造血器腫瘍診療ガイドライン

Ⅲ章 骨髄腫

Ⅲ 骨髄腫

2 多発性骨髄腫の類縁疾患
【骨の孤立性形質細胞腫・髄外性形質細胞腫】
総論

 国際骨髄腫作業部会(International Myeloma Working Group:IMWG)の分類では,骨の孤立性形質細胞腫は,①血清および/または尿中にM 蛋白を検出しない(時に少量のM 蛋白を検出することがある),②単クローン性の形質細胞の増加による1 ヶ所のみの骨破壊,③非病変部の骨髄の所見で骨髄における形質細胞のびまん性増殖がなく多発性骨髄腫に相当しない,④全身骨X 線検査正常および脊椎と骨盤のMRI が正常,および⑤形質細胞の増殖に関連した臓器・組織障害がない(孤立性骨病変以外の臓器障害がない)ことと定義されている1)。また,髄外性形質細胞腫は,①血清および尿にM 蛋白を検出しない(時に少量のM 蛋白を検出することがある),②単クローン性の形質細胞による髄外腫瘤の存在,③正常骨髄,④正常な全身骨所見および⑤臓器障害がないことと定義されている1)。WHO 分類(2008)では骨および骨髄以外から発生した形質細胞腫を髄外性形質細胞腫としている。
 髄外性形質細胞腫は鼻腔,副鼻腔,消化管,肺,甲状腺,眼窩,リンパ節などに発生する。80%以上が上部気道や上部消化管に分布し,上部気道では副鼻腔が多い。初発症状や臨床像は腫瘍の発生部位で異なる。孤立性髄外性形質細胞腫の経過は一般に緩慢で,多発性骨髄腫への進展は稀であるが,骨の孤立性形質細胞腫は多発性骨髄腫に進展しやすい。比較的最近の報告では,骨の孤立性形質細胞腫診断後5 年の全生存割合(OS),無病生存割合(DFS)はそれぞれ70%と46%であり,5 年で約半数が多発性骨髄腫へ移行していた2)。多発性骨髄腫へ移行した時期は診断から平均21カ月であったとされている。いったん多発性骨髄腫へ進展するとその予後は,多発性骨髄腫の予後と同等に悪くなる。一般に多発性骨髄腫への進展が予後を決めると考えられる。また,米国で1998~2004 年の間に診断された孤立性形質細胞腫患者1,472 例の予後を解析した報告では,若年群ほどOS,疾患特異的生存割合ともに高く,骨の孤立性形質細胞腫と髄外性形質細胞腫の予後を比較するとOS,疾患特異的生存割合ともに骨の孤立性形質細胞腫のほうが低値である3)。疾患特異的生存割合は,骨の孤立性形質細胞腫が50%,髄外性形質細胞腫が80%でプラトーになっており,両病型の間で治癒率に大きな差があることが示されている。
 局所療法として放射線療法と外科的切除が主に行われる。また,病変の部位や治療経過により化学療法も検討される。一般に放射線感受性が高い腫瘍と考えられているが,症例が少ないこともあり放射線療法の至適照射量などの十分な検討が少なく,標準的治療法は確立されていない。予後良好因子として,若年者および腫瘍径5 cm 未満であること4)が,また多発性骨髄腫への進展を示唆する因子として,診断時の腫瘍の大きさや蛋白分画でのM 蛋白の存在等が挙げられている5)


[参考文献]

1) International Myeloma Working Group. Criteria for the classifi cation of monoclonal gammopathies, multiple myeloma and related disorders : a report of the International Myeloma Working Group. Br J Haematol. 2003 ; 121( 5) : 749-57.
2) Knobel D, et al. Prognostic factors in solitary plasmacytoma of the bone : a multicenter Rare Cancer Net- work study. BMC Cancer. 2006 ; 6 : 118.( 3iiiA)
3) Dores GM, et al. Plasmacytoma of bone, extramedullary plasmacytoma, and multiple myeloma : incidence and survival in the United States, 1992-2004. Br J Haematol. 2009 ; 144( 1) : 86-94.( 3iA)
4) Nanni C, et al. 18F-FDG PET/CT in myeloma with presumed solitary plasmocytoma of bone. In Vivo. 2008 ; 22( 4) : 513-7.( 3iiDiv)
5) Holland J, et al. Plasmacytoma. Treatment results and conversion to myeloma. Cancer. 1992 ; 69 (6) : 1513-7.( 3iiiDiv)


