgkin lymphoma:HL)は,欧米では全悪性リンパ腫の約30%,わが国では8~10%を占める。
 年齢分布は,若年者層(20 歳代)と中年層(50~60 歳)にピークを有する二相性を呈する。
 初発症状は多くは無症候性,無痛性表在リンパ節腫脹で,約75%が頸部・鎖骨上窩リンパ節腫脹で発見される。結節硬化型HL は約60%に縦隔病変を認める。
 血液検査所見は,白血球増多,リンパ球減少,好酸球増多,貧血,アルカリフォスファターゼの上昇,血液沈降速度の亢進,CRP 異常高値,細胞性免疫能の低下などを認める。
 病理組織学的には,Hodgkin/Reed-Sternberg(HRS)細胞,lymphocyte predominant(LP) 細胞(popcorn 細胞)などの腫瘍細胞の増生を特徴とするリンパ腫である。WHO 分類(2008)においてHL は結節性リンパ球優位型HL(nodular lymphocyte-predominant Hodgkin lymphoma: NLPHL)と古典的HL(classical Hodgkin lymphoma:CHL)の2 つに大別されている1)2)。HRS 細胞はCHL,LP 細胞はNLPHL に特徴的とされる。CHL は結節硬化型HL(nodular sclerosis Hodgkin lymphoma),リンパ球豊富型HL(lymphocyte-rich classical Hodgkin lymphoma),混合細胞型HL(mixed cellularity Hodgkin lymphoma),リンパ球減少型HL(lymphocyte depleted Hodgkin lymphoma)の4 つの準疾患単位に分類される。
 HL はAnn Arbor 病期分類によりⅠ~Ⅳ期に分類される。

1.限局期CHL の予後因子
 限局期(Ⅰ,Ⅱ期)CHL の予後因子を表1 に示す。研究グループにより重視する予後因子が異なることに注意が必要である3)~5)

表1 各研究グループによる限局期CHL の予後因子

研究グループ GHSG EORTC NCIC/ECOG NCCN2011
予後良好群 病期Ⅰ,Ⅱ期
リスク因子なし
病期Ⅰ,Ⅱ期
(横隔膜上部病変) リスク因子なし
病期Ⅰ,ⅡA 期
リスク因子なし
病期Ⅰ,Ⅱ期
リスク因子なし
予後不良群 病期Ⅰ,Ⅱ期
リスク因子あり
病期ⅡB 期ではbulky 縦隔病変,節外病変 があれば進行期
病期Ⅰ,Ⅱ期
(横隔膜上部病変)
リスク因子あり
病期Ⅰ,ⅡA 期
リスク因子あり
ただし,bulky 病変, 腹腔内病変があると進行期
病期Ⅰ,Ⅱ期
リスク因子あり
リスク因子 1.縦隔病変(胸郭横径比≧1/3)
2.節外病変
3.血沈亢進(A≧50,B≧30)
4.3 カ所以上リンパ節領域
1.縦隔病変(胸郭横径比≧0.35)
2.50 歳以上
3.血沈亢進(A≧50,B≧30)
4.4 カ所以上リンパ節領域
1.40 歳以上
2.血沈亢進(≧50)
3.4 カ所以上リンパ節領域
4.混合細胞型あるいはリンパ球減少型古典的Hodgkin リンパ腫
1.縦隔病変(胸郭横径比>0.33)
2.血沈亢進(>50)
3.B 症状
4.4 カ所以上リンパ節領域
5.10 cm を超える病変

GHSG : German Hodgkin Study Group, EORTC : European Organization for the Research and Treatment of Cancer, NCIC : National Cancer Institute of Canada, ECOG : Eastern Cooperative Oncology Group, NCCN : National Comprehensive Cancer Network

2.進行期CHL の予後因子
 進行期CHL(Ⅲ,Ⅳ期)に用いられる予後予測モデルとしてはInternational Prognostic Score(IPS)がある6)。これは15~65 歳までの進行期CHL でMOPP 療法[mechlorethamine(国内未承認),VCR, PCZ, PSL]やABVD 療法(DXR, BLM, VBL, DTIC)などによる治療を受けた4,695例を対象とし解析を行い,無増悪期間(TTP)をエンドポイントとして7 つの予後因子を抽出した。これらの因子の数によってTTP の予測が可能とされている。このシステムでは5 年での予測TTP は,予後不良因子数0 の場合は84%であるのに対し,5 以上の場合は42%と不良である。


[参考文献]

1) Swerdlow SH, et al. eds. WHO Classifi cation of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. Lyon, IARC ; 2008.
2) Nogová L et al. Lymphocyte-predominant and classical Hodgkin’s lymphoma : a comprehensive analysis from the German Hodgkin Study Group. J Clin Oncol. 2008 ; 26(3) : 434-9.( 3iiiDiii)
3) Noordijk EM, et al. Combined-modality therapy for clinical stageⅠor Ⅱ Hodgkin’s lymphoma : long-term results of the European Organisation for Research and Treatment of Cancer H7 randomized controlled trials. J Clin Oncol. 2006 ; 24(19) : 3128-35.( 1iiDiii)
4) Engert A et al. German Hodgkin’s Lymphoma Study Group.Involved-fi eld radiotherapy is equally eff ective and less toxic compared with extended-fi eld radiotherapy after four cycles of chemotherapy in patients with early-stage unfavorable Hodgkin’s lymphoma : results of the HD8 trial of the German Hodgkin’s Lymphoma Study Group. J Clin Oncol. 2003 ; 21(19) : 3601-8.( 1iiDiii)
5) Meyer RM, et al. Randomized comparison of ABVD chemotherapy with a strategy that includes radiation therapy in patients with limited-stage Hodgkin’s lymphoma : National Cancer Institute of Canada Clinical Trials Group and the Eastern Cooperative Oncology Group. J Clin Oncol. 2005. ; 23(21) : 4634-42.( 1iiA)
6) Hasenclever D et al. A prognostic score for advanced Hodgkin’s disease. International Prognostic Factors Project on Advanced Hodgkin’s Disease. N Engl J Med. 1998 ; 339(21) : 1506-14.( 3iiiDiii)


アルゴリズム

 HL の治療法はCHL とNLPHL とで異なる。CHL においては限局期および進行期とも放射線療法単独で治療することは推奨されない。化学療法単独または化学療法と放射線療法の併用が推奨される。限局期NLPHL のうち,限局期例ではinvolved field radiotherapy(IFRT)が標準治療である(CQ6)。
 化学療法はABVD 療法(DXR, BLM, VBL, DTIC)が標準である。
 また,放射線療法においては拡大放射線療法(extended field radiotherapy:EFRT)であるマントル照射や全リンパ領域照射などに代表される系統的なリンパ節照射療法の採用は推奨されない。化学療法と併用される場合はIFRT が推奨される。

