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夢を忘れずに、一つ一つの出会いを大切に

更新日時:2022年6月13日

夢を忘れずに、一つ一つの出会いを大切に

江口真理子
愛媛大学大学院医学系研究科小児科学

 私は研修医時代に広島大学の小児科病棟で様々な血液腫瘍の患者さんを担当し、血液腫瘍の診療・研究に興味を持ちました。その後多くの恩師に出会い、生後間もない赤ちゃんの白血病から成人の血液疾患、原爆被爆者の血液腫瘍など様々な血液疾患の患者さんの診療および研究に携わる機会をいただきました。ご指導いただきました先生方、同じ目標に向かって一緒に研鑽した仲間に心より感謝申し上げます。
 近年小児血液腫瘍の予後は大きく改善しています。その背景には化学療法や骨髄移植、放射線療法などの治療法の改良とともに、染色体・遺伝子異常によるリスクの層別化と最適化された治療法の開発があげられます。1990年代には染色体異常を手掛かりとして融合遺伝子などの遺伝子異常を同定し、造血器腫瘍の細胞遺伝学的知見が積み重ねられてきましたが、現在では次世代シークエンサーを用いた網羅的ゲノム解析が実用化され、さらなる遺伝学的知見の蓄積とともにがんゲノム医療という形で診療へ還元されています。
 私が血液腫瘍の研究を始めた頃は現在のように多くの遺伝情報を短時間に解析できませんでしたが、染色体・FISH解析、ゲノム解析などの細胞遺伝学的解析技術を組み合わせ、診断や治療法の選択に役立つ手法の開発や新たな知見を得る試みをしてきました。また細胞に生じた遺伝子異常を捉えるだけではなく、細胞生物学的にその異常と腫瘍化との関連を示すことを心がけてきました。国内では国立がんセンター研究所、愛知県がんセンター研究所、東京大学医科学研究所、国立小児病院(現国立成育医療研究センター)、獨協医科大学など多くの大学・研究機関で勉強させていただき、また海外では英国のがん研究所に留学する機会もいただき、多くの先生方のご指導のもと様々な技術や考え方を身につけることができました。
 英国ではロンドン中心部にあるInstitute of Cancer Researchで5年間白血病の研究に携わりました。研究所には素晴らしい研究を行うチームリーダーが多く在籍しており、また研究室には世界各国から若い研究者が集まっていました。自分の専門外の研究についてもワクワクする話を聞くことができました。世界各国の友人ができ、様々な国の文化や考え方について知ることができた英国留学は、技術を学ぶ他にも多くの実りある経験ができた貴重な機会となりました。
 結婚、出産などのライフイベントで自分の夢や可能性を広げる機会をあきらめる女性医師も多いと思いますが、自分にとって素晴らしい経験は家族にとってもかけがえのない経験となります。全く知らなかった土地に飛び出してみる、違う国で勉強してみることは自身の成長につながると思います。
 医師を目指したとき、医師免許を手にしたとき、きっと大きな夢を持っていたと思います。一つ一つの出会いに感謝しながら、夢をあきらめず、その夢に向かって一歩踏み出し、いろいろなことに挑戦してみてください。微力ながら応援しています。

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