CQ 1孤立性形質細胞腫において放射線療法による初期治療後の補助化学療法は多発性骨髄腫への進展を遅らせるか
推奨グレード
カテゴリー2B

孤立性形質細胞腫に対し局所放射線療法に加え,多剤併用化学療法の追加による多発性骨髄腫への進展抑制効果は示されていない。逆に二次性白血病などのリスクが高まることが懸念され,放射線療法による初期治療後の多剤併用化学療法による補助化学療法は推奨されない。

[解 説]

 孤立性形質細胞腫から多発性骨髄腫への進展をきたすと予後が不良になる。孤立性形質細胞腫258 例(骨の孤立性形質細胞腫206 例,髄外孤立性形質細胞腫52 例)のうち214 例が放射線療法のみ,34 例が放射線療法と化学療法[22 例がMP 療法(MEL, PSL),7 例がVAD 療法(VCR,DXR, DEX),5 例がその他の多剤併用療法)を中央値で6 コース併用した観察で,平均観察期間が56 カ月で多発性骨髄腫への進行までの期間の中央値は21 カ月であった1)。10 年後の多発性骨髄腫への進展率は放射線療法単独群で64%,化学療法併用群で74%と化学療法を追加する有用性が認められていない。また,腫瘍径が4 cm 未満の場合が4 cm 以上に比べ予後良好であった。このように,孤立性形質細胞腫に対し局所放射線療法にMP 療法などの多剤併用化学療法を追加する有用性は示されていない。逆に二次性白血病などのリスクが高まることが懸念される。国際骨髄腫作業部会(International Myeloma Working Group : IMWG)の診断規準が出される以前の報告では,椎骨と腸骨のMRI の評価が行われていないため,現在試行可能なMRI やPET/CT で詳細な評価を行えば一部の症例が多発性骨髄腫と診断される可能性がある。また,これまでの報告では新規薬剤を用いた検討もない。今後,PET/CT やMRI などの画像診断にて孤立性かどうかのより厳密な診断を行った多数例で,診断時の孤立性腫瘍の大きさ,M 蛋白の存在や腸骨の骨髄穿刺での多発性骨髄腫の診断規準を満たさない単クローン性の形質細胞の存在等が多発性骨髄腫への進展へのリスク因子になるのかどうか,またこのようなリスク因子がある場合の新規薬剤を用いた補助化学療法が多発性骨髄腫への進展の抑制効果があるのかどうかなどの検討が望まれる。


[参考文献]

1) Ozsahin M, et al. Outcomes and patterns of failure in solitary plasmacytoma : a multicenter Rare Cancer Network study of 258 patients. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2006 ; 64(1) : 210-7.( 3iiA)


【全身性AL アミロイドーシス】
総論

 AL アミロイドーシスは,異常形質細胞より産生されるモノクローナル免疫グロブリン(M 蛋白)の軽鎖(L 鎖)に由来するアミロイド蛋白が全身諸臓器に沈着し,臓器障害をきたす疾患である1)2)。免疫グロブリン重鎖(H 鎖)に由来するものはAH アミロイドーシスと呼ばれるが極めて稀で,両者をあわせて免疫グロブリン性アミロイドーシスとも呼ぶ。多発性骨髄腫や原発性マクログロブリン血症などの基礎疾患を伴わない場合を原発性,基礎疾患に伴う場合を二次性AL アミロイドーシスと呼ぶ。しかし,実際には両者の鑑別困難な症例もみられ, WHO 分類(2008)では両者をまとめて原発性アミロイドーシスとしている3)。また,病変が複数の臓器にわたる場合を全身性,一臓器に限局する場合を限局性と呼ぶ。本症は稀な病気であり,1998 年の全国疫学調査では推定患者数は約510 例である。アミロイド蛋白の沈着は心臓,肝臓,腎臓,消化管,末梢神経など多臓器にわたり,多彩な臨床症状を呈する。診断確定は病理学的所見に基づき,Congo red 染色で橙赤色に染まり,偏光顕微鏡下で緑色の複屈折を示すことが必須である。さらに抗免疫グロブリン軽鎖抗体を用いた免疫染色でアミロイドの病型を確定する。M 蛋白の検出には血清・尿の蛋白電気泳動,免疫電気泳動が行われるが,遊離軽鎖(free light chain:FLC)の測定は感度が高く有用である。本症の予後は不良であり,無治療例での診断からの生存期間中央値(MST)はおよそ13カ月,特に心病変を有する症例は予後不良である。治療目標はアミロイド蛋白の原因となっているモノクローナルなFLC の産生を速やかに抑制し,臓器機能を温存することにある。自家末梢血幹細胞移植は臓器障害のため治療関連死亡(TRM)が高いので適応を慎重に検討し,リスクに応じた前処置の減量を考慮し実施することが重要である4)~6)。自家末梢血幹細胞移植の適応のない症例ではMD 療法(MEL, DEX)あるいは減量DEX 療法(LD-DEX)が推奨されるが,最近では多発性骨髄腫に用いられる新規薬剤の有用性が検討され,国内ではBMD 療法(BOR, MEL, DEX)の臨床試験が進行中である7)~9)