1.限局期症例
 限局期CHL では初回治療として化学療法と放射線療法との併用療法(combined modality therapy:CMT)が行われる(CQ1)。現在,用いられている代表的なレジメンはABVD 療法である(CQ2)。限局期CHL に対するABVD 療法4 コース後のIFRT の治療成績は10 年無増悪生存割合(PFS)が90%以上である。放射線療法による晩期毒性,特に肺,乳房,消化管の二次がんや心血管系疾患による遅発性の死亡が問題となり,化学療法単独の治療方法も検討されている(CQ3)。近年,予後不良因子を持たない限局期CHL に対しては,有害事象の軽減のために化学療法の施行回数や照射量を減じる臨床試験が行われている。予後不良群に対してはABVD 療法4コース後IFRT 30 Gy(CQ5)が推奨されるが,予後良好群に対してはABVD 療法2 コース後IFRT 20 Gy(CQ4)も推奨される治療法の一つである。CMT においてはABVD 療法終了時に明らかな進行(PD)と判定されない限り,IFRT を予定通り行い治療終了する。再発症例は進行期再発症例と同様の治療法がとられることが多い。

2.進行期症例
 進行期CHL の初回治療としてはABVD 療法6~8 コースが推奨される(CQ7, CQ8)。IPS によるリスク分類を用いて層別化して治療法を選択することは推奨されない(CQ9)。化学療法終了時にCT およびPET にて完全奏効(CR)であれば治療は終了することが推奨される(CQ10)。部分奏効(PR)の場合にはIFRT の追加が考慮される(CQ10)。初回化学療法で安定(SD)以下あるいは化学療法後の再発症例では救援療法が施行されるが,65 歳以下で救援療法に感受性がある場合は臓器機能が保たれていれば大量化学療法は推奨される治療法である(CQ11)。また,進行期症例においては初回治療中のinterim PET は予後予測に有用であるが,その結果により治療変更することの是非は臨床試験での検討段階であり,一般診療としては推奨されない(CQ12)。

CQ 1限局期予後良好CHL に対する化学療法と放射線療法の併用(CMT)は放射線単独療法より優れているか
推奨グレード
カテゴリー1

限局期予後良好CHL に対するCMT は放射線単独療法に比べ治療成績が優れており,拡大放射線療法による有害事象を軽減することができる。

[解 説]

 限局期予後良好CHL に対する化学療法と放射線療法の併用(combined modality therapy :CMT)は,拡大放射線療法(extended fi eld radiotherapy : EFRT)単独に比べ照射野を縮小することにより放射線療法の有害事象を減らすことができる。また,限局期CHL に対する少なくとも4 つのランダム化比較試験の結果では,CMT がEFRT に比べて治療成績が有意に優れていた1)~4)
 病期ⅠA, ⅡA 期CHL に対する化学療法(DXR, VBL)3 コース+亜全リンパ領域照射(subtotal lymphoid irradiation:STLI)併用(CMT)群とSTLI 単独群の比較試験では,CMT 群の3 年無進行生存割合がEFRT 単独群に比べ有意にCMT 群の方が優れていたが全生存割合(OS)は有意差を認めなかった1)。また,限局期予後良好CHL に対するEBVP 療法(EPI, BLM, VBL, PSL)6コース施行後IFRT を併用したCMT 群とSTLI 単独群との比較試験では,OS には差を認めなかったが無イベント生存割合(EFS)では有意にCMT 群が優れていた2)。限局期予後良好CHLに対してABVD 療法(DXR, BLM, VBL, DTIC)2 コース後EFRT を施行するCMT 群とEFRT単独群の比較試験の結果,7 年治療成功割合(FFTF)はEFRT 群に比しCMT 群が有意に優れていたが,7 年OS には差を認めなかった3)。限局期予後良好CHL を対象にしたランダム化比較試験では,3 コースのMOPP(HN2, VCR, PCZ, PSL)/ABV(DXR, BLM, VBL)+IFRT のCMT 群とSTLI 単独群とが比較された。5 年EFS および10 年OS に関してCMT 群が優れていた4)。VBM 療法(VBL, BLM, MTX)6 コース+ IFRT のCMT 群とEFRT 単独群を比較した21 年のフォローアップデータでは,21 年無増悪生存期間および全生存期間ともにCMT 群の方が有意に優れていた。この研究のEFRT の死亡原因は放射線による晩期毒性によるものがCMT 群より多かった5)
 これらの結果から,限局期予後良好CHL においてEFRT を用いた放射線単独療法と比較しCMT は効果が良好であり,晩期有害事象も少ないと考えられる。


[参考文献]

1) Press OW, et al. Phase Ⅲ randomized intergroup trial of subtotal lymphoid irradiation versus doxorubicin, vinblastine, and subtotal lymphoid irradiation for stage ⅠA to ⅡA Hodgkin’s disease. J Clin Oncol 2001 ; 19(22) : 4238-44 .( 1iiDiii)
2) Noordijk EM, et al. Combined-modality therapy for clinical stageⅠor Ⅱ Hodgkin’s lymphoma : long-term results of the European Organisation for Research and Treatment of Cancer H7 randomized controlled trials. J Clin Oncol 2006 ; 24(19) : 3128-35.( 1iiDiii)
3) Engert A, et al. Two cycles of doxorubicin, bleomycin, vinblastine, and dacarbazine plus extended-fi eld radiotherapy is superior to radiotherapy alone in early favorable Hodgkin’s lymphoma : fi nal results of the GHSG HD7 trial. J Clin Oncol 2007 ; 25(23) : 3495-502 .( 1iiDiii)
4) Fermé C,et al. EORTC-GELA H8 Trial. Chemotherapy plus involved-fi eld radiation in early-stage Hodgkin’s disease. N Engl J Med. 2007 ; 357(19) : 1916-27.( 1iiDi)
5) Horning SJ, et al. A prospective trial of involved fi eld radiation( IFRT)+chemotherapy compared to ex- tended field (EFRT) radiation for favorable Hodgkin’s disease : survival differences and implications of mature follow-up for current combined modality therapy. Program and abstracts of the 43rd American Society of Clinical Oncology Annual Meeting ; June 1-5, 2007a ; Chicago, Illinois. Abstract 8014.(1iiA)


CQ 2限局期CHL に対する最適な化学療法レジメンは何か
推奨グレード
カテゴリー2A

限局期CHL に対する化学療法は,良好な治療成績と遅発性有害事象が少ないため,ABVD 療法が推奨される。

[解 説]

