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血液内科医を志す研修医、学生の皆様へ(辻 紀章 先生)

更新日時:2021年11月25日NEW

「血液内科という道」

辻 紀章
(金沢大学医薬保健研究域医学系 血液内科学)

 私が血液内科を志したのは、学生時代の2つの体験がきっかけでした。1つ目は、学生実習で担当させていただいた、私と同い年の急性リンパ性白血病再発の患者さんとの出会いです。その患者さんは、夢に向かって歩き出そうという最中で突然白血病と診断されて、治療後に残念ながら再発されました。その境遇を知った時は、自分のことのように悲しい気持ちになったことを鮮明に覚えています。大変な中でも治療に前向きに取り組まれた結果、今も元気に外来に通院されています。2つ目は、同年代の知人のお父様が悪性リンパ腫でお亡くなりになったことです。治療の甲斐なく、残念ながら診断から間もなく亡くなられました。まだ若く、ご家族への影響も計り知れないものがありました。健康な方が、ある時突然血液疾患と診断されて、急激な経過をたどるさまを目の当たりにして、一人の医師として血液疾患に苦しむ患者さんの力になりたいと思いました。

 血液内科医としての目標は2つあり、1つは臨床で目の前の患者さんを救うこと、2つ目は研究を通して、微力かもしれませんが血液学の発展に貢献することです。初期研修後は、大学病院や関連病院での臨床に携わっています。また、大学院で「再生不良性貧血」という疾患について研究をしています。再生不良性貧血は、血液のタネである造血幹前駆細胞に対する免疫学的な攻撃が生じ、汎血球減少を呈する疾患です。しかし、攻撃のターゲットとなる自己抗原については未だ明らかにされていません。HLAクラスIIの中でもHLA-DR15を保有していることが、免疫病態と深く関与していると報告されていますが、その詳細も長らく分かっていませんでした。近年、急性白血病や悪性リンパ腫において、腫瘍細胞がHLAクラスIIの発現を低下させることで、腫瘍免疫から逃避していることが相次いで報告されています。これらの既報から着想を得た結果、HLA-DR15を保有する再生不良性貧血の患者さんにおいて、HLAクラスIIを欠失させた造血幹前駆細胞が造血を支持していることを明らかにしました。この研究結果は、今年のヨーロッパ血液学会(EHA)で口演発表しました。コロナ禍のためオンライン発表ではありましたが、世界中の研究者の前で発表し、議論する機会に恵まれたことは、大変ありがたいことでした。この研究が、病態解明に役立ち、将来的に患者さんに還元できることに期待しています。

 研究の世界に飛び込んでみて実感したのは、血液内科では検体の採取が容易であり、研究を進めやすいということです。それが、血液領域において、新たな検査・治療が確立されやすい大きな理由の一つではないかと思います。ここ数年のうちにも、次々と新たな治療法が登場しており、パラダイムシフトが起こっています。1、2年前には治療の選択肢がほとんどなかった患者さんに対して、有効な治療を提示できることもあり、医師として大きな喜びを感じます。

 私たち一人一人ができる診療、研究には限りがありますが、多くの力が合わされば、次の時代を切り開く原動力になると信じています。皆さんが、私たちの仲間に加わってくれることを切に願っております。

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