[参考文献]

1) Falk RH, et al. The systemic amyloidosis. N Engl J Med. 1997 ; 337( 13) : 898-909.
2) Merlini G, et al. Dangerous small B-cell clones. Blood. 2006 ; 108( 8) : 2520-30.
3) Mckenna RW, et al. Plasma cell neoplasms. Swerdlow SH, et al. eds. WHO Classifi cation of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. Lyon, IARC ; 2008 : pp200-13.
4) Jaccard A, et al. High-dose melphalan versus melphalan plus dexamethesone for AL amyloidosis. N Engl J Med. 2007 ; 357( 11) : 1083-93.( 1iiA)
5) Comenzo R, et al. Autologous stem cell transplantation for primary systemic amyloidosis. Blood. 2002 ; 99 (12) : 4276-82.
6) Skinner M, et al. High-dose melphalan and autologous stem cell transplantation in the patients with AL amyloidosis : An 8-year study. Ann Intern Med. 2004 ; 140( 2) : 85-93.( 3iiiA)
7) Palladini G, et al. Association of melphalan and high-dose dexamethasone is eff ective and well tolerated in patients with in AL (primary) amyloidosis who are ineligible for stem cell transplantation. Blood. 2004 ; 103( 8) : 2936-8.( 3iiiDiv)
8) Kastritis E, et al. Bortezominb with or without dexamethasone in primary systemic( light chain) amyloidosis. J Clin Oncol. 2010 ; 28( 6) : 1031-7.( 3iiiDiv)
9) 島崎千尋,他.原発性AL アミロイドーシスに対するボルテゾミブ・メルファラン・デキサメタゾン療法の安全性と有用性に関する研究:臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験の進捗状況(Ⅱ).厚生労働省難治性疾患克服研究事業.アミロイドーシスに関する調査研究班.平成24 年度研究報告会プログラム・抄録集.2013;p70.


アルゴリズム

MEL/DEX : melphalan/dexamethasone, LD-DEX : low-dose dexamethasone, BOR : bortezomib, LEN : lenalidomide, BMD : bortezomib/melphalan/dexamethasone, BCD : bortezomib/cyclophosphamide/dexamethasone, CTD : cyclophosphamide/thalidomide/dexamethasone
保険適用外

 まず,自家移植の適応があるか否かを慎重に検討する(AL:CQ1,エビデンスレベル2A)。自家移植の適応があればリスクに応じてメルファラン(MEL)の減量も考慮して実施する。完全奏効(CR)が得られれば経過観察する。移植の適応がない場合は,標準療法としてMEL/DEX,LD-DEX,が推奨される(AL:CQ2,エビデンスレベル1iiA)。最良部分奏効(VGPR)未到達あるいは再発時はボルテゾミブ(BOR),レナリドミド(LEN)などの新規薬剤を検討する。


CQ 1全身性AL アミロイドーシスに対する自家造血幹細胞移植併用大量メルファラン療法は予後を改善させるか
推奨グレード
カテゴリー2B

自家末梢血幹細胞移植は適応を慎重に考慮しリスクに応じてメルファランを減量して実施することが推奨される。

[解 説]