 進行期CHL では,ABVD 療法(DXR, BLM, VBL, DTIC)6~8 コースはMOPP 療法(HN2,VCR, PCZ, PSL)やMOPP/ABVD 療法と有効性は同等で急性毒性および晩期毒性が低いことが示され,現在の標準治療とみなされている1)。そのため,限局期CHL でも進行期に準じてABVD 療法が推奨されている。
 限局期CHL に対するABVD 療法4 コース後IFRT を行うCMT の12 年無増悪生存割合(PFS)は94%と良好な治療成績が示され,ABVD 療法4 コース後IFRT 療法が有効であることが報告されている2)。また,Japan Clinical Oncology Group(JCOG)は病期Ⅱ~Ⅳ期のCHL に対してABVd 療法(国内でのpilot study で観察された悪心を主とする消化器毒性の軽減のため,ダカルバジン(DTIC)を250 mg/m2 に減量)6~8 コース施行し,bulky 病変が治療前に存在した場合には30~40 Gy のIFRT を追加する第Ⅱ相試験を行った。この臨床試験における病期Ⅱ期の5 年PFS は86.8%,全生存割合(OS)97.4%と良好な治療成績であった(JCOG9305 試験)3)
 また,限局期予後不良群CHL に対してABVD 療法4 コースとBEACOPP 療法(BLM, ETP,DXR, CPA, VCR, PCZ, PSL)4 コース,その後にIFRT 20 Gy あるいは30 Gy を行う2×2 ランダム化比較第Ⅲ相試験が行われ,治療効果は同等であったが,急性毒性がBEACOPP 療法で有意に多いことが示された。この結果から,限局期予後不良群CHL に対してもABVD 療法4 コース後の30 Gy IFRT(1.8~2.0 Gy/回,週5 回)が推奨された(HD11 試験)4)
 これらの結果,および近年における支持療法の進歩(より有効な制吐剤およびG-CSF の導入)を考慮すると,限局期CHL に対する化学療法としてはABVD 療法が推奨される。


[参考文献]

1) Canellos GP, et al. Chemotherapy of advanced Hodgkin’s disease with MOPP, ABVD, or MOPP alternating with ABVD. N Engl J Med 1992 ; 327(21) : 1478-84.( 1iiDiii)
2) Bonadonna G, et al. ABVD plus subtotal nodal versus involved-fi eld radiotherapy in early-stage Hodgkin’ s disease : long-term results. J Clin Oncol.2004 ; 22(14) : 2835-41.( 1iiDiii)
3) Ogura M,et al. Phase Ⅱ study of ABVd therapy for newly diagnosed clinical stage Ⅱ-Ⅳ Hodgkin lymphoma : Japan Clinical Oncology Group study (JCOG 9305). Int J Hematol. 2010 ; 92(5) : 713-24. (3iiiDiv)
4) Eich HT, et al. Intensifi ed chemotherapy and dose-reduced involved-fi eld radiotherapy in patients with early unfavorable Hodgkin’s lymphoma : fi nal analysis of the German Hodgkin Study Group HD11 trial. J Clin Oncol. 2010 ; 28(27) : 4199-206.(1iiDiii)


CQ 3Bulky 病変を認めない限局期(予後良好)CHL に対する化学療法後に放射線療法は必要か
推奨グレード
カテゴリー2B

Bulky 病変を認めない限局期(予後良好)CHL に対する化学療法後のIFRT の選択は,放射線療法の晩期毒性を勘案して行う必要がある。

[解 説]

 Bulky 病変を認めない限局期CHL に対する化学療法と放射線療法の併用(combined modality therapy:CMT)と化学療法単独のいくつかのランダム化比較試験の結果,CMT は化学療法単独に比べて,無増悪生存期間が有意に良好であるものの,全生存期間では有意差がないことが示されている1)~4)
 カナダ国立がん研究所によるbulky 病変を認めない限局期CHL を対象にしたランダム化比較試験では,ABVD 療法(DXR, BLM, VBL, DTIC)4~6 コースの化学療法単独群とABVD 療法2コース+拡大放射線療法(extended fi eld radiotherapy : EFRT)(CMT 群)とが比較され,無増悪生存期間はCMT 群の方が優れていたが,全生存期間における有意差が認められなかった2)
 Bulky 病変を認めない限局期CHL を対象としてEBVP 療法(EPI, BLM, VBL, PSL)後の放射線療法について検討した試験では,20 Gy のIFRT 施行群に比べてIFRT 非施行群で無イベント生存割合が不良だった4)
 放射線療法による重大な晩期毒性である二次がん,心血管イベント,脳血管障害の発生率が経時的に増加し,約2~7 倍に達する5)6)。照射総線量を低減あるいは照射野を縮小しても,化学療法との併用で乳がんの発生リスクを高めることが報告されている6)
 一方,bulky 病変を認めない限局期CHL に対するABVD 療法6 コースのみ[involved field radiotherapy(IFRT)を施行しない]の報告では,5 年無増悪生存割合は約85~90%とCMT と遜色ない結果が報告されている7)8)
 以上の結果から,限局期患者に対して,IFRT を行わず化学療法単独で治療することの有用性についての結論は得られていないが,心血管障害や脳血管障害および二次がんのリスクを勘案して治療方針を決定する必要がある。また,化学療法単独で行う場合の対象は限局期CHL の中でもbulky 病変を認めない症例であり,ABVD 療法も6 コース施行することが推奨される7)8)。二次性固形腫瘍および心血管系疾患による晩期合併症を最小化するために,化学療法後の放射線療法を省略できるかは今後の比較試験の結果が待たれるところである。


[参考文献]

1) Nachman JB, et al. Randomized comparison of low-dose involved-fi eld radiotherapy and no radiotherapy for children with Hodgkin’s disease who achieve a complete response to chemotherapy. J Clin Oncol. 2002 ; 20(18) : 3765-71.( 1iiDi)
2) Meyer RM, et al. Randomized comparison of ABVD chemotherapy with a strategy that includes radiation therapy in patients with limited-stage Hodgkin’s lymphoma : National Cancer Institute of Canada Clinical Trials Group and the Eastern Cooperative Oncology Group. J Clin Oncol. 2005 ; 23(21) : 4634-42.( 1iiA)
3) Straus DJ, et al. Results of a prospective randomized clinical trial of doxorubicin, bleomycin, vinblastine, and dacarbazine( ABVD) followed by radiation therapy( RT) versus ABVD alone for stages Ⅰ, Ⅱ, and IIIA nonbulky Hodgkin disease. Blood. 2004 ; 104(12) : 3483-9.( 1iiDi)
4) Eghbali H, et al. Comparison of three radiation dose levels after EBVP regimen in favorable supradia- phragmatic clinical stages (CS) Ⅰ-Ⅱ Hodgkin’s lymphoma (HL) : preliminary results of the EORTCGELA H9-F trial. Program and abstracts of the 47th Annual Meeting of the American Society of Hematology ; December 10-13, 2005 ; Atlanta, Georgia. Abstract 814.( 1iiDiii)
5) Brusamolino E, et al. Long-term events in adult patients with clinical stage ⅠA-ⅡA nonbulky Hodgkin’s lymphoma treated with four cycles of doxorubicin, bleomycin, vinblastine, and dacarbazine and adjuvant radiotherapy : a single-institution 15-year follow-up. Clin Cancer Res. 2006 ; 12(21) : 6487-93.( 3iiiDi)
6) De Bruin ML, et al. Breast cancer risk in female survivors of Hodgkin’s lymphoma : lower risk after smaller radiation volumes. J Clin Oncol. 2009 ; 27(26) : 4239-46.( 3iiC)
7) Rueda Domínguez A , et al. Treatment of stage Ⅰ and Ⅱ Hodgkin’s lymphoma with ABVD chemotherapy : results after 7 years of a prospective study. Ann Oncol. 2004 ; 15(12) : 1798-804.( 3iiiDiii)
8) Canellos GP, et al. Treatment of favorable, limited-stage Hodgkin’s lymphoma with chemotherapy without consolidation by radiation therapy. J Clin Oncol. 2010 ; 28(9) : 1611-5. ( 3iiiDiii)


