日本血液学会

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第84回日本血液学会学術集会

‘何とかなる’を信じて

更新日時:2022年6月9日NEW

‘何とかなる’を信じて

新井 文子
聖マリアンナ医科大学 内科学(血液・腫瘍内科学)主任教授

 私が医師になった頃(もう30年以上前ですが・・・)、血液内科学は大きな転換期を迎えていました。核酸解析技術、特にシーケンスやPCRが急速に普及し、今ではよく知られている疾患特異的な遺伝子変異が次々と見いだされ、その成果は分子標的療法として結実していきました。骨髄移植がスタートし、実績を上げていったのもこの頃です。新しい治療で多くの患者が治る!大きな期待を持ち、私は血液内科医となることを選択しました。
 意気揚々とその道を歩み始めたのですが、そこで目の当たりにした現実は厳しいものでした。新規治療の恩恵を受けるのは一部の患者さんにすぎず、それどころか、未だ有効な治療薬の無い疾患が、想像以上に多かったのです。病気と闘う患者さんを前に、病因の解明と、さらなる治療薬の開発の必要性を改めて感じました。そんな私に、上司の東京医科歯科大学第一内科宮坂信之教授(当時)は、分子生物学的手法を用いた研究を行ってはどうかと勧めてくださいました。ちょうど出産直後で、時間的制約のあった私に対するご配慮だったと思います。たしかに、基礎研究なら、患者さんにご迷惑をかけることなく、医学に貢献できるかもしれない。そう思い、大学院に入りました。そして私の指導医となったのは、東京医科歯科大学血液内科前教授の三浦修先生(当時は講師)。三浦先生から、St Jude のIhle先生仕込みの最先端の研究手法を徹底的にたたき込まれました。研究は常に他との競争です。マイペースで勧められるとはいえ、子育てをしながらの研究は、とにかく時間がない!自身の能力の限界を感じ、辛いこともありました。しかし、家族をはじめ、多くの方に助けていただきました。希望をもち続ければ「何とかなる」。そう信じ、毎日が過ごせた、今から思えば至福の時でした。
 私の目指すもの、それはPhysician scientistです。結果的に一定の期間、基礎研究に専念できたことで、臨床現場の問題解決のための一つの武器を得たと確信しています。度胸も座りました。今は、この経験を糧に「臨床現場の問題に取り組み、答えをだし、患者さんに、社会に還元する」ために、診療、研究を行っています。
 女性医師、そして血液内科医の皆さん、Physician scientistを目指しませんか?そして、患者さんのため、一緒に頑張ってみませんか?

聖マリアンナ医科大学血液内科病棟スタッフとともに
写真:聖マリアンナ医科大学血液内科病棟スタッフとともに
2023年1月には新病院に移転します。無菌室にはピアノをおこうかな、と思っています。

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