日本血液学会

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先輩たちからのメッセージ(馬場 勇太 先生)

更新日時:2022年6月13日

馬場 勇太
(昭和大学藤が丘病院血液内科)

 研修医、学生のみなさま、ご覧いただきありがとうございます。

 血液内科というと一般になじみの薄い領域だと思います。テレビドラマでは、消化器外科医、心臓外科医、救命医、産婦人科医、腫瘍内科医、精神科医、病理医、さらには研修医が主役となることがあっても、血液内科医はまだ主役にはなっていません。学生にとっては難しい試験問題に悩まされ、研修医にとっては主体的に診療にかかわることが難しく、いずれにしても難解な世界と思われているかもしれません。血液内科は高度な専門性があり日々進歩する最新の知見をもとにした診療が求められるとともに、患者さんの心の揺れ動きを細やかに察知し対応する診療も求められます。難解な血液内科学を解き進めることに面白さを見いだしていただければもちろん、ひととひととの触れ合いが好きなかたにも血液内科学の道をおすすめしたいと考えます。一人ひとりの人生に大きくかかわることのできる人間味のあふれる世界です。自分なりの血液内科のやりがいをお伝えします。

 大きなやりがいは目の前の患者さんとの触れ合いのなかで生まれます。診断、治療、その後の経過観察を一貫して行うため、患者さんにとって一生のお付き合いになることが多くあります。例えば、リンパ節が腫れて受診された患者さんは、悪性リンパ腫と診断されると、抗がん剤治療を行い、治療が奏効したあとも外来での経過観察が続きます。たくさんお話をして月日を重ねるなかで、不安でいっぱいの患者さんが笑顔になったときはとても嬉しく思います。「先生の顔をみたら病気が治ったようだと言ってもらえたら良い。」という、学生時代にお世話になったクリニックの先生の言葉が心に残っています。まだまだ足元にも及ばず、むしろ患者さんから元気をもらっていますが、元気を与えあう関係になれたらいいなと思っています。

 一方で、治療は進歩しても十分な効果を発揮できず、亡くなる患者さんもいらっしゃいます。血液内科医には、どう救うかだけではなく、どう最期を迎えるかというマネジメントが求められます。最期をおうちで迎えたいと希望されるかたもいらっしゃれば、最期まで治療をしていきたいと希望されるかたもいらっしゃいます。絶対的な正解の選択肢がないなかで、患者さんとそのご家族と、一緒に考え、一緒に悩み、たどりついた選択は、きっと一人ひとりにとってより良い選択なのではないかと思います。死というネガティブなものを、そのひとにとっては悔いを少なくできるような、残されたひとたちにとってはこれから前を向けるような、少しでもポジティブな要素を付け足せればと考えています。重い責任やつらい感情を伴いますが、一人ひとりの人生に大きくかかわるというのは誰にでもできることではないやりがいです。

 さらに臨床研究や基礎研究を通じて目の前にはいない患者さんの力になれることもやりがいのひとつです。血液内科は基礎研究が臨床現場と関連が強い領域です。現状維持は衰退であるとの言葉に導かれ、この春から臨床の現場を離れて腫瘍免疫の基礎研究の世界に足を踏み入れました。研修医や学生のみなさんが感じているような、できなかったことができるようになる喜び、知らなかったことを知る喜びを改めて実感しています。

 研修医、学生のみなさんは、いま医師としての可能性が無限に広がっています。幅広い視野をもって大きく助走して、専門分野へ高く跳び立ってほしいと思います。そのなかで血液内科を選択していただき、一緒に現場でお仕事ができるかたが一人でも多くいてくれればと願っています。

昭和大学藤が丘病院血液内科診療スタッフ
昭和大学藤が丘病院血液内科診療スタッフ

昭和大学臨床薬理研究所臨床免疫腫瘍学部門ラボメンバー
昭和大学臨床薬理研究所臨床免疫腫瘍学部門ラボメンバー

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