CQ 4予後良好限局期CHL ではABVD 療法2 コース後のIFRT が推奨されるか
推奨グレード
カテゴリー2B

予後良好限局期CHL では,ABVD 療法2 コース後のIFRT が推奨される治療の一つである。

[解 説]

 限局期CHL は,予後不良因子[巨大縦隔腫瘤,リンパ節病変数(3 あるいは4 つ以上),節外病変,B 症状,血沈亢進,高齢など]の有無で,予後不良因子を持たない「予後良好群」と予後不良因子を持つ「予後不良群」に分類され,それぞれに至適な治療法の開発が進められている。German Hodgkin Study Group(GHSG)では,巨大縦隔腫瘤(胸郭横径比≧1/3),節外病変,血沈亢進(B 症状あり;≧30 mm/h,B 症状なし;≧50 mm/h),3 カ所以上の病変領域を限局期CHL の予後不良因子としている。予後良好限局期CHL では長期生存が得られるため,有害事象の軽減のために化学療法の施行回数や放射線照射量を減じる臨床試験が行われている。
 GHSG は予後良好限局期CHL に対して,ABVD 療法(DXR, BLM, VBL, DTIC)2 コース対4コースの比較と,その後のinvolved fi eld radiotherapy(IFRT) 20 Gy vs 30 Gy との比較を行う2×2 ランダム化第Ⅲ相試験(HD10 試験)を行った1)。5 年全生存期間(OS)および治療成功期間(FFTF)は4 群間でほぼ同等であったが,毒性はABVD 療法4 コースで急性毒性および急性毒性死亡の発現頻度が高く,30 Gy IFRT は20 Gy に比べ急性毒性が多かった。そのため,毒性を考慮すると,今後ABVD 療法2 コース+IFRT 20 Gy が予後良好限局期CHL の新たな標準治療となると思われる。
 一方,European Organization for Research and Treatment of Cancer-Groupe d’Etude des Lymphomes de l’Adulte(EORTC-GELA)のH8 試験では,予後良好限局期群(H8-F)に対してMOPP(HN2, VCR, PCZ, PSL)/ABV(DXR, BLM, VBL) 療法 3 コースとIFRT(36 Gy) のCMT と放射線単独療法[亜全リンパ領域照射(subtonal lymphoid irradiation : STLI)]のランダム化比較試験が行われた。H8-F 群においては10 年の無イベント生存割合(EFS),全生存割合(OS)においてMOPP/ABV 3 コース+IFRT 群がSTLI 単独群に優り,化学療法3 コースとIFRT(36 Gy)が予後良好限局期群に対する推奨療法であるとした2)
 上記およびCQ1 にあるように,予後良好限局期群では短縮コースの化学療法とIFRT のCMTが推奨されるものの,化学療法のコース数,IFRT の照射量に関しては完全なコンセンサスが得られていない。このため現時点では,良好な治療成績が報じられたABVD 療法2 コース+IFRT 20Gy は,日常診療における治療選択肢の一つとして推奨される。


[参考文献]

1) Engert A, et al. Reduced treatment intensity in patients with early-stage Hodgkin’s lymphoma. N Engl J Med. 2010 ; 363(7) : 640-52.( 1iiDiii)
2) Fermé C,et al. EORTC-GELA H8 Trial. Chemotherapy plus involved-fi eld radiation in early-stage Hodgkin’s disease.N Engl J Med. 2007 ; 357(19) : 1916-27.( 1iiDi)


CQ 5予後不良限局期CHL に対して推奨される治療法は何か
推奨グレード
カテゴリー2A

予後不良限局期CHL では,ABVD 療法4 コース後のIFRT が推奨される。

[解 説]

 予後不良限局期CHL では,MOPP(HN2, VCR, PCZ, PSL)/ABV(DXR, BLM, VBL)療法6コース,MOPP/ABV 療法4 コース+involved field radiotherapy(IFRT)(30Gy),MOPP/ABV 療法4 コース+亜全リンパ領域照射(subtonal lymphoid irradiation : STLI)の3 群を比較したH8-U 試験において,MOPP/ABV 療法4 コース+ IFRT の有効性は他の2 群と同等であることが示され,短期間の化学療法とIFRT のCMT が標準治療となるとしている1)。GHSG は,CQ4 の予後不良因子を一つ以上認める症例を予後不良限局期CHL と定義して,この群に対してABVD 療法(DXR, BLM, VBL, DTIC)4 コース対BEACOPP 療法(BLM, ETP, DXR, CPA, VCR, PCZ,PSL)4 コース,その後にIFRT 20 Gy vs 30 Gy を行う2×2 の比較試験を施行した。その結果,治療成功期間(FFTF)がABVD 療法4 コース+20 Gy IFRT で短い傾向(有意差はない)があり,30 Gy IFRT が化学療法の種類にかかわらず同等であったが,急性毒性はBEACOPP 群で有意に多いことが報告された。この結果から,予後不良限局期CHL においてはABVD 療法4 コース後の30 Gy IFRT が推奨された2)
 以上の結果から,予後不良限局期CHL に対してはABVD 療法4 コース後のIFRT が推奨される治療法と考えられる。


[参考文献]

1) Fermé C, et al. EORTC-GELA H8 Trial. Chemotherapy plus involved-fi eld radiation in early-stage Hodgkin’s disease. N Engl J Med. 2007 ; 357(19) : 1916-27.( 1iiDi)
2) Eich HT, et al. Intensifi ed chemotherapy and dose-reduced involved-fi eld radiotherapy in patients with early unfavorable Hodgkin’s lymphoma : fi nal analysis of the German Hodgkin Study Group HD11 trial. J Clin Oncol. 2010 ; 28(27) : 4199-206.( 1iiDiii)


CQ 6限局期結節性リンパ球優位型HL(NLPHL)に対して推奨される治療法は何か
推奨グレード
カテゴリー2B

限局期NLPHL では,IFRT が推奨される。

[解 説]

