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若き女性医師会員の皆様へ:血液内科医として30年以上が過ぎ、今思うこと

更新日時:2021年12月8日

若き女性医師会員の皆様へ:血液内科医として30年以上が過ぎ、今思うこと

山口 素子
三重大学大学院医学系研究科 先進血液腫瘍学講座

 1989年に血液内科医としてのスタートを切ってから、気づけばもう32年が過ぎました。血液内科医を志したのは、学生時代に見た塗抹標本の血液細胞の美しさに惹かれたのが一番の理由です。その他、当時女性の内科医は本当に少なかったですが、「女性でも内科医になりたい」、「臨床だけでなく研究にもチャレンジしてみたい」という気持ちがあったと記憶しています。

 今では想像もつかないことですが、1年目の当時は、女性医師が白血病患者さんを担当することを心配する声が聞かれました。そのような中、同級生の女性医師が見事に主治医を務められ、その後の流れを変えたと個人的に思っています。私も血液の重症患者さんを担当して全身管理を学ぶことができ、内科医になったことを実感しました。また、多く担当したリンパ腫では、そもそも全身に発生することから、あらゆる診療科の先生方や病理の先生方と連携することの大切さを学びました。

 血液疾患の患者さんの病態は24時間刻々と変化しますが、一部の急を要する例を除けば、化学療法を始めとして、医師が治療スケジュールを決めます。スキルを積み体制を整備するほど、有害事象の予測と対応の精度が増します。仕事を続ける上で、この点には助けられたと思っています。また、骨髄検査と骨髄採取のほかには意外と立ち仕事がない点も、腰痛や足の骨折を繰り返した私が長く続けられている理由と思っています。

 2021年の学術集会の女性医師キャリアシンポジウムでは、厚生労働省の医系技官、臨床試験のデータ管理、セルプロセッシング・輸血部門でご活躍の先生方がお話しになりました。血液の細胞と同じように、それを担当する医師も分化?するのが血液内科の奥深いところです。私の場合は臨床から臨床病理学的研究、そして臨床研究へと進みましたが、今のところあくまで血液内科の枠内でのキャリア形成です。皆様には日常に起こる種々のイベントの中で、ご自分のあらゆる可能性を見出し挑戦していただきたいと願っています。

 予想通り?年寄りの単なる思い出話になっていますが、皆様にお伝えしたいことは、私が血液内科医になってよかったと思っているということです。血液内科の患者さんから多くを学び、先輩、後輩、同級生の先生方、また家族にも支えられ、今があります。皆様も患者さんから日々学び、仕事仲間とご自分の家族を大切にしてください。コロナ禍が明け、皆様と学会場で、リンパ腫のことだけでなくこのようなお話ができることを楽しみにしています。

G7サミット会場跡にて

血液内科医になって30年 私を支えた母と (G7サミット会場跡にて)

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