 AL アミロイドーシスに対する自家末梢血幹細胞移植の後方視的解析では,平均全生存期間(OS)は4.6 年,1 年以上生存かつ完全奏効(CR)例のOS は10 年を越えている1)。血液学的CR割合は40%にみられ,それらの症例の66%で1 臓器以上の改善が得られている。本治療の有用性については,症例対照研究で標準化学療法より優れていると報告された2)。しかし,唯一のランダム化比較試験であるIFM の試験では自家移植とメルファラン(MEL)/デキサメタゾン(DEX)との比較が行われ,OS では移植群22.2 カ月,化学療法群56.9 カ月と化学療法群が優位に優れていた(p=0.04)3)。高リスク群ではOS に有意差はなく,低リスク群では3 年OS 割合がそれぞれ58%,80%であった。ただし,本試験では移植の適応規準がゆるく移植群に重症例が含まれていたこと,その結果移植群における治療関連死亡(TRM)が24%と高いこと,移植群における移植実施数が少ないこと,観察期間が短いことなど試験上の問題点も指摘されており,自家移植を否定する根拠になっていない。PS 2 以下,左室駆出率40%以上,酸素飽和度95%以上,仰臥位での収縮期血圧90mmHg 以上であることなどの移植適応規準を遵守し,リスクに応じた前処置MEL の減量を行うことによりTRM は5%程度に減少しており,経験豊富な施設において実施を検討すべきであ る1)4)5)


[参考文献]

1) Skinner M, et al. High-dose melphalan and autologous stem cell transplantation in the patients with AL amyloidosis : An 8-year study. Ann Intern Med.2004 ; 140( 2) : 85-93.( 3iiiA)
2) Dispenzieri A, et al. Superior survival in primary systemic amyloidosis patients undergoing peripheral blood stem cell transplantation : A case-control study. Blood.2004 ; 103( 10) : 3960-3.(2A)
3) Jaccard A, et al. High-dose melphalan versus melphalan plus dexamethesone for AL amyloidosis. N Engl J Med. 2007 ; 357( 11) : 1083-93.( 1iiA) 
4) Comenzo R, et al. Autologous stem cell transplantation for primary systemic amyloidosis. Blood. 2002 ; 99 (12) : 4276-82.( レビュー)
5) Wechalekar AD, et al. Perspectives in treatment of AL amyloidosis. Br J Haematol. 2008 ; 140 (4) : 365- 77.( レビュー)


CQ 2移植適応のない全身性AL アミロイドーシス患者にはどのような治療が推奨されるか
推奨グレード
カテゴリー2B

MD 療法(MEL, DEX)が推奨される。

[解 説]

 移植適応のないAL アミロイドーシスに対する標準治療は確立されていない。MP 療法(MEL,PSL)とコルヒチンとのランダム化比較試験でMP 療法の優位性が明らかにされたが,平均生存期間は18 カ月であり推奨できるものではない1)。その後,VAD 療法(VCR, DXR, DEX)や大量DEX が行われてきたがビンクリスチン(VCR)による神経毒性,ドキソルビシン(DXR)による心毒性,大量DEX による毒性の問題があり推奨されていない,現在もっとも頻用されているのがMD 療法(MEL/ 低用量DEX)である。96 例を対象とした試験で67%に部分奏効(PR)以上の血液学的奏効がみられ,効果発現は4.5 カ月以内と早く,臓器効果も48%にみられている2)。本療法は忍容性が高く,その後の長期観察結果では平均生存期間5.1 年,無増悪生存期間3.8 年であった3)。MD 療法と自家移植とのランダム化比較試験でも,生存期間の中央値は56.9 カ月とその有用性が確認されている4)。しかし,重篤な心障害を有する症例に対する効果は限られている。最近では,サリドマイド(THAL),レナリドミド(LEN),ボルテゾミブ(BOR)などの新規薬剤が導入され,その有用性が報告されつつあるが,安全性も含めた十分なデータがない現状にある。


[参考文献]