 Joint Center for Radiation Therapy で治療された限局期NLPHL の後方視的解析が報告され,放射線療法のみの症例では10 年無増悪生存割合および10 年全生存割合は良好であった1)。また,照射野に関してはinvolved fi eld radiotherapy(IFRT),マントル照射または逆Y 照射,拡大放射線療法(extended fi eld radiotherapy : EFRT)の比較では無増悪生存期間と全生存期間のいずれにおいても有意差はなかった。CMT は放射線療法単独に比べ無増悪生存期間,全生存期間の改善はもたらさなかった。
 GHSG で行われたHD4(EFRT),HD7(EFRT vs EFRT+2×ABVD),HD10(CMT における化学療法コースとIFRT の照射量の比較試験)に登録されたNLPHL とGHSG において臨床試験外でIFRT により治療されたNLPHL で臨床病期ⅠA を対象とした後方視的解析では,すべての治療法で95%以上のCR 割合が得られ,治療成功割合,全生存期間では治療群間で有意差がなかった。限局期NLPHL においてIFRT はEFRT およびCMT と同等の治療効果が得られ,至適治療であることが示唆された2)。またNLPHL と診断された426 例を対象に病理組織学的に再診断を行い,NLPHL とCHL(リンパ球豊富型,lymphocyte-rich:LR)に再分類し,NLPHL とLRの2 群を比較した後方視的研究の報告(European Task Force on Lymphoma Project on Lymphocyte- Predominant Hodgkin’s Disease)では,これら2 つのサブグループの間には,標準的な治療に対する治療反応性または予後に有意差が認められないことが示された3)。死亡原因はHL によるものより治療の有害事象(特に二次発がんや心血管障害などの晩期毒性)によるものが多かった。
 以上の結果から,限局期NLPHL ではIFRT が推奨される治療法であり,IFRT は30 Gy で施行されることが多い。
 また,臨床病期Ⅰ期NLPHL で完全に病変が切除された症例においては注意深い経過観察が可能とされている3)


[参考文献]

1) Chen RC, et al. Early-stage, lymphocyte-predominant Hodgkin’s lymphoma : patient outcomes from a large, single-institution series with long follow-up. J Clin Oncol. 2010 ; 28(1) : 136-41.( 3iiiDiii).
2) Nogová L, et al. Extended fi eld radiotherapy, combined modality treatment or involved fi eld radiotherapy for patients with stage ⅠA lymphocyte-predominant Hodgkin’s lymphoma : a retrospective analysis from the German Hodgkin Study Group( GHSG). Ann Oncol. 2005 ; 16(10) : 1683-7.(3iiiDiii)
3) Diehl V, et al. Clinical presentation, course, and prognostic factors in lymphocyte-predominant Hodgkin’s disease and lymphocyte-rich classical Hodgkin’s disease : report from the European Task Force on Lymphoma Project on Lymphocyte-Predominant Hodgkin’s Disease. J Clin Oncol. 1999 ; 17(3) : 776-83.(3iiiA)


CQ 7進行期CHL の標準療法はABVD 療法か
推奨グレード
カテゴリー1

ABVD 療法は進行期CHL の標準療法である。

[解 説]

 進行期CHL は化学療法が標準である。1960 年代にMOPP 療法(HN2, VCR, PCZ, PSL)が開発され,80%程度の奏効割合と約50%の長期生存が報告された1)。MOPP 療法と非交差耐性の薬剤で構成されたABVD 療法(DXR, BLM, VBL, DTIC)が開発され,Cancer and Leukemia GroupB(CALGB)において,進行期CHL を対象としMOPP 療法,ABVD 療法,MOPP/ABVD 交替療法の3 群間の第Ⅲ相比較試験が実施された。ABVD 療法及びMOPP/ABVD 療法はMOPP 療法に比べ治療成功生存割合(FFS)が優ることが報告された2)。この臨床試験の長期経過観察(観察期間中央値14.1 年)においてもFFS においてABVD 療法の優位性が示された3)。全生存割合(OS)に有意差は認められなかったが,ABVD 療法はMOPP 療法およびMOPP/ABVD 療法に比べ血液毒性・感染症などの有害事象の発症頻度が有意に低く,進行期CHL の標準療法として確立された2)
 その後ABVD 療法と他の治療法の比較試験の結果が報告された。MOPP/ABV hybrid 療法4),Stanford V 療法(DXR, VBL, HN2, ETP, VCR, BLM, PSL)5),MOPPEBVCAD 療法(HN2,CCNU, VDS, MEL, PSL, EPI, VCR, PCZ, VBL, BLM),Multidrug regimen[ChIVPP/PABIOE 交替療法(CLB, VBL, PCZ, PSL, DXR, BLM, VCR, ETP),ChIVPP/EVA hybrid 療法(CLB, VBL,PCZ, PSL, ETP, VCR, DXR)]6),CEC 療法(CPA, CCNU, VDS, MEL, PSL, EPI, VCR, PCZ, VBL,BLM)7),BEACOPP 療法7)8)などの治療法はABVD 療法とのランダム化比較試験において,いずれの治療法もOS の改善は示されなかった。無増悪生存割合(PFS)ではABVD 療法より優れている治療法も報告されているが,治療強度を上げることにより有害事象は増強することが示されている。ダカルバジン(DTIC)の消化器毒性の軽減目的で考案されたABVd 療法(DTIC を2/3 に減量)の良好な治療成績が本邦から報告された9)。単アームの臨床第Ⅱ相試験であり,ABVD 療法との比較はなされていない。また,DTIC の消化器毒性は近年の制吐剤の進歩により軽減されてきている。
 以上より進行期CHL における標準療法はABVD 療法と考えられる。投与回数は4 コースまでに完全奏効(CR)に至った症例は2 コース追加し6 コースで終了,6 コースまででCR に至った症例は2 コース追加し8 コースまで行うことが推奨されている。


[参考文献]

1) DeVita VT, et al. Curability of advanced Hodgkin’s disease with chemotherapy. Long-term follow-up of MOPP-treated patients at the National Cancer Institute. Ann Intern Med. 1980 ; 92(5) : 587-95(. 3iiiDiii)
2) Canellos GP, et al. Chemotherapy of advanced Hodgkin’s disease with MOPP, ABVD, or MOPP alternating with ABVD. N Engl J Med. 1992 ; 327(21) : 1478-84.( 1iiDiii)
3) Canellos GP, Niedzwiecki D. Long-term follow-up of Hodgkin’s disease trial. N Engl J Med. 2002 ; 346(18) : 1417-8.( 1iiDiii)
4) Duggan DB, et al. Randomized comparison of ABVD and MOPP/ABV hybrid for the treatment of advanced Hodgkin’s disease : report of an intergroup trial. J Clin Oncol. 2003 ; 21(4) : 607-14.( 1iiDiii)
5) Gobbi PG, et al. ABVD versus modifi ed stanford V versus MOPPEBVCAD with optional and limited radiotherapy in intermediate- and advanced-stage Hodgkin’s lymphoma : fi nal results of a multicenter randomized trial by the Intergruppo Italiano Linfomi. J Clin Oncol. 2005 ; 23(36) : 9198-207.( 1iiDiii)
6) Johnson PW, et al. Comparison of ABVD and alternating or hybrid multidrug regimens for the treatment of advanced Hodgkin’s lymphoma : results of the United Kingdom Lymphoma Group LY09 Trial (ISRCTN97144519). J Clin Oncol. 2005 ; 23(36) : 9208-18.( 1iiDi)
7) Federico M, et al. ABVD compared with BEACOPP compared with CEC for the initial treatment of patients with advanced Hodgkin’s lymphoma : results from the HD2000 Gruppo Italiano per lo Studio dei Linfomi Trial. J Clin Oncol. 2009 ; 27(5) : 805-11.( 1iiDiii)
8) Viviani S, et al. ABVD versus BEACOPP for Hodgkin’s lymphoma when high-dose salvage is planned. N Engl J Med. 2011 ; 365(3) : 203-12.( 1iiDiii)
9) Ogura M,et al. Phase Ⅱ study of ABVd therapy for newly diagnosed clinical stage Ⅱ-Ⅳ Hodgkin lymphoma: Japan Clinical Oncology Group study (JCOG 9305). Int J Hematol. 2010 ; 92(5) : 713-24.(3iiiDiv)


