日本血液学会

研修医・医学生のみなさま | For Young Doctors
関連ページ
第84回日本血液学会学術集会

先輩たちからのメッセージ(越智陽太郎 先生)

更新日時:2022年1月11日

血液内科の臨床と研究

越智陽太郎
(京都大学大学院医学研究科腫瘍生物学/血液・腫瘍内科学)

 京都大学の越智陽太郎と申します。本稿では、血液内科を選んだ理由や、血液内科の臨床と研究についてお伝えできればと思います。

血液内科の臨床とその魅力

 学部生の時から腫瘍の診療に関わりたいと考えており、特に、手術せずに腫瘍を治療できる血液内科や腫瘍内科、放射線治療科などに興味がありました。最終的には、化学療法で腫瘍の根治を目指すことができる血液内科医になりました。血液内科の魅力はたくさんありますが、特に、(1)診断から治療までを一貫して担当でき、患者さんと深く長い付き合いができること、(2)血液腫瘍は抗癌剤への感受性が高く、化学療法による根治まで期待できること、(3)高度な専門性を有し、最先端の診断・治療を身近に感じやすいこと、に惹かれました。
 血液内科は手術を行う診療科ではありませんので、手の器用さが重要というわけではありません。その代わりに、広い知識と深い洞察に基づく診断や、バランスの良い治療戦略を立てる力が求められます。経験豊富なベテランの先生でなくても、情熱をもって世界中の文献を研究すれば、困難な状況を打破するお手伝いができることもあり、とてもやりがいがあります。
 私は西神戸医療センターで初期、神戸市立医療センター中央市民病院で後期の研修を行いました。お世話になった血液内科の先生方は情熱的で勉強熱心、尊敬できる方ばかりで、この道を進む後押しになりました。また、臨床に熱心でありながら、リサーチマインドも備えた先生が多かったです。そうした環境もあり、私も臨床の合間をぬって臨床研究にもなるべく取り組みました。学会発表や論文執筆をしていく中で、研究の世界にも興味を持つようになりました。

血液内科の研究について

 血液腫瘍の診療では、一見同じように見える腫瘍であっても、腫瘍のもつ遺伝子変異によっては、予後や治療反応性が劇的に異なるケースが多々あります。したがって、造血器腫瘍を深く理解するためには、腫瘍がもつ遺伝子異常とその意義についてもよく知る必要があります。しかし、遺伝子異常がどのように腫瘍の形質(=個性)を生み出すのか、未知の点が多く残されています。そこで、遺伝子異常に着眼した造血器腫瘍の研究を行うために、母校・京都大学の大学院に進みました。
 私の大学院での研究テーマは、白血病に高頻度に認められるコヒーシン遺伝子変異の意義を明らかにすることでした。基礎研究の経験はほぼ皆無でしたので、細胞やマウスを用いた実験手技や、スーパーコンピューターを用いたインフォマティクス解析などを一から勉強し、習得していきました。最終的に、3,000症例以上の白血病の大規模なゲノム解析や、コヒーシンノックアウトマウスの解析、さらに次世代シーケンサーを活用した統合的なエピジェネティック解析(ChIP-seq、ATAC-seq、Hi-C)などを行いました。これらによって、コヒーシン変異が染色体の3次元構造に異常を引き起こすことや、そこに更に転写因子の変異が加わることで異常が加速し、骨髄異形成症候群を発症することなどを示しました (京都大学HP:https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2020-04-08-1)。新しい実験系の構築や高度なインフォマティクス解析には苦労しましたが、大学院で研究に専念し、一つの仕事を成し遂げられたことは貴重な経験でした。今後も、造血器腫瘍の遺伝子異常が引き起こす多彩な変化を、最新の実験手技も応用しながら解き明かし、新規の治療開発につなげていければと考えています。

最後に

 血液内科は研究との垣根が低く、最先端の研究成果が日常診療に取り込まれることも多いですし、診療における疑問を研究で解決したいと思うこともあります。臓器横断的な内科診療をしたい方、血液腫瘍の診断から治療までを一貫して行いたい方、トランスレーショナルリサーチをしたい方、基礎研究をしたい方、どのような方でも興味・やりがいをもって取り組み続けられる診療科です。是非、血液内科に進み、奥深い造血器の世界へと飛び込んで頂ければ幸いです。
 本稿を執筆するきっかけとなりましたのは、前述の研究成果に対し、日本血液学会若手論文賞を受賞させて頂いたことです。日本血液学会事務局および賞等選考委員会の先生方に深謝申し上げます。また、日頃より研究のご指導を頂いております京都大学大学院医学研究科・腫瘍生物学の小川誠司教授、血液・腫瘍内科学の髙折晃史教授、共同研究者の皆様にこの場を借りて御礼申し上げます。


後期研修中に参加した初めての国際学会。米国血液学会(ASH)で、悪性リンパ腫の臨床研究に関してポスター発表をしました。左が筆者、右が石川隆之先生。


研究室にて。

To Top