1) Kyle RA, et al. A trial of three regimens for primary amyloidosis : Colchicine alone, melphalan and prednisone, and melphalan, prednisone and colchicines. N Engl J Med. 1997 ; 336( 17) : 1202-7.( 1iA)
2) Palladini G, et al. Association of melphalan and high-dose dexamethasone is eff ective and well tolerated in patients with in AL (primary) amyloidosis who are ineligible for stem cell transplantation. Blood.2004 ; 103( 8) : 2936-8.( 3iiiDiv)
3) Palladini G, et al. Treatment with oral melphalan plus dexamethasone produces long-term remission in AL amyloidosis. Blood. 2007 ; 110( 2) : 787-8.( 3iiiDiv)
4) Jaccard A, et al. High-dose melphalan versus melphalan plus dexamethesone for AL amyloidosis. N Engl J Med. 2007 ; 357( 11) : 1083-93.( 1iiA) 


【POEMS 症候群】
総論

 POEMS 症候群は,Polyneuropathy, Organomegaly, Endocrinopathy, M-protein, Skin lesion を主徴とする症候群である。病態の根底には,モノクローナルな形質細胞の増加がある。
診断規準を表1 に示す。

表1 POEMS 症候群の診断規準

Major criteria 1:多神経炎
2:モノクローナルな形質細胞増加 (ほぼ常にλ型のM 蛋白)
Other major criteria 3:キャッスルマン病
4:硬化性骨病変
5:VEGF 上昇
Minor criteria 6:臓器腫大
(脾腫,肝腫,リンパ節腫脹)
7:血管外体液漏出
(浮腫,胸水,腹水)
8:内分泌異常
(副腎,甲状腺,下垂体,性腺,副甲状腺,膵臓)
9:皮膚異常
(色素沈着,多毛,血管腫,先端チアノーゼ,発赤)
10:乳頭浮腫
11:血小板増加,多血症
Other symptoms and signs 太鼓撥指形成,体重減少,多汗,肺高血圧,限局性肺疾患, 塞栓症,下痢,ビタミンB12 低値

POEMS は,Major criteria をすべて満たし
Other major criteria を1 つ以上
Minor criteria を1 つ以上みたすもの


[参考文献]

1) Dispenzieri A. POEMS syndrome : 2011 update on diagnosis, risk-stratifi cation, and management. Am J Hematol. 2011 ; 86(7) : 591-601.( レビュー)


CQ 1POEMS 症候群患者に対する治療介入は予後を改善させるか
推奨グレード
カテゴリー2B

POEMS 症候群患者に対する治療介入は予後を改善させる。

[解 説]

 POEMS 症候群の治療は,形質細胞を標的とした骨髄腫に準じた治療が試みられてきた。しかし,これまでに,ランダム化比較試験は行われておらず,いずれの報告も対象群を伴わない後方視的研究にとどまっている。
 治療法としては,①形質細胞腫が存在する場合は外科的摘出,②形質細胞腫への放射線照射,③骨髄腫に準じた化学療法,④幹細胞移植併用大量化学療法の4 つが報告されている。ほとんどは症例報告であるが,その中でDespenzieri らの報告が自験例を中心とした後方視的なものであるものの99 例を集積した最大のものである1)
 それによると,①限局した骨硬化性病変(osteosclerotic lesion)には放射線照射が有効であり,照射施行群は,未施行群に比べて予後が良い。② MP 療法(MEL, PSL)は約40%の症例に効果を示す。③末梢血幹細胞移植併用メルファラン(MEL)大量療法27 例の検討では,全奏効割合は100%であり,5 年生存割合は80%以上である。この結果は,治療介入が予後を改善する可能性を示している。サリドマイド(THAL)による治療効果を報告した9 例の症例報告では,6 例に症状の改善がみられている2)
 POEMS 症候群は世界的にも稀少疾患であり,本症にはガイドラインが存在しないため,無治療群と治療介入群の直接比較はできない。しかし,無治療であれば病状は進行するため,なんらかの治療介入は合理的である。エビデンスレベルは低いものの,放射線照射,アルキル化剤,幹細胞移植の三者を状況に応じて使用するのが合理的と思われる。今後,骨髄腫に準じたボルテゾミブ(BOR),THAL,レナリドミド(LEN)による治療例の集積が期待される。


[参考文献]

1) Dispenzieri A, et al. POEMS syndrome : defi nitions and long-term outcome. Blood. 2003 ; 101( 7) : 2496-506.( 3iiiA)
2) Kuwabara S, et al. Thalidomide reduces serum VEGF levels and improves peripheral neuropathy in POEMS syndrome. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2008 ; 79( 11) : 1255-7.