CQ 8進行期CHL において増量BEACOPP 療法はABVD療法より臨床的に有用性が高いか
推奨グレード
カテゴリー2B

進行期CHL において増量BEACOPP 療法のABVD 療法に対する有用性は証明されていない。

[解 説]

 BEACOPP 療法(BLM, ETP, DXR, CPA, VCR, PCZ, PSL)はGHSG が開発した治療強度を高めたレジメンである。GHSG は標準BEACOPP 療法(8 コース),増量BEACOPP 療法(8 コース),COPP(CPA, VCR, PCZ, PSL)/ABVD 療法(DXR, BLM, VBL, DTIC)(8 コース)の比較試験を報告した(HD9 試験)1)。対象は臨床病期ⅡB 以上で15~65 歳の進行期症例である。この臨床試験はABVD 療法類似のCOPP/ABVD 療法に比べBEACOPP 療法群(標準BEACOPP 療法,増量BEACOPP 療法)が5 年治療成功割合(FFTF)において有意に優っていることを示した。また,5 年全生存割合(OS)においても増量BEACOPP 療法がCOPP/ABVD 療法より優れていた。長期の観察においても同様の結果が得られている2)。しかし,進行期CHL の標準療法であるABVD 療法と当試験で採用されたCOPP/ABVD 療法が同等の有効性を示すかは不明である。急性期の有害事象は増量BEACOPP 療法にて高頻度に発生した。二次性MDS,AML の発症は標準BEACOPP 療法群と増量BEACOPP 療法群はCOPP/ABVD 療法群と比較して有意に頻度が高かった2)。その後,他のグループで行われたBEACOPP 療法の変法(4 コース増量レジメン+2コース標準量レジメン,4 コース増量レジメン+4 コースの標準量レジメン)とABVD 療法の2つの第Ⅲ相比較試験では,BEACOPP 療法(変法)はABVD 療法に対してOS で優位性が示されなかった3)4)
 以上の臨床試験研究から,増量BEACOPP 療法がABVD 療法に臨床的に優っていると結論することはできない。
 高齢者(65 歳以上)を対象とした標準BEACOPP 療法とCOPP/ABVD 療法の比較試験では両群でFFTF,OS に有意差はなく,標準BEACOPP 療法群において血液毒性などの有害事象が高頻度で治療関連死亡(TRM)も多い傾向にあった。高齢者でのBEACOPP 療法の有用性は示されていない5)
 本邦で標準BEACOPP 療法の臨床第Ⅱ相試験が施行された。69 歳までの症例が対象であり,Grade 4 の好中球減少を約60%に認めたものの,90%近い3 年無増悪生存割合(PFS)が報告されている6)


[参考文献]

1) Diehl V, et al. Standard and increased-dose BEACOPP chemotherapy compared with COPP-ABVD for advanced Hodgkin’s disease. N Engl J Med. 2003 ; 348(24) : 2386-95.( 1iiDiii)
2) Engert A, et al. Escalated-dose BEACOPP in the treatment of patients with advanced-stage Hodgkin’s lymphoma : 10 years of follow-up of the GHSG HD9 study. J Clin Oncol. 2009 ; 27(27) : 4548-54.( 1iiDiii)
3) Federico M, et al. ABVD compared with BEACOPP compared with CEC for the initial treatment of patients with advanced Hodgkin’s lymphoma : results from the HD2000 Gruppo Italiano per lo Studio dei Linfomi Trial. J Clin Oncol. 2009 ; 27(5) : 805-11.( 1iiDiii)
4) Viviani S, et al. ABVD versus BEACOPP for Hodgkin’s lymphoma when high-dose salvage is planned. N Engl J Med. 2011 ; 365(3) : 203-12.( 1iiDiii)
5) Ballova V, et al. A prospectively randomized trial carried out by the German Hodgkin Study Group (GHSG) for elderly patients with advanced Hodgkin’s disease comparing BEACOPP baseline and COPPABVD(study HD9elderly). Ann Oncol. 2005 ; 16(1) : 124-31.( 3iiiDiii)
6) Niitsu N, et al. Multicentre phase II study of the baseline BEACOPP regimen for patients with advancedstage Hodgkin’s lymphoma. Leuk Lymphoma. 2006 ; 47(9) : 1908-14.( 3iiiDiii)


CQ 9進行期CHL において国際予後スコアに従った治療法選択は必要か
推奨グレード
カテゴリー3

国際予後スコアによる治療層別化の有用性を示唆する根拠はない

[解 説]

 国際予後スコア(International Prognostic Score:IPS)により,進行期CHL を低リスク,高リスク2 グループに分類できることが報告されている。スコア0~2 と3~7 で分けた場合,無増悪期間の差が明瞭に認められ,両群にほぼ同数の症例が分布することが報告されている1)。IPS のリスク分類に基づいて治療効果のサブグループ解析を行っている第Ⅲ相比較試験の結果がいくつか報告されている。
 GHSG のHD9 の報告ではIPS スコア0~1,2~3,4~7 の3 グループに分類し,増量BEACOPP療法(BLM, ETP, DXR, CPA, VCR, PCZ, PSL)群,標準BEACOPP 療法群,COPP/ABVD 療法(CPA, VCR, PCZ, PSL, DXR, BLM, VBL, DTIC)群の5 年治療成功割合(FFTF)と全生存割合(OS)を評価している2)。この3 つの予後グループのすべてでFFTF,OS ともCOPP/ABVD 療法と比較し増量BEACOPP が優っていることが示され,増量BEACOPP 療法はIPS のリスクグループによらず有効であるとされた。ABVD 療法(DXR, BLM, VBL, DTIC)とBEACOPP 療法(変法),CEC 療法(CPA, CCNU, VDS, MEL, PSL, EPI, VCR, PCZ, VBL, BLM)を比較したHD2000試験3)およびMultidrug regimen とABVD 療法との比較試験4)では,IPS が高い群で高強度の治療がABVD 療法に比べ治療成功生存割合(FFS)が良好な傾向が認められたが,OS の改善は示されなかった。また,これらの研究はすべてサブ解析でありエビデンスレベルは高くない。このようにIPS の特定のリスクグループで特定の治療法が有用であるという結果は示されていない。IPSでの治療層別化の有用性については今後なお検証が必要であるが,現時点では推奨されない。


