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先輩たちからのメッセージ(貫井 淳 先生)

更新日時:2022年7月5日

私が血液内科に進んだ理由

貫井 淳
(横浜市立大学附属病院 血液内科)

 私自身が過去に進路に悩んでいた時期から現在に至るまでの率直な感想をお伝えすることで、血液内科へ進むことを選択肢のひとつとして考えているみなさまにとって少しでもご参考になれば幸いです。
 私は大学を卒業して医師国家試験を終えた時点では、内科全体に興味を持ってはいたものの、特定の専門科に対する強い思い入れはありませんでした。なんとなく「じっくり考える科」(ざっくりとしていてすみません)に従事したいとは考えてはいたものの、そのときはむしろ神経内科や総合内科に興味を持っていたと記憶しております。そのため、初期研修が始まった時点では血液内科の知識については医師国家試験で勉強した程度の、最低限のものしか備えておりませんでした。
 しかし、たまたま研修先の済生会横浜市南部病院で2ヶ月ほど血液内科をローテーションした際に、血液の臨床がいかに面白いかということをひしひしと肌で感じることになりました。具体的には、ジェットコースターのような臨床のダイナミックさ、抗がん剤・免疫治療・移植治療・緩和治療といった治療選択肢の幅広さ、内科的知識を総動員して病態を推測し全身管理をする緻密さ、医療者と患者が長期にわたって二人三脚で歩んでいく息の長い関係性、などに魅力を覚え、血液内科医として働きたいという思いが強くなりました。そこで、初期研修の頃からお世話になっていた横浜市立大学の血液・リウマチ・感染症内科に入局することを決めました。入局後は神奈川県立がんセンターの血液・腫瘍内科と横浜市立大学附属病院の2施設で勤務し、血液治療のhigh volume centerで最先端の治療をたくさん経験することができました。実際にスタッフとして働きはじめてから3年以上が経ちましたが、初期研修医の頃に抱いた血液内科のイメージはほとんど変わることなく、充実感を覚えながら毎日働いております。
 現代において、がん治療はいわゆる古典的な殺細胞性の抗がん剤の時代から、分子標的薬・免疫療法といった新規治療の時代へとシフトしつつあります。血液疾患の治療領域においても、私が専門として従事するようになったわずか3-4年間の間にも急激に進化しており、その発展の早さも血液内科の大きな魅力のひとつと思われます。特に、多発性骨髄腫は新薬・新レジメンが毎年のように登場しており、血液内科になりたてのときには何から勉強して良いか途方に暮れてしまうほどでした(新型コロナウイルスの流行を契機にオンラインでの講演会・学会が充実するようになり、勉強面においても大変良い時代になりました)。また、急性骨髄性白血病の抗がん剤治療は長らくアントラサイクリン系+シタラビンの古典的抗がん剤2強時代が続きましたが、ここにきて遺伝子変異をターゲットとしたFLT3阻害薬・BCL2阻害薬といった分子標的薬の選択肢が登場し、今後も続々と増えていく予定です。また、白血病治療の切り札である造血幹細胞移植治療においても臍帯血移植、ハプロ移植といったドナー選択が増え、周術期の全身管理も発展し、治療成績は着実に向上しております。さらには、急性リンパ性白血病、悪性リンパ腫に対してはCART療法という、造血幹細胞移植と並ぶようなエース級の画期的な免疫細胞療法が登場し、これまでの治療の常識が覆されつつあります。私自身、これらの治療を実際に行いながら、それぞれについての理解が深まるに連れて、血液臨床のダイナミズムを再度実感しております。
 今後、血液がんは原因遺伝子ごとにリスクの層別化がなされ、それぞれに対する治療法がさらに確立し、治療成績もより一層向上することが予想されます。いつか、白血病・悪性リンパ腫は克服できる時代が来るかもしれない、、、そのような期待感を持ちながら、がん治療の最先端で働くことができる血液内科のやりがいは非常に大きいと思われます。
 この文章を読んでいるみなさまにとって、少しでも参考になる箇所があれば幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。

第44回日本造血・免疫細胞細胞療法学会で発表時の写真です
第44回日本造血・免疫細胞細胞療法学会で発表時の写真です

横浜市立大学附属病院 血液・リウマチ・感染症内科の写真(2022/4~)
横浜市立大学附属病院 血液・リウマチ・感染症内科の写真(2022/4~)

神奈川がんセンター 血液内科・腫瘍内科 所属時の写真(~2022/3)
神奈川がんセンター 血液内科・腫瘍内科 所属時の写真(~2022/3)

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