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先輩たちからのメッセージ(師川 紘一 先生)

更新日時:2022年1月11日

血液学を専攻して

師川 紘一
(信州大学小児医学教室)

 私が血液学に興味をもったきっかけは、初期研修医時代にあります。日々熱い気持ちで診療しているパワフルな血液内科の先生を目の当たりにして、衝撃を受けました。当時、自分が進むべき診療科を決めかねていた私にとって、ここまで患者さんに頼りにされ、生き生きと働いている姿は、とても輝いて見えました。もちろん残念ながら、亡くなられてしまう患者さんもおられましたが、最期の最期まで患者さんにとっての最善を尽くす姿は、私にとって理想の医師像として残っております。
 診療科については、散々迷った挙句、小児科を選択しました。医者を志した頃、大学生時代、研修医を始めた頃には、思ってもみなかった小児科ですが、今となっては、我ながら良い選択をしたと思います。小児科はこどもの全身を診ることが、難しいところであり、面白いところであります。そして、患者さん・ご家族と密接に関われるところもやりがいを感じます。医師3年目に信州大学小児医学教室に入局し半年間大学病院での研修で、主に血液疾患の患者さんを担当させていただきました。日々の業務でいっぱいいっぱいでしたが、苦しい治療を頑張っている患者さんの姿、それでも再発して亡くなられてしまう患者さん、そんな中で最善な策を練って何とか好転させようと努める諸先輩方の姿に惹かれ、血液腫瘍を専門にしたいと考えました。
 小児科はその特性上専門分野のみならず、様々な分野の患者さんを診られるようにならなければなりません。医師3年目後半~7年目までの4年間は、血液疾患とは無縁で、一般小児科、PICU、NICUなどで研修させていただきました。したがって、今年で医師9年目になりますが、血液疾患の診療の経験は2年に満たず、現在も日々勉強させていただいている状況に、正直焦りを感じます。しかし、この数年間の経験を強みとして活かせるように、精進していきたいと思います。

 信州大学小児医学教室では、中沢洋三教授を中心に、CAR-T細胞療法の研究を行っております。私は医師5年目の市中病院に勤務していた時でしたが、CAR-Tの研究に携わらせていただいたことが始まりでした。無限にある条件の中から最適なものを選ぶというもので、周りからは“泥作業(笑)”と言われましたが、私としては非常に熱中できました。得られた結果から、傾向をつかみ、そこから予測を立てて、次の条件を試してみる。考察通りに結果が得られていく感覚は非常に興奮しました。当時勤務していた病院から大学まで片道1時間ほどかかる峠道を夜な夜な車で通っておりましたが、運転しながらも、「つぎはこの条件を振ってみよう」とか、「どこがいけなかったんだろう」とか考えている時間が、とても良い思い出です。
 その後、「新規CAR-T細胞の安全性評価を目的とした霊長類モデルの開発」に携わらせていただき、ASGCT2019で発表させていただいたこと、今回は他家CAR製品の開発を目指して、「臍帯血CAR-T、CAR-NKの開発」について、EHA2021で発表させていただいたこと、など貴重な経験をさせていただいております。すべては中沢教授はじめ、諸先輩方の努力により得られた現在の環境のおかげですが、私もチームの一員として、微力でも貢献できるよう努めていきたいと思います。

 現在は、病棟でCAR-T細胞療法の患者さんの治療に携わらせていただきながら、CAR-T細胞の研究をするといったありがたい環境に置かせていただいております。血液疾患は、臨床と研究が密接に関係しており、臨床的に細かく考えることが研究につながったり、研究している内容が臨床に直結したり。まだ血液学の何もわかっていない、私のとりとめのない経験談で大変申し訳ありませんが、ぜひ学生・研修医の皆様にも、血液学の面白さを体感していただければと思います。

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