[参考文献]

1) Hasenclever D, et al. A prognostic score for advanced Hodgkin’s disease. International Prognostic Factors Project on Advanced Hodgkin’s Disease. N Engl J Med. 1998 ; 339(21) : 1506-14.( 3iiiDiii)
2) Diehl V, et al. Standard and increased-dose BEACOPP chemotherapy compared with COPP-ABVD for advanced Hodgkin’s disease. N Engl J Med. 2003 ; 348(24) : 2386-95.( 1iiDiii/2Diii
3) Federico M, et al. ABVD compared with BEACOPP compared with CEC for the initial treatment of patients with advanced Hodgkin’s lymphoma : results from the HD2000 Gruppo Italiano per lo Studio dei Linfomi Trial. J Clin Oncol. 2009 ; 27(5) : 805-11.( 1iiDiii/2Diii
4) Johnson PW, et al. Comparison of ABVD and alternating or hybrid multidrug regimens for the treatment of advanced Hodgkin’s lymphoma : results of the United Kingdom Lymphoma Group LY09 Trial (ISRCTN97144519).J Clin Oncol. 2005 ; 23(36) : 9208-18.( 1iiDi/2Di


CQ 10進行期CHL で化学療法によりCR(CT 効果判定)に至った症例において地固め療法としてのIFRT は必要か
推奨グレード
カテゴリー4

進行期CHL で化学療法によりCR(CT 効果判定)が得られた症例に対する IFRT は推奨されない。

[解 説]

 これまでのCHL に対する多くの臨床試験での治療効果判定はCT で行われている。化学療法後に効果判定をCT で行い完全奏効(CR),部分奏効(PR)が得られた症例における地固め療法としての照射の意義についての検討結果が報告されている。化学療法でCR を得た症例に対するinvolved fi eld radiotherapy(IFRT)追加の有用性に関してはEORTC から第Ⅲ相比較試験が報告されている。MOPP(HN2, VCR, PCZ, PSL)/ABV(DXR, BLM, VBL) hybrid 療法で治療された進行期CHL 739 症例でCR となった症例が地固め目的のIFRT(24 Gy)施行群と観察群に割り付けられた。両群において5 年無イベント生存割合(EFS)に有意差は認められなかった1)。この臨床試験の長期観察においても同様の結果が得られている2)。Southwest Oncology Group (SWOG)からも化学療法後CR 例をIFRT 追加群と観察群に割り付けた臨床試験結果が報告されている。この試験においてもIFRT の追加による無再発生存割合(RFS),全生存割合(OS)の改善は示されなかった3)。また,治療終了後の効果判定目的のPET のnegative predictive value(NPV)は良好であり4)5),比較試験の結果はないが,PET 判定によるCR 例にIFRT を追加することは推奨されない。以上より,進行期CHL においてCR(CT およびPET での診断)を示した症例に対する地固め療法目的のIFRT は推奨されない。
 PR 例に対するIFRT 追加の有用性を検討した比較試験は報告されていない。前述のEORTC の臨床試験においてPR 例に30 Gy のIFRT が施行されていた1)2)。そのOS とEFS はCR 例と有意差がなかった。進行期CHL において初回化学療法後(IFRT なし)のPR 例はCR 例と比べ再発割合が高いと報告されており,このEORTC の報告はPR 例にIFRT を施行することにより,CR例と同等のEFS をもたらしていることを示した。このことから,初回化学療法後のPR 例に対するIFRT 追加の有用性が示唆される。


[参考文献]

1) Aleman BM, et al. Involved-fi eld radiotherapy for advanced Hodgkin’s lymphoma. N Engl J Med. 2003 ; 348(24) : 2396-406.(1iiDii)
2) Aleman BM, et al. Involved-fi eld radiotherapy for patients in partial remission after chemotherapy for advanced Hodgkin’s lymphoma. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2007 ; 67(1) : 19-30.( 2Di)
3) Fabian CJ, et al. Low-dose involved fi eld radiation after chemotherapy in advanced Hodgkin disease. A Southwest Oncology Group randomized study. Ann Intern Med. 1994 ; 120(11) : 903-12.( 1iiDiii)
4) Kobe C, et al. Positron emission tomography has a high negative predictive value for progression or early relapse for patients with residual disease after fi rst line chemotherapy in advanced-stage Hodgkin lymphoma. Blood. 2008 ; 112(10) : 3989-94.( 2Diii)
5) Terasawa T, et al. 18F-FDG PET for posttherapy assessment of Hodgkin’s disease and aggressive Non- Hodgkin’s lymphoma : a systematic review. J Nucl Med. 2008 ; 49(1) : 13-21.


CQ 11若年者再発CHL に対して自家造血幹細胞移植併用大量化学療法は有効か
推奨グレード
カテゴリー2A

若年者初回再発CHL では,救援化学療法に対して感受性が認められた場合,自家造血幹細胞移植併用大量化学療法は推奨される治療法である。

[解 説]

 再発時は救援化学療法を施行する。救援化学療法レジメンは非ホジキンリンパ腫と基本的に変わりはない。Dexa-BEAM 療法[DEX, BCNU(国内未承認),ETP, AraC, MEL]1),Mini-BEAM療法[BCNU(国内未承認),ETP, AraC, MEL]2),ICN 療法(IFM, CBDCA, ETP)3),ESHAP 療法(ETP, mPSL, AraC, CDDP)4)等が比較的高頻度に選択される救援療法レジメンであり,いずれも奏効割合は70%以上である。
 再発CHL に対する通常量の救援化学療法と自家造血幹細胞移植併用大量化学療法(high-dose chemotherapy with autologous hematopoietic stem cell transplantation:HDC/AHSCT)の比較に関する臨床試験結果が報告されている。GHSG とEuropean Group for Blood and Marrow Transplantation (EBMT)の共同研究として,救援療法(Dexa-BEAM 療法)を4 コース施行する群とDexa-BEAM 療法2 コース後にHDC/AHSCT(大量化学療法:BEAM)を施行する群との比較試験が行われた。化学療法感受性があると判断された症例を対象にした場合,治療成功割合がHDC/AHSCT 群で有意に優れていた。全生存割合(OS)における有意差は認められなかった。ただし,複数再発以降の症例ではHDC/AHSCT は優位性が示されていない。また,British Lymphoma National Investigation(BLNI)での比較試験は40 例のみの登録で早期終了となっているが,無イベント生存割合(EFS)と無増悪生存割合(PFS)においてHDC/AHSCT が良好な傾向を示した5)。Stanford 大学からは後方視的解析でHDC/AHSCT の有用性(初回再発または初回非奏効例)を示した研究も報告されている6)。以上より65 歳以下のCHL の初回再発で救援化学療法に感受性がある場合,HDC/AHSCT は推奨される治療法である。ただし,初発時限局期で短縮化学療法を用いたCMT により治療された症例の再発においては,HDC/AHSCT の有用性のエビデンスはないため,適応は慎重に判断されなければならない。


