日本血液学会

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第84回日本血液学会学術集会

先輩たちからのメッセージ(木原 慶彦 先生)

更新日時:2022年1月25日

「血液内科医を志す初期研修医、学生の皆様へ」

木原 慶彦
(順天堂大学 医学部 骨髄増殖性腫瘍治療薬開発講座)

 この度、初期研修医ならびに学生の皆様に向けて血液学の魅力をお伝えする絶好の機会をいただきました。本稿をご覧になった皆様に、血液学の面白さについて少しでも知っていただければ幸いです。

 本題に入る前に、私の研究遍歴について触れたいと思います。私は、日本大学工学部物質化学工学科で研究者としてのスタートを切りました。当初は有機ELの発光材料の創生をテーマに、高分子の研究を行っていましたが、博士課程在籍時に、合成していた高分子骨格が生体親和性を有していたことから、薬物送達システム(DDS)に利用できるのではないかと考えました。そこでがん細胞に多く発現する受容体によって細胞内に取り込まれる分子に注目し、それを導入したDDSを構築しました。この研究をきっかけに、治療薬の開発に魅了された私は、さらに医学・生物学を詳しく学びたいと考え、ご縁があって順天堂大学医学部血液内科の博士研究員となりました。これが私と血液学との出会いでした。

 血液学の世界に飛び込んでみてわかったことですが、血液学は基礎研究と臨床応用が非常に近いことが大きな魅力だということです。これは末梢血検体の取得が比較的容易なため、検体を用いた研究が行いやすいこと、また治療標的が血球細胞であるため、治療薬と標的細胞の近接が容易であることが、基礎と臨床を繋げやすい要因だと思っています。一例として私の研究について紹介させていただきます。私は血液疾患の一つで、特定の血球が異常に増加する骨髄増殖性腫瘍の発症メカニズムに基づいた治療薬の開発を目指し、研究を行っています。研究を進めていく中で、腫瘍化を引き起こす変異型蛋白質の一部が切断されていることを新たに見出しました。つまり、標的となる細胞には変異型蛋白質の完全長型と切断型の両方が存在していたのです。変異型蛋白質を標的とした抗体薬を開発する上で、抗原となる部位の一部が消失していることは大きな発見でした。そこで私は完全長型と切断型の両方を認識できる抗体を作製し、さらにこの抗体の抗原認識部位に抗CD3抗体の抗原認識を連結した二重特異性抗体を作製しました。この抗体はT細胞と腫瘍細胞を架橋して近接させることで、腫瘍細胞を効率的に殺傷することができることから、現在、骨髄増殖性腫瘍の治療薬とするべく製薬会社と共同で開発を進めています。このように基礎研究から始めてわずか数年で実臨床へ向けた開発が行われるという展開の早さは、まさに血液学領域ならではのことだと感じています。

 血液学領域の知見や技術は日々絶え間なく進歩しています。もし自らの研究の成果が、画期的な治療薬の開発に繋がれば、これまで病気に苦しんできた多くの方を幸せにできるでしょう。そのため、最先端の研究成果をいち早く臨床に届け、より良い医療の実現を目指したい方にとっては非常に魅力的な分野だと思います。面白そうだと感じた学生や研修医の皆様は、ぜひ血液学教室を覗いてみてください。必ず血液学の魅力を感じ取っていただけると思います。

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