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先輩たちからのメッセージ(小倉 瑞生 先生)

更新日時:2022年7月14日

小倉 瑞生
(日本赤十字社医療センター血液内科)

 初期研修医ならびに学生の皆さん、初めまして。日本赤十字社医療センターの小倉と申します。私のような浅学不才の輩が血液内科の何たるかを語るのはおこがましい話と思いますが、何かの参考になればと思い筆を執らせて頂きました。少々お付き合い頂ければ幸いです。

 血液内科は悪性腫瘍を扱う科の中でも患者さんの年齢層が若く、20~40代の就職・結婚・妊娠出産などの大きなライフイベントを迎える時期や働き盛りの時期に発症する患者さんが少なくありません。学生実習と初期研修を通してそのような患者さんを拝見し、病気のせいで人生を理不尽に制限される人を減らしたい、またその人達が元の人生に戻っていくための力になりたいと漠然とした思いを抱いたことが、私が血液内科に進んだきっかけです。実際に血液内科医として働きだして一番に感じたのは、血液内科の治療は長距離走だということ。ここ一番の大勝負だけ乗り切ればよいというものではなく、複数回繰り返される抗がん剤治療や幹細胞移植後の慢性GVHDなど人生をかけて通院・治療を継続していくこともしばしばあります。そのような患者さんに寄り添い、長い闘病生活の伴走者として関わっていくことに医師としての使命感とやりがいを感じたことを覚えています。あの頃から早○年、自分がどれだけ患者さんの力になれているのかはわかりませんが、駆け出しの頃に感じたことは今も忘れないよう心掛けています。

 さて、このページを開いた先生方には色々な立場の人がおられると思います。臨床に興味がある人、研究に興味がある人、熱心な志望者からちょっと興味があるかな?という人まで、立場も関心も異なる皆さん全員の興味を引く内容を書き記すのは非常に難しいのですが、一介の血液内科医として血液学の世界へのお誘いをさせて頂ければと思います。何か琴線に触れるものがあったら、ご縁と思って是非血液内科にいらしてください。

最初に、血液学に興味があり、医学の発展に力を尽くしたいと考えている方へ。
是非とも臨床だけに留まらず基礎研究の世界にも触れてみてください。血液内科の特色として、研究と臨床の垣根が低く研究成果がスムーズに臨床応用される点が挙げられます。そのため、血液内科は日進月歩のがん治療の世界の最先端にいるといっても過言ではありません。がん治療の柱と言われる手術、放射線、化学療法に続く免疫細胞療法であるキメラ抗原受容体T細胞(Car-T)療法や二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体などの新薬も血液内科では既に臨床の現場で使用されており、一般的な治療になりつつあります。私自身はそれらを駆使して治療を行う立場におりますが(それもとても楽しいですが)、未来ある先生方には是非ともその若い力をがん研究の最先端で生かして頂き、新しい治療を生み出す側の立場になってほしいと思います。

次に、血液内科も選択肢の一つとして考えているけれど、まだ迷っているという方へ。
できれば初期研修で実際の血液内科の世界に触れてみてください。血液内科では血液・骨髄検査を中心とした様々な検査結果を基に自ら診断を行います。そして様々なエビデンスに基づいて、治療効果だけでなく患者さんのライフスタイルやQOL、時には人生観なども考慮しながら方針を決定し、実際の治療を行っていきます。このように診断から治療まで一人の患者さんに関わっていけることは大きなやりがいに繋がると思います。また、血液内科で行う化学療法では感染症を始めとして様々な副作用が出現するため、的確な全身管理が求められます。先輩方の治療を間近に見ることで、患者さんの全身状態や臓器機能を把握してマネジメントを行うことを学べると思います。そこで得た知識や技術は今後の医者人生の礎になるでしょう。勿論それらは他科に行っても役に立つと思いますが、できれば明日の血液内科医としてその力を臨床の最前線で発揮してください。

最後に、血液内科に興味はあるけれど、やっていけるか不安という人へ。
研修や国試勉強に疲れて不安な気持ちになってしまうこともあると思います。まずは目の前のことに集中してください。その不安な気持ちはいったん心の片隅においやって、でも忘れてしまわないようにしてください。病気によって弱い立場に置かれてしまった人の気持ちを理解するには、やはり弱いところを持ち合わせた医者の方が向いていると私は思います。不安な思いを抱えながら通院や治療を続けている患者さんの気持ちを理解し、寄り添うことができるお医者さんを血液内科は求めています。

それでは、いつかどこかの学会や病院でお会いできることを祈って、気が早いとは思いますがこの言葉で締めくくらせて頂きます。

「血液内科の世界へようこそ!」

 

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