[参考文献]

1) Schmitz N, et al. Aggressive conventional chemotherapy compared with high-dose chemotherapy with autologous haemopoietic stem-cell transplantation for relapsed chemosensitive Hodgkin’s disease : a randomised trial. Lancet. 2002 ; 359(9323) : 2065-71.(1iiDiii)
2) Martín A, et al. Long-term follow-up in patients treated with Mini-BEAM as salvage therapy for relapsed or refractory Hodgkin’s disease. Br J Haematol. 2001 ; 113(1) : 161-71.(3iiiDiii)
3) Moskowitz CH, et al. A 2-step comprehensive high-dose chemoradiotherapy second-line program for relapsed and refractory Hodgkin disease : analysis by intent to treat and development of a prognostic model. Blood. 2001 ; 97(3) : 616-23.( 3iiiDi)
4) Aparicio J, et al. ESHAP is an active regimen for relapsing Hodgkin’s disease. Ann Oncol. 1999 ; 10(5) : 593-5.(3iiiDiv)
5) Linch DC, et al. Dose intensifi cation with autologous bone-marrow transplantation in relapsed and resistant Hodgkin’s disease : results of a BNLI randomised trial. Lancet. 1993 ; 341(8852) : 1051-4.(3iiiDi)
6) Yuen AR, et al. Comparison between conventional salvage therapy and high-dose therapy with autografting for recurrent or refractory Hodgkin’s disease. Blood. 1997 ; 89(3) : 814-22.(3iiiDi)


CQ 12進行期CHL において初回治療中間でのPET 検査(interim PET)は予後予測に有用か
推奨グレード
カテゴリー2A

Interim PET は進行期CHL の予後予測に有用であるが,日常診療においてはその結果を治療介入の根拠とすることは推奨されない。

[解 説]

 CHL においては治療中間でのPET 所見(interim PET)の改善が予後予測に有効であると報告されている。これら研究の多くは初発進行期CHL で6~8 コースの化学療法を施行した症例を対象としてinterim PET を前方視的に評価している。ほとんどの試験でのinterim PET 評価は2コース後に施行されている。最も多くの症例が登録され解析された研究はGallamini 等により報告されており(260 例:病期ⅡB-Ⅳおよび予後不良因子を有するⅡA),interim PET の陰性症例と陽性症例の2 年の無増悪生存割合(PFS)はそれぞれ95%と12.8%と有意差がみられた1)。CHL におけるinterim PET の予後予測(進行および再発を評価)におけるメタアナリシスでは,感度および特異度はそれぞれ81%と97%であった2)。しかし,限局期症例でCMT にて治療された場合のpositive predictive value(PPV)は15%と不良であるとの報告もある3)。進行期と比べ限局期ではinterim PET のPPV は不良である傾向があるため注意を要する。Interim PET は一般的にPET効果判定に用いられるInternational Harmonization Project in Lymphoma の規準を使用する4)。近年,interim PET に特化した判定方法が報告されているが,未だ研究段階である5)。また,interim PET の結果を治療介入に用いる手法は臨床試験中であり,一般臨床では推奨されない6)


[参考文献]

1) Gallamini A, et al. Early interim 2-fl uoro-2-deoxy-D-glucose positron emission tomography is prognostically superior to international prognostic score in advanced-stage Hodgkin’s lymphoma : a report from a joint Italian-Danish study. J Clin Oncol. 2007 ; 25(24) : 3746-52.( 3iiiDiii)
2) Terasawa T, et al. Fluorine-18-fl uorodeoxyglucose positron emission tomography for interim response assessment of advanced-stage Hodgkin’s lymphoma and diff use large B-cell lymphoma : a systematic review. J Clin Oncol. 2009 ; 27(11) : 1906-14.
3) Sher DJ, et al. Prognostic signifi cance of mid- and post-ABVD PET imaging in Hodgkin’s lymphoma : the importance of involved-fi eld radiotherapy. Ann Oncol. 2009 ; 20(11) : 1848-53.( 3iiiDiii)
4) Juweid ME, et al. Use of positron emission tomography for response assessment of lymphoma : consensus of the Imaging Subcommittee of International Harmonization Project in Lymphoma. J Clin Oncol. 2007 ;25(5) : 571-8.
5) Meignan M, et al. Report on the Second International Workshop on interim positron emission tomography in lymphoma held in Menton, France, 8-9 April 2010. Leuk Lymphoma. 2010 ; 51(12) : 2171-80.
6) Gallamini A, et al. Early chemotherapy intensifi cation with BEACOPP in advanced-stage Hodgkin lymphoma patients with a interim-PET positive after two ABVD courses. Br J Haematol. 2011 ; 152(5) :551-60.( 3iiiDiii)


追加CQ再発・難治性CD30陽性CHLに対してブレンツキシマブベドチンは有効か
推奨グレード
カテゴリー2B

ブレンツキシマブベドチンは再発・難治性CD30陽性CHLに対して高い奏効率が報告されており、治療法の一つとして考慮される。

[解 説]

ブレンツキシマブベドチンは、CD30を標的とする抗体薬物複合体であり、第I相試験にてCD30陽性の再発・難治性CHL患者において有効性が報告された1)。自家造血幹細胞移植併用大量化学療法(high-dose chemotherapy with autologous hematopoietic stem cell transplantation: HDC/AHSCT)の治療歴を有する再発または難治性CD30陽性CHL患者102例を対象とした第Ⅱ相多施設共同試験では、全奏効割合は75%であり、34%の症例で完全奏効(CR)が得られた。全患者における無増悪生存期間の中央値は5.6ヵ月であり、CR が得られた症例の奏効期間の中央値は20.5ヵ月であった2)。本邦では第Ⅰ/Ⅱ相試験が施行され、再発または難治性CD30陽性CHL患者14例における全奏効割合は67%(CR;56%)であった。3)

再発・難治性のCD30陽性CHLにおいては、HDC/AHSCTが不成功であった患者およびHDC/AHSCTの適応にかかわらず2レジメン以上の化学療法による前治療が不成功であった患者の治療選択肢として、ブレンツキシマブベドチンが考慮される。


[参考文献]

1) Younes A, et al. Brentuximab Vedotin (SGN 35) for Relapsed CD30 Positive Lymphomas. N Engl J Med 2010(363)1812 21. (3ⅲDⅳ)
2) Younes A, et al. Results of a Pivotal Phase II Study of Brentuximab Vedotin for Patients With Relapsed or Refractory Hodgkin's Lymphoma. J Clin Oncol 2012(30)2183 9. (3ⅲDⅳ)
3) Ogura M, et al.Phase I/II study of brentuximab vedotin in Japanese patients with relapsed or refractory CD30-positive Hodgkin's lymphoma or systemic anaplastic large-cell lymphoma.Cancer Sci. 2014 (105):840-6. (3ⅲDiv)